吸血鬼の花嫁 guerre3アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 中畑みとも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 10/30〜11/03
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●本文

 ――吸血鬼。
 それは長い牙を持ち、その牙で人間の生き血を吸う化け物である。
 不老不死とも蘇った死者とも言われ、見境なしに人間を襲い、血液を奪うと恐れられているが、それは伝説上の存在として一般に伝えられている、かつての吸血鬼像だ。
 現在の吸血鬼は、ある『絶対なる掟』を守り、必要以上に人間の血を求めはしない。なぜなら、それは彼らを生かし、人間との調和を目指すうえで大切な条約だからである。

 そう、彼らは伝説上の存在ではなく、人間の中で、人間と同じように生きている。
『花嫁の掟』という、ただ一つの掟を守りながら。


 さて、『guerre』シリーズ第3話です。今回も宜しくお願いしますねー。
 詳しい設定は1話のものを見て頂くとして‥‥今回も次回予告のコンテを用意してますんで、是非目を通しておいて下さいね。


●次回予告
 イノヴェルチについて調べるAS。
 その捜査網に、元SCでありながら、花嫁殺しでTVとなった人物が浮上する。
 元SCのTVを探し出し、追い詰めるSC。
「お前達の目的は何なんだ!」
「今に判りますよ‥‥もう少しで歴史が動く‥‥」
 重症を負ってASの病院に収容された刑事は、そこでASの存在を知り、
 吸血鬼の存在が少しずつ一般人に広まり始める。

必須配役
 AS:イノヴェルチについて調べていく(数名)
 人間の刑事:ASとイノヴェルチについて知ることになる(2名)
 VH幹部:吸血鬼は皆悪だと思っている(1名)
 強力なTV:SCを凌げる程の強いTV ※イノヴェルチ幹部(1名)

通常配役
 SC:TVを捕らえるために戦う(数名)
 VH:VH幹部の部下。思いは様々だが、幹部の命令には絶対(数名)

その他配役
 元SCのTV:純粋なVPで貴族な、元有能SC(1名)

●今回の参加者

 fa0470 橘・月兎(32歳・♂・狼)
 fa0796 フェイテル=ファウスト(21歳・♂・狐)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)
 fa4031 ユフィア・ドール(16歳・♀・犬)
 fa4264 月白・蒼葵(13歳・♀・猫)
 fa4265 月白・緋桜(13歳・♂・猫)
 fa4728 レイス アゲート(26歳・♂・豹)
 fa4769 (20歳・♂・猫)
 fa4807 葛城・郁海(20歳・♂・狐)
 fa4888 戒音(16歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●過去
「あなたたちって、まるで兄弟みたいね」
 清楚な雰囲気の女性が振り返る。その先には苦笑いしているレクサス(忍(fa4769))と、肩を竦めるユストゥス(フェイテル=ファウスト(fa0796))がいた。
「私も男の子だったら良かったのに」
 そうしたらずっと一緒にいられるのに。そう言う女性を中心に、三人が手を繋ぐ。それは和やかな光景だった。しかし次の瞬間、女性は胸から刃を生やして崩れ落ちていく。その刃を持っているのはユストゥスだった。
「ユストゥス! 何故だ! 何故彼女を‥‥!」
 レクサスの叫びにユストゥスが無表情で振り返る。


●アンバサッド・病院
 レクサスが顔を上げると、視線の先にはベッドで眠る久遠(月白・緋桜(fa4265))がいた。起きる様子のない久遠に、レクサスが一つ溜息を吐き、椅子から立ち上がる。

