香港山海経3−1アジア・オセアニア
種類 |
シリーズEX
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
9.9万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
05/28〜06/01
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前回のリプレイを見る
●本文
「さて──宴にも終わりが見えてきたか」
香港の社長室にて、ファーナス・王は関係各位に書くメールの文面で頭をひねっていた。
彼の現在撮影している映画『香港山海経』はクライマックスまでその場の勢いで撮った物を積み上げた作品で、ファーナスとしても非常に自信が持てる作品であった。
特に息子のリューキ・王にも精神的成長が見られ、ひとりの親としても満足に足る結果を作り出そうとしている。
後はクライマックスシーンの詰めを行う為、香港に各員を招集し、ミーティングを行う事から再スタートする事にする。
決まっている事は土の宝玉がヒロインの心臓と一体化している事。
ギャグメーカー以外は皆相打ちとなり、新たな輪廻の輪を潜る事。
それ位であった。
一応、撮影場所は香港にしたいという意向はあるものの、絶対ではない。
「ま、独断専行はよくないわな」
ファーンはENTERキーを押すとこの激動の半年を振り返るのであった。
──カット21スタート。
●リプレイ本文
香港で舞台は幕を開ける。香港山海経クライマックス撮影──の前の打ち合わせである。
「あの横浜中華街でのプロモーション撮影から、早7ヶ月か‥‥ようやくラストが見えて来たなー。
‥‥ま、そのラストがまたでっかい山なんだがねー」
ぼやきつつ、風羽シン(fa0154)は、打ち合わせの一部始終を余すところ無く、電子媒体に捉えていく。いな、それ以上に、自分の心にである。
(決して電波に乗ることのない光景、それが今、この場から始まろうとしている)
そして、口を開こうとするファーナス・王(fz1002)の機先を制するかのように烈飛龍(fa0225)は腕を組みながら──。
「要するに、この香港山海経って映画は『親殺し』が裏テーマなんだろうな。映画の中のウェンフーとルーロンの関係、そしてファーナス監督とリューキの関係。親を超えてこそ少年は一人前になるって事なんだろうな」
『親殺し』をされる側の立場の人物としての発言である。
重かった。
ファーン監督曰く。
「いや、待て。それは俳優同士の話し合いから自然と生まれたテーマだろう。だから俺は運を主役に推したのだし」
「『親殺し』──」
香港山海経の主役、ルーロン少年を演じる事になるリューキ・王(fz1001)は、まるで生まれて初めて見た菓子を表するかのような、捉えどころの無い口調で返す。
「だが、映画の基調として、二重に親殺しのモチーフが入っているのは事実だ。ま、このおまけDVDまでを見るようなファンでもなければ、多分気がつかないだろうがな」
と、フェイロンは、印象的な野性味溢れるフェイスをシンのレンズの方に向ける。
「ふうむ、では、さてリューキ、お前に俺を越えるハッタリを見せる事ができるかな?」
と、ファーンも自分の息子に向き直り、おもむろに促すと──。
「やるよ。やってみせる」
触発されたリューキも発憤して返す。
「やーん☆ そういうリューキもス・テ・キ」
AAA(fa1761)は合掌した己の手の甲に、頬を乗せ、リューキに流し目を浴びせる。「やれやれ、親殺しをまとめて行うのか──贅沢だな」
と自らの経歴に一瞬、思いを馳せ、複雑な表情を浮かべる水守竜壬(fa0104)の言葉がエースに冷や水を浴びせる。
「俺はこの映画の中ではひとりの女だけで手一杯だがな──」
と、隣に座っている森宮・千尋(fa1782)の肩に手を回そうとして、チヒロに手の甲をつねられる。
