新天地

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月18日〜09月21日

リプレイ公開日:2005年09月22日

●オープニング

<<前回のまでのあらすじ>>
 再び禿げたごるびーのストレスを発散させるため、見世物小屋の主人から勧められた温泉旅行。
 そこで冒険者達は温泉を骨の髄まで堪能し、最高の料理に舌鼓を打っていた。
 見世物小屋の主人が夜逃げしたと知るまでは‥‥。

 かつて見世物小屋と呼ばれた場所がある。
 取立て屋達の破壊活動によって廃屋と化した小屋。
 ごるびーの部屋だった場所は雨風に曝され、一緒に仕事をしていた動物達の消息も分かっていない。
 唯一の救いだったのは、恋人のそれんと一緒に入れた事。
 現在、それんは知り合いの冒険者に預けられ、ごるびーの帰りを待っている。

 ‥‥どうしよう。

 小さな脳みそをフル回転させて考えた。
 一応、アテはある。
 ある意味、命懸けになるかも知れないが‥‥。

 ひとりめは於通。
 彼女は見世物小屋でごるびーの演技を見てファンになり、『立派なお腹ね。これなら良い猫皮になりそうだわ』と褒めてくれた。
 ‥‥意味はよく分からない。
 多分、猫と勘違いしているのだろう。
 彼女なら飼ってくれるかも知れない。

 ふたりめは清十郎。
 彼は散歩中にごるびーと出会い、『美味そうな肉じゃのう。今夜はご馳走じゃ!』と褒めてくれた。
 ‥‥何かをご馳走してくれるらしい。
 しかし、見世物小屋の主人が駆けつけ、清十郎に飛び蹴りを食らわせたため、ご馳走を食べる事は出来なくなった。
 ‥‥彼なら飼ってくれるかも。

 そして最後はミンメイだ。
 ‥‥彼女とは戦った事がある。
 ある意味ライバル関係にあるのだが、この際なので文句は言えない。
 ただひとつ問題があるとしたら‥‥。
 彼女が貧乏だという事だ。
 色々な意味で身の危険を感じているのは‥‥気のせいではないはずだ。

