<清十郎逃亡記>安らぎを求めて

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月13日〜02月16日

リプレイ公開日:2005年02月17日

●オープニング

 清十郎は江戸から少し離れた村の絵師である。
 彼は締め切り近くなると、逃亡する癖があるため、なかなか作品が仕上がらない。
 そのため依頼主は冒険者達の頼る事になるのだが‥‥。

 またもや清十郎が行方不明になっている。
 前回の依頼で何とか借金を返す事が出来たのだが、描きかけの絵を残したまま居なくなってしまったため、絵を依頼した者達がカンカンに怒っているらしい。
 清十郎はいつも行き先を告げずにいなくなり、心当たりのある場所と言ったらキワモノ系の店ばかり。
 ‥‥悪いが俺は行きたくない。
 そこでお前達に清十郎を見つけて来て欲しいんだ。
 もちろん報酬はそれなりに弾む。
 いまのところ怪しいと思われる場所は2ヶ所ある。
 清十郎が居るのはどちらか片方だけなので、もうひとつの場所には偽物が代わりにいるらしい。
 偽物達は清十郎に金で雇われた者達で、笛を吹いてお前達が来た事を知らせるだろう。
 間違ってもバレないようにしてくれよ。

●今回の参加者

 ea0204 鷹見 仁(31歳・♂・パラディン・人間・ジャパン)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2034 狼 蒼華(21歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2319 貴藤 緋狩(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3220 九十九 嵐童(33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea3914 音羽 でり子(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4927 リフィーティア・レリス(29歳・♂・ジプシー・人間・エジプト)
 ea5989 シャクティ・シッダールタ(29歳・♀・僧侶・ジャイアント・インドゥーラ国)
 ea6601 緋月 柚那(21歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea9789 アグリット・バンデス(34歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 ea9956 ボボ・クバレル(45歳・♂・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)
 eb1048 グレン・ハウンドファング(29歳・♂・クレリック・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

「‥‥清十郎か。名前を聞いた事があるような、無いような。新進の美人絵師としてちっとは江戸で名の売れてきた俺よりも有名なのかね、そいつ?」
 資料として取り寄せた清十郎の絵を見つめ、鷹見仁(ea0204)がハッとした様子で思い出す。
「あーあー、いたいた。‥‥っていうか、コイツ。ホ‥‥いや、やめておくか」
 依頼に支障が出ると思ったため、仁が気まずい様子で口をつぐむ。
 清十郎には薔薇模様の噂が漂っており、犠牲になったモデルも少なくない。
「まるでモデルの魂を封じ込めたような絵だな‥‥。この躍動感‥‥決して素人に真似できるものじゃない‥‥」
 感動した様子で清十郎の絵を見つめ、貴藤緋狩(ea2319)が身体を震わせる。
 思った以上に魅了的な絵を描く人物だったため、危うく心を奪われそうになったらしい。
「とりあえずヤツの似顔絵を描いてみた。あんまり似ていないかも知れないが、細かい特徴は掴めているはずだ」
 懐の中から一枚の紙を取り出し、仁が清十郎の似顔絵を緋狩に渡す。
 似顔絵には多少のデュフォルメが入っており、清十郎の特徴が大袈裟に描かれている。
「なるほど。これで人違いをする事もないな」
 清十郎の似顔絵を見つめ、緋狩が納得した様子で微笑んだ。
「そして、ここが清十郎の利用している銭湯だ」
 何か嫌な予感を感じながら、仁が漢の湯に辿り着く。
 漢の湯には何故か女湯がなく、代わりに『攻』と『受』に分かれている。
「さて、広々とした湯船に浸かってひと息つくか。‥‥にしても‥‥何故ここの湯は攻と受に分かれているんだろうな‥‥。こう分けるにしても普通なら攻めと守りになるんじゃないか?」
 困惑した表情を浮かべ、緋狩が銭湯の前で立ち尽くす。
 銭湯の中からは怪しげな雰囲気が漂っており、禁断の世界の入り口を髣髴させている。
「‥‥女好きの俺としちゃあ近寄りたく無い場所っぽいが、俺がそこにいる連中の好みから外れている事を願うしかないな」
 緋狩にむかってお守りを放り投げ、仁がそのまま『攻』の湯に入っていく。
 『攻』の湯は屈強な漢達の溜まり場になっており、みんな堂々としており手拭いで前を隠す者はひとりもいない。
「それにしてもどうして攻なんだろうか? ‥‥ん? これはっ!?」
 『受』の湯に繋がる敷居が妙に低かったため、緋狩が不思議そうな表情を浮かべて覗き込む。
「ここからだと『受』の湯を見下ろせるようになっているのか。‥‥なるほどな」
 漢の湯が存在している真の意味を理解し、仁が頭を抱えて溜息をつく。
「‥‥どうやらここに清十郎はいないようだな」
 持参したどぶろくを口に含み、緋狩が黙って辺りを睨む。
「ああ、似た奴はいるが、ここで声をかけるべきじゃない」
 漢達の身体から発する妙なフェロモンから逃れるようにして、仁が気まずい様子で視線を逸らす。
「そろそろ出るか。俺達が獲物として認識される前に‥‥」
 そして緋狩は親しげに肩を組んできた漢に肘鉄を食らわせ、仁と一緒に漢の湯を出て行くのであった。

