香港山海経2−1アジア・オセアニア
種類 |
シリーズEX
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
11人
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サポート |
0人
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期間 |
02/20〜02/24
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●本文
「さて、面子を揃えるとするか」
ファーナス・王がメガホン(しかも古式ゆかしい黄色である)を取りながら自分の欲求に応えた。
「いつもの面子が揃ってくれればいいのだが」
この所、人の入れ替わりが激しく落ち着けないファーナスであった。
ともあれ、今回の会議で──どうやって火の宝玉を手に入れるか、世界最強のミジンコの出番はどうなるのか? などと課題つきない。
とりあえず、今回は会議だ。中でも本命視されるのが、このデパートの状況を味方側がどうやって知ったのか、そこいら辺を納得の行く形で俳優と視聴者に示しておく必要がある。
最初は偶然、次は必然くらいにリズムを取っておかないと、飽きが来るからな。
ファーナスは独りごちる。
さて、彼の指し示す行方の先には何があるのか?
「あ、そうそう。香港山海経のテーマは、命は紙よりも軽く、転生すればそれで良いじゃん」
というノリだそうだ。
「だから、主人公側にはルーロン以外全員死んで貰う。タイマンをすれば相打ち100%で、残りはウェンフーとの戦いで次々と倒れて貰う。
ヨロイ物のお約束なら、理論無用で生き返るだろうが、この映画はそれを行かない──! ま、どんな斬新なアイディアが出てくるかは奴らしだいだがな──」
ファーナスはひとり不敵な笑みを浮かべるのであった。
カット11スタート──。
●リプレイ本文
風羽シン(fa0154)は、誰よりも先行して、香港山海経のミーティングルームでそのミーティング風景をメイキングビデオに収めるべく、光源を計算に入れ、カメラとマイクを入念にセッティングしていった。
そして、下準備が終わってしばらく経って、胸も豊かに揺らしながら入ってくるMAKOTO(fa0295)と、普通の少年、九条・運(fa0378)が入ってくるのをレンズに捉える。
力のマコトに、技の運といった所だろうか?
だが、劇内では、ふたりは敵味方に相乱れて戦う事になる。
「ちぃーす」
世界最強のミジンコを演じる事になる、もりゅー・べじたぶる(fa1267)が片手を上げて入ってくる。
「あれ、みんな遅い?」
「いいえ、もりゅーが早いだけよ」
マコトはシンが準備していた日本茶を淹れつつ、他の一同を待つ。
やや間を置いて、楊・玲花(fa0642)が入ってくる。
皆に挨拶すると、香港なんだし、こちら風に烏龍茶も淹れましょう。 と、茶器を丁寧に捌き、典雅に注がれた烏龍茶が芳香を漂わせる。
「あ〜、姉貴の日本茶より美味しそう」
などと言う運の首筋に、マコトは軽く手刀を当てて(それでも3日ほど痣が残ったが)、運の茶碗に自分の日本茶をトポトポと注ぎ入れる。
「早いな、皆」
「おはようございまーす」
「おはようございまーす」
と、一同には微妙なイントネーションこそ違えど、リューキの声がダブって聞こえる。
皆がそちらを見てみると、鋼から削りだした様な風貌のファーナス・王と、軽やかな金線細工で造られたかのようなリューキ・王が入ってくる。もちろんAAA(fa1761)も一緒である。
