ElDorado/RojoCantar 3アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 中畑みとも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 11/22〜11/26
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●本文

 龍によって守られ、魔法によって栄えている世界、エルドラード。
 その世界には5つの国があった。
 氷雪の国、ノルド・ノルテ。
 常夏の国、ユーク・スール。
 鉱山の国、デュシス・オエステ。
 芸術の国、オスト・エステ。
 そして、その4つの国の中心に位置する、セント・セントロ。

 ある日、セント・セントロの魔法学校を一人の魔法使いが卒業した。
 胸の緋色のペンダントを揺らした魔法使いは、一つの目的を胸に旅立つ。
 自らの出生の謎を知る為に。


第3話『トブトリ ノ ハネ』
 白龍の助言を受けて、オスト・エステへ向かう主人公たち。その途中で、馬車の車輪が泥沼にはまって立ち往生している、大道芸一座に出会う。一座を助けた主人公たちは共にオスト・エステへ着くが、一座の主役が怪我をしてしまい、妹分が代役に出る事に。
 主人公たちも協力し、公演が無事に終わると、一座の主役が主人公のペンダントを作ったと思われる人物を教えてくれる。主人公はその情報を元に、人物を探し始める。


●必須キャスト(連続出演者を望む)
・主人公の魔法使い
・主人公の護衛
・主人公の妹分
・主人公のライバル
・ライバルの護衛

●通常キャスト
(連続出演でない為、希望者がいない場合は無理に決めなくてもいいです。複数形の場合、何人配役しても構いません)
・通常キャスト/緑龍(声優)/一座の主役/一座のメンバー/街の人々/
 ※緑龍の性格は、陽気で明るい、元気な男の子と言った感じです。


 詳しい設定は、第1話、第2話を確認して下さい。

●今回の参加者

 fa0595 エルティナ(16歳・♀・蝙蝠)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa2459 シヅル・ナタス(20歳・♀・兎)
 fa4224 御鏡 雫(25歳・♀・一角獣)
 fa4564 木崎 朱音(16歳・♀・犬)
 fa4823 榛原絢香(16歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 家族に別れを告げ、ミメイア・クンメナー(富垣 美恵利(fa1338))とブリット・ベールヴァルド(御鏡 雫(fa4224))が馬車に乗り込む。中には既にリーチェ・ロデム(榛原絢香(fa4823))が乗り込んでいた。ミメイアがリーチェの隣に座り、胸元に揺れるペンダントを見下ろすと、白龍に会った時の事を思い出す。


第3話『トブトリ ノ ハネ』


「ペンダントの、作られた場所‥‥」
「多分、オスト・エステだろうな。アクセサリーの殆どがオスト・エステ産だし」
 ミメイアの呟きに、ブリットが答える。それに、リーチェが頷きながら続いた。
「それにその土台。ぱっと見でも一流の職人が作ったってのが判るし、何よりその石は絶対値段高いよ。大きさもあるけど、色とか透明度とか、見たことないくらい綺麗だし」
「やっぱり、デュシス・オエステ生まれは石に詳しいな」
「‥‥まあ、生まれた時から石ばっかり見てたしね‥‥」
 ブリットの言葉にリーチェが肩を竦める。それを横目にちらりと見て、ブリットはミメイアを見た。
「次の目的地はオスト・エステだな」