「‥‥何か、さっきから娘さんたちがこっち見てカップリングがどーのこーの言ってる様な気がしたんだが‥‥気のせいだな、うん‥‥」
 自分達の顔を見てヒソヒソと噂話をしている町娘に気づき、九十九嵐童(ea3220)が困った様子で汗を流す。
 仁から清十郎の似顔絵を貰ったため、後は『受』の湯に入るだけだが何だか嫌な予感がする。
「何も気にする必要はありませんよ。女性は噂話が好きですからね」
 含みのある海を浮かべながら、瀬戸喪(ea0443)が『受』の湯に入っていく。
 『受』の湯は細身の美少年が多く、喪にまでモーションをかけている。
「‥‥俺は関係ないからな」
 身の危険を感じたため、リフィーティア・レリス(ea4927)が喪とは少し距離を置く。
「ここで彼らに話しかけたら、別の意味に取られそうだな」
 男同士のカップルに気づき、嵐童が気まずい様子で咳をする。
 どうやら似顔絵があるおかげで命拾いしたようだ。
「この敷居のむこうが『攻』の湯のようですね」
 敷居を見上げて漢と目が合い、喪が色々な意味で納得した。
「だからおかしなヤツがいたのか。やっぱり自分の身は時分で守らないとな」
 いきなり抱きついてきた漢に急所攻撃を浴びせ、レリスが警戒した様子で辺りを睨む。
 ほとんどの漢達は興奮状態にあるため、油断しているとトンでもない事に遭いそうだ。
「ここにも清十郎はいないようだな。残るはハッテン寿司のみか」
 近寄ってきた漢にスタンアタックを放ち、嵐童が疲れた様子で溜息をつく
「もう帰るんですか? ‥‥残念ですね。せっかくいいペットを見つけたのに‥‥」
 気弱な少年をロープで縛り、喪が残念そうな表情を浮かべる。
「おまえなぁ‥‥。そういう問題じゃないだろ。‥‥って、縛られている奴も喜んでるし‥‥」
 そしてレリスは溜息をつくと、頭を抱えて呟いた。

