【LP】聖剣の眠る地ヨーロッパ

種類 シリーズ
担当 言の羽
芸能 1Lv以上
獣人 4Lv以上
難度 難しい
報酬 18.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/14〜09/18
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●本文

 東雲咲が若白髪の青年からもらったリストバンドは、多くの芸能人が参加していたイベントの終了時、参加者に配られていた物であり。「素敵な恋人ができますように♪」的なお守りなので、それをもらったからどうこうという事はない、はずなのだが。
 今年は酷暑であったのに、どんなに暑くても、どんなに蒸していても、咲は超ごきげんだった。彼女と染谷洋子の住む家へやってきた葛原みちるが、呆れてぽかんと口を開けるほどには。
「ずっとあんな感じなの?」
「そう。気持ち悪いわよね」
 尋ねるみちるに、答える洋子。麦茶を注いだグラスをみちるの前に置く。ニマニマしながら自室へ行ってしまった咲は放っておいて、二人は洋子の部屋に来ていた。フローリングの上に敷かれたイグサのラグの上に、ぺたりと座っている。
「‥‥まあ、確かにあれをもらって嬉しいんだろうけど、恐らく無理にそう見せてるところもあるわよね」
 脳裏をよぎる、あの夜の光景。微笑み。銃声。紅い飛沫。倒れていく身体。
 一旦は葛原家へと連れて帰られた水元良の遺体は、綺麗に整えられてから、夜の闇にまぎれて自宅へと帰された。息子を溺愛していた母親はどれだけ嘆き悲しみ、不思議がった事だろう。それでも今のところマスコミが騒いでいないのは、良の着衣のポケットにあった封書――宛名は「母さんへ」となっていた――のおかげなのか。
 以前に天敵であるNWを倒した時の事なら、そうする事でしか憑かれた人を救えないという大義名分があった。けれど今回は、そうではなかった。良は自らの意志で己の命を断ったのだ。
「咲、ショックだったんだね‥‥」
「わたしもよ。今回の遭遇は、わたしが見てしまったからだし。でも、きっと、みちるのほうが」
「‥‥ううん、私は」
「そうでしょう?」
「‥‥‥‥うん」
 グラスの表面を覆う結露の滴が、下に敷かれたコースターに跡を作る。
「イギリスへ行くのなら、早めに動いたほうがよさそうね。駒を失った以上、近藤零夜という人が突発的な行動に出る可能性もあるわ。みちるはもっと力を得ておくべきよ。勿論、私達もだけどね、足手まといにならないように」
 洋子は机の引き出しをあけると、そこから一冊の手帳のような物を取り出した。表紙に書かれている文字に、みちるがあ、と声をあげる。
 日本国旅券。いわゆるパスポートだった。

