魔女狩りの夜 後編アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
水貴透子
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.2万円
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参加人数 |
9人
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サポート |
0人
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期間 |
02/10〜02/13
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前回のリプレイを見る
●本文
『最後に笑うのは同好会メンバーなのか、それとも村人達なのか‥?』
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逃げ切れた―‥はずだった。
ふもとの村へ乗せて行ってくれるはずの車は、何故か逆方向‥
つまり、今さっき必死で逃げてきた村へ向かっていた。
逃げ切れたと思って安心していたメンバーが異変に気がついたのは
だいぶ村に近づいてからだった。
「何で‥ここに戻っていてるの‥?何で‥」
「逃げては困るんじゃよ」
呟いたのは、一緒に村から逃げてきたはずの景だった。
「どういう事だよ‥?景‥」
祐が震える声で問いかけると、景はフッと冷たく笑いながら答える。
「お前らが逃げてしまっては誰が神への供物となるというのじゃ」
そう言って笑う景の姿が、今までの景と重ならずにメンバー達は動揺を隠せない。
「今から逃げても無駄じゃよ、村の人間には連絡してある」
直にやってるじゃろう、そう言って景は村の方を見る。
すると、森の奥から手に松明を持った村人がこちらへと向かう姿が見えてきた。
「に、逃げなきゃ‥」
瑞希が震えながら呟くが、どこに逃げればいいのか分からないメンバー達は体を動かす事が出来なかった。
「最初から、そうやって大人しくしてくれていたら手間を省けたのにね」
ため息と共に呟くのは、旅館の女将である摩子だった。
「恭也お兄ちゃん、お帰りなさい」
そう言って景に抱きつくのは牡丹だった。
「恭也‥?」
由紀が目を瞬かせながら呟くと、景が「わしの名前じゃよ」と答える。
「千野 景というのは偽名じゃ。本当の名は天鳥 恭也という」
「ずっと、私達を騙していたのか‥」
同好会の顧問である真鍋が呟くと「そうなるな」と飄々と答えた。
「はっきり言ってわしは外部の人間など、どうでもいいんじゃ」
「さぁ‥生贄になってもらいましょうか‥」
侑子がゆっくりとした口調で呟いた。
メンバー達は悔しげに、自分達を騙していた景‥恭也の姿を睨みながら村人達に連れて行かれた。
その光景を、静と占い師は眉を下げ、悲しそうに見ていた。
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●募集事項
◎これは前後編完結シナリオの後編になります。
◎前回出ていた配役などを以下に纏めましたのでご参照下さい。
※村人
・早乙女 摩子→旅館の美人女将。
・天鳥 恭也→生贄の為にメンバーを連れてきた。
・白鳥 牡丹→村で唯一の子供。
・京嶌 静→恭也の恋人、儀式に良い印象を持っていません。
・占い師→前回、メンバーを逃がす手助けをしてくれた村人。
・相馬 侑子→植物を操ったり出来る村人。
※同好会メンバー
・真鍋 孝次郎→愛鳥同好会の顧問。
・方城 瑞希→しっかり者に見えるメンバーさん。
・瀬尾 由紀→行動力のあるメンバーさん。
・山下 祐→裏表のない明るい性格のメンバーさん。
以上が前回参加者の方が演じた役です。
出来れば上記の役と同じ役を演じて欲しいと思います。
後編からの参加者の方も、出来れば上記の役を演じて欲しいと思います。
◎今回で完結です。最初は捕まった所から始まりますが、このまま大人しく生贄になるか、それとも脱出するかは参加者の皆様にお任せします。
◎前回は希望死亡者(変な言い方ですね‥)の方がいらっしゃらなかったため、死亡者は出しておりません。
◎プレイングに死亡という言葉がない限りは、死亡者は出しませんので^^
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