役作りの為か、トセイ役の猿の仮面をエースは既に被っている。余計に聞こえたリューキの声は、獣人能力によるエースのしゃれっ気らしい。
水守竜壬(fa0104)はその滑稽さに、吹き出しそうになるが、自分もそれだけの役の作り込みが必要であると、反面教師にする。
弟の青雷の代理で来た、伊達正和(fa0463)は居心地悪げであった。仮にもプロである弟のミスを拭わなければならないのだ、その心中察して余りある。
御堂 陣(fa1453)は──。
「前回残された仔熊についてだけどな、余計な設定や出番を与えても俺たちの出番に影響が出るだろう」
そこで立ち位置を変え。
「だったら、ルーロンの修業をハイライトシーンの様に流して、仔熊を背負って腕立て伏せや、仔熊と相撲をしているシーンなんかを入れて大きな戦いの前の癒しシーンにでもすりゃいいさ」
それに対して、森宮・千尋(fa1782)は、うなずきながらも、時計を見る。時差は修正済みであり、集合時間前だが、監督達が先に来ているのを見て声をあげる。
「遅れましたー」
「ちぃーす」
と、竜壬。
「じゃあ、早速ってことで役名再提出。ホァンヤオかヤンルェで。監督サンや他の人が呼びやすい方がいいかな」
竜壬の言葉に対し、ファーナス、腕を組んで沈思黙考。カメラをある程度意識しているのだろう。
「──ヤンルェだな。語感も響きもいい」
「じゃあ、ウェンフー四天王のひとりは『ヤンルェ』という事に決定で」
「良かったね竜壬さん。じゃあ、私からの、如何にして『火の宝玉』を劇中で発見したかの顛末だけど──」
言ってチヒロはオーバージェスチャー気味に話を始める。
「皆で宝玉探索に行き詰っていたものの、チヒロは気分転換を兼ね教え子の誘いで博覧会へ。
そこで、トレジャーハンターとしてルビーの事は知っていたが実物を見て宝玉ではと疑いトセイに連絡。
確認の為、宝玉を持った仲間と来場し宝玉同士の共鳴によって宝玉と断定」
そこまで言って彼女は烏龍茶を飲む。
「早速、警備情報を裏から仕入れ後日潜入し仲間と手分けをしカメラなどセキュリティーを黙らせる。
私は赤外線センサーなどを潜り抜け奪う実行担当、無事盗み出すものの、敵に襲われ乱闘になって警報が鳴る。
ルーロンへ届けようとするチヒロに、宝玉が力を貸し半獣化。
しかし、妨害をかわし屋上へ辿り着くが四天王が待ち伏せしていた!
そこで竜壬さんの役、ヤンルェからアプローチ後。あ、この件は彼から精しく聞いて。善側登場、戦闘開始。
チヒロは宝玉をJ、御堂さんに渡し、護身術でガンロンのコピーの土人形から身を守る。
脱出前にヤンルェさんに接近し、ヤンルェの申し出を断り、獣人としての能力を使い隣のビルへ大ジャンプ。
途中で宝玉影響範囲を外れ、空中で人化していく。
何とか隣のビルに届き下に隠してあった車で逃走。
指名手配を避けるため指紋など証拠は残さない──というラインで考えているの? 監督、どう」
「最後は不要だな、次々とアクションとカタルシスを与えれば、上映中はそんな些末事に客は構っていられなくなる」
と、ファーナスは丸めた脚本ヴァージョン13.81βで掌を叩く。
「ま、一応、予防線。予防線。で、監督。
屋上まで辿り着くのにアクロバッティックな動きや、スピード感があれば引き立ちますし。 最後の脱出にも必要なので半獣化を許可して下さい」
「構わんが」
「昼だと避難するにも大惨事になりそうなので、夜がいいと思うのですがどうでしょう?