「で、監督。私がやりたいことだけどね?」
と、マイ設定をさらけ出す。
曰く、チヒロ教授は、様々な宝珠のそばに長くいたせいか、半獣化後宝珠が遠のいても少しの間半獣化可能という事にしたいの。
また、ヤンルェから知らされた事で、自身の命が残り少ない事を知り、ルーロンに全てを賭けている。
前回多大な犠牲を払ったため決着をつけるべく、ウェンフーのアジトの捜索にチヒロは東奔西走。結果として、皆をアジトへ導き、途中現れた残りの四天王を前にに盾になる。 そして、もしものために、ランファか、リンホァンに地図を渡しておく。
その上でチヒロは、ルーロン少年に全てを託し半獣化して命のカウントダウン開始。
銃器で時間稼ぎをし、敵に命を賭けた蹴り技で深手を負わせるも、力尽きる。
霊となってからは、追い詰められたルーロン少年に、一時的に素早さを与えるなど、皆が守ってると言う事を感じさせたい。
「ちょっと、長かったわね。でも、今言った事が、チヒロ的にやりたいの」
「で、だ」
と、ファーン監督が神妙に聞いていた所に、竜壬が割って入り。
「ラストまで、あと少しってトコだな。生きてる面子にゃ頑張ってもらわねぇと。幽霊は‥‥どうすっかね?」
「そりゃ、自分の信念を死んでも貫き通して貰う。最後まで来たんだカッチョ良く転生してもらうぞ」
応じるファーンの言葉にニヤリと竜壬は笑い。
「じゃあ、格好良く転生させてもらいましょう。で、いつ、ウェンフーがルーロン少年に自分が父親だと告白するかのタイミングだけどな。俺は最期の対決、もしくはアジトに乗り込んできて、ふたりが対峙する辺りがいいんじゃないかと思う。
リンホァンの正体は、前回の火の宝珠での話の流れを受ければ、ガンロンがランファを見て宝珠の気配に気付くのが自然かな、と思うんだ」
「まあ、妥当なラインだな。で、隠し球は?」
「仕込み済み。ヤンルェとしては、ウェンフーとルーロンの持論について語るのも悪くないが、役回りとしてチヒロの最後のシーンにお迎えに来るのはダメかな? 難しい議論より死んでも女の子、でしょうと」
「せめて、女にしておけ」
「はいはい、じゃあ大枠の了解はとれた──という事で。チヒロ迎えに行くぜ」
「ああ、チヒロの方だけどな──」
「え、駄目ですか?」
と、ファーンの言葉に、チヒロは驚いた表情を隠せない。
「そうだ。半獣化なんて中途半端言わないで完全に獣化しておけ、変身プロセスを全部撮っておけば、顔が変わった事があっても、キャラクターの連続性は保たれるからな」
「考えさせてくださいね。顔は女の命ですよ」
「ま、獣化した方が何故か、美しくなるのは不思議だよな。野生の魅力って奴?」
九条・運(fa0378)が茶化すが、竜壬はファーンに向かって。
「それ以外でも、裏の手伝いでも、何でも手伝うぜ。
一応、自分から起用しろと申し出た仕事である以上、最後まできっちり見届けたいしな」
「では、よろしく頼む」
「さて、俺の案だけどなファーン?
ガンロンは前回目立ったので、俺の死に様は他の悪役連中の入り次第で変化。
リハーサルに出ただけとかの、長期欠席者が居るし。そういう連中が来なければ俺が出番を戴く。故に保留──俺の出番に関してだけならな」
「じゃあ、運さんはどういう案を考えているんですか?」
と、リューキ少年。
運は笑って。自分と同じリューキの収まりの悪い、金髪をもみくしゃにし──。
「撮影場所の案だけど。折角の香港だし、大体タイトルにしているくらいだからな。ランタオ島の寶蓮寺、ポーリンジーか、九龍の九龍寨城公園、ガウロンチャイセンゴンユン。
ほら、前の中華街みたいに強引にでもWEA通して、許可貰ってだな。その辺りのどっかを希望。
ポーリンジーの場合は、あの巨大な大仏の地下にアジトが在って、その道中で残りの悪役との戦闘。
総力を挙げて叩き潰しに来る悪役!