 目の前に真っ白の天井が映る。それを見ながら、笠島智也(葛城・郁海(fa4807))はぼんやりと呟いた。
「あー、天国って意外と地味なんだなぁ‥‥」
「天国じゃありませんよ。病院です」
 笠島の言葉に呆れたように返したのは神崎章吾(レイス アゲート(fa4728))だった。突然聞こえてきた声に驚いた笠島が神崎を振り返ろうとして、脇腹に響いた酷い痛みに呻く。
「大人しくしてなさい。自業自得ですよ、全く‥‥」
「す、すみません‥‥」
 溜息を吐きながら椅子に座る神崎に、笠島が恐縮したように毛布に顔を埋めた。そこにセフィリス(月 美鈴(fa3366))がやってくる。
「‥‥気付いたようね‥‥大分危なかったのよ、あなた‥‥うちじゃなかったら死んでたわよ」
「あなたは‥‥」
「アンバサッド‥‥吸血鬼たちを統括する機関で、人間と吸血鬼の仲介をしてらっしゃる方ですよ」
「まさか‥‥じゃあ、やっぱり、夢なんかじゃ‥‥」
 神崎の説明に笠島が愕然と呟き、痛む脇腹を抑えた。


●アンバサッド・病院廊下
 病室から出て来たセフィリスを待っていたのは洸耶(橘・月兎(fa0470))だった。
「あら、洸耶。どうしたの?」
「少し気になる人物が見つかってな。3年程前に、花嫁殺しで捕まったサンクシオンのことを知っているか?」
「3年前‥‥? ああ、確か貴族の‥‥名前は何だったかしら‥‥」
「ユストゥス・キュヴィエ‥‥今は取り潰しになったキュヴィエ家の一人息子だ。逮捕の報告はあるが、消去の記述がないんだ‥‥」
 洸耶の報告を聞くセフィリスの後ろで、二人から隠れるように聞き耳を立てているのはミレイナ(戒音(fa4888))だった。洸耶の言葉に出て来る名前に、眉を寄せる。
「‥‥キュヴィエの一人息子‥‥? そうか、あの男‥‥」
 ミレイナの脳裏に鎖のついた短剣を袖に戻すユストゥスの姿が蘇る。ミレイナは話し合う二人に気付かれることなく、姿を消した。


●薄暗い部屋
 少し色褪せた写真の中で、人の良さそうな顔をした男女と久遠、そして腰まである髪を肩に流した悠羅(月白・蒼葵(fa4264))が笑っていた。その写真に飛んで来たナイフが突き刺さり、ガラスがひび割れ、写真立てが倒れる。
 部屋は長い間使われていなかったようで、壁は汚れ、埃が溜まっていた。部屋の中心に立っている悠羅の短い髪が、ふわりと風に揺れる。
「‥‥作戦は第二段階に入った」
「判りました‥‥」
 開け放した窓の傍に立っていたのはユストゥスだった。悠羅の答えにユストゥスは目を伏せ、闇に溶ける。一度だけ写真立てを振り返った悠羅もそれに続いた。


●アンバサッド・病院裏口
 顔に苦痛を滲ませ、傷を抑えながら久遠が出て来る。壁に寄りかかり、痛みを堪える様に荒い呼吸をする久遠に、レクサスが近づいて来た。何か言おうと口を開きかけるレクサスに、久遠が「やらせて下さい」と話す。
「悠羅は‥‥姉さんは俺が倒してやりたいんです‥‥」
「‥‥判った。行くぞ‥‥」
 踵を返すレクサスに、久遠は大きく深呼吸をした後、しっかりとした足取りでレクサスを追った。


