ElDorado/VerdeBarco 2アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 中畑みとも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 02/17〜02/21
前回のリプレイを見る

●本文

 龍によって守られ、魔法によって栄えている世界、エルドラード。
 その世界には5つの国があった。
 氷雪の国、ノルド・ノルテ。
 常夏の国、ユーク・スール。
 鉱山の国、デュシス・オエステ。
 芸術の国、オスト・エステ。
 黄金の国、セント・セントロ。


 3年前に守護龍である赤龍が目を覚ましたユーク・スールでは今、今年の豊作を願う祭りを行っていた。道々は飾り付けられ、市場では安売りに賑わう。今までにない位の人が歩き、街はごった返していた。
 その中で、迷子が出るのは当然と言えば当然な事で。
「お嬢様ー! お嬢様ー!」
「こんな中ではぐれてしまわれるなんて‥‥」
「旦那様に何と謝罪すれば‥‥!」
 メイド達が真っ青な顔で人波を掻き分けて行く。しかしその声に答える者はなく、泣き崩れるメイドもいた。
「お嬢様ー!!」
 メイドの悲痛な叫び声が、賑やかな祭りの中に虚しく響いた。


第2話『探索! 迷子の子猫ちゃん』
 ユーク・スールにやって来た王子達は、初めて見る祭りを楽しんでいた。その途中、ひょんな事から迷子の探索を手伝う事に。しかしその探索は難航を極め‥‥


●必須キャスト(連続出演可能な方を望む)
・王子(主人公)1名
・付人1名
・護衛1名
・護衛見習い1名
・王子捜索隊2名

※その他キャストは自由に設定して頂いて構いません。
参考/迷子のお嬢様、メイド、街の人々 など

●設定
 第1話を参照して下さい。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0595 エルティナ(16歳・♀・蝙蝠)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa1715 小塚さえ(16歳・♀・小鳥)
 fa4584 ノエル・ロシナン(14歳・♂・狸)
 fa4909 葉月 珪(22歳・♀・猫)

●リプレイ本文

「うわぁ」
 目の前に広がる人の波に思わずピアノ(美森翡翠(fa1521))が呟いた。それに、アプラ・ティサージュ(氷咲 華唯(fa0142))が「凄いですね」と声をかけると、クロウディア・フォン・フローライト(エルティナ(fa0595))が頷く。
「赤龍が目覚めてから、年々賑やかになっていってるとは聞いておりましたけれど‥‥」
「迷子になるなよ、ピアノ」
「年上に言う言葉じゃないわよ、アンサラー」
「年上と言ったって、2ヶ月しか違わんだろう。それにその背じゃあ、子供にしか見えん」
 からかうように手で身長を測るアンサラー(ノエル・ロシナン(fa4584))に、ピアノが拗ねたように頬を膨らませた。
「よし、今日は無礼講だ。ぱーっと遊ぶぞ」
「王子。遊ぶのは結構ですが、立場を弁えた行動をなさって下さいね」
 ギロリと睨み付けるクロウディアに、アンサラーが嫌そうな顔で振り返る。その表情にピアノが説教をし始めようとすると、アプラが慌てて割って入った。
「とりあえず、宿屋を探しませんか?」
 その言葉に頷いて、一行は人の波の中へと入って行った。


 暫くして、一行は宿屋へと来ていた。ピアノとアプラが宿屋の店主と話しているのを後目に、フラフラと出店へ近づこうとするアンサラーの襟をクロウディアが掴んで引き寄せたりしていると、ピアノが満面の笑みで駆け寄って来た。
「部屋、取れましたよ」
「元々従業員用の部屋なんだけど、私が働く代わりに使っていいって。宿泊代も安くして貰っちゃった」
 にこにこと上機嫌なピアノが、アンサラーの腕を取る。
「お仕事は夕方のピークの時からでいいって言われたから、今のうちにお祭りを満喫しましょ!」
 言われて、意気揚々と歩き始めるアンサラーとピアノに、アプラとクロウディアが顔を見合わせて苦笑した。


