吸血鬼の花嫁 guerre2アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 中畑みとも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 11人
サポート 0人
期間 10/18〜10/22
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●本文

 ――吸血鬼。
 それは長い牙を持ち、その牙で人間の生き血を吸う化け物である。
 不老不死とも蘇った死者とも言われ、見境なしに人間を襲い、血液を奪うと恐れられているが、それは伝説上の存在として一般に伝えられている、かつての吸血鬼像だ。
 現在の吸血鬼は、ある『絶対なる掟』を守り、必要以上に人間の血を求めはしない。なぜなら、それは彼らを生かし、人間との調和を目指すうえで大切な条約だからである。

 そう、彼らは伝説上の存在ではなく、人間の中で、人間と同じように生きている。
『花嫁の掟』という、ただ一つの掟を守りながら。


 さて、『guerre』シリーズ第二話です。今回も宜しくお願いしますねー。
 詳しい設定は前回のものを見て頂くとして‥‥今回も次回予告のコンテを用意してますんで、是非目を通しておいて下さいね。


●次回予告
 逃げる花嫁に迫る赤黒い鎌。迸る血。
「花嫁が次々と殺して‥‥イノヴェルチは何をしようというの‥‥」
 イノヴェルチを止めようとするAS。吸血鬼を根絶やしにしようとするVH。
 強力なTVが花嫁を殺そうとする場面に出くわしてしまう刑事たち。
 人間と自らの誇りを守る為に戦うSCと、吸血鬼を憎むVHの対立。
「さぁ、どんどん憎しみを増やそう‥‥」
 花嫁を守る為、VPが命を削る。

必須配役
 AS:花嫁連続殺人について調べていく(数名)
 人間の刑事:殺人現場に居合わせてしまう(2名)
 VH幹部:吸血鬼は皆悪だと思っている(1名)
 強力なTV:SCを凌げる程の強いTV ※イノヴェルチ幹部(1名)

通常配役
 SC:TVを捕らえるために戦う(数名)
 VH:VH幹部の部下。思いは様々だが、幹部の命令には絶対(数名)

その他配役
 花嫁:強力なTVに殺されそうになる(1名)
 VP:契約した花嫁を守る為に強力なTVと戦う(1名)

●今回の参加者

 fa0470 橘・月兎(32歳・♂・狼)
 fa0607 紅雪(20歳・♀・猫)
 fa0796 フェイテル=ファウスト(21歳・♂・狐)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4264 月白・蒼葵(13歳・♀・猫)
 fa4265 月白・緋桜(13歳・♂・猫)
 fa4728 レイス アゲート(26歳・♂・豹)
 fa4769 (20歳・♂・猫)
 fa4807 葛城・郁海(20歳・♂・狐)
 fa4888 戒音(16歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●医院の診察室
「いずれまた会うだろう‥‥貴公が我々イノヴェルチを追い続ける限り‥‥」
 カルテを手に持ったまま、洸耶(橘・月兎(fa0470))は、去っていくユストゥス(フェイテル=ファウスト(fa0796))の言葉を思い出していた。眉根を寄せている洸耶の顔を、ルナ(紅雪(fa0607))が覗き込む。
「洸耶?」
「あ‥‥ああ、お帰り。検査はどうだった?」
「ウィルス感染はないみたい。過労による発熱じゃないかって」
 言って、ルナが寝台へ腰掛けると、洸耶はカルテを机の上に置いてルナを振り返った。ルナがそのカルテに目を向ける。カルテには『ルディリア』という名前が書かれてあった。
「ルディちゃんの事‥‥気にかかるの?」
「‥‥あんな事があったのに、大人し過ぎるからな‥‥」
 洸耶がカルテを見下ろしながら呟く。


●昼間の事故現場
 聞き込みをしているらしい笠島智也(葛城・郁海(fa4807))が、主婦に頭を下げた。そこに、渋面を作った神崎章吾(レイス アゲート(fa4728))が現れる。
「‥‥何をしているんですか? 笠島くん」
「うわっ! か、神崎さん!」
「この件からは手を引けと言われた筈ですが‥‥」
「上の人は事故で片付けるつもりでしょうけど、やっぱり俺には納得がいきません! あ、御心配無く! 始末書程度なら上司の気が済むまで書けばいいだけですし!」
「そういう問題ではありません‥‥」
 拳を握り、熱意をあらわにする笠島に、神崎が溜息を吐く。脳裏にセフィリス(月 美鈴(fa3366))の忠告が過ぎるが、吸血鬼の存在を知らない笠島に何と言ったらいいものか神崎が言いよどむと、携帯電話が鳴った。
「はい、神崎です‥‥申し訳ありません、すぐに戻ります‥‥ほら、笠島くんのせいで私まで怒られてしまったじゃないですか」
「すみません‥‥」
「全く‥‥戻りますよ」
 しょんぼりと肩を落とす笠島の背中を叩き、神埼が歩き出す。それに続きながら、笠島は道路に残るブレーキ痕を睨み付けた。


