【LP】最強の幻想ヨーロッパ

種類 シリーズ
担当 言の羽
芸能 1Lv以上
獣人 5Lv以上
難度 難しい
報酬 41.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/25〜10/31
前回のリプレイを見る

●本文

 そして舞台は再び、英国へ。

 ◆

 夜空に月が浮かんでいる。
 ぽっかりと。
 いつもと同じに見えるのに、なぜだか胸のざわつく月が。
「へぇ。結構いい所じゃないか」
 そんな月を水面に映す湖のほとりに、一人の男が降り立った。蝙蝠の翼をはためかせて。
 小さな灯を手にしつつ、暫し周囲を探索してみる。レバーのような何かの仕掛けを見つけて、至極楽しそうに口元を歪めた。
 ――ここまで来るのには苦労させられた。痛みや空腹、プライドを傷つけられる事に耐え、他人をうまく扱う術を必死で学び、「彼女」の足取りを追った。「彼女」こそ自分にふさわしい、「彼女」こそ自分の傍らに在るべきだと、それだけをただ考えて、それだけの為に生き伸びてきた。
 生島霧。戯れにテレビのチャンネルを回していた時、偶然に目にした「彼女」。いや、あれは必然だった。子供ながらに、彼女が自分の求めるものをもっていると、彼女の放つすべてから察した。気高く、貴く、強く、美しく、他者の追随を許さない。世間は彼女を認めていなかったが、自分に言わせてもらえば世間のほうが彼女の素晴らしさを理解できる器を持っていなかっただけだ。
 彼女がほしかった。自分のものにしたい、手に入れたいと願った。その為には何でもやった。なのに、ようやく手が届きそうになった頃、見失ってしまった。
「‥‥ああ、暗かった。月の光も星の輝きも届かない夜のように、真っ暗になった。けれど、そうじゃなかった。真っ暗じゃあなかった。生島霧。君の残してくれた、確かな光‥‥俺が、必ず手に入れてみせる。君の身代わりとして、ね‥‥泣きぼくろはないが、葛原みちるは確かに君の娘だ」
 母と同じものをもって生まれてきた娘。母の育てた種が、娘の代で花開いている。
 彼は思う。母のほうを追い求めていた自分がその花を摘み取ったとて、何がいけなかろうか。
「外で待っていてもいいんだが‥‥それじゃあつまらない。ここはやはり、中で待とうか。何の遺跡かまでは知らないが、彼らにとっては大事な場所らしいからな。占領、してあげようじゃないか。なあ‥‥‥‥お前達」
 湖畔に立つ影は彼のみ。動物ですらひっそりと眠りについているというのに、彼は何ものかに呼びかけていた。長袖の黒いシャツに包まれた自身の腕をさすりながら。

 ◆

 雲ひとつない、晴れ渡った空。
 眩しいくらいの日差しが、彼女達の前途を祝福しているかのようで、葛原徹はどこか誇らしかった。
「俺達はこの前掃除してもらったところにキャンプを設置する。お前達には勿論、最下層にあると思われるエクスカリバーの獲得に向かってもらう」
 その誇らしさを胸に、娘と娘の仲間達を今、送り出そうとしている。
「分析結果からすると、やはり遺跡内の地形は昔と相違ない。深い階層に進んでも俺達の作った地図が役に立つだろう。仕掛けの解除法メモも渡そう。鞘を発見した部屋までは、NWにさえ注意すれば容易に進めるはずだ」
 なのに。
 何故。
 何故こうも落ち着かないのか。
「鞘の部屋の奥の壁に、扉らしき切れ目があった。恐らくその切れ目の向こうが、聖剣の間だろう。‥‥前人未到の地だ、何がどうなっているのかはわからん。妙な仕掛けもあるかもしれない。絶対に油断するな。無理だと思ったら退け」
 宝を目前にしていても退却を許可するという言葉に、え、と娘達から躊躇いの声が上がる。
「俺達はお前達を失う気はない。失うわけにはいかないんだ。わかれ」
 本当ならついていきたいが、そうもいかない。親達はもう、次の世代に役目を渡す時だから。

