映画をとろう6アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 松原祥一
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 難しい
報酬 不明
参加人数 6人
サポート 0人
期間 10/09〜10/13
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●本文

 某月某日。
 映画好きが集って、自分達で撮る映画の話をしていた。
 一本うん億円、うん十億円の商業映画でなく、映画会社もスポンサーも絡まない低予算の自主制作映画。
 何の束縛も無く好き勝手に撮れるのは楽しい。
 話すうちに夢は際限無く膨らむ。
 もちろん、酒の席で話すのと実際は違うものだ。いざ撮り始めれば現実的な問題は山盛り。拘りぬいた挙句に延期、分裂、空中分解‥‥未完成の道を辿る場合も少なくない。仮に完成しても、上映のアテも無い。
 それでも趣味としての映画作り、或いは映画界のステップとして自主映画を作る人は多い。

「やってみようよ」
 誰かが言った。
 監督も、脚本も、俳優も、カメラも美術も音楽も何もかも未定である。
 すべて白紙のキャンバスに、これからみんなで色をつけていく。
 果たして、どんな映画が出来上がるだろう。


「やっと撮影開始‥‥でも、このペースだといつ完成するのやら‥‥」
 彼らの自主制作映画はようやく撮影段階に入った。
 ただ脚本は未完成で、撮影計画も穴が多い。ずぶずぶと製作が遅れそうな匂いがプンプンする。
「スケジュール考え直しますか?」
「と言ってもなぁ‥‥」
 撮影プランを色々と考えて見る事は無駄では無いだろう。
 ただ、脚本や何やかやが未定である以上、後からどんどん変更する可能性は高いが。


 さあ、今回はどうなるか?

●今回の参加者

 fa0523 匂宮 霙(21歳・♀・蛇)
 fa0917 郭蘭花(23歳・♀・アライグマ)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa2315 森屋和仁(33歳・♂・トカゲ)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2564 辻 操(26歳・♀・狐)

●リプレイ本文

 恒例の自主制作映画の会合。
 都内某所のファミレスにその日集まる予定のメンバーが揃うと、監督の森屋和仁(fa2315)は言った。
「今回は撮影を中止しようと思う」
「やっぱりそうなるか」
「‥‥ま、しょうがないよな」
 前回無理をして撮影開始に漕ぎ付けたが、今回の連絡を受けた段階で予想はあった。撮影中断宣言は、驚きもなく受け入れられる。
「ひとまず撮影は中止して、演技練習と脚本の完成に向ける。異論もあると思うが、あと少し時間をくれないか」
 そう言った森屋に、カメラマンの郭蘭花(fa0917)は何か言いたげだ。
「‥つまり二人が脚本で、後のみんなは稽古よね。あたしは考える方に回っていいかしら」
 撮影を担当する蘭花は稽古にも顔を出すつもりだが、折角時間があるなら中断の間に撮影プランを練り直したかった。予算を心配しての事だが、少しでも節約出来る所を見つけようというのだ。映画制作において潤沢な予算は半ば幻想だが、何事にも限度限界はある。
「流石に、あたしの懐から出すにも限りがあるからね‥‥」
 相変らず予算は厳しい。明確な予算の管理者が居ない事も問題だろうか。
「よし、撮影資金をゲットする為にお姉さんが、頑張っちゃうんだから〜♪」
 マルチタレントの辻 操(fa2564)が元気よく立ち上がる。が、皆の注目を受け流してまた座った。
「等という事はしません。もう十分自腹切ったしね、私も、ずぶずぶ金を入れるのはどうかと思うのよ」
 幾ら低予算映画と言っても、歯止めが無ければ際限はない。
 本業がカメラマンの森屋だが、自分が脚本方面に掛かりきりになるため、撮影方針については蘭花に一任した。予算が気になる辻はその場で蘭花に幾つか確認していた。
「ふむ、これは是が非でも脚本を、早く完成させねばな」
 脚本家の匂宮 霙(fa0523)は森屋と協力して大至急脚本を仕上げる事になった。序盤の展開は前回出来たので、今回は中盤以降を一気に書き上げる事になる。
「本が出来るまで、あたしらは通し稽古だな」
「脚本完成前の稽古だからって緊張感無かったら殆ど意味ナイし、本番のつもりでやるよ」
 映画の出演者達、バンドヴォーカルの亜真音ひろみ(fa1339)と格闘アイドル女優のブリッツ・アスカ(fa2321)は演技練習に熱心だ。二人とも格闘経験者だけにアクションは堂に入ったものだが、これまでも芝居には不安があった。
「二人とも、多少は見れるようになったよ」
 と演技では一日の長がある辻は評価していたが、亜真音もアスカも自分が納得していない。
「それじゃ駄目なんだ」
 アスカが言う。格闘アイドルだった彼女は最近ドラマにも出演し、『女優』としての自覚が生まれていた。肝心の演技力は、門外漢が素人芝居の役者に成長した程度だと、本人達が一番分かっている。
「上達に早道が無いのも分かってる。だから、ひたすら練習あるのみ!」
「あたしも頑張るよ。演技がマシになったのは指輪の、オーパーツの力だ、あたしの実力じゃない、だからいつか、この撮影が終わるまでには指輪無しでもマシな演技が出来るよう今まで以上に練習に励むつもりさ」
 やる気を見せるアスカと亜真音に、芝居では先輩の辻は複雑な表情だ。
「熱意があるのは良いことだわ」
 一朝一夕で演技力は付かないが、努力無しで上達は有り得ない。ともあれ、当面の目的は確認できた。脚本完成と演技稽古。
 この撮影中断が、映画制作を良い方向に導くと信じよう。