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0567 本所 銕三郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2722 琴宮 茜(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3741 レオーネ・アズリアエル(37歳・♀・侍・人間・エジプト)
 ea3899 馬場 奈津(70歳・♀・志士・パラ・ジャパン)
 ea4141 鷹波 穂狼(36歳・♀・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea5062 神楽 聖歌(30歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea5557 志乃守 乱雪(39歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb1415 一條 北嵩(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●ごるびー
「しふしふですよ〜☆ はやや? ごるび〜ちゃんどうしたですか?」
 ボロを纏った現れたごるびーに驚き、ベル・ベル(ea0946)が悲鳴をあげて飛び上がる。
 見世物小屋の主人が夜逃げしてしまったため、ごるびーは帰る場所がなくなってしまい、とある冒険者の家に厄介になっているようだ。
「いやあ、こー言う展開になるとは露ほども思わなかったなあ、はっはっは‥‥。むう、どーしたもんかね?」
 乾いた笑いを響かせながら、龍深城我斬(ea0031)が汗を流す。
 このまま冒険者の家に厄介になっているわけにもいかないため、ごるびーの棲む場所を探す必要がある。
「噂に聞いてきたんだが、どうやら凄い事になっているな! その様子じゃ、しばらくマトモなモンも食ってねえのか?」
 ごるびーの背中をポンポンと叩き、鷹波穂狼(ea4141)が豪快に笑う。
 さすがに食事まで御馳走になるわけには行かないため、それんの食べる物だけ恵んでもらいに街を行き来していたらしい。
「温泉旅行から戻ってみたら‥‥、一難去ってまた一難だな、ごるびー」
 ごるびーの禿げ頭をヨシヨシと撫で、一條北嵩(eb1415)の動きがピタリと止まる。
 度重なるストレスのせいか、ごるびーの頭は撫でれば撫でるほど、ボロボロと毛が抜けていく。
「うわっ、ごるびー! そこまで苦労していたのか!? こ、今度、かつらを買ってやるからな! い、いまは堪えてくれ!」
 豪快な抜けっぷりに驚きながら、北嵩がダラダラと汗を流す。
 迂闊に触ると毛が抜けてしまうため、なるべくごるびーの頭には触れないようにしようと心に誓う。
「そう言えば池のほとりにあったお前の小屋はどうしたんだ? あそこならそれんと二匹で暮らせるだろ。それともまさか‥‥引き払ったのか?」
 本所銕三郎(ea0567)の言葉に、ごるびーが気まずく視線を逸らす。
 どうやら草が生えて酷い有様だったらしい。
「それにまとりょーしかと、えりつぃんはどうした? あいつらだって棲む場所が無いんだろ?」
 銕三郎の問いに、ごるびーが身振り手振りで答えを返す。
「ごるびー君が帰った頃には、誰の姿もなかったようです。借金のカタに取られたか、野性に帰ったのかも知れませんね」
 ごるびーの動きを読み取り、琴宮茜(ea2722)がボソリと呟いた。
「それじゃ、売り物にならないごるびーさんを遠くにやるため、温泉旅行が計画されたわけですね。その巻き添えを食らったのが、それんちゃん‥‥。おふりとも、とんだ災難でしたね」
 悲しげな表情を浮かべ、大宗院鳴(ea1569)がごるびーに同情する。
 ごるびーは廃墟となった見世物小屋を思い出し、大粒の涙を浮かべて鳴にがしっと飛びついた。
「だからと言って、いつまでも冒険者の所にいるわけにも行きませんから、どうにかしないといけませんね」
 冒険者があまり儲からない事を知っているため、神楽聖歌(ea5062)がごるびーを急かす。
「ふむ、今回はごるびーの身受け先探しか‥‥。ところでこの依頼は、いったい誰が出しとるのじゃろうか? まさかごるびー自身というわけじゃないじゃろ?」
 苦笑いを浮かべながら、馬場奈津(ea3899)がごるびーの顔を見る。
 するとごるびーは懐をゴソゴソと探り、皺くちゃになった紙を取り出し奈津に渡す。
「なになに‥‥、今回の報酬はごるびーの出世払いです。それまでの間は僕がお金をごるびーに貸しておきます‥‥、と書いてあるな。それじゃ、今回の報酬はごるびーが借金して得たものというわけか。なんだか貰い辛くなったのぉ‥‥」
 手紙の文面を読み進み、奈津がぐしゅりと涙を拭う。
「なんだか涙が出てきますね。生きているごるびーさんを見るのはこれが最後かと思うと、ううっ‥‥」
 色々な意味でごるびーの状況を理解し、志乃守乱雪(ea5557)がなむなむと両手を合わす。
 それと同時にごるびーが目を丸くさせ、慌てた様子で手紙を奪う。
「ううう、これが最後なんて、名残おいしい、もとい、名残惜しいなぁ‥‥でもきっと、誰のところに逝ってもまた襲撃するから、寂しくなんか無いわよ♪」
 のほほんとした表情を浮かべ、レオーネ・アズリアエル(ea3741)がごるびーの背中をぽふりと叩く。
 手紙に書かれた三人の名前を見つめ‥‥。