 そうして祭りを楽しむ一行を、出店の影から見ているのはアリア(葉月 珪(fa4909))とラウラ・キアーラ(小塚さえ(fa1715))の2人だった。
「王子、楽しそうですねぇ‥‥って、アリア‥‥ちゃんと仕事して下さい!」
「アルヴィレオさま‥‥ああ、今すぐにでも飛んで会いに行きたいのに、私には面倒なしがらみが‥‥」
「任務をしがらみ呼ばわりしないように」
 両手の指を組んで遠くを見つめるアリアの頭を、ラウラが片手で掴んでアンサラーへと向ける。と、その一瞬の間に、アンサラー達が人の波に消えてしまう。焦って探すが、既に離れてしまったのか、見つからない。
「もう! 王子達、見失っちゃったじゃないですか!」
「大丈夫ですよ、ラウラ。時間になれば、宿屋に戻って来るでしょうし」
「その間に何かあったらどうするんですか!?」
「クラウさんがついてるんですから、大丈夫ですって。それより、私達もお祭りを楽しみましょうよ。何がお好きかしら、アルヴィレオさま‥‥」
 そう言って再び遠くを見つめるアリアに、ラウラは盛大に溜息を吐いて頭を抱えた。


 アンサラー達が散々遊び倒して、宿屋に戻って来る頃にはピークが始まっていた。待っていたような店主に呼ばれて、ピアノが走って行くと、アンサラー達はのんびりしようと部屋へ向かって行く。
「お嬢様!」
 そんな叫び声が聞こえたのは、暫く経ってからの事だった。その声にアンサラー達が食堂へ降りて行くと、数人のメイドに囲まれて戸惑っているピアノの姿が見えた。
「一体どちらにいらしたのですか!」
「あの、どなたかとお間違えになっているのでは‥‥?」
「どうした、ピアノ」
 近寄って来たアンサラーの背中に、ピアノがささっと隠れる。それに、メイド達は顔を見合わせて、ピアノをじっくりと見つめた。
「あら? ‥‥そっくりだけど、お嬢様じゃないわ」
「じゃあ、お嬢様は‥‥ああ!」
「落ち着いて。一体、どうされましたの?」
 泣き崩れるメイド達を、クロウディアが落ち着かせる。その様子に、店主も了承を出して食堂の一席に座らせると、ピアノがお茶を入れて来る。
「実は私達、お嬢様を連れてお祭りを見に来たのですけれど‥‥ちょっと目を離した隙にお嬢様の姿が見えなくなってしまいまして‥‥もう何時間も‥‥」
「迷子か‥‥」
「何時間も見つからないとなると、ちょっと危ないですね‥‥」
「ああ! お嬢様‥‥!」
 アプラの呟きに、メイド達が再び泣き崩れた時、店主が少し不安そうな顔で近づいて来た。
「なあ‥‥どうも、金持ちの子供らが何人も誘拐されてるらしいんだが‥‥」
 その話にアンサラーとピアノが顔を見合わせる。そして、アンサラーは自身の膝をぽんっと叩くと、メイド達に向き直った。
「よし。俺達がお嬢様を助けてやろう」
「ちょ、何を言い出すの!?」
「放ってはおけんだろう?」
 言われて、ピアノがぐっと詰まる。にやりと笑うアンサラーに、アプラが溜息を吐くと、クロウディアが痛みを堪えるようにこめかみを押さえた。
「大船に乗ったつもりで、任せておけ」


「大船どころか、帆の折れた筏に乗っている気分ですわ」
 憮然とした顔で呟いたクロウディアが、ずんずんと人の波の中を進んで行くと、ふと目の前に現れた大男に道を阻まれる。
「‥‥あれ? あんた、こんなトコいちゃ駄目だよ。もう始まってるよ?」
 怪訝な顔で首を傾げたクロウディアを、大男は一つのテントの中へ引き摺り込んで行った。そして、あれよあれよと言う間に、ステージに押し出される。
「次は12番! 魅惑の剣士!」
 実況と共に歓声が巻き起こり、クロウディアにスポットライトが当てられた。クロウディアが後ろを振り向くと、そこには『美人コンテスト』と書かれた看板が下がっていて。
「どうして、この私がこんな物に出なくちゃいけませんの!?」
 叫ぶクロウディアの横で、審査員達が高得点を出していた。


