ElDorado/RojoCantar 5アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
中畑みとも
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
01/16〜01/20
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前回のリプレイを見る
●本文
龍によって守られ、魔法によって栄えている世界、エルドラード。
その世界には5つの国があった。
氷雪の国、ノルド・ノルテ。
常夏の国、ユーク・スール。
鉱山の国、デュシス・オエステ。
芸術の国、オスト・エステ。
そして、その4つの国の中心に位置する、セント・セントロ。
ある日、セント・セントロの魔法学校を一人の魔法使いが卒業した。
胸の緋色のペンダントを揺らした魔法使いは、一つの目的を胸に旅立つ。
自らの出生の謎を知る為に。
第5話『ミズカラ ノ イシ』
ユーク・スールへ向かう主人公達だが、途中でペンダントを狙う謎の男達に襲われてしまう。
謎の男からペンダントの真実を聞かされる主人公達。そして、ペンダントが謎の男に奪われようとした時、ペンダントが強く光り、長き眠りについていた力が目覚める。
●必須キャスト(連続出演者を望む)
・主人公の魔法使い
・主人公の護衛
・主人公の妹分
・主人公のライバル
・ライバルの護衛
●通常キャスト
(連続出演でない為、希望者がいない場合は無理に決めなくてもいいです。複数形の場合、何人配役しても構いません)
・通常キャスト/謎の男/謎の男配下(数名)/赤龍(声優)/
※赤龍は、穏やかで慈愛に満ちた母親のような性格です。
詳しい設定は、第1話、第2話を参照して下さい。
●リプレイ本文
ゴトゴトと小さく揺れる馬車の中で、ミメイア・クンメナー(富垣 美恵利(fa1338))は少し緊張した面持ちでペンダントを握り締めていた。その様子を、ブリット・ベールヴァルド(ティタネス(fa3251))とリーチェ・ロデム(榛原絢香(fa4823))が心配そうに見つめる。
「どうしたんですの?」
ふと声を上げたのはクロウディア・フォン・フローライト(エルティナ(fa0595))だ。その横に控えていたウィスタリア・ブローディア(シヅル・ナタス(fa2459))が、急に険しい表情で腰の刀に手をかけたのに、疑問の声を上げたのだった。それに、ブリットも問いかけようとして、顔を引き締める。
「ブリット?」
「伏せろ!」
言って、ブリットがミメイアとリーチェを押し倒した。同様に、ウィスタリアもクロウディアを庇うと、次の瞬間、爆音と共に馬車が大きく揺れ、馬ごと横転した。
第5話『ミズカラ ノ イシ』
横転した馬車から何とか這い出したミメイア達を囲んでいたのは、全身真っ黒の服に身を包んだ、謎の集団だった。
「いきなり何をするんですの!」
「喚くな。耳障りだ」
怒りに叫ぶクロウディアに冷たい視線を向けたのは、集団の中心にいたダリア・アルカード(夏姫・シュトラウス(fa0761))だった。顔の半分以上も黒い布で覆われており、表情どころか性別すらも判らない。
「俺の目的はただ一つ。貴様の持つペンダントだ。赤き涙の巫女よ」
「赤き涙の巫女‥‥? 何の事‥‥」
ダリアの言葉に不安そうにペンダントを握り締めるミメイアに、ダリアが微かに目を細めた。
「そうか‥‥盗賊からペンダントを奪い返したり、何かと大事に扱っていると言うから気付いていると思っていたが‥‥知らぬならそれはそれで都合がいい」
呟いて、ダリアが指をパチンッと鳴らした。瞬間、ダリアの背後にいた配下らしき集団が、一斉に袖から刃を生やし、ミメイア達に襲い掛かる。
ハッとして身構えるミメイアを庇うように、ブリットが大剣を盾にして前に出た。甲高い音がして、一足飛びにミメイアに近寄っていた配下が飛び退る。
「エアリアルブロークン!」
クロウディアが杖を掲げると、無数の風の刃が配下を襲った。それに続き、ウィスタリアが目にも見えない速さで抜剣し、配下を切り刻んで行く。
「姉貴! やらなきゃやられるよ!」
「う、うん!」
ナイフを構えるリーチェに言われて、ミメイアが魔力を集中した。ダリアの目がそれを見て、すっと鋭くなる。