月夜にジャンプし、滞空中に半獣から人へ変わるシーンを、ファンタジーっぽくCG処理すると──バトルの多いこの作品に美しさも出ると思うのですがどうでしょうか?」
「よし、その線で行こう」
「で、チヒロへの俺の愛の言葉だけどな」
と、赤毛に手を差し込みセッティングし直す竜壬。
彼自身の登場は、チヒロがルビーを奪取して、雑魚を振り切り、屋上に上がってきたところを待ち構え、接触」
そこでジゴロめいた笑みを浮かべ。
「彼女が元は悪側にいたのを今までの話の流れで裏切った、というのを再確認させ、善側は無力で、いずれこちらが全ての宝玉を得るのだから、今のうちに戻って来い、と提案。そうすることで宝玉ごと自分たちの側に引き込もうとするんだ」
そして、両手をオーバージェスチャー気味に開き。
「また、他の宝玉のありかも知っているんだが?と次のシーンもほのめかす。
その後に追いついた面々と鉢合わせ、チヒロに誘いを断られて屋上での決戦へと流していくのはどうか? と。
決戦シーンでは空中戦対応なので、そちらの役回りが出来るシーンを担当したほうがいいか?」
言って周囲を見渡す。
「と、他の面子にも確認。本当は折角相打ちになるのなら、女の子の手にかかるほうがうれしいんだけどねぇ、と個人的希望も、ぼやかせてもらう」
一息に喋ったので冷水を煽る竜壬。
「で、ルビーについてだけど、なんだかすごい品物らしいし、本物が来るという噂だが‥‥監督サン、後、シンさん、ちょっとオフレコにしたいので、記録止めてくれないか? シャイニングルビーてやっぱオーパーツか? という個人的な疑問と見解がある。
そうなるとこの手のものを狙ってる奴らがいるだろうし、知ったら見過ごすとも思えないので、スタッフや現物等に注意は払っておきたいな」
「安心しろ、只のアクリル球だ。じゃあ、マコトくんあたりと一戦交えるかね? ちょうど彼女は火の宝玉の守護者だ。ま、リハーサルで軽く手合わせして、その場で刺し違えるか、クライマックスまで引き摺るかを決めて貰っても良いが」
死亡予定は今回で、と。
言いながら、マコトが手を挙げる。
「散り際は王道的に撤退の際に殿を勤めて『ここは私に任せて逃げろ』と敵わぬと解っている相手の足止めをして死ぬ予定を希望」
「えーと、ホンファさんは火の宝玉の守護者でしたよね?」
とリューキが尋ねる。
「一応、そこのあたりの因縁は出しておかないとさっぱりお客さんに判らないので、エピソードをひとつ考えてきた方がいいんじゃないかな?」
と、OHPで日本語、広東語、英語で翻訳された設定をホワイトスクリーンに投写する。
名前:ホンファ
設定:善側の拳法仙人の一人、性格は真面目で義侠心を重んじる。
天将ウェンフーの部下だったのだが。
ウェンフーが宝玉を護る一族を襲った際に袂を分かち、一族の側について火の宝玉の護り手となり人界に転生。
しかし、転生時に火の宝玉を紛失。ルーロンとの合流までは捜索の旅を歩んでいた。
「で、思うんだけど──」
このルーロンとの出会いが切っ掛けで守護者的な性格をもっと全面に押し出した方が良いのでは? というのがリューキの意見。
「いくらダ──監督が人の命は紙の様に軽い、と言っているからって、それはテーマであって、テーマを観客にそれとなく納得させる為には最低限のドラマが必要じゃないかな、と思うんだよね」
「お前──言うようになったな」
と、ファーナス。
「近くに教師が居れば‥‥門前の小僧何とやら、というからね」
そして、OHPは次のマコトの提案を映し出す。
シーンの流れは──。
チヒロの情報収集&ルーロンの修行続き&熊兄弟の末路
↓
ヒロインとの出会い
↓
デパート内部での争奪戦
↓
屋上を含めたビル群での決戦
↓
脱出
「僕的には大まかにはこういう具合
火の宝玉の行方は善側行き。ちなみに僕は使う気ナッシング
ルーロンのヒロインとの出会い方や争奪戦や決戦等の細部は、リハと本番で煮詰めよ〜!
で、撮影に関しての質問だけどデパートの中で何処まで無茶が出来る?
それ次第で結構変わってくると思うし
デパートの中で売り物使って無茶な事やるのはお約束だからね〜」
「確かにな。其れに関しては日本円で1万円以上しそうな品は壊すな」「判りやすいと言えば判りやすい‥‥。で、ね。
あとはリハーサル撮影予定日の確認〜〜。
仕事入れるタイミング計り易いしね」
「『3月の15日から』プロダクション街で募集を始めるつもりで居る」
「了解、3月の15日☆」
「それより遅くなることはあっても早くなることはない、とメールででも回しておいてくれ」
「判った運?」
頷く運の役柄が、OHPで映し出される。
名前:ガンロン。
設定:四天王の一人。
土の宝玉の一族の者にして宝玉創造の時代より在り続ける天仙。
天界の在り方に失望し、ウェンフーにつき、一族と天界に刃を向ける。
基本的には面白ければ、それで善しの方針で動く。
面白くなりそうなら如何なる努力も惜しまず、如何なる結果も考慮しない。
その服装および美術センスは微妙。
「今回の役回りは量産型で戦闘員役&決戦の終盤で本人合流。
で、発見してきた宝玉の力を見せ付ける&使い方を説明が良いな〜〜」
そこで居住まいを正す運。
「五つの宝玉なんだけど‥‥。
火と木はこのままで、土はリハの通りルーロンの初期装備で行けるとして──」
「ちょっと待った‥‥」
遮るファーナス。
「‥‥いや、いい。ちょっと続けてくれ」
煮え切らない表情のまま運は言葉を続ける。
「水はヒロインの心臓に宿る宝玉に振って。
金は俺が発見してきたってのはアリ?