●深夜の公園
 錆付いた音を立てながら、揺れるブランコに座っているのはルディリア(ユフィア・ドール(fa4031))だった。そこにミレイナが近づいて来る。
「ありゃ。あんたかぁ」
「お前‥‥何故ここにいる?」
「あたし? あたしはお目付け役兼救急箱ってとこかな。それより、ねぇ。洸耶怒ってた? 捕まったら怒られちゃうよねー、やっぱり」
「そこまでにしておけ。‥‥彼女を不機嫌にすると後が面倒だからな」
 けらけらと笑いながらブランコを漕ぐルディリアに、ミレイナが不快そうに眉を潜めた。そこにユストゥスが現れる。
「‥‥やはり貴様か、ユストゥス」
「覚えていて頂けて光栄だな、ミレイナ嬢」
「暗器で名を馳せたキュヴィエの短剣を受けたのは久しぶりだったからな」
 ミレイナと話すユストゥスにルディリアが「知り合い?」と聞くと、ユストゥスが軽く肩を竦めた。
「やはり、お前が捕まった時に私が役目を負えばよかったのだ。そうしたら、こんなに面倒な事にならずに済んだものを」
「‥‥申し訳ないが、今夜は貴殿と争う予定はないのだ。先約があるのでな」
 銃を構えるミレイナに、ユストゥスが目を反らす。その先をミレイナが追うと、そこにはレクサスと久遠が立っていた。
「死に損ないのヴァンパイアハンターか‥‥」
 ミレイナが呟くと、久遠が腰に下げた2本のサーベルを抜いた。ユストゥスの影から、同じく2本の血色のサーベルを構えた悠羅が現れる。
 二人は見詰め合うと、次の瞬間お互いの懐に飛び込んだ。4本のサーベルが競り合い、甲高い音を立てる。
 久遠の銀の刃が悠羅の首を狙う。悠羅はそれを刃で受け流すと、もう片方の刃で久遠の胴を狙った。一瞬前に飛び退った久遠の服が斬れた。そこに悠羅が飛び込み、サーベルの柄で久遠の鳩尾を突いた。包帯から血が滲み、久遠の顔が苦痛に歪む。久遠はぎりと歯を食いしばると、サーベルを斬り上げた。悠羅の肩が大きく裂ける。
 悲鳴を上げて飛び退る悠羅に、ミレイナが銃を構えた。それをユストゥスのサーベルが牽制する。同じく、レクサスもいつでも動けるように二人を牽制しており、三人は動く事が出来ない。
 その中で、動きを見せたのはルディリアだった。とことこと悠羅に近づくと、己の首筋を近づける。悠羅は無造作にルディリアの首に齧り付く。
 傷を抑えながらも立ち上がった久遠が、吸血中の悠羅に襲いかかる。悠羅が首から牙を離し、悠羅のサーベルを己の刃で受け止めた。そして、圧倒的な力で久遠を押し飛ばす。悠羅の背中から、ばさりと硬質的な蝙蝠の翼が広がった。
「きゃあ!」
 突然上がった悲鳴に、牽制しあっていたレクサスとミレイナが振り返る。そこには、仕事帰りらしい女性が驚いたような顔で立っていた。二人の顔色が変わる。それに対して、ユストゥスは無表情だ。
 女性が取り落としたバッグをルディリアが拾う。そして、女性の耳元に唇を近づけて囁いた。
「早く逃げた方がいいよ? じゃないと、あなたも吸血鬼の餌食になっちゃうよ」
 悲鳴を上げて、女性が転びつつ逃げて行く。それを見送り、ルディリアが満足気に振り返る。同時に、ユストゥスの牽制が解かれる。
「‥‥貴様らの目的は一体何なんだ。ユストゥス!」
「今に判る。‥‥あの方の手で、歴史が動く‥‥」
 ミレイナにユストゥスが静かに答え、ゆっくりと闇に消えて行く。ルディリアと悠羅も、いつの間にか姿を消していた。


●アンバサッド
「そう‥‥判ったわ‥‥」
 ミレイナの報告を聞いたセフィリスが、大きな溜息を吐いて携帯電話を閉じた。それに洸耶と神崎が眉を潜める。
「本当に、イノヴェルチの目的が判らないわ‥‥何をしようというの‥‥」
「何か、まるで吸血鬼の存在を知らしめようとしているみたいですね」
 言ったのは未だベッドに横になっている笠島だった。その言葉に、三人が振り返る。
「前に神崎さんに教えたじゃないですか、吸血鬼の都市伝説。あれ、都市伝説にしては大分リアルなんですよ。まるで、誰かが言いふらしてるみたいに」
「吸血鬼の存在が公になれば‥‥最悪、過去の魔女狩りの様相が繰り広げられますね‥‥」
「まさか。それだと吸血鬼自体が危ない。それが目的なら、自殺と同じじゃないか」
 神埼に洸耶が首を振る。セフィリスは手に持った携帯電話を握り締めながら、嫌な予感を胸に抱いていた。