 ◆

「そんなわけでー、イギリスにやってきた!」
「早いよお父さん!?」
 街の喧騒とは遠く離れた、静かな湖畔。柔らかな陽光を受けて煌めく水面はまるでジュエリーのようで、レジャーシートを敷いて弁当を広げ、ずっと眺めていたくなる。
 だが。
 みちる、咲、洋子。そして彼女達の両親達もずらりと並ぶのは、遠足気分も吹き飛ぶほどの事が起きるのだと、否が応でも感じさせられる。
「ひとまず今回は比較的浅い階層の掃除をしてもらう」
「どうして?」
「WEAや周囲の住民に気づかれないようにしたいからな。第一階層にキャンプを作るんだ。見つかると面倒な事になりそうだし、できるだけ避けたい」
 事が片付いてからならともかく、今は他に時間をとられたくないというのが本音だ。
「俺達と洋子で機材やなんかの準備をしておくから、みちる、お前は咲とこいつらと一緒に、掃除してこい」
「洋子は一緒に行かないの?」
「機材の使い方を教えてもらいたいの。これからもわたし達がチームとして活動するのなら、必要となる知識でしょう?」
「それはそうだけど‥‥」
 親達が手はずを整えてくれるのはともかくとしても、洋子まで地上に残るのは、みちるにとってはやはり少々寂しいし、心もとなくも感じられる。
 とはいえ、これも自分の為。自分が強くなって、これ以上皆に迷惑をかけないで済むようにする為。ゆえに彼女はぐっと口元を引き締めて、内部に剣の仕込まれている日傘の、柄を握り締める。
「心配すんな。多少の傷なら咲の母親が治してくれる」
 ぽんぽん、とまるで幼子にするように、徹はみちるの頭に手を乗せた。
「それより、あんまり大技使うなよ。湖の真横なんだ、万が一にでも浸水なんて事になったら、手のうちようがなくなるからな」
 壁に被害を与える事は全力で避けろというお達しだ。聖剣の眠る地であるからには頑丈に作ってあるのだろうが、そうはいっても古い時代の建設物であるし、相当の年数が経っている。衝撃は与えないほうが懸命だ。
「いいか、お前ら。掃除はきっちりこなしとけ。かつ、俺達の娘は死ぬ気で守れ。この任を全うする事がなかった時には‥‥全員無事に帰れると思うなよ?」
 ガコン。静かな湖畔にふさわしくない音がして、緑の芝生が生え揃っていたはずの地面が四角く凹んだ。それは蓋の様にゆっくりとスライドしていき、奥には、明らかに人工建造物とわかる石の階段が伸びていた。

●今回の参加者

 fa0510 狭霧 雷(25歳・♂・竜)
 fa0911 鷹見 仁(17歳・♂・鷹)
 fa0918 霞 燐(25歳・♀・竜)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1674 飛呂氏(39歳・♂・竜)
 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2648 ゼフィリア(13歳・♀・猿)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)

●リプレイ本文


「本当の掃除の前に、邪魔者が入りこんどらんかどうかの見回りやな。見回った部屋にはランタンを置いとく事」
「ひゃー、いっぱい持ってきたねぇ」
 ゼフィリア(fa2648)が担いでいた袋には何が詰まっているのか、誰もが気になっていたところだった。20個にもなるランタンだったのだ。佐渡川ススム(fa3134)から驚嘆の声が上がるのも無理はない。
「ふむ。確かに明かりは必要だし、蝋燭よりはランタンのほうが安全だろう」
「皆で手分けして持てば、そうは荷物にもならないわね」
 幾つか手に持った上で、緑川メグミ(fa1718)は緑川安則(fa1206)にそのうちの半分ほどを渡そうとして、三分の二を取られた。
「今はここ、入ってすぐの玄関みたいな部屋で、この奥に一番大きい部屋があるんだな。ここには多めにランタンを置かないと、光が行き届かないんじゃないか?」
 徹から預かった地図をみちると並んで見ながら、鷹見 仁(fa0911)が言う。
「では、先の打ち合わせ通りに手分けするとしよう。方々よろしう頼むのぅ」
 この中で一番の年長者となる――見た目はそうでもないが、実年齢は地上にいる徹達よりも年上だ――飛呂氏(fa1674)の言葉で皆は一番大きな部屋へ続く中央の道と、細かい部屋へと続く左右各一本の道へと、進んでいこうとしたのだが。
 仁とみちるとゼフィリアを、狭霧 雷(fa0510)が手招きして部屋の隅に呼んだ。雷の横には霞 燐(fa0918)と咲が。何の用なのかは、彼らには自ずと知れた。

