銭貸島

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:7〜13lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 55 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月30日〜12月05日

リプレイ公開日:2005年12月06日

●オープニング

 清十郎という名の男がいる。
 彼は多額の借金を負ったため、今まで島流しにされていたのだが、その島で行われている惨状を目の当たりにして、江戸まで助けを求めに来たらしい。
 清十郎が島流しにされた場所は、江戸の借金取りが所有している島だ。
 この島では借金が返せなくなった者達を鉱山で働かせ、借金を完済する事が出来た者だけ島から出る事を許される。
 まぁ、ほとんどの者達は借金が返せず死ぬか、島で病気にかかって死ぬかのどちらかだが‥‥。
 もちろん、簡単に返せるだけの借金なら島流しにされる事もない。
 島には法の手も届かないから、酷い目にも遭わされているだろう。
 例え別の理由があったとしても‥‥。
 しかし、清十郎の話ではそれだけではないようだ。
 借金取りの連中が、鉱山で手に入れた金を使って偽金作りをしているらしい。
 仮にそれが事実なら、このまま放っておくわけには行かなくなる。
 ‥‥そこで奴らの島を極秘で調査して欲しい。
 あの島にはあちこちに見張りが立っている。
 途中で誰かに見つかれば、お前達の命もないだろう。
 そこで清十郎が逃亡時に着ていたものと同じものを用意した。
 これがあれば鉱山の中に入り込むのも容易だろう。
 あとは鉱山の中で偽金を作っている証拠を掴むだけだ。
 大変に困難な依頼だが、何とか証拠を掴んでくれ。

●今回の参加者

 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0489 伊達 正和(35歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2794 六道寺 鋼丸(38歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea3809 山浦 とき和(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4927 リフィーティア・レリス(29歳・♂・ジプシー・人間・エジプト)
 eb1415 一條 北嵩(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb1555 所所楽 林檎(30歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●銭貸島
「頼まれていた酒をたんまり持ってきたぜ。新入りだがよろしく頼む!」
 渡し舟に乗って銭貸島に辿り着き、伊達正和(ea0489)がゴロツキ達にどぶろくを手渡した。
「‥‥そっちにいるのは罪人か? 悪いが身体検査をさせてもらう」
 険しい表情を浮かべながら、ゴロツキ達が舟に乗り込んでいた冒険者達の身体を触る。
「おいおい、カタイ事は言いっこなしだぜ! これで多少の事は目を瞑ってくれ!」
 ゴロツキ達の肩を抱き、正和がニヤリと笑う。
「‥‥いや。最近、何かと物騒でな。面倒だとは思うが、勘弁してくれ」
 清十郎が逃亡した事でゴロツキ達は警戒しており、必要以上に正和達の身体をペタペタ触る。
「おっと‥‥、これは何だ? 罪人の割には物騒なモノを持っているな」
 一條北嵩(eb1415)の懐から柊の小柄を見つけ出し、ゴロツキがいやらしい笑みを浮かべて彼を睨む。
「‥‥親の形見って言うんでね。情けで持たせてやったんだよ。すまなかったねぇ」
 わざとガラの悪い態度で接し、山浦とき和(ea3809)がゴロツキ達を威嚇した。
「何だ、テメエは? ふざけた事を言っていると、そんなクチが叩けねえようにしてやるぞ!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、ゴロツキがとき和の胸倉を掴む。
「やめろ! ‥‥彼女は御頭の女だぞ。そんな事を言ってタダで済むと思っているんじゃないだろうな!」
 険悪なムードになったため、正和が咄嗟に嘘をつく。
「お、御頭の女‥‥。す、すみませんでしたっ! そうとは知らず大変なご無礼を‥‥。えっと、これもお返ししやす。‥‥ですから、この事は穏便に‥‥」
 途端にゴロツキ達の表情が青くなり、慌てて彼女に土下座をする。
「さあてねぇ‥‥、態度によっちゃ考えてやってもいいが、あたいのこんな口を叩いちまったんだからねぇ‥‥。このまま見逃したら御頭がなんていうか‥‥」
 勝ち誇った様子で笑みを浮かべ、とき和がえっへんと腰に手を当てる。
「うへええええ! そこを何とかっ! お願いしやすっ!」
 地面に何度も頭を擦りつけ、ゴロツキが必死になって謝った。
「だったら早く荷物を運びな! 使えない奴らだねぇ!」
 わざと大声を出した後、とき和がクスクスと笑う。
「‥‥おい。ちょっと、やり過ぎじゃないか」
 心配した様子で彼女に近づき、正和が気まずくツッコミを入れる。
「だって、こんな事‥‥。滅多に出来ないでしょ。ちょっと‥‥、癖になるかも」
 苦笑いを浮かべながら、とき和がぺろっと舌を出す。
「でも、とき和さんのおかげで、僕達の身体検査はしないつもりみたいだね。何だか物凄く怯えているし‥‥」
 罪人として銭貸島に降り立ち、六道寺鋼丸(ea2794)がクスリと笑う。
 念のため両手を縄で縛られているが、簡単に外せるようになっているため、もしもの場合はすぐに動けるようになっている。
「そりゃあ、そうだろ。御頭の女って言ってあるからな。これでしばらく時間は稼げるはずだ」
 深々とお辞儀をしているゴロツキ達の横を通り過ぎ、正和が樽の積まれた荷車を引いて食料庫にむかう。
 留守番役として舟に、とき和をひとり残して‥‥。