●リプレイ本文
「折角村人全員に声を掛けたんですもの、本当に逃げられなくて良かったわ」
地下牢に閉じ込めた一行を見て、薄ら笑みを浮かべるのは摩子(都路帆乃香(fa1013))だった。そこへ侑子(リリン(fa4550))がやって来て「あら、帰ってきたのね」と薄気味悪い笑みを浮かべながら牢の中の一行に声を掛けた。
「景(狂闇式王子(fa1083))!お前‥本当に僕達を裏切っていたのか‥?」
ずっと仲間だと思っていた景‥恭也の裏切りに祐(鈴木悠司(fa5189))は泣きそうな顔で恭也を見つめた。
「さっきからそうだと言っているじゃろ。飲み込みの悪い奴じゃな」
そう言って恭也は一行の牢の前に幾つかの人形やマネキンを置き始めた。
「‥それは‥?」
ただの人形にすら恐怖を抱く瑞希(七瀬・瀬名(fa1609))に由紀(由比美紀(fa1771))が「大丈夫よ‥大丈夫‥」と宥める。
「この人形達を操るのがわしの能力じゃ。お前達が逃げ出さぬように見張らせる」
そう呟くと同時に無機物の人形がギギと軋んだ動きを見せ始めた。
「きゃあっ」
瑞希は動き出した人形を見て叫ぶ。それを真鍋(西風(fa2467))が「落ち着きなさい‥」と由紀と二人で必死に宥める。
「恭也お兄ちゃん、村長様が呼んでるよぉ」
そう言って恭也に擦り寄るのは牡丹(美森翡翠(fa1521))で、一行を見てニコと笑みを浮かべる。それは他の村人のように嫌な笑みではなく、子供独特の無邪気な笑みで、それが余計に恐怖を一行に与えた。
「お爺様が?分かった、すぐに行くとしよう」
そう言って恭也は人形達に「逃がすなよ」と言葉を残して、侑子と共にその場を離れた。恭也が離れていくのを見て牡丹はクスと笑いながら「はい、これ、見覚えなぁい?」と所々が赤く染まった衣装を目の前に差し出した。
「‥これは、占い師さんの‥」
真鍋が呟き、祐が「殺したのか!」と叫んだ。
「死んでなんかないよ?‥村の仲間だもん、ただちょっと反省してもらっただけ」
占い師の衣装を直しつつ牡丹は「逃げないでね」と呟く。
「貴方達がいないと、村の誰かが亡くなっちゃうから‥」
それだけ言い残すと牡丹は牢から出ていってしまった。
「‥何とかして脱出しなきゃ‥村人の為に死ぬなんて嫌よ」
そう言って由紀はどこか逃げ出させる場所がないかと牢の中を調べ始めた。
「‥由紀ちゃん、あの人は‥」
そう言って祐が指差した先にいたのは静(DESPAIRER(fa2657))が気まずそうに立っていた。
「‥あの、ここの鍵を開けますから‥逃げてください‥」
静は呟き、牢の鍵を開けて一行に逃げるようにと促す。
「貴方も村の人間でしょ?何故‥私達を逃がすの?」
村人が自分達を助ける訳がないと不信感を露にして由紀が静に言葉を返した。
「‥元々生贄にも人間を用いる必要はないの、それに‥理解しあえるはずの相手を殺害していくなど‥私は間違っていると思います‥」
「由紀ちゃん‥この人は他の人とは違うように見えるけれど‥」
瑞希が由紀の服の袖を掴みながら言うと「‥確かにね‥」と呟く。
「どちらにしろ、ここから出なきゃ話にならないし‥毒を食らわば皿までか‥」
「話は決まりだな、さぁ村人に見つかる前にここを出よう」
真鍋が先に牢を出ると、その先には侑子が先程の薄気味悪い笑みを浮かべて立っていた。
「逃げても無駄よ、何処までも追いかけていくわ」
クスクスと笑う姿に恐怖を覚え、一行は侑子を突き飛ばして外へと逃げ出した。
「‥逃げちゃ駄目よ‥」
侑子が呟くと同時に、外に出た一行の前を木々が行く手を遮りだす。
「これも、あの人の力なのか‥」
真鍋が木をかき分けながら呟く。
「嫌っ!来ないで!」
自分の方へ木の根が向かってくるのを見て瑞希が『来ないで!』と叫ぶ。それを見て由紀が「静かに!」と瑞希の口を手で塞いだ。
「こっちの居場所を教えちゃうでしょ」
こくこくと首を縦に振りながら瑞希が答える。
「前に逃げた時と同じように川から逃げてもらう事に―‥」
それまで前を歩いていた静の声がピタリと止まり、動く足も止まっている。
「‥‥恭也の能力で連絡を受けて来てみれば‥静‥貴方、一体どういうつもりなの?」
「摩子さん‥」
目の前に立つのは摩子、そして残念そうに呟いた。
「残念ね、貴方も普通ではなくなってしまったのね」
呟くと同時に摩子は裏切り者の静を始末しようと能力を使う。
「静さん!」
瑞希が助けようと叫び、向かうが途中の石に躓いてしまう。それを祐が怪我をしないように抱きとめる。
「逃げてください!摩子さんは私が抑えます‥川への道は知っていますね?逃げて!」
