●リプレイ本文
「朱雀衆は異国の人が多いらしいけど、どんな顔ぶれなのかな?」
辺りをキョロキョロと見回しながら、アーク・ウイング(ea3055)が朱雀衆の面々を探す。
五輪祭に参加する者達は自分の所属するチームの鉢巻を巻いているため、ぱっと見ただけでも何処のチームに所属しているかすぐ分かる。
「何だか胸躍るよね♪ よっし、頑張って子忍の称号を手に入れるぞ!」
同じチームの仲間がいたため、跳夏岳(ea3829)がニコリと笑う。
玄武衆以外はバランスよく振り分けられているため、参加者達にそれほど緊張感は無いようだ。
「白虎衆は見た目と西洋文化ですか。わたくしでも大丈夫ですかね? あちらのお酒に興味があるので」
受付で白虎衆の鉢巻をもらい、南天流香(ea2476)が首領を探す。
首領によってはあまり表に出たがらないため、広い会場の中から探し出すのは難しい。
「河童忍軍の祭典ねぇ。面白そうではあるな。暇潰しに参加してみるか」
青龍衆首領の真似して、岩倉実篤(ea1050)が越後屋手拭いを首に巻く。
「しかし、何故に河童の忍軍なんだ。‥‥何か作為的なものを感じるな。だが、まあいい。こういう面白いことは存分に楽しませてもらおう」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、デュラン・ハイアット(ea0042)が辺りを睨む。
妙にキナ臭い雰囲気がするものの、今は何の根拠も無いため動きようがない。
「世の中、昨今、嫁不足、子不足、忍者不足! 未来のジャパンの為にも、このとき和姐さんが一肌脱ごうじゃないか! ‥‥って、誰だい! 前後が解らないって言った奴は! どっちが前か解るように首に鈴をつけてやってんだろう? こっちが前だよ。ま・え!」
くのいちの格好で五輪祭に参加し、山浦とき和(ea3809)が自分の胸をぽふりと叩く。
「あ、この間のエロガッパ発見!」
以前の依頼で関わった事の河童を見つけ、とき和がいきなり背後から近づき甲羅を優しく撫でまわす。
「ゆ、許してカッパ! もう悪い事はしていないカッパ!」
必要以上に怯えながら、河童が彼女に土下座する。
「ねえ見てやってよ〜。玄武衆の一員って意気込みに、鉢金に三日月を書き入れてきたんだよ? ほらお揃い〜☆ それにしても‥‥可愛いじゃないのさ、この甲羅! 中はどうなってるんだぃ?」
無意味にあちこちをつつき、とき和がニコリと微笑んだ。
「それだけは勘弁カッパ!」
大粒の涙を浮かべ、河童がダッシュで逃げていく。
「あら、もう帰っちゃうの。‥‥残念ねぇ」
パタパタと手を振りながら、とき和が河童の背中を見送った。
「そういや青龍衆の首領って何処だ?」
首領の姿が見当たらないため、龍深城我斬(ea0031)が辺りを探す。
「命が惜しいのなら‥‥後ろを向くな」
突然、背後から声が聞こえ、我斬が警戒した様子で息を飲む。
「‥‥警告か?」
日本刀に素早く手を掛け、我斬がボソリと呟いた。
「いや、癖だ。俺の命を狙う奴がいるんでな」
物陰に隠れて様子を窺い、青龍衆の首領がニヤリと笑う。
「‥‥分かった。後ろは振り向かない」
納得した様子で頷きながら、我斬が黙って刀をしまう。
「それでは健闘を祈る」
そして青龍衆の首領は気配を消した。
まるで最初から誰もいなかったかのように‥‥。
「まさか壁に油が塗られているとは‥‥」
困った様子で壁を見つめ、三笠明信(ea1628)が溜息をつく。
油でヌルヌルしているため、途中で何度も落ちてしまう。
「これじゃ、なかなか上れませんね」
