劇場版奏デ・�Vノ壱ヨーロッパ
| 種類 | シリーズ |
|---|---|
| 担当 | 香月ショウコ |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | やや難 |
| 報酬 | 9.9万円 |
| 参加人数 | 7人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 09/25〜09/29 |
●本文
●奏デ歌ウ想イ、出演に当たって出演者にはこれらと以下注意点各種を踏まえてテンプレートを埋め、番組の登場人物を設定、毎回提示される目的の達成を目指してほしい。
【能力】「奏」もしくは「歌」を選択。
【ジャンル】能力の種類を設定。いずれか一つ。
奏‥‥白兵（＋5）、単体射撃（＋3）、複数射撃（＋2）、散弾／扇状／放射（＋1）、回復（＋3）、補助（＋3）
歌‥‥単体射撃（＋4）、複数射撃（＋3）、散弾／扇状／放射（＋3）、回復（＋3）、補助（＋4）、修復（＋5）
【射程】能力の射程を選択。いずれか一つ。
奏‥‥短（＋5）、中（＋3）、長（＋1） ※短：０〜１ｍ 中：１〜１２ｍ 長：１２〜１００ｍ
歌‥‥短（＋4）、中（＋4）、長（＋2）
【効果】４つのパラメータに合計２０ポイントを１〜１５の範囲で振り分けてください。
威力／効果：破壊力、回復力など。
速度：演奏・歌唱から発動までの速度。射撃であればその弾速。
持続：その能力が発動してからどれだけの時間効果を持って存在し続けるか。
安定：発動確率、効力の安定、妨害に対する抵抗。
【回数】能力を一日に使用できる回数。
ジャンルと射程を決定後、（）内の数値を足した数。
パラメータポイントを２点消費することで使用回数＋１することも可。
【その他】能力についての注意点
『奏士』と『歌士』の掛け持ちは不可。しかし、『奏士』なら『奏』、『歌士』なら『歌』の複数習得は可能。
※フリー楽士オプション
フリーの楽士となる方は以下の制限に注意して設定を作ってください。
・無条件で『奏歌』の持続＋１、使用回数＋２。
・３人以上での『共鳴』『共声』『共音』の発動・参加不可。
フリーの楽士は協会に属さず、かつ一人で戦うことに慣れた楽士のことを指します。フリー楽士オプションの対象になる基準は決まっていませんが、協会に所属しなくなってから最低でも半月以上を目安にしてください。
＜キャラクターテンプレート＞
キャラ名：
能力：能力・ジャンル・射程／効果：威力・速度・持続・安定・回数
備考：
＜テンプレート見本＞
キャラ名：香月
能力：奏・白兵・短／効果：６・７・３・４・１０
備考：楽器はヴァイオリン。弓が光の剣になる。
※皆さんが演じるのは原則として奏歌楽士です。一般人、マイスターは現在選択できません。
●劇場版『疾走』
「そーいうわけで、ドイツの精鋭部隊と一般楽士達が今外をうろうろしているわけだけど‥‥どーする？」
如月 楓雅の自宅にて、部屋中にめいめい座った一向へエステルが状況を説明する。現在この場にいるのは、演習中に精鋭部隊に襲撃され逃げ果せた者、『紋章』教習に見せかけた捕縛作戦から脱出してきた者、そして桐原 藤次率いる部隊を撒いてきた者。その一部。各国の楽士達をエステルとエレオノーラ、そして日本協会の市村 七海が集め、この家へ集結させた、第１弾。今はエレが第２弾を、七海が第３弾を連れてここへ向かっている。
「『紋章術式』とやらをどうにかするには、俺達はどうすればいい？」
「多分ムリ」
一人の楽士の問いを、エステルが軽く流す。どうしてだ、と聞く他の楽士達にもまとめて、エステルはその答えを話す。
「アレはね、増幅器（アンプ）役になる楽師１人に、旧響派トップレベルの楽師１３人が力を流して構築するもんなの。世界中の楽師の上から１４人を一度に相手に。出来る？」
