七音:自分の中の音アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 9人
サポート 0人
期間 10/08〜10/10
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●本文

 それは東京にある一軒のライヴハウスから始まる話。
 そのライヴハウス『SevenSeas』のオーナーの子の名は、ライヴハウスの名前と同じ、七海。
 七海は現在中学生だ。
 家の一階はライヴハウス、ということで音には小さな頃から親しんでいる。
 そしていつかは自分も、このライヴハウスで‥‥
 これはそんな淡い想いを抱く少年と、このライヴハウスにやってくるものたちの紡ぐ、物語なのである。

●TVアニメ『七海の音』声優募集
 TVアニメの声優を募集致します。
 職業が声優であろうと、俳優であろうと、ミュージシャンであろうと、拘りはありません。

●番組内容
 プロを目指すものも、趣味でとどまるものも、色々な音楽のありようを描いていくロックアニメ。
 『七海の音』というのはライヴハウスの名前とかけてあり、七海自身が中心になって何かする、というよりも七海に影響を与えていく者たちが中心である。
 途中で歌も流れることもあり、愛憎劇もあり、夢に向かってもあり。
 さまざまなものを含んだアニメだ。
 全十二話中、四話目は、ライヴハウス住み込み中の華を連れ戻しに父親が来襲。その様子を見守る面々、父親と対峙(?)する華。そして様々な事を切欠に華の音楽性もまた一つ、新たな成長をみせていく。
 七海少年は歌手でもあり声優でもある、杉山瑠伽が演じる。

●補足
 実名でアニメ参加の場合、今現在の知名度などがアニメ世界に反映。
 一人二役は基本的には認められませんが、ガヤとして参加は可。
 ちょっとした端役は監督さんが引っ張ってきます。
 アニメの中でグループを組むというのももちろん大丈夫。

●今回の参加者

 fa0073 藤野リラ(21歳・♀・猫)
 fa0079 藤野羽月(21歳・♂・狼)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa2766 劉 葵(27歳・♂・獅子)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3398 水威 礼久(21歳・♂・狼)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa4131 渦深 晨(17歳・♂・兎)
 fa4133 玖條 奏(17歳・♂・兎)