●今回の参加者

 fa0510 狭霧 雷(25歳・♂・竜)
 fa0911 鷹見 仁(17歳・♂・鷹)
 fa0918 霞 燐(25歳・♀・竜)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1674 飛呂氏(39歳・♂・竜)
 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2648 ゼフィリア(13歳・♀・猿)
 fa3709 明日羅 誠士郎(20歳・♀・猫)

●リプレイ本文


「かび臭い」
「しかし空気が違うな」
 ぼやく咲に対して霞 燐(fa0918)が言ったように、最下層は「厳粛」という二文字がよく似合った。
「どうですか?」
 壁のくぼみの燭台横へランタンを置くと狭霧 雷(fa0510)は、膝をつき丹念に床を眺めるゼフィリア(fa2648)へ問いかけた。
「ビンゴやな」
 これまでも確認された、成人男性と思しき足跡。NWのものとは明らかに異なるそれはこの階層で最も顕著に現れた。足跡の上にはまだ新しい埃が積もっておらず、ごく最近の足跡である事もうかがえる。ゼフィリアは尻尾を揺らしながら、鋭くした視力で辿っていく。
「この前私達が入った後に誰かが入ったのかしら」
「だろうのぅ。徹殿は罠を破壊したとは言わんかった。先日は侵入の跡を見なかった事を考えると――」
「皆が日本に戻っている間にってわけね」
 警戒を更に強める緑川メグミ(fa1718)の言葉に飛呂氏(fa1674)が解説を添え、明日羅 誠士郎(fa3709)から結論が提示される。
 飛呂氏の言葉通り、遺跡内に設置された罠の中には破壊された物も見受けられた。NWによる可能性もなくはないが、足跡と合わせて考えれば、どうしてもその結論になる。
「となると‥‥誰が入ったのか、って事になるな」
 既に脳裏には特定の一人が浮かんでいるらしく、鷹見 仁(fa0911)の表情は険しい。その横顔を見守るみちるに、他の者も、仁が誰を思い浮かべているのかを察した。

 地図を見る限り、この階層は第一階層と相似だ。メインの部屋に続く道と、その両脇にある小部屋が並ぶ道。今回も3班に分かれていたので、聖剣との遭遇を控えて休むみちるの班をホールに残し、他2班が探索に向かう。
「ついにアーサー王伝説における究極の刀剣、至宝の宝剣の1つにして聖なる剣の代名詞、エクスカリバーが拝めるのか」
 緑川安則(fa1206)が頬を緩ませ、まだ見ぬマニア垂涎お宝に想いを馳せている後ろでは、メグミが雷から距離をとろうと横にずれていく。
「兄さまがいるのはいいけど、何度考えてもあなたのいる理由がわからないわ」
「私がいると何か不都合でも?」
 その態度が苦手なのよ。口をついて出そうになった言葉を飲み込み、彼女は機関銃で小部屋内部を蹂躙する。
 雷にしてみれば戦力と得意分野を考慮して班分けしただけだ。気にかけている人はいるがいつものように対処済みである。
「ドラマや映画では、最後の最後にガーディアンが出てくるのがセオリーなのよね。‥‥出てくるかしら?」
「当然だろう。――と言いたいところだが、さて、どうだろうね」
 刃を生じさせたライトバスターを構えながら走っていき、対象の背後に回る安則。敵NWはあまり動きが素早くない上に、普段は闇に沈む世界を生きていたからかランタンの灯がまぶしいらしい。対処行動にうつるまでに隙ができた。
 折角の隙を逃す理由はない。雷の携える切れ味鋭い日本刀、その美しい刃に、ランタンの光が揺れて煌めいた。