「多分、ここに清十郎兄ちゃんがいると思う‥‥」
 仁から貰った清十郎の似顔絵を握り締め、狼蒼華(ea2034)がハッテン寿司の前に立つ。
 ハッテン寿司はガタイのいい漢達が寿司を握っており、店内からは怪しげな香の香りが漂っている。
「‥‥あの野郎。また懲りずに、逃げ出しちまったのか‥‥。あーもう、面倒くせぇなぁ。‥‥ったく。にしても‥‥嫌な予感しかしねぇのはなんでだ?」
 深々とローブを被ってフェイスガートで変装し、アグリット・バンデス(ea9789)がなかなか店の入る事が出来ずに冷や汗を流す。
 その名の通りハッテン寿司は漢達の出会う場所であり、新しい世界の入り口としても知られている。
「‥‥逃亡か。まぁ‥‥人の事は言えないけど、依頼じゃしな」
 何気に視線を逸らしながら、緋月柚那(ea6601)が乾いた笑いを響かせた。
 色々な意味で気まずい雰囲気が漂っているが、このまま店の前に立っていても清十郎は見つからない。
「とにかく店に‥‥あぽっ」
 入り口でごちんと頭をぶつけ、ボボ・クバレル(ea9956)がその場に蹲る。
「へいらっしゃい!」
 汗臭いニオイとともにハッテン寿司の主人がボボ達を出迎え、寿司を握る職人が大声で次々と『ハッテン、ハッテン』と叫んでいく。
「‥‥何か嫌な予感がするんだが、ま、まぁきっと気のせいだろ! 大人しく寿司を食って奴を探さねぇとな‥‥」
 寿司職人にウインクされ、アグリットが気づかないフリをして席に座る。
「しかし寿司職人を見る限り、ここはマッチョ系のハッテン場なんじゃないのか。やけにカップルの姿があるし‥‥。あっちの奴なんか‥‥うお‥‥妙なモノを見ちまった‥‥」
 寿司屋の中を見回し青ざめた表情を浮かべ、グレン・ハウンドファング(eb1048)が壁に手をつき涙を流す。
「‥‥はあ、なんと申しましょうか。殿方の友愛には、様々な形があるのですね‥‥う〜ん」
 事前に色々と話を聞いていたため、シャクティ・シッダールタ(ea5989)が複雑な心境に陥り溜息をつく。
 ほとんどの客は寿司より別なものに興味があるため、ある程度の免疫がなければそのまま帰りたくなる光景だ。
「明らかに柚那の来る場所とは違うようじゃな」
 寿司職人達に睨まれてしまったため、柚那が気まずい様子で後ろに下がる。
「かの妖気漂う‥‥ああ、何でしょう、わたくしを見る板前殿の視線に殺意が。‥‥実は女人禁制。などという事はございませんよ‥‥ねェ?」
 心配した様子で仲間にむかって声をかけ、シャクティが困った様子で汗を流す。
 何とかして警戒を解くため『清十郎様の描く絵の大ファン』を名乗ったが、余計に怪しまれてしまったようだ。
「とりあえずカッパ巻きを‥‥」
 気まずい空気の漂う中、ボボが河童巻きを頼む。
 それと同時に寿司職人がニヤリと笑い、『ハッテンハッテン』と叫びながら、河童巻きを完成させる。
「しかーし‥‥この店の雰囲気は異常だぜ、もし何かヤられそうになったら‥‥即逃げだな」
 だんだんお客達が席を詰めて来たため、アグリットが滝のような汗をダラダラ流す。
 なるべく気づかないフリをしていたが、それが逆効果だったようである。
「‥‥次に海老にマグロにタイを」
 まったく動揺した様子もなく、ボボが寿司を口の中へと放り込む。
 職人達の握る寿司はほんのりと薔薇の香りがしており、食べ続けていると何だか複雑な気持ちになってくる。
「早く清十郎を見つけて店を出るぞ」
 ボボの耳元で囁きながら、グレンが呆れた様子で溜息をつく。
「でも、清十郎兄ちゃんはい、いたっ!」
 カウンターで寿司を頬張っていた清十郎を見つけ、蒼華が驚いた様子で彼の事を指差した。
 清十郎は蒼華達に気づくと、むりやり寿司を口の中へ放り込み、勘定を払って逃げ道を探す。
「一体、何処に行くつもりなのじゃ? 親父! 彼のツケで特上マグロをよろしくなのじゃ! ただしサビ抜きで」
 清十郎に袖を掴み、柚那が寿司を注文する。
「こ、こら! 俺は帰るんだぞ!」
 慌てた様子で首を振り、清十郎が裏口へと逃げていく。
「聞けば毎度の騒ぎ‥‥。絵師としての腕も大切ですが、一人の大人としての責任と自覚を持ちなさい!」
 次第に清十郎との距離を縮め、シャクティが厳しく彼を叱る。
「ご、誤解だ! ちょっと厠に‥‥」
 必死で言い訳を考えながら、清十郎がキョロキョロと辺りを見回した。
「何処に行くつもりだ? それとも私のような男には興味がないかな?」
 両手を広げて微笑みながら、グレンが清十郎の逃げ道を塞ぐ。
「いや、そうじゃなくて‥‥」
 やけに後ろを気にしつつ、清十郎が足踏みする。
「ふらいんぐぼでぃーあたーく」
 それと同時にボボがムックリと立ち上がり、技の名前を叫びながら宙を舞って体当たりを食らわせた。
「ぽー」
 清十郎が確実に気絶した事を確認し、ボボが拳を上げて勝利の雄たけびを上げる。
「あれ? 清十郎兄ちゃんは気絶しちゃったのか。せっかく絵を見てもらおうと思ったのになぁ」
 自分の描いた絵を取り出し、蒼華が困った様子で汗を流す。
 清十郎はグレンによって縛られ、そのまま店の外へと運ばれる。
 これから数日間。
 締切地獄を味わうため‥‥。