●リプレイ本文

●突然に
「そういえば、皆の親ってどんな感じなのかなー?」
 沙紀と七海、学校帰りにふとそんな話が持ち上がる。
「皆さんのご両親‥‥確かにちょっと想像‥‥イメージつかないですわね」
「面白いからねー、なんか単体でぽいっとどこからともなく現れましたー、みたいな‥‥」
「そうそう。え? 親いたんだって感じ」
 と、二人勝手に想像を膨らませていく。
「華ねーちゃんの父さんとかどうなのかな‥‥」
「地元博多だし九州男児‥‥」
「ムキムキ‥‥」
「意外とダークグレイの似合うおじ様タイプじゃ」
「スーツスーツ!」
 と、二人のイメージを組み合わせていくと、なんだか間違った方向に進んでいるような気がしないでもない。
「華さんって結構アレだから、やっぱり結構アレなひとなんじゃ」
「アレ‥‥アレといえば‥‥」
「『とんこつまん』‥‥唸れ必殺☆替え玉ボンバー!」
「あはは、ボンバー!!」
 想像する分には自由です。
 が、二人が勝手に想像しているこの華の父親。今現在、九州にいるはずの父親は東京にやってきていたのだった。
 そんな事を知るはずも無く、紗紀と七海はライヴハウスへ駆け込み、やってきていたメンバーにこの勢いのまま家族ってどんな感じー!? と、詰め寄るのだった。
「あたしは弟と二人暮らしだね」
「ラシアねーちゃん弟いるんだ!」
「華さんは? 華さんのお父さんは!? 似てる!? 似てない!?」
「ムキムキ!?」
 と、先ほどの想像をまた思いながらドキワクといった感じで二人は迫る。
 華は素っ気無く。
「父さん? 全然似てないよ。ムキムキでもないし‥‥」
「そうですか‥‥残念ね」
「うん、ボンバーが‥‥」
「どんな想像してたのよ‥‥」
 苦笑しながら凛は言って、二人の想像を聞くとぷっと噴き出す。
 と、ライヴハウス入り口のドアが開く音がして視線はそちらに。
「あ、まだ開店ま‥‥」
 振り返りながら、華の言葉は止まる。
「な、な、なんでいるの!?」
 扉を開けて入って来たのは、華とそっくりな男で。
「華子、なんばしよっとか!! 見かけてこっそり後をつけてみれば‥‥ライブハウス! 東京に行きます、探さないで下さい‥‥で納得できると思っとったとか。母さんがどれだけ心配しとるか、はよ帰るぞ!」
「ずぇーったい帰らんけん!」
 二人で帰る帰らない、という状況に全員ぽかーん、として。
 最初に我に返ったのは凛。
「待たんかこん親父っ!」
「わ、凛姉ちゃんも待って!」
「お父さんも落ち着いて!」
「お父さんと呼ばれる筋合いは無い!」
「いえ、名前がわからないので!」
 と、葉月も止めに入りてんやわんやしつつ、落ち着く。
「‥‥確かに名乗っていなかった、華の父親、勅使河原一太郎だ」
「なるほど、それで華‥‥」
 手をぽむ、と打ち妙に納得する葉月。それをよそに親子二人はまた喧嘩を始める。
 そこに凛も入ってぎゃーぎゃーと収拾もつか無い状態。
「‥‥おじさん、華さん嫌がってるじゃん。みっともないし諦めたら?」
 と、静かにみていた辰樹もじろりと睨みつけ始め。
「あの、俺何か飲み物用意してきますから、それを飲みながら落ち着いてお話しませんか?」
 風雅も収拾つけようと入るのだがどんどんカオスな状態に。
 どうしようもない状況に今まで静観していたラシアはすっと割って入り、全員に一瞥。その迫力に黙る面々。
「ここは音楽をするところであって、喧嘩するところじゃない。そんなに喧嘩したかったら他所行ってやるんだね。仮にも音楽をやる人間なら、この場所で揉め事起こすなんて絶対やっちゃいけないことだって分かるだろ」
「う‥‥」
 その言葉には説得力がちゃんとあって。
「‥‥そうだな。華、出張が終ったら連れて帰るから用意しておきなさい」
 そう言うと、一太郎はまた仕事へと戻るためにライヴハウスを出て行く。
 そんな背中を華は言いたい事を言うタイミングを逃して見送った。

●父のキモチ
 華の父は、次の日もライヴハウスにやって来た。
 ホールでは他の客の目もあるという事で、空いた部屋で二人は話していた。
 そしてもちろん、聞き耳立てる人がいたりもする。
「まったくこの頑固は誰に似たんだか。音楽で生きていきたいと思ってる人間なんてごまんといる。その中でプロになれるのは一握りだ。何も歌をやめろと言ってるんじゃない」
 言っていることは一理あり、華は黙ってしまう。そこへ追い討ちのように一太郎は言葉を重ねる。
「親だから言うがお前の歌で通用する世界だとは、到底思えない」
 そしてこの空気に耐えかねた一名、扉をばーんと、開け。
「華ねーちゃんお借りします!」
「だ、大航海!?」
「はい、葉月にーちゃんパス!」
 勢いのまま、七海は華を葉月に押し付けて逃走させる。
 そして気まずい雰囲気が。
「華さんが作る歌には」
 その雰囲気を破って、一太郎に向かって言葉を投げたのは沙紀だった。
「自分の故郷や出来事というのが意外と多いんです。私は‥‥もし私が何か曲を作るとしたらやっぱり、この街の出来事や想いを綴ったものになると思います。だって心の中で占める比重が一番大きい想いだから」
「折角来たんだし、コーヒーでも飲みながら話でもどう? この前すぱっと割って入った時のお詫びもかねて」
 ラシアもフォローと、一太郎に声をかける。
「一握りの人間しかプロになれないなんて、華だけじゃなく皆分かってると思う。ただ、それで見限っちまうのもどうかな。やるだけやって、それでも駄目なら自分で辞めるだろうさ。限界決めるのは、いつだって自分だよ。才能なんて大した問題じゃないさ」
「それは‥‥だが親としては心配で‥‥」
「‥‥がばいムカつく。ちぃとは娘ん話も聞きんさいよ! そがんそびき出すごとせんでもよかろーもん。ぞーたんやなか。こん、腹かきべっとー!!」
「うわぁ、凛ねーちゃん意味不明‥‥」
 言い分は分かるのだが、華の味方である凛は拳ぷるぷるさせつつ言う。それをどうどうと七海は抑えるが、止まらずで。
「凛ねーちゃん、はいあっち行こうねー行こうねー」
 この場は任せた、と凛を引きずりながら、七海は去る。
 ラシアと沙紀は娘に直接言えない一太郎の心のうちを、ここで聴くこととなる。