「先程徹さんは、私達がここにいる事を地元住民だけでなく、WEAにも知られたくないと言っていましたよね」
「そうやな」
 声を潜めて説明を始める雷に、まずはゼフィリアが相槌を返した。
「味方であるはずの支援機関にすら知られたくないのは、恐らく聖剣を手元に置いておくためでしょう。聖剣を手にする事が出来れば、みちるさんからその鞘を取り除く事が出来るかもしれませんから」
 え、とみちるが小さな声を漏らした。話をうまく飲み込めないみちるの代わりに、仁が身を乗り出す。 
「‥‥どういう事だ?」
「今は剣が無い為に本来の力を失っているが、みちるの中にある鞘には『所持している限り血を流す事のなくなる力』が宿っていると言われている」
 話者も交代。燐による細部の解説が入る。
「ただの伝説じゃないのか」
「存在そのものが伝説だった物が、現実に存在していたのだぞ。その能力とてただの伝説では終わらない可能性が高い」
「確かに可能性としてはそうだが‥‥」
「ある意味、聖剣よりも強力なモノだ。剣を手に入れる事で本来の力を取り戻せば、体内に納めておく必要はなくなるだろう。身近に置いておく必要はあるだろうがな」
 燐と雷は自信に溢れていたが、仁にも同様の自信を持たせるには、残念ながら至らなかった。考え込んでしまった恋人の腕に、みちるが自分の腕を絡め、やや力を込める。
 いくら可能性が高いと予想しても、それは所詮可能性の話。かけがえのない命が天秤に乗せられている以上、渋ってしまうのも無理はなかった。

●A班:仁、みちる、ゼフィリア、飛呂氏
「ふむ、ここで曲がり角、と‥‥」
 飛呂氏が手にしているのは、消しゴム付の鉛筆と方眼紙。どうやらマッピングしているらしい。
「徹さんがくれた地図があるのにか?」
「わかっているが、それは20年ほど前に作られたものじゃろう? 当時見つけられなかった部屋や通路があるかもしれんし、確認の意味も込めて、やっておいても損はなかろう」
 一理ある。飛呂氏が地図を記しやすいよう、ゼフィリアは掲げるランタンの向きを変えた。先程からずっと考えこみっぱなしの仁も気になるが、そちらはしばらく放置しておいたほうがみちるといちゃつく心配もなさそうだったので、そうする事にした。

●B班:雷、燐、咲
「妙な気をまわされてしまいましたね」
 ともすれば一人で先へ行こうとする咲だったが、呼び止められれば素直に振り向いた。雷は苦笑いを浮かべていた。
「‥‥うん、多分あたしのせいなんだ。ごめん」
 咲もまた、困ったように笑った。だが謝罪の言葉を漏らしたきり、口をつぐんでしまった。
 やれやれと雷は肩をすくめる。うつむき気味の咲のおでこに、自分の掌をぺたりとつける。驚いた咲が奇声を発したが、ここはあえて気にしない方向で。
「熱はなさそうですが‥‥ああ、顔が少し赤いですね。体調が悪いようなら、地上にいるご両親の所へ戻ってださいね」
 にっこりと、表情をいつもの微笑みへと戻して、いけしゃあしゃあと言ってのけた。
「‥‥あんた‥‥わかってて言ってるでしょおおおっ!!」
 即座に雷へと殴りかかった咲には、既にトカゲの尻尾が生えていた。半獣化だ。
「どうして怒るんですかっ?」
「あんたがムカつくからに決まってんじゃない!」
 通路は狭いというのに、互いの両手をがっつりと組んでの力比べ。
 足を踏ん張られていては横を通り抜ける事もできず、二人が落ち着くまでは地上に残っている洋子へ、心の声で一度目の定期連絡を入れる事にした。