「だが、１４人揃わなければ発動出来ないのなら、１人でも倒せれば‥‥」
「ずっと力を注ぎ続ける必要は無いのよ。紋章って。だから、キミ達を倒してからゆっくり発動でも良いわけ。向こうは。紋章を阻止したいこっちは、１４楽師を倒す前に、まずドイツ精鋭部隊を中心にしたドイツ楽士ほぼ全部とやりあわなきゃならないの。幾らこっちに『精神支配楽団』潰しが何人かいたって、ロシア東の楽師級４人がいたって、日本協会の楽師が２人いたって、消耗した状態で戦えるわけ無いじゃない」
「じゃあ、俺達は‥‥」
「逃げる？」
「そういうわけにはいかない！」
ダン、とテーブルを叩く楽士。一応、ここは他人の家だということを忘れてはいけない。
直後、一人の女性楽士が手を挙げた。
「一つ、聞きたいことがあります。先ほど、ドイツ楽士『ほぼ』全部と仰いましたよね？ 敵でない者もいるのですか？」
「ふふーん、いいところに気付いたね。だってほら、ドイツ楽士の中にドイツ協会の人じゃない人もいるじゃない。その辺、うまく突っつけば何か出るんじゃないかなって思って。フランス協会も日本協会も新響派だしさ」
エステルのその言葉に、思いつくのはとある部隊の指揮官のこと。そういえばあの部隊の楽士達の半数ほどは、あの指揮官の直属だと聞く。
「でもね、そこを突いたってそんなに情勢は変わらないんだよね。基本的に、一度外側に出てきちゃった私達は『紋章術式』にはもう辿り着けない。頼みの綱は、まだ内側にいる人達なんだ」
話していると、エレと第２弾が戻って来る。すぐに七海と第３弾も来るだろう。エレが尋ねる。
「そういえば、捕まった渋谷 伊紀っていう楽士の話を聞いてなかったわよ。彼女がどうしたって？」
「あ、私捕まったって言ったっけ。あー、多分捕まったってだけ。もしかしたら市村楽師が連れて来るかもだけど、その時は怒んないでね。‥‥えーとね、彼女、『異端者』なんだ」
「『異端者』？」
「彼女、確か『歪』に襲われて奏歌の力が覚醒したって言ってたけど‥‥実は彼女を襲った『歪』って、『歪』じゃなかったのよ。貴女なら、『ドール』って分かるでしょ？」
「まさか‥‥つまり、『歪』でなく、それに似せた形だけの存在に対面して、覚醒したってこと？」
「暴走した『ドール』だから彼女らに襲い掛かったんだけど‥‥普通、楽士か『歪』そのものに接触しないと覚醒の条件が揃わない。なのに、彼女は覚醒した。一般の人も何らかの拍子に楽士になってしまうかもしれないその現象に、ドイツ協会のトップ‥‥アデライデ・ブリーゼマイスターは興味を持ったのよ。『紋章術式』発動後の世界において、楽士による支配体系を乱す可能性があるから」
そこまで話したところで、七海が帰ってきた音がした。これで、全員が揃ったことになる。これまでの話を掻い摘んで説明してから、作戦の相談となる。
「あ、そーそー。スパイさんの貴女だったら一人で舞台上まで戻れるかもしれないよ。こっちで戦うか、向こうで戦うかは任せるわ」
エステルはそうエレに言ってから、向き直り。
「さ、質問は今のうちにね。始まってからじゃ遅いよ」
●リプレイ本文
「もういい加減言い飽きた‥‥毎回！ 毎っ回！！ マジでこんなんばっかりか！！」久瀬 灯（倉橋 羊（fa3742））の言う『こんなん』とは、何かに巻き込まれて誰かに追っかけられて何かから必死で逃げる事態。だが、それも仕方ない。運命だ。主に監督と君のマネージャーに定められた運命だ。
「捕まった子達は大丈夫かしら‥‥意識失ってないかしら‥‥ごはんはちゃんと貰ってるかしら‥‥お腹出して寝てないかしら‥‥？」
「助けるためにも、私たちは外で頑張って暴れましょ、おかーさん」
如月 春燈（富士川・千春（fa0847））がおかーさん（正しくはおとーさんか？ 暁（雅・Ｇ・アカツキ（fa5498）））の肩を叩き、もう目の前にあるドイツ協会本部棟周囲の状況を見る。ここに来るまでの間にも多くの楽士達が警戒していたが、それらは春燈達とは別の隊、三ケ田 審良や市村 七海などが戦い引き付けている。