●華のキモチ
 華と葉月はライヴハウスのホールの隅っこに座っていた。
「お華さん、話をしよう」
「‥‥」
 と、二人向かい合って。こんな状態になるのは初めてだった。
「父さんの言う事も一理あるのかな」
 ぽつり、と漏らした華の言葉に葉月は耳を傾ける。
「父さんが心配してるのも本当は解ってる。言う通り、趣味に留めるべき? 地元で? よくわかんなくなるね」
 しゅん、と塞ぎこむ華にかけるのは言葉でなく、歌。
 葉月はアコースティックギターを持って歌い始める。

「 あなたが あなたであるだけで
  とても 幸せなこと
  あなたが あなたでないのなら
  それはただの 虚ろな人形(ひとがた)
  真に求めるものは、―何? 」

「8月‥‥」
「お華さん‥‥」
 と、なんだか良い雰囲気になりそうな所なのだが、華を心配する者は他にもいる。
「華、どうした? 落ち込むなんて華らしくないぜ?」
「礼久兄貴‥‥」
「話は、耳にしてる。才能があるからプロになれるわけじゃない、プロってのは99パーセントの努力と1パーセントのチャンスがあってこそ、さ」
「それどこかで聞いたことある‥‥」
 と、葉月がツッコミ一つ。礼久は苦笑して続ける。
「あはは、気付かれたか、でもそのたった1パーセントのチャンスが巡ってくるまで情熱を失わずに努力し続ける事が出来るかどうかがプロへの別れ道だと思うぜ」
「でも、デモテープは反応ないし、やっとと思ったらコメントは『何が歌いたいか解らない』だし。皆どうやって、何を歌にするんだろう‥‥」
「よし、それなら一緒にするか。HORETA君にHORETA健気な君にHORETAってああっセンスねぇ俺」
 と、そこへ凛を引っ張ってくる七海もやってきて。
「暴れ凛ねーちゃんをよろしくお願いしまーす」
「せからしかよ七海! ‥‥あ、訛ってた?」
 こっくり、とその場にいた全員は頷く。
「あ、華! 華の危機は私の危機でもあるのよっ!」
「りんりーん!」
 ひしっと二人は抱き合って。
「皆華のこと思ってるんだからねっ!」
「そうそう、想いはきっと親父さんにも届くさ」
「うん‥‥」
 華は頷いて、色々と想いを固めていく。
「華ねーちゃんがいないと、一緒に怒られる人いなくなっちゃうから寂しいよ」
「えー」

『 励ましてくれる8月やりんりん、きらちゃん、どらちゃん、厳しくて優しいラシア姐さんや礼久兄貴、可愛い沙紀ちゃんに大航海、マスター。
 私はここで歌いたい‥‥皆といたい。
 私の歌がどうかなんて解らないけど‥‥自分の音、私はここで見つけたい。諦めたくないんだ 』

 そしてもう一人。
 自分の心の内にあるものに気がついた人物も‥‥。

●華の進む道
 華が、父親に連れて行かれるかもしれない。
 そんな日に、華はライヴハウスの舞台に立つ。
「華、帰るぞ」
「新しい歌を作ったから皆に聞いて欲しくて。父さんも、良かったら聴いて」
 何を言う、と連れて帰ろうとする一太郎を制したのはラシアだった。
「まぁ、折角だし聞いてやれば?」
「そうよ、邪魔しちゃダメよ。幸せなんて本人が決めるもの。何もしない後悔より、何かして失敗した後悔の方がまだマシだわ」
 と、ライヴハウスには辰樹と風雅の傍に一人、男がいる。
「どういうことです、兄さん?」
「‥‥睨むなよ、風雅。ただの仕事の打ち合わせに連れてきただけだから」
 ニッコリしつつも威圧感たっぷりの風雅に辰樹はちょっとたじたじ。
 やりとりが色々とされる中、音が流れ出す。
 礼久がギターで伴奏をいれて。