●ネオンの輝く繁華街
 女性たちが声をかけるのを無視しながら、洸耶はメモを片手に歩いていた。その足が、一つのバーらしき店へと入って行く。そして、案内しようと駆けて来た店員に、洸耶がルディリアの彼氏であり、花嫁の契約者だと教えられた人物について尋ねると、店員は嫌そうな顔をして答えた。
「あんたも刑事か探偵か何か? 開店前に来た若い刑事さんにも言ったけど、そんな奴、うちにはいないし、雇った事もないから。店、間違えてんじゃないの?」
 無愛想に言われた言葉に、洸耶が眉根を寄せた。


●夜、人気のないバス停
「こんにちわ、花嫁さん。‥‥そして、さよなら」
 バスを待っていた男性に話しかけたのはルディリア(ユフィア・ドール(fa4031))だった。にっこりと笑うルディリアに目を丸くした男性は、次の瞬間、白い光に首を貫かれ、声も無くゆっくりと崩れ落ちた。その様子を、ルディリアが冷めた目で見ている。
「これ、どうするの?」
「どうもせん。そのままだ」
 ルディリアに闇の中から答えたのはユストゥスだった。くんっと腕を引くと、男性の首に刺さっていた短剣が抜け、袖の中に戻って行く。
「隠した方が、アンバサッドにもハンターにも見つからなくて、楽だと思うんだけど」
「死体はそのまま捨てて置けとのご命令だ」
「アンバサッドに見つかりやすいように動けってのも、あの方の命令?」
 ルディリアの指摘に、ユストゥスは何も答えない。だが、否定の様子もなく、ルディリアは溜息を吐いた。
「あの人、何考えてるのか、全然判んない」
「あの方には、我々には計り知れない深いお考えがあるのだ」
 ユストゥスにルディリアが肩を竦め、闇の中へ歩いて行く。その背中を見送り、ユストゥスが呟いた。
「あの方にとって、我々も駒の一つに過ぎぬのだろうな‥‥」
 ユストゥスの傍らに悠羅(月白・蒼葵(fa4264))が現れる。何事かを伝えた悠羅に、ユストゥスが頷き、二人は去って行った。


●深夜、バス停
 男性の死体を数人のアンバサッドの工作員達が運んで行く。それを険しい顔で見ているのはセフィリスだった。その後ろから、ミレイナ(戒音(fa4888))が歩いて来る。
「周囲にヴァンピールの気配は無いわ‥‥これで何人目?」
「4人目よ‥‥もう、頭が痛くなるわね‥‥」
「調査員が無能なんじゃないの?」
 ミレイナの冷たい言い方に、周囲を調べている調査員達が振り向いた。それにセフィリスが溜息を吐く。
「一般の人間に勘付かれる前に処理できただけでも良しとしましょう‥‥それに、トレートルヴァンピールを追いかけるのはサンクシオンの仕事よ‥‥」
「貴女に言われなくても、捕まえてみせるわよ」
 ふんっと鼻で息を吐いて、ミレイナが闇に飛び込んで行った。調査員と工作員たちもアンバサッドへ帰って行くと、バス停の傍にはセフィリスのみが残される。その背後に現れたのは久遠(月白・緋桜(fa4265))を後ろに控えさせたレクサス(忍(fa4769))だった。
「‥‥あら? 珍しいお客様ね」
「お前達は今回の事件をどこまで把握しているんだ?」
 レクサスの言葉に、セフィリスが振り向きもせずに答える。
「どこまでも何も、さっぱりよ‥‥敵の規模も、何が目的なのかもね‥‥」
「アンバサッドというのは、全ての吸血鬼を統括している組織ではなかったか?」
 レクサスの蔑むような声に、セフィリスがちらりと振り返るが、無表情のまま顔を戻した。それにレクサスは目を伏せ、踵を返した。
「花嫁を次々と殺して‥‥イノヴェルチは何をしようというの‥‥」
 セフィリスが眉根を寄せて溜息を吐き、煌々と輝く満月を見上げた。