●C班:安則、メグミ、ススム
「本日もメグミさんはお美しくていらっしゃる」
「あらありがとう。でもこの肩の手は何かしら?」
「ははは、ススムはお茶目さんだなあ。そんなキミには鉛玉をプレゼントだ、幾つほしいのかな?」
「すみません、ほんの冗談です、鉛玉なんて勿体無さすぎて一つたりとて受け取れませんというか受け取りたくないからっ!」
 安則から銃口を突きつけられるススムを笑顔で見守るメグミ。どうしても譲れないという意見を汲んだ結果決められた班構成だったが、おかげでこのC班はいい塩梅にカオスだった。
「ほんと、あなたってNWとの戦闘以外ではセクハラ好きなエロ親父ね。戦闘中は少しは格好いいかなとか思っていたりするのに」
「そりゃどうも。じゃあ今すぐカッコいいところを見せられるってわけだ」
 先程から鋭敏にされていた、ススムの視覚。彼の手から鋭い爪が伸びるのを見て、安則も銃をしまい、戟へと獲物を持ち替えた。メグミの持つ懐中電灯の光も、曲がり角の向こうまでは照らせない。けれどすぐそこの闇の中にざわざわと蠢く敵がいる事をススムの瞳は捉えていた。
「こちらC班よ! 敵NWと遭遇!」
 メグミがトランシーバーで他の班に情報を伝える。無理をして3人で戦わずとも、広い部屋に敵を誘い込み、皆で力を合わせて倒せばいいのだ。
 安則とススムが牽制をかけた後、反撃を各々で防御しつつ全力で戦略的撤退。玄関部屋に飛び込めば、敵も追いかけて飛び込んでくる。
「若白髪の馬鹿ぁっっ!」
「誰が馬鹿ですかっ!」
 飛び込んできたところで、左右に分かれて待ち伏せていた咲と雷による未だ喧嘩の興奮冷めやらぬ挟撃で、大きなダメージを与えた。

●時刻は時計でのみ知る
 最初の戦闘は場所が玄関部屋だった事もあり、残った変死体はすぐに地上へ持ち出せた。後は徹達がうまくやってくれるだろう。一同はまた潜り、床に零れていたNWの体液を拭き取ると、とりあえず先に進んだ。
 キャンプ予定地である一番広い部屋を、今回も拠点とする事にした。だがさすがに遺跡内部でテントを張る事はできないし、かといって色々な装備を持ち込んでいるわけでもない。ブルーシート+寝袋がせいぜいである。
 勿論、遺跡内の安全を確保し終えたわけではないのだから、全員が一度に眠るわけにはいかない。班ごとに時間を決めての見張り番だ。
「‥‥少し、席外してもらえませんか」
 焚き火のようには揺れない、ランタンの明かり。みちるが頭を下げてそう言ったので、ゼフィリアと飛呂氏は玄関部屋の見回りに向かった。
「みちる?」
「お父さんに、怒られてたね」
 そっと寄り添ってきたみちるを受け入れながら、仁はバツの悪そうな顔になった。
「聞いてたのか」
「うん。‥‥私に言ってくれても、よかったのに」
 潜る前に仁が徹へしたのは、良の命と、それを救おうとしたみちるの心を、守れなかった事への謝罪だった。慰めてほしかったわけではない。罵倒も覚悟していた。けれど徹は、仁を叱り飛ばしたのだ。
「高校出たばかりの子供が、守りたいと思うもの全て守れると思うな、って‥‥年齢の問題なのか?」
「どうだろ。守れないものもあるって事、言いたかったのかも」
 立てた膝を抱きしめるみちるの視線は、ランタンに注がれながらも良の姿を思い浮かべていた。
「水元さんは優しすぎたんだね。だからあれ以上私達を困らせたくなくて、かといって尊敬していた先輩も突き放せなくて」
「‥‥知ってたか? あいつ、お前の事が好きだったんだぞ」
「‥‥」
 わずかな沈黙の後、ぐす、と鼻をすする音が聞こえた。仁は両手を広げ場所をあけて、みちるの為の泣き場所を作った。