 突然、ガクンッと馬車が揺れ、回想していたミメイアが慌ててバランスを取り直した。馬車はそのままスピードを緩め、ついに止まってしまう。
「どうしたんだろ」
 リーチェが首を傾げると、ミメイアは手綱を持った御者に声をかけた。
「どうかしたんですか?」
「ああ、すいません。ちょっと道がぬかるんでて、ちと道を外れますわ」
 言いながら手綱を操る御者に、ブリットが道の様子を見ようと荷台から顔を出す。と、その目に街道を外れた場所で少し傾いて止まっている馬車を発見した。声をかければ2人もその馬車に気付き、ミメイアが御者に馬車を降りる事を伝える。
「大丈夫ですか?」
 3人が馬車へ駆け寄ってみると、どうやら旅芸人の一座のようだった。派手な色合いの服を着た人達が一生懸命に馬車を押して動かそうとしている。
「泥土にはまっちまったらしくてな」
 団長らしき体格のいい男性がそう答えると、ブリットが背中の大剣を抜きながら馬車に近づく。そして大剣を泥にはまっているタイヤの下に突き刺し、持ち上げようとした。が、泥が予想以上に柔らかく、剣も沈んで行ってしまう。
「駄目だ。土が柔らか過ぎる」
「あ、それなら任せて。クレヴィンディン!」
 ブリットの言葉にミメイアが泥に魔法をかけると、一瞬、泥が緑色に光る。ブリットが再度大剣を差し込むと、今度は沈む事なく馬車の持ち上げに成功した。その隙にブリットが馬車を押す。無事に泥から脱出したタイヤに、一座から拍手が上がった。
「いやあ、助かった。ありがとな」
「いえいえ」
 団長に礼を言われ、ミメイアがにこりと笑う。それに、リーチェが軽く溜息を吐いた。
「それはいいけど、馬車行っちゃったよ」
「まあ、しょうがない」
「この道を行くっていう事は、オスト・エステに向かってたんだろう? お礼と言ってはなんだが、乗ってかないかい?」
 呆れたような口調のリーチェにブリットが苦笑すると、団長が話しかけて来た。その言葉に3人は顔を見合わせ、笑顔を返した。


 一座達は四日後の夜にある祭りで芸を披露する為、オスト・エステに向かっているらしい。そんな話を聞きながら、ミメイア達と一座は焚き火を囲み、夕食を取っていた。
「いたた」
「どうした?」
 突然、リィ(木崎 朱音(fa4564))が足首に手を当てて眉を顰めた。団長が駆け寄る。
「馬車持ち上げる時に捻ったみたい」
「おいおい、大丈夫か?」
 痛そうな顔のリィに、周りの団員達も心配そうに覗き込んだ。
「あー、結構腫れてるなぁ。冷やしとけ。祭りには間に合わねぇかもしれんな‥‥」
 団長に言われ、リィが口を結んで俯く。それにミメイアが優しく尋ねた。
「踊り子さんなんですか?」
「そうさ。リィの踊りは特別でな。布を使って踊るんだ」
 誇らしげに答える団員が取り出したのは、20メートル程もありそうな長い布だった。つやつやとした手触りで、様々な色がグラデーションに染められている。
「どうやるの?」
「こうやって、くるくるくるーって回すの」
 ブリットが布をしげしげと見ている一方で、ミメイアがリィに布の回し方を聞いていた。リィの手の動きに合わせてクルクルと綺麗な輪を作る布に、ミメイアが真似をしてみるが、なかなか上手い具合に輪にならない。
「‥‥う、結構難しいね」
「姉貴、駄目じゃん。あたしにもやらせてよ」
 眉尻を下げるミメイアを笑い、リーチェが自分を指差す。布を受け取り、リィがやったような綺麗な輪を作った。
「こんな感じでしょ?」
「凄い! ねぇ、貴女、私の代わりに踊ってくれない? 踊り、教えてあげるから!」
 得意気な顔をしたリーチェの手を、リィがガシッと握り締める。
「あたしが?」
「祭りでの芸は絶対成功させたいの! お願い!」
「いいんじゃないか?」
 真剣に頼み込んで来るリィにたじろぐリーチェだが、その様子を見ていたブリットがにこやかに答えを促す。それにミメイアもにこにこと笑いながら、団長に振り返った。
「私達も協力しますよ」
「かたじけない!」
 がばりと頭を下げる団長に、リーチェは大きな溜息を吐いた。