「何か盛り上がってるけど‥‥あんな所に子供を隠してるとは思えないしなぁ」
 呟いて、美人コンテスト会場の裏を横切ったアプラは、街外れへと歩いて行った。と、急に腕を掴まれる。
「あ、いたいた! 大穴なんだから、楽しませてくれよー」
 小男に話しかけられ、アプラが困惑しながら引き摺られて行った先は、街外れの闘技場だった。突き出された舞台では、巨大な斧を立てかけた男が、指の骨を鳴らしながら立っている。
「さーて、次の試合は巨大斧の戦士と、小柄な若き剣士の対決だ!」
 歓声と共にドラの音が鳴り響き、アプラは焦ったように周りを見渡した。
「え!? ちょ、こんな事してる場合じゃないのにー!」
 向かって来る斧に、アプラは反射的に剣を抜いた。


「あ、アプラくん発見ですわ」
「でも王子も、クラウさんもいませんね‥‥まさか、バラバラに行動してたりしませんよね‥‥」
 闘技場の中心を指差したアリアに、ラウラが困ったように眉尻を下げた。それにアリアが小首を傾げる。
「何だか子供が誘拐されてるとかって話しですし。王子達、俺達が捕まえてやるーとか言って囮作戦なんかやってたりしてー」
「そんなまさか‥‥とは言えないのが悲しい‥‥」
 ラウラが溜息を吐いた瞬間、歓声が一際高くなった。どうやらアプラが勝ったらしい。嬉しそうに拍手をしたアリアが、ふと振り返る。
「あれ? ラウラ?」
 そこには、ついさっきまでいた筈のラウラの姿はなかった。


 人波の少ない路地裏を歩きながらアンサラーを見上げたピアノは、その着ている服に目をやった。
「それで、どうするつもりなの? わざわざ上等な服に着替えたりして」
「うむ。手っ取り早く、囮作戦で行こうかと」
 飄々とした声で言われて、ピアノは一瞬呆けた後、爆発したようにアンサラーへ噛み付いた。
「囮って! まさか最初からそのつもりでアプラくん達を離したの!? 分かれて探した方が早いって、嘘吐いたの!?」
「当たり前だ。護衛がいたら、捕まえ難いだろうが。まあ、クラウの方は俺の作戦に気付いていたようだったな。アプラはどうか知らんが」
 その答えにピアノが説教をしてやろうと大きく息を吸った途端、その口をアンサラーの手によって塞がれた。静かにしろと言うアンサラーに従うと、何やら不穏な気配が漂い始める。
「いいか。抵抗はするなよ。俺達はひ弱な金持ちの子供だからな」
「そんなの‥‥私は最初っから出来ないわよ‥‥」
 2人の背中に、太い腕が伸びた。


 暗い部屋の中で目覚めたラウラは、両手が縛られているのに気付いた。周りには気絶している子供達がいる。その様子に、自分が誘拐されたのに気付くと、ラウラはにやりと黒い笑みを浮かべた。
「‥‥仮にも諜報部員たる私を捕らえるなど‥‥ふっ、ふふふふふ‥‥クレフィテヴィジョン、ウィガルソード!」
 ラウラが呪文を唱えた瞬間、一人の兵士の幻が現れる。兵士がラウラの手首を縛る縄を剣で斬ると、ラウラは勢いよく立ち上がった。
「よし! さあ、お仕置きの時間です‥‥」
「アンサラーをどこへやったの!?」
 いざ、と足を進めようとしたラウラは、聞こえて来た声に慌てて兵士を消すと、隅に積まれていた箱の裏に隠れた。ドアが開き、ピアノが男達に突き飛ばされ入って来る。
「噂通りの馬鹿だな。護衛もつけずに歩くなんて」
「どうするつもり!?」
「さてなぁ。俺らは王子を捕まえたら売ってくれとしか言われてねぇからなぁ。判りませぇん」
 ゲラゲラと笑って、ドアを閉めた男達が去って行く。それにピアノががっくりと肩を落とし、溜息を吐いた。そして、隠れているラウラも溜息を吐いていた。
「やっぱり、こういう展開なんですのね‥‥」


 一方。別室にいたアンサラーは、身体を捻って縛られているのを確認すると、頷いて目を瞑った。すると腕輪が光りを放ち、縄がバラバラに切り裂かれる。
「それじゃあ、派手にやるかぁ」
 呟いて、アンサラーが腕輪を掲げた。