●通し稽古
 稽古の場所は、以前にも使った都内の公園だった。公民館などの一室を借りられない事も無いのだが、何よりタダであり、また普段不規則な生活を送る彼女らとしては時間を気にしなくて済むのは有り難い。
 出演者達はこの場所で、夜中まで練習を繰り返す。
「差し入れ持ってきたよー」
 毎日、腹ペコな頃合を見計らったかのようなタイミングで自転車に乗った郭蘭花が現れる。ベンチに広げられた料理は、呆れるほど量が多い。
「はは‥‥最初はあんまんを作るだけのつもりだったんだけど。他にも色々と作ろうかなとやってるうちにね‥‥必要な栄養は全部入ってるからね」
 郭の料理は中華が基本だが、色々と試してバリエーションも多い。いつも食事をしながらその日の反省会。尤も、気になる所があれば真夜中まで稽古は続けた。
「脚本の方はどう?」
「監督は、今月中には目鼻をつけるって言ってたけど」
 蘭花は脚本の方にも差し入れを持って顔を出している。大変だろうと聞くと、本当か嘘か料理をしながら撮影プランを練っていると笑った。
「監督に、こっちにも寄ってくれって伝えてくれないか?」
 食事の後には、亜真音が特製のブレンドコーヒーを皆に配った。
「台詞の言い方とか、演技を見て意見を言って貰いたいんだ」
「そうそう」
 渡されたコーヒーを旨そうに飲みながら、アスカも頷く。演技の基礎は辻が教えているが、それだけでは役の練習にならない。何しろ脚本が無いのだから、監督の持つ役のイメージを確認したかった。
「俺の役は、かなり自分と近い性格だから、比較すればやりやすいんだけどさ。でも分からない事は多いんだ。普段の自分がどんな事してるかなんて、意識したことないしな」
 そう言ったアスカは臓器提供者の気持ちが影響するシーンでは、自分の妹の事を思い浮かべているという。
「やりやすさでなら、あたしも同じだな。ロック歌手の役だから台詞面で困る事は無いよ。だけど芝居となると話は別なんだ」
 演技に苦しむ亜真音は今も居残り練習を続けていた。その甲斐もあってか台詞は棒読みでなくなってきた。
「感情を動きで表わすのが難しくてさ」
 アスカは自分の顔を伸ばしたり引っ叩いたりしてみた。芝居をする時の表情や仕草、間の取り方といった総合的な演技力はまだまだ課題が多い。いや課題しか無いと言っても良いほどだ。
「演技のこと、全部教えてくれ。あたしの演技力の無さで映画を駄目にしたくない。可能性のあればどんな事でも試したいんだ」
 亜真音の熱意に、辻は眉間を押さえた。
「確かに最低限の演技力は必要だけど。無茶はしない事ね。映画は演技力があればいいって訳じゃないから」
 些か問題発言だろう。横で聞いたアスカは目を丸くする。
「そうなのか? 大事なのは登場人物の気持ちになりきる事だと思ったんだけど?」
「感情移入は大切よ。だけどね‥‥悪いけど、昨日今日に演技を始めた貴方達に期待できるレベルはしれてるの。演技修行に没頭しすぎて、得意分野が疎かになったら何にもならないでしょ」
 三人の話を側で聞く蘭花は吃驚している。
 随分と明け透けに言うものだ。連日の稽古の影響だろうか。アスカと亜真音は思ったことを率直に言い合っていて、辻もそれに応じている。
「そこまで言わなくても‥‥」
「そうね。だけど映画は一人で作るものじゃないから。‥‥私はこの外見で来る仕事が嫌いだから、声も演技も勉強したのよ。だけど全然評価されないの、そんな暇があるなら自分を磨けって‥‥磨いてるのにね」
 派手な外見からセクシー路線に見られがちなのを辻は気にしている。顔と声が良くて芝居が出来ても、潰しが利くとは限らない。
「言いたい事は分かるわよ。亜真音には歌、アスカにはアクションという強みがある。二人を活かそうと思ったら、そこから考えるのは基本だけど‥‥」
 蘭花は途中で口を閉じた。この映画は商業映画ではない。出来る事よりやりたい事を優先する事もあるだろう。但し、それでも映画は一人で作るものではない以上、妥協や変遷と無縁ではいられない。
「みんなで頑張らなきゃ、映画なんて出来ないですからね‥‥」