 四日後の昼。一座はオスト・エステの真ん中にある広場で準備を急いでいた。沢山の荷物を持ったブリットや、賄いを作る手伝いをしているミメイアの姿もある。賄いを持ったミメイアが馬車の裏へと回ると、そこではリィの指導の元で布を回しているリーチェがいた。その真剣な姿に、ミメイアが嬉しそうな笑みを浮かべる。
 だんだんと空が暗くなり、各家に飾られたランプに火が灯ると、祭りが始まった。
 一座の芸を見に集まって来た人達の前にミメイアが現れ、空に杖を掲げた。と、杖の先に炎が現れ、舞台の周りに設置された薪に火を点ける。その幻想的な光景に、観客から拍手が起こる。
 次に出て来たのはブリットだ。普段着ている鎧とは正反対の露出度の多い服装で、湾曲した剣を持ち、剣舞を披露する。その逞しくも美しい姿に、観客が感嘆の声を上げた。
「頑張って! 貴女なら出来るわ!」
 リィに応援され、リーチェが頷く。布を肩に巻きつけながら観客の前へと進んだリーチェは、緊張にゴクリと唾を飲み込んだ。ちらりと横を見ると、ミメイアとブリットが満面の笑みで頷いている。それに笑みを返して、リーチェは夜空に布を投げた。団員が奏でる音楽に合わせて、美しい色合いの布がリーチェの身体を包み、回り、波や輪を作る。その光景に、観客は惜しみない拍手と歓声を上げた。
 踊りが終わり、帰って来たリーチェにミメイアとリィが歓喜の表情で抱き付く。それをブリットと団長は楽しそうに笑って見ていた。


「昨日は有難う! 大成功だったよ!」
 祭りが終わり、一座は次の興行へと向かう準備をしていた。そんな中で、リィがミメイア達に話しかける。
「そういえば、探し物をしてるって言ってたけど、何を探してるの?」
「このペンダントを作った人の事なんだけど」
 リィに聞かれ、ミメイアがペンダントを見せる。リィはそれをじーっと見つめるが、やがて首を振った。
「うーん‥‥私もこの国にはよく来てるけど、工房までは判んないや。ごめんね」
 申し訳なさそうに言われ、ミメイアが「気にしないで」と言おうとした時、頭上に大きな影がかかった。と同時に、強い風が吹く。
「リィー! 久しぶりだねぇー!」
「緑龍さま!」
 現れたのは、緑龍(声:木崎朱音)だった。2メートル程の小さな龍は、駆け寄ったリィを抱きしめる。それをこの国で暮らす人達は当たり前のように見て笑っていた。その様子から、こんな光景は珍しくないものである事が判る。
「これが緑龍さま‥‥?」
「何とも気さくな龍だな‥‥」
「てか、白龍さまといい、龍ってみんなこんななの?」
「こんなとは何だー。僕はこう見えても、5匹の中で2番目に長生きさんなんだぞー?」
 リーチェの暴言とも思える言葉にミメイアとブリットは慌てたが、当の緑龍は気にした様子もなかった。2番目に長寿という言葉に3人が目を丸くするのに、えっへん! と胸を張ってみせたりする。
「ねぇ、緑龍さま。ちょっと聞きたい事があるんですけど‥‥このペンダント、どこで作られたか判りません?」
「何々ー? お? それはアスティスの作ったものだよ!」
「アスティス?」
「この国で一番の職人さ! 街の人に聞けば、工房の場所を教えてくれるよ!」
 リィに言われてペンダントを覗き込んだ緑龍は、即座に一人の人物の名前を挙げた。それにミメイアが目を輝かせて礼を言うと、緑龍はウィンクして翼を広げた。
「それじゃ、僕は見回りに戻るよ! またね!」
 言って、緑龍が風のように飛び去っていく。それを見送り、ミメイアはブリットとリーチェを振り返った。
「よし、探すか!」


 その人物は国一番の職人と言われる通り、有名な人物だった。人々はすぐに工房の場所を教えてくれて、ミメイア達は苦労せずに工房を見つける事が出来た。
 小高い丘の上にあるという工房が見えて来た時、ミメイアはその途中でクロウディア・フォン・フローライト(エルティナ(fa0595))と、沢山の袋を抱えたウィスタリア・ブローディア(シヅル・ナタス(fa2459))の姿を見つけた。
「クラウちゃんだ」
「あら、貴女、こんなところで何をしているのです?」
「アスティスって人がこのペンダントを作ったって聞いて、会いに行くの」
「なんですって? 私もその方にアクセサリーを作って頂こうと思ってましたのよ」
 言って、ほほほと笑うクロウディアの指には、以前にはなかった高価そうな指輪が光っている。
「お嬢様。今日は少々お買い物のし過ぎではないかと」
「煩いわねぇ。アスティスで終わりにしますわよ。それでいいのでしょ?」
 ウィスタリアに言われて、クロウディアがむすっとしながら歩き出す。それにミメイア達も慌てて追いかけた。