「いけ、そこだ! 熱いキッスを交わせ少年!」
「その調子よ、そのまま彼女を守り抜きなさい。徹さんの鉄拳だろうと、みちるちゃんのマネージャーのプレッシャーだろうと、愛の力が最後には勝つのが一番美しいセオリー、物語なのよ。私達はそれが見たいのよ、ねえ兄様」
「そうだとも。その為にもみちるちゃんには、聖夜に贈った物と同じ38口径のこれを――」
「わしも若い頃を思い出せば、甘酸っぱい時を過ごした事もあったのぅ」
「携帯のカメラでばっちり撮影したでぇ。これで徹さんの堪忍袋の尾が切れんといいんやけどな」
「全部聞こえてるんだがなぁっ!? ゼフィリア、その携帯渡せ! データ消すっ!」
 広い部屋の中を、円を描くように、5対1で追いかけっこ。元気である。
「‥‥あたしも、あんな風に甘えたほうがいいのかな」
 円の中央で赤くなってあたふたしている親友を眺めつつ、咲がぼやく。
「そのままでいいと思うがな。あの若白髪が、特にイベントもなしに物を贈る事自体、極めて珍しいのだぞ。今回の編成で少し渋っていたしな」
「え? ええっ!? それってどういう――」
「あれは何でもかんでも一人で抱え込もうとする。甘えっぱなしでは何も変わらんぞ。私から言えるのはこれだけだ。後はそこで狸寝入りをしている本人に聞け」
「ばらさないでください!!」
 それまで寝息を立てていたはずの雷が、がばっと寝袋から起き上がる。この騒ぎの中で眠り続ける事は難しいはずだと、うすうす咲も感じてはいたが。


 甲殻が割れ、肉が切り裂かれる音。悲鳴としての咆哮。反撃の狼煙としての金切り声。反撃を受け止める金属のきしみ。反撃への反撃は、壁にダメージを与える事のない、波光神息2連撃。
「背中は気にしなくともしっかり守ってくれている。確実にしとめていくぞ!」
「おっけーぃっ!」
 咲の経験値を稼ぐ為に燐がコンビを組み、交互に攻撃を繰り出す。その一撃一撃は波光神息2連撃ほどの威力はなくとも、多数に囲まれているNWには逃げ場もなければかわす余裕もほとんどなく、確実に体力を削っていく。
「きゃあっ!?」
「みちる!」
「いかんっ」
 避けきれずに跳ね飛ばされたみちるを追いかける仁、そんな仁の背中に昆虫のそれに似た大きな足が振り下ろされ、飛呂氏が長剣の刀身で受け止めて事なきを得る。
「ゼフィリアさん、コアがどこだかわかりましたかっ!?」
「まだや、メグミさんがやけに眩しくて‥‥」
「悪かったわねっ。アイドルは偉大なのっ、だから光り輝くのよ!」
 普通のアイドルは銃剣を手足のように扱ったりはしない。
「あった!! 左肩、甲殻の下の隙間や!」
「よし、ススムの為に道を開こうではないか! この、WEA自慢の対NW用刀剣でね!」
 安則の口調はどこか恍惚としていて、この戦闘に酔っているらしい事がうかがえる。難儀な義兄妹だ。
 だがスイッチの入ったススムには興味のない事だった。彼が狙うのは、目の前にいるNWの、コア。伸ばした爪がぶれて見えるほどの振動に震えている。それをコアに向けるには、甲殻が邪魔だ。
 そこへ、戻ってきた仁の爪が突き刺さる。爪の帯びていた電気がNWを痺れさせた直後、既にダメージを負っていた場所にみちるが剣を叩きつけ、コアに攻撃を届かせる為の隙間が開く。
「‥‥おちろよ」
 低く静かな呟きと共に、ススムはコアへと手を伸ばす。爪の振動がコアの周囲の肉を抉り取っていく。NWは暴れたが、仲間がそれを引き受けてくれる。
 程なくしてススムは、コアを手に入れた。あとは砕けるまで、傷つけるのみ。



 長年の放置の為か、予想していたよりはやや多めに、NWは生息していたようだ。特に群れていたわけではなく単品がたくさんいただけであり、おかげで退治も多対1となり、比較的スムーズに進められた。
 残る難関は‥‥文字通りの掃除のほうだった。
「雑巾がけ!? 俺が!? ひとりで!?」
「親の目がないのをいい事に仲を進展させようとした己を恨め。ああ、誰も手伝うなよ。手伝ったらもう一回やらせるだけだからな」
 ゼフィリアの撮った写真が徹の手に渡った事が、最大の災難だったものの、よい鍛錬になるだろうと飛呂氏がしきりに頷いていたのが、他の者には印象的だった。