●預け先
「さて、ごるびー‥‥、どの『辛い』がいいかのぅ?  わしゃ三人とも面識がないからの〜。さいころでも振って決めるか」
 にんまりとした笑みを浮かべ、奈津がサイコロを振る。
 ゴクリと唾を飲み込み、サイコロの行方を窺う、ごるびー。
 恐怖のためか脂汗で池が出来ている。
「はははっ、冗談じゃ! とりあえず『皮』『肉』『金』のどれかじゃのう。『皮』と『肉』が無くなれば、ごるびーの命はないが、それでは於通や清十郎が身受けする意味がなさそうじゃしなぁ‥‥。逆に『金』を稼ぐ手段さえ見つかれば、しばらくは危機を回避できるかもな。‥‥だとするとミンメイか」
 困った様子で腕を組み、奈津が大きな溜息をつく。
 どれも不安要素があるため、これだと断言できる者がいない。
「とりあえず候補が三つほど出てるが‥‥、いっそ河童忍群に預けて鍛え直して貰うってのはどうだろう?」
 手のひらをポンと叩き、我斬がボソリと呟いた。
 残念ながら河童忍軍の居場所は特定されていないため、連絡を取るにはギルドを利用するしかない。
「それなら河童神社に行くのがいいかも知れないでござる。あそこは河童忍軍ゆかりの地‥‥。運がよければ河童忍軍に会えるはず‥‥。しかし、まったく問題がないとは言えんでござる。妙な輩が河童忍軍に襲撃を仕掛けているようでござるしな」
 河童の大好物であるキュウリを懐から出した後、沖鷹又三郎(ea5927)が思い出した様子で汗を流す。
 そんな状況でごるびーを預けてしまったら、どんな姿になって帰ってくるのか分からない。
「私としては河童達と一緒に暮らすのが一番だと思いますけどね。だって、候補者はみんな問題のある方々ですよ。この先、一切の望みはないものと思うのですが‥‥」
 仲間達から候補者達の噂を聞き、乱雪がごるびーに同情した視線を送る。
「‥‥このままではお金に困ったミンメイさんが、ごるびーさんの皮を於通さんに、中身を清十郎さんに売ってしまう事でしょう。しかも一桁違う値段で後払いにされて‥‥。これはもはや常識ですが、『悪い予感ほど的中する』ものなのです!」
 険しい表情を浮かべ、乱雪がキッパリと断言した。
 ごるびーはどんよりとした表情を浮かべ、身体をカタカタと震わせる。
「さて‥‥、墓石でも、探しに行きましょうか‥‥」
 乱雪の言葉がごるびーの心をザックリ貫くっ!
「‥‥おや? ごるびーさんの口から魂がっ! 落ち着いてくださいっ! し、深呼吸ですっ!」
 すぐさまごるびーを抱き寄せ、乱雪が慌てた様子で汗を流す。
 ごるびーはケホケホと咳き込み、円らな瞳をパッチリさせる。
「拙者は3人について殆ど知らぬのでござるよ。だからごるびー殿が一番最初に思い浮かんだのが於通殿であれば、彼女の元に行くのが一番だと思うでござる。それにごるびー殿は存外女性に好かれるでござるからの。上品な甘いお団子をたくさん手土産に作っていく頼むでござる」
 指で優しくごるびーの頭を撫で、又三郎がニコリと笑う。
「小野さんと清十郎とは一寸した縁あって人柄を知ってんだけど、時々お茶目な事を言うものの、あの人だったら面倒見が良いから大丈夫だぜ。なんたって‥‥あの! 清十郎を見捨てずに、更正させようと頑張ってる人だし、顔が広いから一緒に仕事をしていた仲間達の安否もすぐに解るかも知れないしな。食う事に困らないのも利点だし、悪くないんじゃないか?」
 於通の顔がポカンと浮かび、北嵩がボソリと呟いた。
「そーれーにー‥‥、小野さんの傍に居ると、根性‥‥自然と鍛えられるかもよ。一石二鳥以上だぜ? な〜に、三味線の皮にされるかもしれないのは心配するなって! 猫と違うって証明すれば良いんだから! ほら猫には水かきはない!」
 それと同時にふっ飛ぶ、北嵩。
 ごるびーの回し蹴りが北嵩の顔面に炸裂した。
「強くなったな、ごるびー。だが、俺を倒すには10年早い‥‥ぜ‥‥」
 げほっと血反吐を吐きながら、北嵩がブクブクと泡を吐く。
 ごるびーの一撃は北嵩の喉に炸裂し、ピンポイントで激痛が走っている。
「やはり候補者の方々と会ってみる必要がありそうですね。住めば都という言葉がありますし、苦しい生活かも知れませんが、自分なりに楽しみを見つけて、将来の希望を糧に頑張らないと‥‥」
 そう言って鳴がごるびーの肩を叩く。
 祈るような表情を浮かべ‥‥。