●食料庫
「もう大丈夫ですよ、皆さん」
 樽の中に入ったままデティクトライフフォースを使い、所所楽林檎(eb1555)が仲間達にむかって声をかけた。
 林檎達の入った樽は食料庫に運ばれており、正和が入り口を見張っている。
「ふぅ‥‥、ようやく外に出られるようですね。一時はどうなるかと思っていましたが‥‥」
 樽の中から顔をゆっくりと出し、瀬戸喪(ea0443)がホッとした様子で溜息をつく。
 食料庫は埃まみれになっており、まったく掃除がされていない。
 そのかわり酒樽の置かれた場所は小奇麗で、ゴロツキ達が普段から酒浸りなのがよく分かる。
「まぁ、いいんじゃないか。無事にここまで来れたんだし‥‥」
 鬼神ノ小柄を懐の中にしまい、リフィーティア・レリス(ea4927)が辺りを睨む。
 食料庫を放火する事でゴロツキ達の注意が逸らせるはずなので、山のように積まれた藁の近くで火打石をカチカチさせた。
「どうせ火をつけるなら、食料庫を出てからにしてくださいね。僕達まで丸焼きにされたら困りますし‥‥」
 冗談まじりに微笑みながら、喪が愛用の鞭を懐にしまう。
「‥‥しゃあねえなぁ。それじゃ、別の作戦を考えておくか」
 面倒臭そうな表情を浮かべ、レリスが火のついた藁を踏む。
「それにしても、この服‥‥。妙な臭いがしているな。まさか清十郎の服じゃ‥‥」
 囚人服の臭いを嗅ぎながら、北嵩がダラリと汗を流す。
 ‥‥何だか嫌な予感がする。
 まるで清十郎に抱かれているような気分‥‥。
「忘れましょう。多分、その予感は当たっていますから‥‥」
 自分達の入っていた空樽を奥まで運び、林檎が手前にある酒樽の中に眠り薬を入れておく。
 ‥‥作戦の決行は深夜。
 ゴロツキ達の酒盛りが始まった頃だ。