「顔が赤いぞ」
「赤くない!」
「春が来ているようじゃのぅ」
 別の通路を行く咲は、楽しそうな燐と飛呂氏に挟まれてムキになっていた。雷に着せられた防弾ベストが何故か気恥ずかしく思われる。
「虫でも入ったかの? 先程からずっと片方の耳だけ触っているようだが」
「囁かれていたからだな」
「ほほぅ、それはそれは」
「なんで知ってるのっ」
 物陰に隠れてたはずなのにと咲の顔がまた赤くなる。しかし燐はしれっとしている。
「見ていたのだ」
 何故見ていたかは尋ねるまでもない。双子の兄を弄るネタを増やす為だろう。
 こうなると予想はついていただろうに、なぜ雷は自分を別の班に振り分けたのか。咲にはわからなかった。みちるに対する仁のように守ると言い切ってほしいわけではないけれど、傍にいてくれてもいいじゃないかと。
 要するに、すねていた。しかも、すねている自分がとても恥ずかしく思えていたのだが。
「信用しているからだと思うがな。保護対象ではなく、対等な存在としてしっかりと見ているのでなくては、今のような咲の戦いやすい編成にはできない」
 燐のこの言葉は、咲の抱いていた不満を霧散させるには十分過ぎるくらいだった。「まあ過保護だとは思うが」という付け足された言葉すら耳に入らないほどに。

 ホールに漂うぎこちなさ。そっと相手の様子をうかがっては、視線が交わるたびに気を動転させて背を向ける、仁とみちるのせいだ。
(「大きくなったなぁ‥‥」)
 わかりやすい二人、とりわけ仁の姿に、誠士郎は目を細めていた。先日、ブツを没シュートした時とは微妙に異なる感慨を覚えながら。
「で、うまい事いったんか?」
「ふぇっ!?」
 そこへゼフィリアからの豪速ストレートが投げられた。みちるが裏返った声を出し、仁がペットボトルを取り落とす。一気に場が乱れた事に、浸っていたところを台無しにされたと誠士郎は怒る‥‥はずもなく、自分も気になっていたと、ゼフィリアと二人で恋人達に詰め寄る。
「聞いてどうするの!?」
「将来の参考にさせてもらうで」
「じゃあ俺は席を外させてもらう!」
「逃げようったってそうはいかないんだからっ」
 部屋の隅に移動しようとする仁の腕を掴んだ誠士郎は、そのまま肘の関節を極めにかかった。ホール中に悲痛な叫びが響く。
 燐・飛呂氏・咲の班が何事もなく戻った後も彼らが誠士郎の応援団となって騒ぎは続けられ、緑川兄妹と雷が一仕事終えて帰還すると更に盛り上がった。ほどほどにするつもりだったゼフィリアは完全獣化の済んでいる姿で尻尾を左右に揺らし、
「ケガだけはせんようになー」
 と注意した。