●ミンメイ
「清十郎殿は現在、失踪中‥‥。於通殿も仕事が山積みで、ごるびー殿の話も出来ず‥‥、となると残っているのは、ミンメイ殿だけでござるな」
 候補者の家を歩いてまわり、又三郎が残念そうに溜息をつく。
 本当なら於通とごるびー会わせる予定でいたのだが、彼女の仕事が修羅場を迎えていた事もあり、伝言だけ残して彼女の屋敷を去る事にした。
「あのままごるびーを預けたら、何をされるか分かりませんものね。‥‥色々な意味で」
 仲間達から於通の噂を聞いたため、鳴が心配した様子でごるびーの頭を撫でる。
 仕事中の於通はとても機嫌が悪い上、清十郎が行方不明になっているため、ストレス解消にごるびーを縛り付ける可能性があるからだ。
「ひょっとして、清十郎は‥‥」
 次の瞬間、鳴がハッとした表情を浮かべて屋敷を睨む。
 清十郎は縛られているのだ。
 ストレスの溜まった於通の心を癒すため‥‥。
「‥‥恐ろしい人ですね」
 同情した表情を浮かべ、鳴がなむなむと両手を合わす。
 ごるびーは残念そうな表情を浮かべ、はふっと大きな溜息をつく。
「‥‥まあ、なんだ、それんちゃんだけでも無事で良かったじゃないか。誰も引き取ってくれないのなら、湖の小屋に棲めばいいんだし‥‥。草むしりくらいなら手伝うぞ」
 落ち込んだごるびーを励ますため、我斬が冗談まじりに微笑んだ。
「彼女のためにも贅沢は言っていられませんからね。しばらくの辛抱ですよ」
 ごるびーの不安を少しでも取り除くため、聖歌がそれんの事を話題にする。
「やはりミンメイさんに預けるしかありませんね。於通さんや清十郎さんの所に預けるとごるびー君は生きていない気がしますから‥‥」
 ミンメイ堂にむかうため、茜が裏道を通っていく。
 於通の屋敷からミンメイ堂は離れているが、歩いていけない距離ではない。
「ミンメイだったら、俺にもコネがあるから紹介してやろうか? その方が変に気を使わなくていいだろうしな」
 豪快な笑みを浮かべながら、穂狼がごるびーの頭をワシャワシャと撫でる。
「ミンメイさんの所なら、知り合いの方も沢山いるからオススメですよ☆ きっと仲良くやっていけるですよ〜☆」
 ごるびーの頭の上にちょこんと乗り、ベルがニコリと微笑んだ。
「彼女なら前に取材に協力した事があるし、信頼出来る人物‥‥とは言い難いけどね」
 ミンメイとの思い出を語ろうとした途端、レオーネの脳裏に悪い思い出ばかり蘇ってきたため、気まずい様子で視線を逸らす。
「まぁ、不安要素がないと言ったら嘘になる。確かに生活は困窮しているようだし、この国の常識が通用しない事も『たま』にある。スマン‥‥、嘘をついた。『頻繁』にある。が! その中でも野望を達成せんと日々精進している‥‥かどうかは知らないが、何かしら刺激のある毎日を過ごしているからな」
 レオーネの気持ちを察し、銕三郎がフォローを入れる。
 ごるびーは少し心配そうにしているが、他に選択肢がないため文句は言えない。
「あいつ‥‥、貧乏でも店をやってるからな。可愛い看板娘に芸の出来る動物とくりゃ、客寄せに丁度良いだろ。今まで手強い敵同士だったからこそ手を組めばより大きな事が出来るってもんだ」
 細かい事は気にせず、穂狼がごるびーの背中を叩く。
「ライバル、貧乏、大いに結構! どちらも、ごるびーの為には必要な要素だ。何か問題があれば、店で働いているヤツが止めに入るだろうからな」
 ごるびーの横顔を見つめ、銕三郎が満足した様子で頷いた。
「ミンメイさんもビンボーだけど、二人でタッグを組めばナンとかなるなる! ‥‥ビンボー神の方もタッグを組まないか心配だけど‥‥」
 不安と期待が入り混じる中、レオーネがごるびーに言い聞かせる。
「店の名物にしてしまえば、迂闊な事も出来ませんしね」
 不安げな表情を浮かべるごるびーを抱き寄せ、聖歌がヨシヨシと頭を撫でた。
「後はごるびー君の腕次第。お客に顔を知られていれば、ミンメイさんだって妙な真似は出来ません。そんな事をしたら店の評判を落としてしまいますからね」
 ごるびーを勇気づけるため、茜が優しく声をかける。
「そうだ! 今からミンメイさんの所に行って話をしてくるですよ〜☆」
 満面の笑みを浮かべながら、ベルがミンメイ堂まで飛んでいく。
「まぁ、誰の所に行く事になろうと、皆で決めた事だ、文句は言わん。これからはそうそう会う機会もなかろう。イロイロと世話になった。達者でな」
 ごるびーの頭をぽむぽむと叩き、銕三郎が干しスルメの束を渡す。
 寂しそうな表情を浮かべ、銕三郎に抱きつくごるびー。
「‥‥いい? 辛い事や悲しい事があった時にね、楽しかった日々やみんなの事を思い出しながら、一枚一枚大切に食べるのよ‥‥」
 そう言ってレオーネがごるびーの頭を撫でた。
 何処か寂しげな表情を浮かべ‥‥。