額に浮かんだ汗を拭い、琴宮茜(ea2722)が再び挑戦する。
「そんな事はない。こうやって気合を入れれば‥‥ほらな」
ようやく壁を登りきり、デュランがその場に倒れこむ。
「リトルフライを習得しておけばよかったかな」
同じ忍軍の人に手を貸してもらい、アークが何とか壁を上っていく。
「うおおおー、何じゃ坂こんな坂ーーーー!」
雄たけびを上げて壁を登り、錬金(ea4568)が勢いあまって屋敷の屋根に着地する。
その豪快さに審査員も感動し、金に1ポイントを与えて涙を流す。
「やっぱり最初が肝心よね」
鉤爪のついた縄を投げ、とき和が余裕で上って行く。
ここに罠があると思っていたため、すぐに対応できたらしい。
「みんな考えている事は同じですね」
とき和と同じように鉤爪つきのロープを投げ、丙荊姫(ea2497)がクライミングスキルで壁を上る。
「ここは楽勝だったな」
邪魔な連中の足を掴んで引き摺り下ろし、阿武隈森(ea2657)が別の忍者にぶち当てた。
「ちょっと! 気をつけてよね!」
不満そうに森を睨み、柊小桃(ea3511)が頬を膨らませる。
「‥‥悪く思うな。これも勝負だからな」
高笑いを上げながら、森が壁を上っていく。
「それじゃコイツの出番だな。‥‥アレ? 何処だっけ?」
バックパックの中をゴソゴソと漁り、我斬が龍叱爪を取り出し両手にはめる。
「‥‥こんな事ならすぐに取り出せるようにするべきだったな」
なかなか縄ひょうが見つからないため、実篤がバックパックの中を探す。
他の試練に使用する道具もあるため、なかなか縄ひょうが見つからない。
「こういう時に道具は不便ですね」
リトルフライを使って飛び上がり、流香が壁を越えていく。
「ひょっとして深読みしすぎたかな?」
そんな中、夏岳は最初の予想が当たっているような気がしたため、壁を上りながら大粒の汗を浮かべるのであった。
「細い通路ってものはトラップの伝道だぜ、きっと」
どんな罠にも対応できるようにするため、紫上久遠(ea2841)が作戦を練る。
目の前の通路はひとりずつしか通る事が出来ないため、何かトラップがあった場合は一気に出遅れてしまうだろう。
「壁からなんか出てくるんだ、絶対に!」
久遠の背中に慌てて隠れ、デュランがゴクリと唾を飲む。
「‥‥こういう場合は槍襖がお約束かね?」
あちこちの壁に妙な穴があいていたため、我斬が必要以上に警戒する。
「一気に走りぬけたらグサリでしょうね」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、明信が大きな溜息をつく。
「だったら迂闊な行動は出来んな!」
腹の底から声を出し、金が険しい表情を浮かべて腕を組む。
「でも進まなきゃ駄目だよね?」
小石を何度か放り投げ、アークがしばらく様子を窺った。
「‥‥考えるより走った方が速いか」
風読みを使って辺りの空気を読みながら、外橋恒弥(ea5899)が警戒した様子で辺りを睨む。
「悪いな! 先に行くぜ!」
後ろを振り向きコアギュレイトの魔法をかけ、森が捕縛した参加者で壁を作って走り出す。
「仲間まで巻き込んでどうする!」
参加者達の隙間を潜り抜け、実篤が全速力で通路を抜ける。
「何だか面倒な事になったな」
迷う事なく走り出し、夏岳が転んだ参加者達を飛び越えた。
「罠があったらおしまいだね」
足元を注意しながら、小桃が通路を進んでいく。
「‥‥その時はその時ね」
濡れたタオルを口に巻き、流香が通路を進む。
「どうやらフェイクのようですね。通路には何のトラップもありません」