●脚本
[映画中盤〜終盤(予定)、匂宮霙の草稿より]
 ※未確定部分は?付き括弧書き

 三人が出会い、始めは臓器提供者の妹がロック歌手を不審者だと思い、攻撃をする。そこへ大学生の仲介が入り、提供者と妹しか知らない事を話すなどして何とか一時停戦。
 三人は記憶を確認しあうように話し合いを重ね、妹は二人の言うことを信じて和解する。
 和解後、妹が狙われていることを知った二人は彼女を救うために証拠品を回収し、病院の悪事を暴こうと決意。行動を開始する。
 記憶の断片を頼りに探索を始め、なんとかその証拠品を回収するが、ふとした隙に妹が犯人グループにさらわれてしまう。
「証拠品を渡さなければ妹を消す」と犯人グループに要求され、二人は彼女を救うために相手側(使われなくなった工場跡?)へと乗り込む。
 が、当然犯人グループは全員生かして返す気は無く、三人に襲い掛かる。
 三人は窮地に立たされるが、犯人グループの一人である心臓を移植された女医が裏切り、窮地を脱する。
 そうして4人の力で犯人グループを捕獲。当然4人とも大なり小なりの怪我を負う。(女医は命に関わるような大怪我を負う?)
 その後、後日談。

 脚本家の匂宮は普段着として着物を好んだ。白髪朱眼、抜けるような白肌の匂宮は白蛇伝の蛇の精を思わせる。森屋がそう言うと。
「当然だろう、俺は蛇だぞ。‥‥白蛇伝は中国の伝説と聞くが、あれの元は獣人の実話だ」
「そうなのか?」
「ふむ、蛇族の間では有名な話だぞ。中国のオーパーツ、宝貝研究家がかなり前に実証している」
 森屋は感心したが、匂宮はホン屋なのだから話を作っている可能性は否定できない。
「‥‥」
 そういえば最近は新しい遺跡が幾つも発見されて、NWも活性化しているとかでWEAは大変らしい。とは言え、今の彼らに世界を又にかけた大冒険は無縁。深夜のファミレスで自主映画の脚本作りは詰の段階に入っていた。
「‥‥出来た」
 匂宮は深々と息を吐き出し、眼鏡を取って目の周りを揉む。
 所々に穴があるものの脚本の第一稿が出来上がった。
「お疲れさん。と言っても、まだ草稿だが」
 森屋は渡された脚本をペラペラとめくり、次の会合でこれを皆に見せると匂宮に言った。
「みんなで協議して修正してまとめて、それで脚本は完成だ」
「ふむ、そうだな。まとめは頼むぞ」
 匂宮の脚本と、それから蘭花が描いた絵コンテと撮影プランを森屋は鞄にしまう。ちなみに蘭花は一足先にダウンして机の上で寝息を立てている。森屋と匂宮もフラフラだ。
「人手が足りない時は?」
「代役を考えないといけないな」
 脚本に名前が載っているが会合に来ていないメンバーが何名かいた。あくまで自主的な参加による映画作りだから、途中で止める者も珍しくはない。通し稽古も大学生の協力で何とか形になったが、不安材料は少なく無い。
「‥‥」
 色々と正念場。いや、まだそれを語るには早すぎるか。


次回、会合予定は11月10日。その少し前に連絡が届くだろう。