立ち上がり脅威を振るう大仏! 否! 大仏型改造獣仙!! まあ、多分、CGだろうけどな、シンには泣いて貰って合成して。
その激しい死闘と、仲間の死を乗り越え、遂にウェンフーとの最終決戦へ! って感じに王道さとハッタリ映像が同居し易い。
まあ、ガウロンチャイセンゴンユンは様々な意味で有名所だから、雰囲気もそれなりに良いし最終決戦の場所としては悪くないと思うし。その両者を候補に挙げておく」
「だが、その口ぶりからすると、ポーリンジーに決まっている様だな。よし。リューキ。お前は仲間が倒れてリンホァンとふたりだけになったら、五行殲龍波で大仏吹き飛ばせ。豊臣秀吉が木下籐吉郎を名乗っていた頃から、悪い仏像はぶち壊されると相場が決まっている。よし、脳内脚本修正完了」
「また、ダディは無茶を‥‥」
フェイロンは、呟くリューキ少年の肩を叩き──。
「親殺しならそれ以上のハッタリで応えるのだな」
「まあ、勇姿が眼に浮かぶようだわ──リューキ、イカスわよ」
話を聞いてエースもノリノリである。
そこへ、もりゅー・べじたぶる(fa1267)がシンのカメラ前に滑り込み。
「シンさん、今回は右から俺の姿取ってくんない? 俺、そっちからの方がカッコよく映るし」
と、根拠のない自身はさておき、もりゅーは自分の不安を晒す。
「今回はクライマックスの打ち合せっつーことで、最後に向けて詰めの作業になったわけだけど‥‥俺自身が監督が言う所の『ハッタリのあるミジンコ』が出来てるかどうか、まだ不安だ──。
ま、そこはそれ、本番で監督をうならせるハッタリ見せるため、今回も頑張るっす」
もりゅーも意地を見せる。
「で、俺の担当役がギャグメイカーなので、劇中は生死不明の状態で退場したい、という方向にしたいんだ。俺の考えでは、最終決戦一歩手前で、パワーアップを果たした、と登場するも、それ以上にパワーアップした善玉に簡単に蹴散らさる、というもの」
「ならば、大仏の頭に乗っかって、操作している事にしよう」
と、あっさり、ファーン監督の許可が出る。
「じゃあ、やっぱりギャグメーカーとしては、死なないでどうなったかわからない状況で退場するのが望ましいのかな?」
「うむ」
「蹴散らされる状況をしっかり考えたいので、どういった舞台設定、および、撮影場所で戦う、および撮影するかをしっかり打ち合わせたいんだ」
「ポーリンジーは、香港でもっとも大きな禅寺のひとつだな。建立は前世紀だ。その南側の丘に座している大仏がメインの撮影になる。その高さは20メートル、重量は200トンになる。周囲は緑に被われて、大仏の足下に行く為には270段の階段を昇らなければならない」
「270段──相手にとって不足はない。で、俺のパワーアップ状態を表現するため、獣化すべきか否かを皆に聞いてみたいんだ。いや、獣化してもだな、俺、パンダだし、画面的にどうか、と思ってな」
「それは方向性が違うだろ? 正義の味方が、パンダを打ち倒すのはクライマックスじゃ、気が抜ける」
言って竜壬が微笑を浮かべる。
「まあ、それはおいといて、こちらの話はまだ終わってないんだ」
と、運は話の流れを引き戻す。
「さっき、上がった、話の流れだけど、森宮の案に賛成。
リンホァンの正体バラシ関連は、土の宝玉が絡んでくるので俺も一枚噛む。というか土の宝玉の守護者としてはやらざるを得ないだろう。
でな、戦闘の際に──。
『貴様、やはりそういう事か』
──とネタを振っておいて、
『認められるに足る意思も示さず、ただ恩恵を貪って生き永らえていたか!』
てな感じで迫って行くんだ。そして── 。
『返してもらうぞ! 我が誇りを! 土の宝玉を!!』
って具合に彼女が土の宝玉を所有している事をアピールしておく。
その際に共鳴現象の発光が有るとGoo〜d!」
と盛り上がる運。
そこへ──。
「ちょっと待って」
咲夜(fa2997)が顔を赤くする。
「土の宝玉ってあたしの心臓だよね?」