●鉱山
「お勤めご苦労。そろそろ交代の時間だ、兄弟。こいつでも飲んで、ゆっくりするといい」
 鉱山の入り口に立っているゴロツキ達の肩を抱き、正和が睡眠薬入りの酒を渡す。
 とき和が御頭の女であるという噂が流れていたため、正和達はほとんど怪しまれる事なく、鉱山の中へと入っていった。
「どうやら‥‥、うまく行きそうだね。早く清十郎を逃がしてくれた人達と合流しよう」
 辺りの様子を確認しながら、鋼丸が松明の明かりを頼りに進んでいく。
「‥‥残念だが、それは不可能だ」
 鋼丸の肩を叩いた後、正和が残念そうに首を振る。
「それじゃ、まさか‥‥」
 ハッとした表情を浮かべ、鋼丸が正和をジロリと睨む。
「ああ、見せしめに殺されてしまったらしい」
 小さくコクンと頷き、正和が気まずく視線を逸らす。
「とにかく偽金の証拠を掴もうぜ。このままじゃ、死んでいった奴らは犬死だしな」
 偽金作りの証拠を掴むため、北嵩が忍び歩きで辺りを睨む。
 鉱山の奥では見張りのゴロツキ達が酒盛りをしており、何も知らずにゲラゲラと笑っている。
「‥‥どうしますか? このまま不意打ちを仕掛ける事も出来ますが、騒ぎになったら面倒ですよ‥‥」
 ゆっくりと鞭を握り締めながら、喪が妖しくニヤリと笑う。
「あたしが囮になりましょうか? 鉱山に女の身で向かうこと自体が異端でしょうから、充分目を引くとは思いますけど‥‥」
 自分が囮になる事を提案し、林檎がゴロツキ達の前に出ようとした。
「いや、そんな事をしたら林檎さんがどんな目に遭わされるか分からない。もう少しだけ様子を見た方がいいんじゃないのかな?」
 すぐさま林檎の肩を掴み、北嵩が黙って首を横に振る。
「か、火事だあああああ!
 それと同時に慌てた様子でレリスが現れ、食料庫が放火された事を叫びながら奥の方へと走っていく。
「なんだ、テメェは?」
 不機嫌な表情を浮かべ、ゴロツキ達がレリスを囲む。
「や、役人が島に乗り込んで来て、食料庫に火をつけられちまったんだ! ここも危ねぇ! 早くここから逃げるんだっ!」
 必死に外を指差しながら、レリスが身体を震わせる。
「な、何だとっ!? わざわざ知らせてくれて、すまねぇな。それじゃ、お前も死ぬんじゃねえぞ!」
 レリスの演技にすっかり騙され、ゴロツキ達が慌てた様子で逃げていく。
「‥‥行ったか。俺の演技もそんなに悪くはなかっただろ? いまのうちに証拠を見つけ出さないと‥‥」
 ホッとした表情を浮かべ、レリスが偽金の証拠を掴むため、ひとりで鉱山の奥にむかう。
「で、でも、このままじゃ、とき和さんが‥‥」
 気まずい様子で汗を流し、鋼丸がとき和の事を心配する。
「船なら島の反対側に回してある。すぐに見つかる事はないだろう。それよりも早く証拠を手に入れる方が先だ」
 仲間達の事を急かしながら、レリスが鉱山の奥に辿り着く。
 鉱山の奥では男達が偽金作りをしており、レリス達の姿に気づくと驚いた様子で騒ぎ立てる。
「この島は役人達によって制圧された。大人しく偽金の原版を渡すのなら、お前達の減刑も考えてやろう」
 あまり時間がなかったため、正和が思い切ってハッタリをかます。
 男達はお互いの顔を見合わせた後、諦めた様子で道具持っていた道具を放り投げ、正和に偽金の原版を手渡した。
「‥‥俺の演技もそんな悪くはなかっただろ?」
 そう言って正和がニヤリと笑い、原版を抱えたまま仲間達を連れて鉱山を脱出した‥‥。

 その後、正和達が持ち帰った原版によって、銭貸島で行われていた偽金作りが明らかになり、役人達の手によって金貸しをしていた男達が捕らえられ、強制労働させられていた男達もようやく自由を得るのであった。