 重厚な扉だ。獅子が彫られている。奥には地下とは思えない空間が広がっていた。天井が高いのだ。
「なるほどのぅ。すぐ上の階層が妙な形になっていたのは、吹き抜けになっていたからだったんじゃな」
 書き溜めた地図を見比べながら、飛呂氏が感心した様子で言った。
 石畳の床は変わらないが、模様で前方へと誘導する。左右には成人男性二人で両腕を伸ばしてようやく届きそうな太さの柱が一定間隔で並び、ランタンの灯も届かない天井へと伸びている。部屋がホールより更に広いせいか、足音もやけに大きく響く。カツンカツンと、班ごとに固まりながら突き当たりにあるであろう聖剣の間への扉へ一歩一歩近づいていく。
 唐突に。ゼフィリアがみちるの腕を引っ張ると同時に歩みを止めた。面食らって振り向くみちる。ゼフィリアはまっすぐ見据えている。同じく視力を鋭敏にした飛呂氏が口元を引きしめると、皆も気づいて立ち止まった。まだ距離はあるが、ぼんやりとした灯が見えるのだ。これまで、持ち込んだランタン以外の灯などなかったのに。
 衣擦れの音が小さく聞こえてきた。誰もが戦闘体勢に入り、一部は間に合えとばかりに完全獣化を開始する。
 何かが風を切って飛んでくる。闇色なのか、それを捉えられたのは視力強化中の二人のみ。他は彼らの指示に従って身を伏せた。続いてもっと大きなものが飛んでくる。咄嗟に踏み出した誠士郎が、ゼフィリアの代わりに蹴り飛ばされて近くの柱に叩きつけられた。
 即座に仕返しの攻撃が飛ぶ。ゼフィリアが石畳の一部をはがし、影に向かって投げる。緑川兄妹からも鉛玉が贈られる。
「はっ」
 胸に溜まった空気を吐いたのか、嘲笑か。影は蝙蝠の翼を力強く羽ばたかせると、宙返りしながら後退する。かと思えば柱に一旦靴の底をつけて勢いを得、再び突っ込んできた。
 火花が散った。ぎりぎりで獣化が間に合った仁の刀と、相手の禍々しさ漂う剣が、切り結んでいた。
「やっぱりお前か‥‥近藤零夜!」
 刀を支える手指の先、爪からも火花が散る。すかさず相手はまた後退して距離をとる。
 ――近藤零夜。みちるを欲し、その為に手段選ばず、故に自分を慕っていた水元良を自殺にまで追い詰めた男。
「こんな所まで追いかけてくるほど、みちるさんにご執心ですか」
 低い声で雷が話しかけると、零夜は人の手によるものではないように見える剣を握りなおしてから、肩をすくめた。
「一度ほしいと思うと、手に入れるまで気がすまないタチでね」
「そのせいで良が死を選んだっていうのに、お前は何も感じなかったのか?」
 苦い表情で言う仁の、爪から刃へと巻きつけてある鋼線を火花が伝う。
「お前にとってあいつは‥‥便利な道具にしか過ぎなかったっていうのか」
 奥歯がきしんで今にも割れてしまいそうだったが、そうしなければ昂ぶりを我慢できなかった。あともう少しだけ我慢しなければならないのだ。先程零夜が離れた折、雷が皆に策があるからと言った。
「どうせお墓参りもしてあげていないんでしょう」
 メグミが不快感を露にする。根拠のない決め付けだったが、零夜がくっと口元を歪めた事で確信へと変わる。
「良はよく動いてくれたよ。優柔不断な甘ちゃんだったがな。オレの元でいつか反旗を翻す日をじっと待つというのも、一応可能だったろうに。所詮は弱者で、ただの駒だったという事か」
「ひどい!」
 たまらず叫んだみちるが身を乗り出すのをゼフィリアが止める。拳を振り上げようとする咲を燐が遮る。
「そういえば、お婆様から伺いましたよ。あなたのご両親と生い立ちについて」
 こんな時でも、雷は笑顔を絶やさない。一方、零夜は眼を急速に冷たくしていく。
「よく似た親子じゃないですか。私欲の為に他者を傷つける事を厭わないところなど、特に」
 それが零夜の中に在る最も大きな傷であろう事は察しがついていた。普段の雷ならば、そこまでは手を出さなかったかもしれない。けれど彼はその手段をとった。確実な勝利に向けて、いっそすがすがしい綺麗な笑顔が、傷を深く鋭く抉る。
「その口、二度ときけなくしてくれるっ!」
 視覚で捉える事のできない攻撃は、蝙蝠の得意とする音波によるもの。威力の高められたそれに、全員が腹の底からの衝撃を感じる。
「この程度、メグミの平手打ちに比べれば何と言う事はない‥‥人間が耐えれる反動は13ミリと言われるが、特別に20ミリ弾をプレゼントしてやろう!」
 生身の人間では翻弄されてしまう反動に耐えながらの2連射は、直撃はしなかったものの、体勢を崩させる事には成功した。
 連射の後には装填に時間が要る。かといって跳弾や誤射を気にするならば、直接攻撃を主とする者達が一旦上空へ舞い上がった零夜と逼迫してからでは遅い。
「メグミ!」
「わかってるわ兄さま!」
 使い惜しみしても仕方がない。兄妹による銃撃を合図とするように、本格的な戦闘へと突入した。