そして茜は自分の通った通路を見つめ、大きな溜息をつくのであった。
「音が鳴ったらどうなるのかな? 槍でも降ってくるのかなあ」
床にむかって小石を投げ、恒弥が反応が出るまで待つ。
「‥‥踏んだ途端に床が爆発するわけではないようだな。それとも重さが足らないのか?」
何か嫌な予感がしたため、我斬が他の参加者達を蹴り飛ばす。
それと同時に床から大きな音が鳴り、参加者達が慌ててその場から逃げ出した。
「大丈夫なのかな? 物凄く怖いけど‥‥」
確認のため小石を床にむかって放り投げ、アークがつま先から踵にかけて床を踏むようにして歩く。
「これが踏んだら音がするって言う『不如帰張り』の床だね? 大丈夫だよ、こうすれば♪」
周りの鴨居にぶら下がり、夏岳が足音を立てないようにして進む。
「要は床を踏まなければいいんだな」
リトルフライを使い、デュランが夏岳の後に続く。
「‥‥甘いわね。お尻がガラ空きよ。もちろん老若男女関係なしっ!」
両手を合わせて人差し指をピンと立て、とき和がデュランの尻に突き刺した。
「ぐおっ‥‥、なんて事を」
信じられない様子でとき和を見つめ、デュランがその場に蹲る。
「ちょっ、ちょっと本気なの!?」
さすがに身の危険を感じたため、流香がリトルフライを解除しとき和を睨む。
「‥‥これもまた運命よ」
何処か遠くを見つめながら、とき和が妖しく口元を歪ませる。
「足音を立てないように進むしかないようですね」
身の危険を感じたため、荊姫が忍び足を使って床を進む。
「ふっ、昔から言うじゃろう。『木を隠すには森の中』‥‥つまり、鳴る床が怖ければ物音を立てながら歩けば良いだけの事っ!!
言葉どおりドタバタと足音を立てながら、金が堂々とした様子で音の鳴る床を歩いていく。
「随分と根性があるな。だったら俺も負けられねぇ」
邪魔な参加者達を殴り飛ばし、森が音の鳴る床を突き進む。
「何の罠も無いようですね」
安心した様子で床を見つめ、明信がホッとした様子で溜息をつく。
「‥‥単なる脅しでしたか」
床をミシミシと鳴らし、茜が辺りを見回した。
‥‥やはり何も起こらない。
「音が鳴る床って忍者屋敷では当たり前のものなんだよね」
全く怖がる様子もなく、小桃が平然とした顔で床を歩く。
「しかし、見事な鶯張りだな」
そして実篤は床の音を楽しみながら、淡々とした様子で先に進むのだった。
「ご飯いっぱいだ〜!! こーゆーのって怪しそうに見えて、全然怪しくなかったりするんだよね〜」
目の前の料理を全く警戒する事なく、小桃が美味しそうにパクパクと食べていく。
「やっぱり胡瓜は最高だな」
味噌と蜂蜜をつけて胡瓜を食べ、我斬が食事を堪能する。
どれも最高級の食材を使っているためか、全く箸が止まらない。
「物凄く美味しいけど‥‥罠じゃないよね?」
出された料理が美味いため、アークが警戒した様子で箸を止めた。
「全部が罠じゃないって事さ」
刺身や肉などの食べ物を避け、森が料理を食べていく。
「‥‥私は遠慮しておきます」
呆れた様子で周りを見つめ、茜が黙って視線を逸らす。
「でも食べなきゃ失格なんだろ? 何かひとつは食べないとね」
茜が食べるのを待ってから、とき和も料理を食べ始めた。
「あまり食べる気がしませんが‥‥」
目の前の料理を箸で掴み、流香がひとくちだけ食べる。
「タダより怖いものはなしってか。そろそろこっちが疲れてきた所にあからさまに豪華な食事。怪しいって言ってるようなもんだと思うが‥‥」
食べたフリしてコッソリ落とし、久遠が料理をなるべく口にしない。