四天王がそれぞれ捜索を担当していたって事で」
「待ってくれ『金色』の光をリハーサルの時に合成したのは土の宝玉で、という意味だったんだ。それに、全てが死の眠りに就く『冬』に照応する水の宝玉はヒロインには相応しくないだろう。
実際に上映される部分でリハーサル分から引っ張ってこれたシーンなんてほとんど無いぞ!」
さすがに慌ててファーナス・ウォン。
リハーサルを行うのはあくまで映画の感覚を役者のみならず、スタッフが確認する為でもあり、リハーサルはあくまでシンの制作するおまけDVDの特典映像につくのみである。
「じゃあ、木と今回で手に入る火。そして、ヒロインの土が手に入るだけ? じゃあ、拳法仙人は‥‥」
「やはり、ウェンフーが休眠している間、四天王達が金と水の宝玉を探してきたのだろう。奇しくも陰陽五行に於いて、陽中の陰たる木の宝玉と、陽中の陽たる火の宝玉。
陰でもあり陽でもあるオールマイティの土の宝玉を手にしたわけだ。
そして陰中の陽たる金の宝玉と、陰中の陰たる水の宝玉をそれぞれ四天王が手にしている皮肉な訳だ」
「良く判りませんが、面白そうな構図ですね。
ともあれ、ヒロインに関しては設定は上がってるし。
性格の詳細と候補に関しては人任せ。
但し確定は本番という事で。
場合によっては史上稀に見る『主人公&ヒロインの一人二役! ラブシーンもあるよ!? カッコ、一部フィクション含、カッコ閉じ!』をリューキ少年にやって頂く事になるやもしれん
──冗談ではなくマジで
出会いは山と街どっちが良いだろう?
個人的にはデートイベントっぽいのが出来る街なんだけど」
「やっぱり、運さんが主役じゃ駄目かな、ダディ?」
「駄目だよ」
無常な親子の会話。
運は続けて──。
「あとは悪役の脱出の際に
邪魔な警官皆殺し♪ って殺っちゃえますか?」
「邪魔する勢力は叩いて潰せ、一片の慈悲もなく、挽きつぶせ──これ位やらないとな。あ、年齢指定にならないように殺し方には気をつけて」
ファーナスは拳でテーブルを叩いて力説する。
「了解した我が監督」
「大丈夫、運が莫迦ばかりやるようなら、私が黙って急所を潰しておきますから」
急所、どちらの意味でも潰されたら、沈黙では済まないだろう。
伊達ちゃんは、フェンレイの青雷ですがと、前置いて──
「リハーサルまでには、格闘の修業をして復帰できる」
──と説明する。
そして、個人の役のネタとして──。
「フェンレイの死亡する時はルーロンをボスの所へ向わせる為四天王のひとりと対決して、敵と密着した状態で自爆技で相討ちってのはどうでしょう?」
ファーナスは呟いた。
「それが格闘の修業とどう結びつく」
伊達ちゃんは、慌てず騒がず。
「屋上での戦いからの脱出方法も考えないとな、前は地上だから車で脱出ができたけど今度のは屋上から隣の建物に移動するのに大凧とか使えないか?」
「その凧を使うよりも、ハンググライダーとかを使った方が、客も納得するだろう。
これが日本のニンジャムービーなら大受けするだろうが。どうやら、君の意見と俺の意見は少々ずれているようだ」
「監督、そう気を荒ぶらさないで。少々冷めてしまいましたが、飲茶などいかがでしょう?」
とリンファは皆に自作の点心を勧める。
「ほうっ、これは上手いですな」
伊達ちゃんはご満悦。
「おいしいね。こういう点心ならボクも毎日食べたいな」
と、育ち盛りのリューキもご満悦。
「やはり、本場の材料は違いますね」
とリンファは謙遜する。
そしてOHPでヒロインの設定が投写される。
役名:ランファ(漢字名:蘭花)