それでも、防衛戦力は多かった。事態の真相を知る者も知らぬ者も含め、一国の楽士協会の戦力の多くが集まっているのだ。数十人でその全てを相手にし、更にプラスアルファを引きずり出そうというのは難しい。
「それでも、戦わなきゃいけないわ。頑張ってね、灯」
「そやな。援護はしっかりしたるさかい、灯君気張ってや」
「ちょ、俺かよ！？ まあ、外で暴れるだけなら得意だし、不本意な的役なら慣れたもんだけどさ」
暁と朝香 凛（雅楽川 陽向（fa4371））の言葉に、灯は嫌味な視線を暁に向けながら構築済みの弓に光の矢を発生させる。灯が頷いて合図すると、凛とエレオノーラ（桜 美琴（fa3369））が本部棟前に詰める楽士達を見据えて。
「ど・れ・をかけようかな〜♪ まずは派手に『常闇』やな！ ‥‥何や灯君、その視線？」
「いや、楽しそうだなーって思ってさ。いや、俺も頭脳戦より単純労働のが性に合ってると思うけどさ」
「楽しいのはほんとやけど、頭脳戦のあたり灯君と一緒にせんといてな。『永遠の 闇に誘われ夢を見る』」
灯の「それどういう意味だ」というツッコミはスルーして、即座に戦端が開かれる。凛の歌で様々な奏歌の能力の低下を受けたドイツ楽士達に、追い討ちでエレの精神疲労の歌がかけられる。こちらは事前の打ち合わせにより少々小声で披露してもらった。
「こいつ撃ってから突撃しろ！ 『鳳仙花』！」
灯が上空に向かい放った特大の一撃は、空中で爆裂して地に降り注ぐ。突然の奇襲に対応しきれず浮き足立つドイツ楽士達の真ん中へ、続けてトライデントを構えた春燈が突入する。続き、白兵向きの奏歌を持たぬ楽士を相手取ってエレが走る。
奇襲は成功した。ドイツ楽士達は次々に無力化されていき、後衛を狙った射撃などは暁のダンシング結界が防ぐ。開戦から５分間は、完全に相手を圧倒していた。だが。
戦力の絶対数が違った。ドイツ楽士達は倒せど倒せど増援を呼び寄せ、次々に到着する。多くの楽士を引き付けることは目的どおりだが、前衛として戦える者が春燈とおまけ程度のキックの鬼エレしかいないとなると、どうしても徐々に押されてくる。
ついに、射撃ではなく直接攻撃を防ぐために暁が結界を張ろうとしたその時。暗い色の衝撃波が飛来し、凛を狙っていた楽士の一人を仕留める。
「皆さん、お久しぶりです。もう色々始まっていたんですね」
現れた鵠夜（玖條 響（fa1276））は、駆けつけると押されていた前線に加わって敵の楽士を押し返す。新たな敵の出現に、ドイツ楽士達は一度距離を取り様子見の体勢に入る。
「えーっと、確かお兄ちゃんの知り合いの。どうしてあなたがここに？」
「鵠夜です。日本協会での一件以来ですか、春燈さん。楓雅さんに呼ばれて来たんです。ですが、一足遅かったようで。楓雅さんが無事ならいいのですけど」
「あれなら大丈夫だろ。死んでも記憶喪失設定で戻ってきそうだ」
灯の暴言に春燈と凛がダブルで全力ツッコミをかまし、よろけたところへ追撃のゴーン。灯ダウン。
ゴーン？
「そう、忘れていました。さっきそこで偶然会ったので、助っ人としてお呼びしました」
「久しぶりね。ドイツ旅行はどう？」
ご自慢の竪琴をぶんぶんやりながら、美樹 秋緒（檀（fa4579））参戦。
「‥‥暗黒の時代再び‥‥何でここに」
「バカンスのついでに寄ったのよ。荷物持ちが行方不明になって困ってるところに、鵠夜さんが車で通りかかってくれて。助かったわー、ホテルまで荷物運ぶのが大変で。あの子、後でお仕置きね」
ゴーン兄弟長男、死亡決定。
「バ、バカンス‥‥バカンス言うたら、板に乗って海を渡り各地の力自慢と戦い歩き、唯一の癒しは海辺のパラソルの下での食事のみという、恐怖の旅‥‥」
「あら凛ちゃん、バカンスはそんな辛いものじゃないわ。まだドイツで３カ国目だし」
「さんかこく！？ どんだけの距離、海を渡って‥‥」