と運に咲夜は視線を合わせる。
「ガンロンとしては当然、リンホァンから宝玉取り戻そうとするよね?」
「まあ、土の宝玉の守護者として‥‥だな」
「別に胸触られるのがどうのじゃなくてね、背中からだっていいんだし。じゃなくって! 宝玉取られたら、リンホァン死んじゃうじゃないの? あたし戦うヒロイン目指しているんだから」
「誰かちょっかい入れるだろう‥‥」
「そしたら、クライマックスだし、相打ちコースだよね?」
どうやっても紛糾しそうな流れになってきた。
そこへ、にこやかな麗人の笑みを浮かべ、楊・玲花(fa0642)が介入する。
「とりあえず、リンホァンの心臓にある宝玉は今のままでは十全な力を発揮しない。力を取り戻す為に彼女の強い感情が必要。ランファの死がその引き金となるというのは、どう?。
ランファはそして、ガンロンさん相手とは特定しないけど、リンホァンを庇い死ぬの。
そうなって、ランファは今際の際に彼女に正体を明かす事になるわね── 天帝の最後の血筋を護る為にランファの一族の許に送られた。その際、自分の記憶を一部封印した。解く為にはリンホァン自身の覚醒が不可欠という事にするのよ。覚醒することで宝玉の力の解放される仕組み── 。
それまで、ランファがリンホァンを連れていたのは、ランファの一族の隠れ里が、ウェンフーにより狩り出された為。
そして、ランファがルーロン達と出会ったのは、ランファの叔母であるファンランの霊の導きであり、ファンランの霊が乗り移ることでファンランとウェンフーの事のような、当事者しか知らない事情に精通していたのよ。
一方、ファンランの霊は息子であるルーロンを見守る為、そして、愛する夫を止める為に彷徨っていた、その旅の終着点がランファの末期という事よ」
ファーン監督曰く。
「それは背景に深みを与えるが、初期からの決定事項である『ヒロインの心臓が宝玉と一体化している』という前提を打ち砕くには至らないな──そもそも、みんな相打ちというのがコンセプトだし」
「じゃ、あたし死ぬの?」
咲夜がファーン監督に詰め寄る。
頷くファーン監督。それに頭を捻って咲夜は──。
「なら、話の流れとしてはね、やっぱり、リンホァンの体内に埋め込まれている『土の宝玉』はまだ本来の力を出せない方が面白いと思うな。で、何かの切っ掛けがないと取り戻せない方が説得力もあると思うし。その切っ掛けはリンファさんも言っていたけど、やっぱり身近な人の死、つまり、ランファ姫様の最後かな? 実は天帝の最後を目撃していて、そのショックで記憶を失っていた。そして、ランファが殺されようとすることで一気に記憶を取り戻し、覚醒するという展開もありだと思う」
「覚醒すると、ガンロンがな〜」
運と、ファーン監督。
とりあえず、話が空転しそうな雰囲気にリンファは話を整理する為の案を出す。
ウェンフーとファンランとの回想シーンを短いカットで挿入し、観客に人間関係を理解させる。
又、ファンランが村人に産着に包まれた嬰児を渡すカットを入れることも提案。
「要はルーロン関係の強化だね?」
リューキ少年も話に乗ってくる。
「やっぱ、この流れだと、ファンランを倒したガンロンが、土の宝玉のありかに気づいて、リンホァンを襲ってスプラッターなシーンになるか、誰かに返り討ちにしてもらうかの二択だな」
ファーンも話がこじれてきたのに業を煮やした様だ。
それでも咲夜は力強い口調で。
「この流れからすると、実現出来そうにないみたいだけど。ラストバトルの時、ルーロン君と肩を並べて共に獣化して戦う、ってシーンがあっても良いと思うんだ。
護られるだけのヒロインなんか似合わないと思うし。
儚げなヒロインは玲花さんがやる役に任せると言うことでね。
だけど、大団円の後、二人でお互いの無事を喜び合って抱き合うシーンは入れた方が良いよね」
その言葉にエースは微笑み。
「さて、ここまで頑張ってきた半年間、無駄に出来ないじゃない?
