帰ってきた清十郎

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:4〜8lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:11人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月21日〜11月26日

リプレイ公開日:2005年11月22日

●オープニング

 帰ってきたのじゃ!
 懐かしの江戸にっ!
 愛しの我が家にっ!
 ‥‥思い起こせば1ヶ月前。
 わしは‥‥冒険者達の策略にはまり、無実の罪(自業自得‥‥主に借金)をきせられたのじゃ‥‥。
 しかし‥‥!
 天は‥‥わしを見捨てなかった‥‥!
 仲間達の協力によって、わしは脱出する事が出来たのじゃ!
 ヤツらの船に乗り込んでっ!
 あヤツら(注:借金取り)め‥‥、わしを酷い目を遭わせた罰を与えてやらんと駄目なようじゃな。
 あの島で何が行われているのか、ひとつ残らず世間に公表してやるのじゃ!
 例え借金を返せたとしても、島から逃げ出す事の出来ない現状を!

「‥‥清十郎が江戸に帰ってきているらしいわね。港じゃ、その話で持ちきりよ。そのせいかガラの悪い連中が彼の事を探しているわ。彼が何処にいるのか‥‥、分からない。だけど早く助けてあげないと、彼の命に関わるわ。そこでみんなに彼を探して欲しいの。ガラの悪い連中に捕まる前に‥‥」
 そう言って於通がペコリと頭を下げた。

●今回の参加者

 ea0042 デュラン・ハイアット(33歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0489 伊達 正和(35歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea0957 リュカ・リィズ(27歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 ea2605 シュテファーニ・ベルンシュタイン(19歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea3891 山本 建一(38歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea5708 クリス・ウェルロッド(31歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb1415 一條 北嵩(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb1555 所所楽 林檎(30歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb3021 大鳥 春妃(26歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●ミンメイ堂
「‥‥清十郎も苦労しているのだなあ。自業自得ではあるのだがね。しかし、自分の生きたい様に生きている彼の生き方は敬意に値するよ」
 清十郎に行方を探るため、デュラン・ハイアット(ea0042)がミンメイ堂にやって来た。
 ミンメイ堂はごるびーのおかげで繁盛しており、バイトで雇われている少女がテュラン達を席まで案内する。
「まさか清十郎が最後に目撃された場所が、ミンメイ堂だったとは‥‥」
 ミンメイ堂の暖簾を潜り、山本建一(ea3891)が席に座って水を飲む。
 清十郎は借金を返済する事が出来なかったため、借金取りに使って島流しにされていたのだが、何らかの方法を使って江戸に戻って来たらしく、ガラの悪い連中に命を狙われている。
「ミンメイ、景気はどうだ? 金を落としに来てやったぞ」
 ミンメイを読んで一番高い鍋を注文し、デュランが冗談まじりに微笑んだ。
「ま、毎度ありッスある〜」
 愛想笑いを浮かべた後、ミンメイがテーブルにペタンと突っ伏した。
「な、何か遭ったんですか?」
 心配した様子でミンメイを見つめ、健一がダラリと汗を流す。
 ミンメイの素振りがあからさまに怪しいため、何かトラブルが遭った事は間違いない。
「じ、実は‥‥妙な連中が店を荒らしに来たアルよっ! 『大人しく清十郎を出しやがれ。隠していると痛い目に遭うぞ』って‥‥。幸いウチには用心棒がいるアルから、それほど酷い事にはならなかったアルが‥‥。連日のようにゴロツキ達がやって来るから、ちょっぴり寝不足‥‥アル‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、ミンメイがふらりと立ち上がる。
 よほどストレスになっているのか、髪の毛がボサボサでまったく手入れがされていない。
「‥‥大変な事になっていたんだな。それじゃ、あれから清十郎は来ていないって事か?」
 険しい表情を浮かべて腕を組み、デュランがゆっくりと店内を見回した。
「も、もちろん‥‥アル。確かにご飯は御馳走したアルが、あれ以来まったく見ていないアルよ。ほ、本当アル!」
 今にも泣きそうな表情を浮かべ、ミンメイがデュランの腕を掴む。
「落ち着け! 別に疑っているわけじゃない。ただ‥‥、確認したかっただけだ」
 慌てるミンメイを落ち着かせ、デュランが席に座る。
「どうやら本当のようですね。ここで嘘をついても意味がありませんし‥‥」
 ミンメイの表情を見た後、健一がボソリと呟いた。
「それじゃ、清十郎がここに来た時の事を話してくれるか?」
 清十郎の情報を得るため、デュランが別の話題に変える。
「はいアル! ‥‥あれは土砂降りの雨が降る晩の事だったアル。濡れ鼠のようになった清十郎がミンメイ堂に転がり込んできたアル。一言‥‥、水をくれと呟いて‥‥」
 満面の笑みを浮かべながら、ミンメイが清十郎に会った時の事を語っていく。
 ところどころ大袈裟に描写しているようだが、ミンメイが嘘をついている様子はない。
「だからワタシは水と御飯を上げたアル。清十郎はかなり弱っていたから‥‥、危ないと思って‥‥。そして次の日‥‥、清十郎が勝手に出て行ったアル。こんな書き置きを残して‥‥」
 懐から手紙を取り出し、ミンメイがションボリとする。
「‥‥書き置きですか。彼らしくありませんね。それだけ重要な情報を握っていたと言う事でしょうか?」
 ミンメイから手紙を受け取り、健一が腕を組んで考え込む。
 清十郎の残した手紙‥‥。
 そこには大きな文字で、こう‥‥書かれていた。
『お前には迷惑を掛けられない。わしにはやるべき事がある』
 ‥‥と力強く。