 ふっと風が止んだと思った瞬間、空へ向かって赤い光が立ち昇った。ぶわっと微かな熱風が巻き上がり、アプラとクロウディアが空を見上げ、走り出した。


「何だ、今の光は!」
 慌てて部屋にやって来た男達に、アンサラーは「シュトラール!」と唱えて、熱光線を向ける。それに飛び退く男達に飛び蹴りを食らわせて気絶させると、アンサラーはピアノの名前を叫んだ。答えるピアノの声を元に部屋に辿り着き、そのドアを風で切り裂く。
「これだけ派手にやれば憲兵も来るだろう。誘拐事件の解決だな」
「アンサラー‥‥貴方って子は‥‥」
 溜息を吐くピアノの腕を取り、去って行くアンサラーの後ろで、もそりとラウラが動いた。
「‥‥アリア!」
「はーい」
 ラウラの声に反応したのは、王子に殴られて転がっている男達の下から起き上がった一人の男だった。男がふっと腕を振ると、霧が晴れるようにアリアが現れる。
「さっさとここから離れましょう」
「えー? 誘拐犯を懲らしめないんですか?」
「それは私達の任務ではありません」
「でも、アルヴィレオ様は貧しい孤児院の為に頑張っていらっしゃるのに、その一方で子供を誘拐する奴がいるなんて、許せないんですけど。‥‥という事で」
 静かに怒っているらしいアリアの笑顔に、ラウラが顔を引き攣らせながら振り返ると、アリアは掲げた両手に大きな氷球を作り、それを逃げようとする男達に投げつけた。男達が悲鳴を上げて倒れて行く。再び氷球を作り出すアリアを、ラウラが慌てて止める。
「悪人には制裁が必要だと思いませんか?」
「私たちの任務は王子の監視で、悪い人たちに制裁を与える事ではありません」
 目の据わったアリアに、低い声でラウラが睨み付けた時、男達のアジトに憲兵が突入して来た。それに気付いたラウラは、アリアを無理矢理引き摺ると、飛行魔法でアジトを脱出した。


 アンサラーとピアノが、憲兵のいない裏口から出て来た時、目の前に黒いローブの男が立ち塞がった。
「君に逃げられては困るのだ」
「何者だ?」
 ピアノを庇うアンサラーに、男が飛び込んで来る。そこに、アプラが割り込んで、男のナイフを弾いた。飛び退る男と、クロウディアが斬り結ぶ。クロウディアがレイピアを鋭く振り下ろすと、風の刃が男を襲う。思わず腕で庇った男の胴体を薙ぐように、アプラが剣を振り回した。ザンッと音がして、ローブに剣が食い込むが、剣を振り払った時には男の姿はなく、裂かれたローブのみが地に落ちる。
 無表情でローブを見下ろすクロウディアを、アンサラーがじっと見つめていた。


「お嬢様!」
 メイド達に、ツインテールの少女(美森翡翠)が泣きながら抱きつく。その様子に、ピアノが恐る恐る近づいた。振り返る少女は、ピアノとそっくりの顔をしている。呆然と驚くピアノに少女は近づいて、「有難う!」と言って髪に挿していたハイビスカスの飾りを差し出した。
「そっくりさんって、いるんですねー。もしかしたら王子のそっくりさんもいるかも」
「俺にそっくりなのか? それは大変だな。こんな美少年が2人もいたら」
 アプラの言葉に格好をつけるアンサラーだが、クロウディアが何の反応もしないのに気付いて振り返る。それにクロウディアが顔を上げ、無表情で言った。
「今後はこのような危険な事はなさらないように」
「それは約束できんな」
「王子!」
「何せ、これから闘技場で一儲けしようというところなのだからな。ん、ならクラウが出るか? それなら俺も危険に合う事はないな。うんそうしよう。お前が出れば大穴間違いなしだ。全額賭けるから、絶対に勝てよ」
 真面目な顔でそんな事を言うアンサラーに、ピアノが呆れ、アプラが苦笑し、そしてクロウディアが額を押さえて盛大な溜息を吐いた。
「王子〜! いい加減、少しは真面目になって下さいまし!!」
 クロウディアの叫びが、高い空に響いた。