「‥‥ファイアストーム」
呟いたのはダリアだった。途端、ダリアの魔力で作り出された炎の嵐がミメイア達と、そしてその周りにいた配下すらも襲う。強大な力はミメイア達を容易に吹き飛ばし、地に叩きつけた。
「なっ‥‥味方をも巻き込むなんて‥‥」
呻く配下に一瞥もくれず、真っ直ぐミメイアに近づいてくるダリアを睨みつけ、ブリットが必死で起き上がろうとする。しかし、幾ら鍛えてあるとは言え、剣士であるブリットが受けた魔法のダメージは大きく、地に突き刺した大剣にしがみ付いて立ち上がるしか出来なかった。そんなブリットにダリアは片手を翳すと、「‥‥ヴィガリアン」と風属性の上級魔法にも似た威力の風の塊をブリットに叩きつける。ブリットはそれを直に受け、吹き飛んだ。
「ブリット!」
「人の心配をしている場合か?」
言われて、ミメイアがハッと顔を上げると、ダリアに胸元を掴まれた。ペンダントを引き千切ろうとするダリアに、ミメイアが痛みに重い身体を必死に動かし、抵抗する。
「その手を離せっ!」
叫んで、ダリアの腕に噛み付いたのはリーチェだった。ナイフは何処かに吹き飛ばされたらしく、身一つで必死にミメイアを助けようとしている。
「こいつ‥‥魔法に耐性があるのか‥‥面倒なガキだ」
「リーチェ! 逃げて!」
ミメイアが叫ぶのと同時に、ダリアがペンダントを掴んでいない方の手でリーチェの腹部を殴った。不安定な姿勢で繰り出したにも関わらず、その威力は強く、リーチェは息を詰めて崩れ落ちる。そして、ミメイアがリーチェに気を取られた隙を狙い、ダリアが思いっきりペンダントを引いた。ブツンッと音がして、ペンダントの紐が切れる。
「ウィンドスラッシュ!」
ペンダントを奪ったダリアに、クロウディアの風が襲い掛かる。ダリアがそれを炎の壁で対消滅させると、ウィスタリアが抜剣と共にダリアの首を狙った。しかし、それにもダリアは無表情で後方に飛び退り、避ける。
「目的は達した」
言って、ダリアが掲げたペンダントに、ミメイアが愕然と目を見開く。
「返して!」
「ミメイア! やめなさい!」
クロウディアが止めようとするが遅く、ミメイアは無我夢中でダリアの持つペンダントに手を伸ばした。しかし、ダリアが繰り出す風の塊に弾き飛ばされ、地に転がる。
「‥‥返して」
ボロボロになりながらも立ち上がるミメイアに、ダリアが冷たい目を向けた。
「ミメイア!」
「いけません、お嬢様」
圧縮されていくダリアの魔力に、クロウディアがミメイアに駆け寄ろうとするが、ウィスタリアに止められる。危険な空気にブリットとリーチェも立ち上がり、ミメイアを守ろうとするが、まともに動く事が出来ない。
「この石に封じられた魔力をも使いこなせぬお前に用はない。何も知らせずにお前を捨てた親を恨みながら、死ぬがいい」
「‥‥ペンダントを‥‥たった一つの繋がりを‥‥返して!!」
圧縮した魔力を繰り出そうとしたダリアに、ミメイアが叫んだ瞬間、ミメイアの身体から目に見える程の強く赤い魔力が噴き出した。同時に、ペンダントの石も強く光り出し、ダリアの目に驚愕の色が浮かぶ。
「何だとっ!? ぐあぁ!」
ミメイアの魔力に呼応するように光るペンダントから出た強い魔力の波がダリアを襲う。思わずダリアが放り投げたペンダントに、ミメイアが必死で駆け寄る。そして、その指がペンダントに触れた時、赤い石が高い音を立てて弾け割れた。
途端、ペンダントとミメイアから強大な赤い魔力が迸り、天を貫く。その魔力は雲をも吹き飛ばし、そして収縮した。
「な、何が起こったんだ‥‥?」
あまりに突然の展開に、ブリットが呆然と呟く。と、足元に巨大な影ができ、不審に思ったブリットは空を見上げ、目を見開いた。
「せ、赤龍!?」
そこにいたのは、数千年前からずっと眠りについていると言われていた、ユーク・スールの守護龍、赤龍だった。赤龍はその大きな翼をゆったりと広げ、ミメイアの目の前に降り立つ。
「よく強く育ち、そして無事に帰って来てくれました‥‥ミヤルカ・ユーク・スール・イルメナー」
言われて、ミメイアがぽかんとした顔で赤龍を見上げる。その様子に赤龍が愛しげに笑うと、ダリアの配下の者達が唸りながら立ち上がり、刃を向けた。
ミメイアが気付き、赤龍を守るように立つ。それに赤龍は慌てた様子もなく、ミメイアへ囁いた。