●深夜の公園
 満月が噴水に映り込んでいる中、一組の男女がベンチに座っていた。そこに悠羅がやって来る。男性が気付いて立ち上がり、女性を背中に庇うと、悠羅がにやりと笑い、ポケットから取り出した小型ナイフで両の手のひらに傷をつけた。傷口から溢れ出した血が、2本のサーベルに変わる。
 男性が女性を抱えて飛び退ると、ベンチが真っ二つに斬られた。応戦体勢を構える男性に、悠羅が無音で「残念」と呟く。直後、背後に近寄っていたユストゥスの短剣が、女性の心臓に突き刺さっていた。
「やめろ!」
 驚愕に振り返る男性の首に悠羅のサーベルが食い込むのと、声が上がったのは同時だった。男性の首が宙を舞い、ぼとりと落ちた先には、銃を構える笠島が立っていた。
「動くな!」
 笠島が叫ぶと、悠羅がサーベルを振り上げて飛び込んで来た。笠島が反射的に銃の引き金を引く。弾丸が悠羅の肩を抉るが、悠羅は何事もなかったかのような顔で傷口に指を入れると、中から弾丸を取り出して地面に落とす。真っ赤な血の迸る傷口が回復していくのを、笠島が目を見開いて見ていた。
「ま、まさか‥‥嘘だろ? こんな最悪の形で都市伝説に直面するなんて‥‥!」
 呟いた笠島の目の前に、悠羅の笑顔が近づき、サーベルが笠島の心臓を狙う。
 瞬間、銃声が轟き、悠羅のサーベルが途中から折れた。折れた先のサーベルは、笠島の心臓を反れたが、代わりに脇腹を貫く。痛みに息を詰めた笠島の前に飛び込み、悠羅に近距離から銃弾を浴びせたのはミレイナだった。二挺の拳銃を交差させ、更に弾丸を浴びせようとするミレイナに、ユストゥスの短剣が襲いかかる。ミレイナが短剣を撃ち落とす。
 煙を吐く悠羅の身体に、ユストゥスが舌打ちした。ユストゥスが悠羅を抱えて飛び退ると、弾丸が地面を抉る。
「あーあ。やられちゃったの?」
「‥‥処理を頼む」
 ユストゥスが着地した背後にはルディリアが立っていた。ユストゥスから悠羅を受け取ると、ルディリアは嫌そうな顔をしながら悠羅の身体に食い込んだ弾丸を取り出していく。それをちらりと確認したユストゥスは短剣で自らの首を掻き切ると、溢れる血を2本の細剣に形作り、一瞬でミレイナへの間合いを詰めると、銃を構える両腕を斬り落とした。
 そのまま一気に首を刎ねようとするユストゥスに、銀色のサーベルが襲い掛かった。いつの間に現れたのか、久遠のサーベルがユストゥスを狙う。ユストゥスがそのサーベルを叩き折ると、久遠は無表情のまま後ろへ下がった。その行動をユストゥスが怪訝に思う間もなく、目の前にレクサスが飛び込んで来る。銀に閃く短刀が慌てて身体を捻ったユストゥスの首を切り裂き、ユストゥスが痛みに顔を歪めた。
 レクサスから大きく間合いを取り、ユストゥスが煙を上げる傷口を押さえる。そこに久遠がもう一つのサーベルを振り上げた時、2人の間に悠羅が飛び込んだ。まだ身体中から煙を噴き上げたままの悠羅を見て、久遠の顔が驚愕に彩られる。
「まさか、お姉ちゃんを忘れるような薄情な子になっていないよね? ‥‥久遠」
「悠羅‥‥!?」
 腕を止めてしまった久遠の肩に、悠羅の傷口から生えたサーベルが突き刺さった。悠羅がそのまま久遠の身体を蹴り放すと、ごろごろと転がる久遠をレクサスが抱き止める。
「逃げた方がいいんじゃない?」
「‥‥そのようだな」
「ルディ!」
 簡単な口調で言うルディリアに、ユストゥスが傷口を押さえながら立ち上がった。と、そこに声を上げたのは洸耶だった。イノヴェルチのメンバーの傍に立つルディリアを睨み付けている。
「お前、何故‥‥!」
 駆け寄ろうとする洸耶に、ルディリアは笑って手を振ると、悠羅を抱えたユストゥスと共に闇に消えて行った。