●恋人宅
「‥‥あんなに心配してくださっている於通様に、これ以上心配をかけるだなんて‥‥。悪い方に連れて行かれてしまっては、於通様のご心労が察されますわ」
 心配した様子で辺りを見つめ、大鳥春妃(eb3021)が清十郎の行方を捜す。
 残念ながら清十郎に関しての情報は乏しく、江戸にいるかどうかも分からない。
「‥‥いるとしたら、やっぱり恋人の家じゃないのか? 俺だったら好きな人の顔を真っ先に見たいと思うし‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、一條北嵩(eb1415)が清十郎の恋人宅にむかって歩き出す。
 清十郎が島流しになってから、毎日のように恋人が港に来ていたが、数日ほど前から彼の姿が見えないため、何らかの事件に巻き込まれて可能性が高い。
「そう言えば一條さんには恋人や、お好きな方等が居られるのですか?」
 北嵩の袖をクイッと引き、所所楽林檎(eb1555)が口を開く。
「いや、別に好きな人はいないよ。もちろん、恋人も‥‥。ひょっとして林檎さんは居るの?」
 驚いた様子で林檎を見つめ、北嵩がボソリと呟いた。
「‥‥あたし、ですか? いませんけど‥‥一條さんは、供に居易い、とは思います。だけど‥‥前例がないので、よく、分かりません‥‥」
 恥ずかしそうに頬を染め、林檎が困った様子で視線を逸らす。
「ははは、何を困ってるんだよ〜林檎さんが先に質問したんだろ?」
 林檎の肩をぽふりと叩き、北嵩がニコリと微笑んだ。
「ねえねえ、何だか様子がおかしくない?」
 何者かの気配に気づき、リュカ・リィズ(ea0957)が慌てて身を隠す。
 一見すると清十郎の恋人宅は留守のような雰囲気だが、辺りには妙な殺気が漂っており何者かが隠れている可能性が高い。
「‥‥もしかすると清十郎さんかも知れませんね。‥‥自行自得の行いを反省する前に戻って来られるとは思ってはいなかったです、まとりょーしかさんとの楽しい暮らしを邪魔されたく有りませんし‥‥」
 必勝鉢巻をギュッと締め、ルーラス・エルミナス(ea0282)が気合を入れる。
「いや‥‥、清十郎は漢を押し倒す事があっても、殺気を漂わす事はない。‥‥となると、答えはひとつだ‥‥」
 恋人宅をジロリと睨み、北嵩がダラリと汗を流す。
 ‥‥嫌な予感が脳裏を過ぎる。
「よほど悪い事をしたようですね」
 呆れた様子で溜息をつきながら、林檎がデティクトライフフォースを発動させた。
 分かるだけでも、家の中に3人‥‥、まわりに6人‥‥、物陰に4人の気配がある。
「わたくし、荒事は向きませんの。申し訳ありませんが、皆様にお任せしても宜しいでしょうか?」
 戦闘になる可能性が高かったため、春妃がペコリと頭を下げて安全な場所まで避難した。
「ううっ、この視線‥‥、何とかなりませんかねぇ‥‥。むちゃくちゃ殺気立っているので、隠れていてもバレバレなんですが‥‥」
 辺りの様子を気にしながら、リュカがダラリと汗を流す。
 この様子では清十郎が捕まっていない可能性が高いため、恋人宅に潜んでいる気配は借金取りの関係者である可能性が高い。
「だからと言って、このまま帰るわけには行きませんしね。ひとりになってから夜道で襲われてもシャレになりませんし‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、ルーラスが恋人宅の戸を開けた。
「どおりゃあああああああああああああ! かかれえええええええええええい!」
 それと同時にゴロツキ達が現われ、一斉にルーラス達を取り押さえようとする。
「ええいっ! 鬱陶しいっ!」
 ゴロツキの顔面をボコッと殴り、北嵩が面倒臭そうに溜息をつく。
「お、お前ら、コイツが‥‥うごっ」
 清十郎の恋人を人質にしようとして大声を出し、ゴロツキが話している途中でポカンと頭を殴られる。
「‥‥自業自得ですわ」
 刃を収めたままの小柄をしまい、春妃がクスクスと笑う。
「た、助かった‥‥」
 ホッとした表情を浮かべ、清十郎の恋人が意識を失った。
(「‥‥あれ? 前に会った恋人と違うような気が‥‥。いや、これは言わないでおくか。色々な意味で面倒な事になりそうだし‥‥」)
 気まずい様子で視線を逸らし、北嵩がゴロツキ達をブン殴る。
「お、覚えてろ!」
 お約束の捨て台詞を残し、ゴロツキ達が逃げて行く。
「逃げて‥‥しまいましたね‥‥。‥‥大丈夫ですか?」
 北嵩の拳が傷ついていたため、林檎が自分の服を切り裂き拳に巻いた。
「わ、悪いな。‥‥ありがとう」
 林檎にお礼を言った後、恥ずかしそうに頬を掻く。
「それにしても清十郎は何処に行ったんでしょうね? あとは自宅しかありませんが‥‥」
 清十郎が恋人宅に来た形跡がないため、ルーラスが困った様子で腕を組む。
「とにかく医者を呼んできます!」
 心配した表情を浮かべながら、リュカが医者を呼びに行く。
 清十郎の事も気になるが、今は彼の恋人を助ける方が先決である。