そう言って静は摩子に向かっていき、一行に逃げるように促す。
「どうしよう、先生―‥?」
祐が真鍋に問いかけるが、肝心の真鍋の姿が見当たらない。どうしようと考えている時に由紀が摩子に向かって体当たりをした。
「早く逃げ‥」
「逃げるなら貴方も一緒よ!こうなった以上は貴方も無事ではすまないでしょう!」
そう言って由紀は静の腕を掴み、摩子が起き上がる前に先へと進もうとする。しかし、摩子に足首を掴まれてしまい静と共に動けなくなる。
「由紀ちゃん!」
祐と瑞希が叫ぶが「先に行って!」と由紀は叫んだ。
「ここで皆捕まったら同じよ!」
早く逃げて!そう叫ぶ由紀に躊躇いはあったが一理あると感じて祐は瑞希の手を掴み、先へと走り出した。
「由紀ちゃん!!」
静かな森に瑞希の悲痛な叫びが木霊した。
「‥それで?アンタがわしに何の用なんじゃ?」
恭也は目の前に立つ男、真鍋に向かい短く告げた。あの時、真鍋は生徒を先に行かせて自分は元の牢近くに戻っていた。恭也と話をするために。
「生徒達を皆を無事に帰してくれるなら私が生贄になってもいい」
「‥熱心な教師じゃな」
「彼らを守る事が、師としての私の責任だ。そして‥千野君、君の事も私が導くべきだろう」
真鍋の言葉に恭也は目を見開く。それもそうだ、自分達を裏切った恭也を助けようと言うのだから。
「何を言って―‥」
「静さん、と言ったか。彼女も生徒達を助けて村人から追われている」
静が!?恭也は辺りに響くくらいの大きな声で叫んだ。そして真鍋に案内しろ、と言って静達がいる場所へと向かい始めた。
「‥‥もう一人、裏切り者かしら‥」
恭也達の後ろ姿を見て呟くのは、侑子だった。
「静!何をしている!」
問題の場所へ到着すると、摩子に殺されかけている静と由紀の姿が視界に入ってきた。
「恭也‥私達は間違っているのよ‥」
そう呟く静に「間違っているのは貴方よ!」と摩子が叫んで能力を使う。
「きゃあっ」
「止めろ!」
恭也は摩子を突き飛ばし、静と由紀を助ける。
「由紀君、大丈夫か?」
ゲホっと咳き込む由紀に真鍋が問いかけ「大丈夫‥です」と苦しそうに答えた。
「恭也‥貴方まで普通じゃなくなってしまったのね‥とっても残念だわ‥本当に残念」
その時、木の根がボコと恭也、由紀、真鍋、静の四人に襲い掛かる。
「ふふ、裏切り者はたとえ‥仲間であっても許しちゃいけないのよね‥」
木に背中を預けながら侑子が呟く。
「最初は‥生贄達を大人しくさせなきゃね‥」
侑子は呟くと、手を上げる。周りの木々達はそれに応えるかのようにザァッと音をたてて由紀と真鍋に襲い掛かった。
「危ない!」
それはどちらの声だったのだろう?静?恭也?いや、二人の声だ。鋭く尖った木の根が二人に襲い掛かるのを見て、静は由紀を、恭也は真鍋を崖下に突き落とした。行き場を失った木の根達は目の前の静と恭也に襲い掛かる。
そして、真鍋が落ちる間際に恭也が祐に対しての伝言を呟いた。
「‥恭也は酷い奴で、最後は惨めな死に方をしたと伝えてくれ。わしなんかを本気で友達と言ってくれた‥祐に」
真鍋が見た、恭也の顔は紛れもなく『仲間』として過ごしていた頃の『景』の顔だった。
「千野―‥っ!」
手を伸ばすが、届く事もなく真鍋と由紀は崖下に落ちていった―‥。
「‥さぁ、覚悟は出来ているのかしら?いくら村長様の孫だからと言って裏切りは許されないわよ」
「構わん、わしは‥最後に本当の仲間を助けられたのだから」
なぁ?と自分の腕の中で息絶えた静に話しかける。侑子の木の根が襲い掛かった時、静は恭也すらも助けた。そのせいで受けた傷が致命傷となり、ほとんど即死に近い形で息絶えたのだ。
「‥覚悟は出来ているんだね?」
「何度も言わせるな!死ぬ事なんか怖くはない。静が先にいるのだからな!」
「由紀ちゃん!先生!」
目が覚めると全身は痛むものの、何とか命はあった。泣きながら由紀に縋る瑞希と泣く事すらしなかったが、今にも泣きそうな祐の姿があった。助かったのだ―‥。
「‥本当は村の為に殺しちゃいたいけど、お兄ちゃん達の最後の願いだから‥見逃してあげる、でも村の事を誰かに言ったら―‥」
そう言って一行に背中を見せて村へ戻っていくのは牡丹だった。
そして後日。
「何か大自然って感じだね〜」
村を訪れた別の宿泊客達を見て、摩子が「いらっしゃいませ」と丁寧にお辞儀をした。
「女将さんも美人だね〜」
「ありがとうございます。ところで‥お客様達は『普通』でいらっしゃいますよね?」
そう微笑む摩子と侑子、そして牡丹の姿は、とても楽しげだった。
END