 そこはこじんまりとした工房だった。ミメイアがドアをノックすると、ミメイアより5歳程年上に見える青年が現れる。ミメイアがアスティスかどうか尋ねると、青年は頷いた。
「あの! このペンダントをご存知じゃありませんか?」
 必死な口調でミメイアが差し出したペンダントを見て、青年が目を見開く。
「それは‥‥立ち話も何なので、どうぞ中へ」
 促されて、ミメイア達は工房の中へと入って行った。ミメイア達が椅子に座ると、青年が口を開く。
「そのペンダントは確かにアスティスの作品ですが、私が作ったものではありません」
「え!?」
「アスティスは代々受け継がれてきた名前なのです。そのペンダントは、恐らく私の父が作ったものでしょう」
「では、お父さまは‥‥」
「3年前に、病で‥‥」
「そんな‥‥」
 衝撃的な事実に、ミメイアが言葉をなくし、がっくりと肩を落とした。それにブリットが身を乗り出す。
「貴方は何か知らないのか?」
「そのペンダントの作成を父が頼まれたのは私がまだ子供の頃でしたから、詳しくは判りませんが‥‥」
 ブリットに聞かれて、青年は語り始めた。
「ある日、若い夫婦が父を尋ねて来ました。その夫婦は、父に一つの宝石を使ってペンダントを作ってくれと頼んだようでした。父が言うに、その宝石はデュシス・オエステでも滅多に採れない、珍しい石なのだそうです」
「若い、夫婦‥‥」
「デュシス・オエステに行けば、もしかしたらその夫婦の事を覚えている人がいるかもしれません。‥‥ですが、今は止めておいた方がいいかと‥‥」
「え?」
 突然暗い顔をした青年に、ミメイアがきょとんとすると、後ろからクロウディアが呆れたような顔で話しかけて来た。
「貴女、情勢に疎いですわね。今、デュシス・オエステの鉱山で大量のモンスターが出没していて、セント・セントロから魔法騎士団が応援に向かっている最中ですのよ。街道も全部封鎖されてますわ」
「デュシス・オエステが‥‥」
 クロウディアの言葉に、リーチェがぎりっと拳を握った。ミメイアも、ぎゅっと唇を噛み締め、意を決したように顔を上げる。
「私達も行こう」
「ミィ!」
「だから、街道は封鎖されていると言いましたでしょ?」
「応援に来たって言えば、入れてくれるかもしれない」
「たかがペンダントの為に、わざわざ危険な場所まで行くなんて、馬鹿げてますわ」
「ペンダントの為じゃない! 私は知りたいの! 自分がどこで生まれたのか‥‥自分は何者なのか」
「ミィ‥‥」
 ペンダントを握り締め、ミメイアがクロウディアを睨む。それにブリットが微笑んで頷いた。
「判った。行こう。魔物が来ても、私が守ってやる。私はミィの護衛だしな」
 頼もしい笑みを見せるブリットに、ミメイアが笑いかける。と、リーチェも立ち上がり、ミメイアを見つめた。
「‥‥あたしも行く」
「危険だぞ」
「デュシス・オエステはあたしの故郷だ! だから‥‥」
 真剣な目で睨んで来るブリットに、リーチェも睨み返す。それにミメイアが笑って頷くと、横から盛大な溜息が聞こえた。
「はぁー、全く、理解不能ですわ」
 そう言って首を振るクロウディアだが、顔は笑っている。後ろに控えるウィスタリアも、主人が次に言うだろう言葉を予想し、笑みを浮かべていた。
「‥‥でも、仕方ないから、私も一緒に行って差し上げてよ。回復魔法は私の方が強いですもの」
「クラウちゃん!」
 思いがけない言葉に、ミメイアが思わずクロウディアに抱きつく。顔を真っ赤にして振り払うクロウディアに、一時笑いが溢れた。
「行こう! デュシス・オエステへ!」
 ミメイアがペンダントを握り締め、仲間達を見回した。