設定:今は亡き天帝の娘であり、性格は気が強くて、少々無鉄砲。ただし、戦闘能力自体はけして高くない。父を殺めたウェンフーに激しい憎しみを感じている。だが、自分では太刀打ちできないので人間界に散らばった宝玉を得て、宝玉の力を借り、復讐しようとしている。なぜか主人公の母親であるファンランの若い時にうり二つ(実は宝玉を守護する一族とは天帝の一族に連なる為)
戦闘面では役に立たないので、本当の殺し合いになり、次々に仲間がやられていく様子に茫然自失になったルーロンの頬をひっぱたいて、『しっかりなさい! 何の為にみんなが命を投げ出したというの! ここであなたがしっかりしなかったら、みんなの犠牲を無にすることになるのよ。男の子ならしっかりなさい!』と言う具合に叱咤激励することでルーロンの心を支える役割を担う。
また、ウェンフーの亡き妻とうり二つであり、そのことにウェンフーがかすかな躊躇を見せることで完全な悪ではなく未だ良心の欠片が残っていることや、主人公とウェンフーとの関係の伏線とする。(ウェンフーがかすかに躊躇したのはランファの姿に亡き妻の姿を見たからであり、彼の過去を知る拳法仙人がいずれそのことに気づき、真実を告げるべきか否かを苦悩するというシーンも入れれるだろう)
リンファにファーナスに向かって頷く。
「設定は問題がない。仮に、仮にだ。ヒロインが間に合わなくて、ルーロンとそのランファ(仮名)がラブシーンをリューキひとりで演じる羽目になったとしても、ウェンフーが男女を見抜いていた、という事にすればいい。──問題はない」
そして、CG技術をフルに使い、ひとり二役。身長にも微妙に差をつける。裏方には泣いて貰う。
シンはもう泣いていた。同じシーンを3度とって(背景、男サイド、女サイド)それらをCGワークスに回すのである。
「女装は嫌だー!」
リューキがついにキレて武闘着を脱いでタンクトップ一丁に上半身を変え、半獣人化する。
白い鱗に黄金の鬣。青い瞳の小竜。
しかし、獣人化しないファーナスに頭を良いように押さえつけられる。
「功夫が足りないな──安心しろ最初は女装はしない。今、思いついたBLだ。ストリートキッズとして出して、男装で出してやる。安心しろ。日本には腐女子というものもいるそうだ。欧米ならスラッシャー、でノーマルに落とす。まあ、天帝の妻のシーンが冒頭にちらりとインサートするだけだ。これも逆光で顔を見せない。演技指導が少々厳しくなるが、リハーサルを入念にやっていけばなれるだろう」
もりゅーが割って入る。
「いや、時代はおねえさんでしょう。年下の男の子を護るつもりが、護られている。ロマンっす」
腕を組み深々と頷く。ずり落ちるサングラス。
「で、前にも話は上がったけど半獣化はどこまでなら許される? いや、それに頼るつもりはないが、宝玉の力で超常的な力を再現する際にうまく使えたらな、と思う」
「たしか、もりゅーはパンダだったな。ならいつでもオッケーだ」
ファーナスはそいう言ったものの、もりゅー自身も獣人化してもパンダなので活劇に映えないため、自分では使わないだろうなあ、と考えるところであった。
また、公共の施設なので、どの程度派手なことが出来るかも確認しておく(窓割りレベルでもダメなのか否か)。
「とりあえず、自転車に乗って出来ることレベルに押さえてくれ。自転車ならショーウィンドウを無理矢理突き破れるだろう? その程度に思ってくれ」
「成る程成る程。で、やっぱり、コミカル路線を貫くか、少々真面目に行くかで──」
「あのまま、出番が3回のコミックリリーフでもキャラは立っている。少々ハードに行くならば、改造獣仙になるのもいいだろう。その程度の尺の余裕は取れる」