「つーかさ、今それどころじゃねぇから長い話は後にしてくんねー？」
秋緒と凛の会話に、恐れ知らずの灯が水を差す。すると、よーく見知った竪琴アタック『ゴーン』が‥‥
寸止め。
「ええ、その通りよ。まだあまり状況を把握出来ていないけれど、今は大変な時なんでしょう？ よく止めてくれたわね、灯」
「え、あー、お、おう」
「あまり派閥のイザコザに巻き込まれたくはないんですけどね、状況も状況ですし。皆さんのために力を振るいましょう。これも何かの縁‥‥ですし」
様子見をしていた楽士達に向き直り、鵠夜が再びその槍を振るう。秋緒は瞬時に戦闘モードに移行したエレと共に蹴りとゴーンの嵐を浴びせに走り、少し遅れて春燈が戦列に復帰する。
「‥‥‥‥」
「よかったやん、灯君。叩かれんで」
「いや、でも、未知の出来事だから不気味で怖いな‥‥」
とりあえず現れた敵を一掃して落ち着いたところで。秋緒には状況の一切を、鵠夜にはここ数日に起きたことを掻い摘んで説明する。
「ということは、楓雅さんは中ですか‥‥行きますか？」
「いや、中はアイツいるなら全然問題ないだろ。寧ろ俺達まで中に入ったら、敵が無駄に集まっちまう。俺達は外で暴れに暴れて、中から楽師の一人でも引っ張り出さねーと」
「そのとおりだわ。暴れられる限り暴れなきゃ。ところで灯くん、あと何発撃てる？ おねーさんが回復してあげるわよ？」
「凛、お前あと何曲？ 回復してもらえば？」
「春燈嬢、長く戦っとったけど残り回数はどーや？」
「私は問題ないわね。ここぞという時の一発が無いと困るから、やっぱり灯よ」
醜いなすり付け合い。
「じゃあ、間を取って今のうちに皆回復してあげるわ。って、春燈ちゃんは怪我もしてるじゃないの」
「春燈の怪我は、私が治してあげるわ」
「じゃあ、折角だから結界も張って、しっかり休める場所を作ろうかしら。休憩は取れるうちに取るのが鉄則よ」
年長者達がうんうんと段取りを立てるのを、年少者組は戦々恐々としながら各々に対抗準備を始める。春燈は指で耳を塞ぐ準備、灯は常備の耳栓を腰のケースから探し、凛は‥‥。一方で、今の状況の動きがよくわからない鵠夜はぽかんと立ち尽くして。
暁のタンバリンの音でリズムを取り、秋緒の竪琴が奏でられる。張られた結界の中を癒しの光とエレの美声が満ちて、傷は塞がり精神力は回復していくが。耳を塞いだ春燈と耳栓をつけた凛の歪んだ顔と、無防備だった鵠夜、いつの間にか耳栓を奪われていた灯の苦悶の表情から何かが崩れ落ちていることは分かる。『共音』、『破音の癒し』。その実、音が酷いのはエレだけなんだけどなあ。
「ふ、ふ‥‥不幸和音」
「事前準備の大切さを思い知りましたね‥‥」
・ ・ ・
警戒していた遭遇は突然に起きた。灯が即座に矢を向けた相手は、ドイツ楽士精鋭部隊指揮官、深雪・フランソワ。灯達は皆彼女と直接の面識は無いが、迅雷が回収してきた伊紀のビデオに写っていたその姿を確認している。
深い森での遭遇、見えているのは彼女一人だが周囲にどれだけ潜んでいるか分からない。皆注意深く辺りを見回す。
深雪が何が言おうと口を開き、灯が弓矢を構えた手に力を込めた時。高方頭上で音がした。同時に、聞き覚えのある女性の声。
「ストーップ！ そこまでだよ灯くん。深雪さんは撃たないの」
現れたのはエステルだった。いきなりの登場と言っている内容の不可解さに混乱する灯だが、とりあえず弓矢を下げるだけは下げておき。
「もう、誰かが突っついてくれると思ってたのに、全然気付いてくれないんだもん。仕方ないから私が直々にやっちゃったよ。‥‥深雪さんは敵じゃないよ。今本部の地下では戸倉 白くんっていう楽士がドイツ教会から寝返って協力してくれてるけど、彼女も似たようなクチ。彼女は目的を知らされないで部下と一緒に雇われてるだけのフリー楽士だよ」