「キュウリ以外の食べ物には興味無いしあんまり食べないからな。別にこれだけでも問題は無いんだろ?」
美味しそうに胡瓜をかじり、恒弥が余裕の笑みを浮かべる。
「それじゃ、私も胡瓜を食うか。これが一番無難そうだしな」
ポリポリと胡瓜をかじり、デュランが黙って箸をおく。
「本当なら何も口にしたくは無いのですが‥‥」
険しい表情を浮かべながら、明信が胡瓜を一口だけかじる。
「こんなの楽勝だよ♪」
審査員に気づかれないようにして料理の盛られた皿をすり替え、夏岳が空になった皿を掲げてニコリと笑う。
「‥‥ん? これは!? シェフを呼べ!」
くわっと表情を険しくさせ、金が皿を片手に立ち上がる。
しかし料理人は現れず、時間だけが過ぎていく。
「まぁ、座れ。腹が減っては戦が出来ぬというからな。とりあえず喰え」
そんな中、実篤は料理の中に遅効性の毒が仕込まれている事に気づき、クスリと笑って酒を呑むのであった。
「宝箱が無防備に置かれてるなんて絶対怪しいよ!! 周りに落とし穴あったり、宝箱が妖怪だったりするんだから!!」
警戒した様子で宝箱を睨みつけ、小桃が慎重に罠を外していく。
「フフフフフフフフ。全ては予定通りだ‥‥」
不敵な笑みを浮かべながら、デュランが宝箱のトラップを作動させる。
鍵穴から飛び出した針はデュランの眉間に当たり、ふしゅーっと勢いよく血を流す。
「やっぱり罠が仕掛けられているみたいだね。でも‥‥解除する事が出来ない」
箸を使って鍵穴をガチャガチャとやり、夏岳がトラップを発動させ眉間にプスリと針が刺さる。
「‥‥面倒だな。てやっ!」
六角棒でガンガン叩いた宝箱を壊し、森が子忍の巻物を手に入れた。
「鍵はこうやって開けるのですよ」
鍵穴に針金を突っ込み、荊姫が罠を解除する。
「古典的な手だよな」
わざと毒針を飛ばし、久遠が宝箱の鍵を開けた。
「やはりそうか。仕掛けが分かれば簡単だ」
タガーを使って宝箱を抉じ開け、実篤が子忍の巻物を手に入れる。
ここにまで実篤は適切な判断をしてきたため、追加で1ポイントプラスされた。
「ふっ‥‥わしに任せておけ」
待っていましたとばかりに宝箱を睨みつけ、金が力任せに宝箱を殴って壊す。
「考えてみたら、それもありだよな」
宝箱を持ち上げ、我斬が放り投げて破壊する。
「毒針だけならこれもいけますね」
バーストアタックを放ち、流香が宝箱を粉々に砕く。
「ここはお約束」
宝箱の横から後ろに回りこみ、茜が錠前をカチリと外す。
「これで試練も終わりですね。何とか罠は解除しましたが‥‥」
高々と巻物を掲げ、明信がホッと溜息つく。
「一体何処が勝ったんだろ?」
毒針の飛んだ宝箱の鍵を開け、アークが頭の中で計算する。
「どうやら俺達のチームらしいな」
そして森は圧倒的な勝利を収め、みごと子忍の称号を得るのであった。
・結果発表
<青龍衆> 子の欠片を入手
阿武隈森 15 1位
岩倉実篤 5+1 3位
丙荊姫 0 9位
龍深城我斬 −2 11位
総合ポイント 19
<玄武衆>
山浦とき和 8 2位
紫上久遠 2 7位
錬金 1+1 7位
外橋恒弥 −5 14位
総合ポイント 7
<白虎衆>
琴宮茜 5 4位
柊小桃 3 6位
南天流香 −4 13位
総合ポイント 4
<朱雀衆>
三笠明信 5 4位
跳夏岳 0 9位
アーク・ウイング −3 12位
デュラン・ハイアット −5 14位
総合ポイント −3
<各首領のお言葉>
青龍『ふっ‥‥、当然の結果だな』
玄武『次は逆転勝利だぜ!』
白虎『‥‥(あまりのショックで倒れてしまう)』
朱雀『く、くやしぃ〜!』