「今の貴女なら、彼らに遅れは取りません。さあ、ミヤルカ‥‥赤き涙の巫女たるその力を見せて差し上げなさい」
赤龍の言葉に、ミメイアが強い光を目に宿す。そして、胸の前に構えた杖を片手でなぞると、杖が一振りの剣へと変わった。ミメイアの身体から赤い魔力が噴き出し、呼応するように剣が炎を纏う。
死に物狂いで襲い掛かる配下の刃に、ミメイアは臆する事もなく剣を横薙ぎに振り払った。すると、炎の波が配下達に襲い掛かり、遥か後方にまで吹き飛ばした。その威力に、ダリアもたじろぐ。
「くそっ!」
顔を隠していた布が取れてしまっていたダリアは、顔を隠しながら舌打ちをし、シュンッと空を切る音を立てて消え去った。それにミメイアがほっと安堵した途端、その身体を急激に疲労が襲い、立っていられなくなる。
「ミメイア!」
「姉貴!」
崩れ落ちるミメイアを支えたのはブリットとリーチェだった。そして、赤龍を見上げる。
「一体全体、どうなってんだ?」
「貴女達も、ミヤルカをここまで連れて来てくれて、有難う」
「ミヤルカ? ‥‥って誰?」
赤龍の言葉に、リーチェが首を傾げる。それに答えたのは、近づいてきたクロウディアだった。
「ミヤルカ・ユーク・スール・イルメナー‥‥病で部屋から出られないと言われている、ユーク・スールの姫の名ですわ」
「え!? お姫様!? ど、どういうこと!?」
「ミヤルカは‥‥いえ、ミメイアは、私の眠りを覚ます者として、強大な魔力を持って生まれて来ました。ですが、まだ小さな身体ではその魔力を制御する事は出来ず、ミメイアの両親である国王と女王は、その魔力を石に封じ込めたのです。しかし、魔力を封じ込めた石を狙い、よからぬ輩が動いていると知った女王は、ミメイアを安全な場所に隠そうとノルド・ノルテへ向かったのです。あそこなら水の力が強い為、ミメイアの火の魔力を隠す事が出来ると考えたのでしょう。‥‥せめて大きくなって、魔力の制御が出来るようになるまでは、と。そして今、ミメイアは魔力を制御する事に成功し、こうして私の眠りをも覚ましてくれた」
赤龍の話に、ミメイアの脳裏に母親の顔が浮かんだ。泣きそうになりながらも、ミメイアの為に懸命に笑おうとする母親の顔。
「じゃあ、ミメイアはユーク・スールのお姫様って事なのか‥‥?」
「ええ、そうです‥‥さあ、ミヤルカ。国へ帰りましょう。貴女の両親が待っていますよ」
「姉貴‥‥」
ブリットの呟いた言葉に、ミメイアは呆然と赤龍を見上げた。そして次に言われた赤龍の言葉に、ミメイアは寂しそうに俯いた。その様子を、ブリットとリーチェが不安そうに見つめる。
「何を迷っているんです、ミメイア・クンメナー」
その微妙な空気を断ち切ったのは、クロウディアだった。驚いたように振り返るミメイアに、クロウディアがふんっと鼻を鳴らす。
「お姫様だろうと何だろうとが、貴女は貴女ですわ。私がライバルとして認めて差し上げている、ミメイア・クンメナーじゃありませんか。そんな事も判らないなんて、貴女って本当に大馬鹿者ですのね! 好きにしたらいいじゃありませんの!」
「‥‥そうだよな。ちょっとびっくりしたけど、何があってもミメイアはミメイアだし、あたしはミメイアの相棒で親友だ。ミメイアが友達と呼んでくれる限り、いつまでだって側で支え続けるよ」
「そうだよ、そうだよ! あたしだって、お姫様とかそんなの関係なしに姉貴について行こうと思ったんだし! 今更そんな事言われても、気持ちは変わんないよ!」
「皆‥‥ありがとう‥‥」
口々に言われて、ミメイアが嬉しそうにはにかむ。そして、赤龍を見上げると、はっきりと答えた。
「私、まだ帰りません。だって、私がどこで生まれたのかは判ったけど‥‥まだ私がやりたい事が何なのか、見つけてないもの」
「‥‥きっと、そう言うと思いましたよ、ミメイア」
晴れやかに言ったミメイアに、赤龍が慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
「国王も女王も、貴女が旅に出る事は了承しております。さあ、行ってらっしゃい。そして、無事に帰ってらっしゃい」
そう言う赤龍に、ミメイアは周りで微笑む仲間達を見回して頷くと、満面の笑みで答えた。
「行って来ます!」
――RojoCantar FIN