「 あったかくて窮屈な世界から
  脱け出したかったんだ
  甘たれた猫はノラ猫にもなれない
  帰る場所も捨てて
  でも夢があった 」

 たまらなくなって、音が増える。
 凛と葉月はギターで飛び入り。
 華は何時もと変わらず楽しそうに、歌う。

「 海を見たよ 生まれて初めて
  きらきら 魚の来るところ
  翔んで跳ねて あんな風に泳ぎたかった
  水かきも尾ひれもない でも
  しぶきが笑う おいでって
  小さな手足があるんだから

  時々夢に見るよ 遠い街角
  いつか泳いで帰ろう
  いくつもの海を越えて
 『皆は私の海です』  」

 華が歌い終わる。
「別れと決めるのは寂しいな‥‥」
 ぽつりと、葉月は呟いて、気持ちを漏らす。
「ねぇ、マネージャー。華さんの‥‥あ、あの舞台で歌ってる子なんだけど‥‥歌どう?」
「いいんじゃないか? ‥‥言っておくがうちの事務所はアイドル中心だからな」
「‥‥兄さん‥‥」
 辰樹の考えを風雅は読んで、溜息。
「スカウトされれば諦めるんじゃないか、とかそんな考えで‥‥」
「あはは‥‥俺、華さんの味方だし‥‥」
「で、親父はどう? ふっきれた?」
 ラシアは黙って聞いていた一太郎に問う。
 一太郎は、少し難しい表情を浮かべていた。
「‥‥頑固娘だからなぁ‥‥」
 溜息つきつつ、華の頭にぽふっと手を置く一太郎。
「そんなに歌が好きならとことんやってみなさい。但し手紙だけはよこせ」
「と、いうことは‥‥」
「華っ! 華の居場所は此処よ!」
「りんりん! うう、よかったよー!」
 華の仲間、そして華の懸命な姿を見て、一太郎は華の居残りを許す。
 心底心配しているのだが、それを言葉にすることは無く。
「華の歌の事は分からんが、良い仲間と過ごせる時間も貴重なもの。それからどうしても辛くなったら、連絡は要らないからいつでも帰って来なさい」
「ありがとう父さんっ!」
 ひしっと抱きつく娘に父親は、照れる。
 そんな姿を見て、辰樹は呟く。
「なんか‥‥俺のやったことって意味ナシ?!」
「そうだったみたいですね‥‥」
「でも‥‥華さんが残ることになって良かった♪」
 そうだね、と喜ぶ反面風雅は、華の状況と自分達の一部を重ね合わせる。
「周囲の理解と協力、か‥‥」
「? 風雅、今何か言った??
「なんでもないよ」
 すぐに取り繕って、風雅は笑う。
「良かったな、華。俺ももう少し、頑張ってみるか」
 礼久は華の姿を見て、自分もまだやれると思う。
 そして居残りを決めた華はというと。
「よし、お祝いに歌いましょう! 『とんこつまん』の歌を!」
「ぶふっ! は、華ねーちゃんそれは‥‥」
「歌うわよ!」
 大いに盛り上がっていた。
 そんな様子を一太郎は見守る。
「あ、そうだ‥‥よかったらこれを皆で‥‥地元の銘菓なんだ、華も好きで‥‥」
 と、一太郎は近くにいた沙紀に菓子を渡す。その箱は二つ。
 沙紀はそれをじっと見、そして笑顔を浮かべた。
「お土産渡しておきますね」
「いや、その‥‥お願いする‥‥」
 華の帰還という危機(?)を乗り越えた面々の絆はさらに強くなって。
 これからもまだまだここでは色々なことが起こりそうな、気配があった。

●CAST
華:藤野リラ(fa0073)
葉月:藤野羽月(fa0079)
凛:千音鈴(fa3887)
沙紀:阿野次 のもじ(fa3092)
辰樹:渦深 晨(fa4131)
風雅:玖條 奏(fa4133)
七海:杉山瑠伽

水威 礼久(fa3398)
ラシア・エルミナール(fa1376)

Special Guest!
一太郎:劉 葵(fa2766)