●清十郎
「‥‥大人しく強制労働していればいいものを、わざわざ帰ってくるなんて本当に懲りない人ですよね。まあ何もかも自業自得ですけど‥‥。こんな目にあっていながら、何も改めようとしないのも、人としてどうかと思いますけどね。本当にどうしようもないです。せめて於通さんに迷惑をかけないようにしておかないと‥‥」
 ブツブツと愚痴をこぼしながら、瀬戸喪(ea0443)が清十郎の家にむかう。
 家のまわりには胡散臭い行商人や、怪しげな屋台が置かれているため、色々な意味でツッコミどころが満載だ。
「さて‥‥久しぶりになってしまったね。於通嬢の依頼を受けるのは‥‥。私とした事が‥‥すっかり忘れてましたよ。清十郎の描いた『於通嬢』の絵を回収しなければならない事を‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、クリス・ウェルロッド(ea5708)が清十郎の家に入っていく。
 それと同時にゴロツキ達が飛び掛り、あっという間にふっ飛ばされる。
「‥‥甘いですね。私を止めようと思うのなら、もう少しプロの方を連れてこないと‥‥。こんな雑魚が何十人かかって来ようが、私に触れる事すら出来ないでしょう‥‥」
 ムーンアローを放った後、クリスが伊達正和(ea0489)と背中合わせになってニヤリと笑う。
「もちろん、僕の事も忘れずに‥‥」
 爽やかな笑みを浮かべながら、喪がゴロツキめがけて勢いよく鞭を振り下ろす。
「‥‥楽勝だったな。まぁ、この程度の相手で苦戦していたら、冒険者なんてやっていられないが‥‥。だが、困ったな。清十郎が何処にもいないぞ。これじゃ、事件が振り出しに戻っただけだ」
 念のためゴロツキ達を縛りあげ、正和が疲れた様子で溜息をつく。
 清十郎の家にはゴロツキ達が張り込んでいたため、彼が家に帰っていない可能性が高い。
「まぁ、於通殿の絵が回収できたから、良しとしましょう。清十郎なら、そのうち江戸湾で見つかるかも知れませんし‥‥」
 ようやく於通の絵を回収し、クリスがいきなり物騒な事を言う。
「何だか‥‥臭いませんか。ドブネズミのようなスエタ臭いが‥‥」
 クンクンと鼻をヒクつかせ、喪が辺りを見回した。
「そう言えば‥‥そうだな。この臭い‥‥、何処かで嗅いだ事がある‥‥。ま、まさか!?」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、正和が畳を上げて軒下を覗く。
 そこには清十郎が眠っており、空ろな表情を浮かべて、身体をカクカクと震わせている。
「‥‥なるほど。話が見えました」
 清十郎の服装が小奇麗になっている事に気づき、クリスが納得した様子でニヤリと笑う。
「於通殿に会うため、清十郎は自宅に戻っていたのです。島流しにされている間は、ずっと罪人の格好だったはずですからね。そのままの格好で於通殿に会おうとしても、門前払いされるのがオチです。しかし、ここで予想外の出来事が起きました。それはゴロツキ達がここに来た事です‥‥。清十郎も必死だったのでしょう。慌てて畳の下に隠れて、そのままです。ゴロツキ達は清十郎の帰りを待っていましたからね。彼が現われない限り、ここから離れる事はありませんし‥‥」
 グッタリとした表情を浮かべる清十郎の顔を見つめ、クリスがなむなむと両手を合わせた後に畳を元に戻そうとする。
「や、止めるのじゃ! わしはまだ生きておる! なんじゃ、そのクサイ物には蓋をしろ的な考え方は! 確かにわしは臭いがあんまりじゃ‥‥はにゃら‥‥」
 いきなりクリスを怒鳴りつけ、清十郎がグルグルと目を回す。
 よほど腹が空いているのか、口から魂が抜けている。
「とりあえず彼を於通殿の所まで運びましょう。何が起こるか分かりませんが、ここにいるよりは安全でしょう。‥‥多分」
 清十郎を簀巻きにした後、喪が正和と協力して荷車に乗せた。
 色々な意味で彼に引導を渡すため‥‥。