「で、全体の展開ですが。悪玉のうちの一人が善玉に感化されて、『ここは俺に任せて早く逃げろ』と言って悪玉をひきつける展開はどうだろう? もしくは、善玉が、
『ここは(以下略)』と言って悪玉をひきつける展開って‥‥ああ、これはマコトさんの役目ですね」
「そ、任せなさい」
マコトが胸を揺らす。
それを横目で見ながら陣は──。
「出来れば俺に宝玉を回してもらって、屋上でルーロンを助ける為に半獣化で翼を生やして飛行。
んで、そこで目立って、ここらで都合良く空中戦が出来そうなヤンルェと、華々しく散るなり相討ちになるなりしたいところだな。
撮影は同じ様に飛べるシンさんが居るから良い画が撮れるだろうしさ」
「マコトのフォローに回って、ふたりがかりで漸く死中に活在り、といった形で、強さを見せつけるのも手だな」
一同が頷いた所でエースが。
「デパートの情報はチヒロからの連絡を受け、知るという流れでいいわ、異存は無いみたいだし、監督にも。
修行中のルーロンを連れ、件のシャイニングルビーを見に行き、それが本物であることを確認」
「よし、そこで仮面のトセイが見とがめられてルーロンが迷子になっている間にヒロインと運命の遭遇を果たすんだ」
ファーナスは閃いた。
「で、トセイの声帯模写の能力で、デパートの責任者クラスの人の声をコピー。
その声をもってデパートに電話をかけ、ある一定期間、デパート内に人が入らないように指示を出す」
外した仮面を手で弄ぶエース。
「そして、その時間を利用して宝玉を奪いに向かう、という正義側の動きね。
一般人の犠牲を減らすという目論見も兼ねているわ」
トセイサイドの考えとしては、悪側との戦闘が起こることも事前に予測し、ルーロンにもその戦いに参加させる。
第一段階の修行が済んだとは言え、まだまだ未熟なルーロンを成長させたいと考えている。
ひとりで戦うのではなく、周囲に気を張り巡らし、ルーロンを取り巻くありとあらゆるものの力を借りて戦うよう忠告。
万物は全て回り巡っており、ルーロンもその中のひとつでしかないことを悟らせる。 匙加減によっては『建物に一切の被害を与えず敵を倒せ』などの指示をルーロンに与える方向で。
往年の香港映画のような、ヒーローが常に動き回りながら次々とアクロバティックな演技を見せるのも面白いかと。
トセイ自身は寿命が尽きかけており、咳き込んだり吐血したりする場面も。
未完成の大技をルーロンに見せ、そして死亡という展開を考えているそうだ。
「よし、皆の意見は出尽くしたな、ラブコメ後、潜入、所によりバトル。遂に相打ち3名か? という路線だな」
本当にこれでいいのか? という声もファーナス自身にはあったが、とりあえず、会議は終わった。
そしてシンはリューキと近場の喫茶店で
「さて、肝心の‥‥」
少年自身に関しては、取り敢えず当人に話を聞いてみて、今のままだけでなくどんな内容のものであるかの確認。ならびに――
「ボクはリューキ・王はファーナス・王の息子であった、と呼ばれるよりも、ファーナス・王はリューキ・王の父であった、と呼ばれる様になりたい。ダディを乗り越えるだけの、オリジナルな存在になりたい」
「そうか。ならば、天才と呼ばれた数多の子役も、成長してしまえば普通の役者に紛れてしまう。そうならない様に、今のままでは無く、紛れてしまう事を押える為にも仕事を選ばず、色んな役を経て芸の肥やしにする様提案する」
「そうだね──主役がオーディションも何も無しにコネで手に入るなんて、普通の人から見たら垂涎者だからね。だから、このチャンスを最大限に活かすように努力する」
「ところでリューキ。これもメイキング映像に入って居るんだ。その決意。しかと撮らせてもらったぜ」
シンはチェシャ猫の様な笑みを浮かべた。