エステルの説明に、深雪は一言「そのとおりだ」と答える。聞けば彼女は新響派の日本協会楽師とフランス協会楽士を両親に持ち、旧響派ドイツの目的は知らなかったという。
「でも、うちらそんな事ちっとも聞いてへんで？」
「うん。聞かれなかったから。でもあの会話の流れで気付いてくれてると思ってた‥‥おねぃさん悲しいっ！ ‥‥まあそれはともかく、今は彼女の直属だった精鋭部隊員が他の残りのメンバーを無力化して、三ケ田楽師や市村楽師と合流して戦ってるよ。‥‥向こう、楽師のカール・オレーンが出てきた。とりあえず最低限の目的は達せられたよ」
「今、この瞬間だけはな！！」
エステルの言葉に返すようにして、遠くから男の声が聞こえる。３０人ほどの楽士を引き連れるその男は、髪を真っ赤に染め逆立てた、若い男だった。
ディエゴ・カバリェ。『暴走電流』の異名で知られる、旧響派スペインの楽師。
「まったくお前らがうるせーから、俺とカールのあんちゃんがこういう面倒なことに駆り出されるんだよ。さっさと落ちてくんね？」
ドン！ と一直線に放たれる閃光。それを暁が張った結界が受け止めるが、精製直後で強度が足りず、少しして破られる。皆はその閃光を左右に分かれて回避して。お返しとばかりに灯が深雪に撃つはずだった『舞華二連』を敵の集団に向けてぶっ放す。
調律、開始。
「『輝ける 光纏いて 武神なる』‥‥」
凛の『光輝』の歌の援護を受け、灯が矢を２発、立て続けに放つ。その後に続くようにして春燈と鵠夜が駆け、一気に間合いを詰める。
ディエゴは舞華二連で体勢の崩れた部下達を一瞥すらせず、続いて飛んでくる２発の矢に向けて手のトライアングルを向ける。そして、暴走電流が放たれる。電流は灯の矢を飲み込んでもその速度は落とさず、今度はしっかりと構築された結界にぶち当たって結界を消滅させる。灯の矢の後についていた春燈らは散開し、ディエゴに比較的近かった春燈がディエゴに、鵠夜は後方の楽士達を叩き潰していく。
「こうなると、私の歌での回復はちょっと難しいわね‥‥行ってくるわ！」
エレが鵠夜の手助けに走り、灯は凛の『磐石』の歌で安定性を増した矢を春燈の援護のために放つ。秋緒はゴーンで戦いに赴いてもよかったが、さすがに相手が相手。治療薬としての役目を果たすことが出来るよう、後方待機。
「灯、後ろはアタシに任せてガンガンやりなさいガンガン。あんたの後ろはアタシの踊りが守るわ〜」
「キモい」
置いといて。
先制攻撃の効果もあって早々に片付いたザコの相手から鵠夜が加わると、春燈ＶＳディエゴのビリビリ対決は少し春燈に優位に傾いた。楽士対楽師といえども、接近しての白兵能力対射撃能力では白兵のほうが有利だ。それに、春燈もかつて臨時で楽師になったことがあるほどの楽士でもある。互角の戦いが、動き始めた。
「春燈！ 一発で始末するぞ！！」
「じゃ、３度目の正直！！ 凛も良い！？」
「引き受けたで！！」
灯の声に春燈は一度間合いを取り、代わって鵠夜がディエゴの相手をする。そうして出来た一瞬の時間で、灯の炎の矢が、春燈の雷を纏ったトライデントが唸りをあげる。
「『動かざる 岩になろう この想い』‥‥今回こそは、きちっと目に見える形で決めてや！」
凛の『磐石』の歌で補強された灯と春燈の共鳴が、巨大な力の渦を作り出す。攻撃に特化した二人の能力が響きあう、それは。
「「「迅雷旋炎撃！！！」」」
カメラのフラッシュを何十倍も強力にしたようなフラッシュが世界を焼き、鵠夜がディエゴから距離をとった瞬間、近くにいるだけで焦げ付きそうな熱波を伴った巨大な衝撃が飛んだ。ディエゴは『暴走電流』を放ち相殺を試みるが、それも叶わず。
・ ・ ・
「あれは‥‥？」
「多分、うちの楽士でしょう。こちらも片付きましたし、地上で出来る抵抗はこのくらいでしょう」
少し離れた森の上空が赤白く光り、轟音が抜けていくのを感じ、七海が尋ねた。それを、カールを捕らえた明良がそう答える。
「あとは、地下の楽士達しだいか‥‥」