 動きを荒くして読みやすくするという雷の策は目的を達したが、そのせいで逆に雷が狙われる羽目に陥った事は明白だった。
 床に足をつけて斬り合っていた彼らだが、前後左右から飛んでくる銃弾や石礫、割り込んでくる者達に嫌気が差した零夜が上空に向かうと、翼を持つ者が後を追う。逆に翼を持たない者にできる事は非常に限られ、届く範囲でのサポートにまわる。
 しかしもっと厄介な点は別にあった。両手首の篭手が威力を削いでしまうのもさる事ながら、回避能力が高い。燐の堰月刀と安則のライトバスターを連続でかわし、飛呂氏の追撃を受け止めようとして失敗した零夜の高度ががくりと落ちる。すかさず向かってきた仁の羽根を音波で撃ち落とすと、彼は丁度近くにいた咲に左手を伸ばした。
 黙ってやられる咲ではなく、手を振り払いながら爪で傷を刻む。けれど次の瞬間に膝から崩れた。
「咲さん!」
 慌てて叫ぶ雷の様子がおかしいのか、零夜が高笑いする。触れるだけでよいその力、みちるには覚えがあった。自由を奪うだけだ。ゼフィリアの支援を受け誠士郎と共に咲と零夜の間に割り込むと、上空から雷が突っ込んできた。零夜は剣を両手持ちにし、雷を柱に叩きつける。引いた刃で切れた肉から血がしぶく。
「まずは一人目――」
 重い銃声。剣を突き刺そうとしていた零夜の動きが止まる。腹部に穴が開いていた。
「零距離ではさすがにかわせないでしょう‥‥?」
「ぐ‥‥」
 苦痛に息を荒げる雷を憎々しげに睨みつけ、零夜はよろめく。
「今だ!」
 聞こえた声にはっと上を見る。安則の炎。メグミの風。仁の雷。飛呂氏の光。全てが一体となって、降り注いだ。


 どんな侵入も許さず、聖剣は新たな主を待っていた。部屋の扉を開けた時のように、他の誰が触れようとびくともしなかったものが、みちるが触れた途端にするりと台座から抜けた。
 装飾は彩を添えるだけの小さな宝石。細い刀身。エクスカリバーはまさしく最強と幻想されし存在としてそこに在った。
「エクスカリバーには色々な説があるんだが――」
 安則が雑学を語り始めるが誰も聞いていない。薬で傷を塞いだ雷と呪縛の解けた咲が寄り添うのを燐が眺めている。
(「いつの間にか、護るより護られる事の方が多くなっちゃったけど」)
 仁の隣にもみちるがいる。弟分を護りたいと願った気持ちはあの時から変わらないと、誠士郎は顔を綻ばせ、そして跳んだ。
 肩口に埋まる刃。仁が呼んでると思いながら彼女は倒れる。零夜だった。
「みちる!」
「うんっ」
 ライトバスターで攻撃と見せかけ、尻尾を活用して素早く聖剣に持ち替えるみちる。反対側にまわった仁と呼吸を合わせ、今度こそ‥‥
「まだよ!」
「誠士郎殿を後方へ!」
 動きを止めた零夜の体を火傷跡に広がる刺青ごと貪るように、剣と篭手がNWの姿へ戻っていく。
「‥‥堕ちていたのだな」
「けどこれさえ終われば帰れるんや」
 余力は乏しいがそれでも全員分をかき集めれば、目の前の2匹などすぐに倒せるだろう。何よりも家族が、彼らの帰還を待っている。