最後の最後までアタシの熱〜い演技、見せちゃうから!
とは言え、トセイはもう死んじゃってるのよねえ。
正義のオバケとして登場予定だけど、あんまりポンポン出てきたんじゃありがたみはないわよね?
トセイは本当に最後の最後、ルーロンの背中を押す役で使ってもらえればそれで良いわ。
むしろ最終章は出番は少なくても構わないので、リューキの相手ができればベストね。
まだ出番の多い役者さんは怪我したら大変だし、リハーサル時にイロイロ使ってもらってもいいし。
緊張しているだろうリューキの相談役として、画面外でもケアしてあげたいわね。
これがその時よ。リューキ迷わないで、自分の意見を素直に出せばいいのよ?」
「そうだよね。お約束として、死んだとしても宝玉全てを心臓の代わりに埋め込んで、宝玉の力は永遠に失われたけれど大円団という形で、その為にホンファさんのセリフがあったんだし」
と、リューキ少年。
エースは唇に人差し指を当て。
「じゃあ、魂の欠片となってルーロンの傍にいるトセイは、光の明滅で感情を表すような感じが良いかしら?
ルーロンが悩むようなシーンでは励ますように優しく光を放つのね。
逆にいつまでもうじうじしているようだったら、叱咤するかのように熱を放ったり、とか。
死して尚、悪事を働くような亡霊を光の波動で掻き消したりなんかも面白いかも。
そんな感じでCGさんには頑張って貰って。
最終章はルーロンとリンホァンの関係を軸に、物語を構築するのが良いかな、と。
ラブコメ的展開はそんなにいらないとは思うのだけど、多少の彩りはあった方がいいじゃない?
少女が少年を強くする、ってのは、リューキの言った大円団に向けて、すごーく説得力持たせられると思うのよね」
「ヒロインは死ぬ。それでヒーローは覚醒する。そして最後にヒロインは生き返る。昔の偉い人の推奨するお約束展開だ」
という所で最終的に生き返るのはオッケーという所で、ファーン監督は妥協したようだ。
「翻案として、土の宝玉に関しては、九条さんのガンロンの方から積極的にバラしては? 裏事情を実行犯的な立ち位置で知っていても可笑しくは無いですし」
青雷(fa1889)がそう提案する。
「まあ、その是非は置いておいてですね、フェンレイの死に様に関しては四天王の誰か、できたら金の宝玉持ちと対決して相討ちを希望します。確か、運さんが水の宝玉と、金の宝玉持ちでしたよね」
「まあ、確かにそうだが──五行のルールからすると『木行』は『金行』に負ける。美しくないな」
と渋るファーン監督。
「まあ、対決の後、死んで霊になってルーロンをサポートする流れで」
と、とりあえずの妥協点を見いだそうとするセイ。
「あと、木の宝玉を使った時のエフェクトって決まってましたっけ? 青竜が司っているって設定なら青竜の映像が出てきても良いと思うんですが。完全獣化した俺がエフェクトの青竜をやらせてもらえないでしょうか? 俺も鱗は青なんです」
と言って、セイは竜人の姿を顕し半獣化すると己の着物の腕を捲り、鮮やかな青い鱗を露呈する。
もっとも、背中から突きだしている青い翼でも一目瞭然であったが。
「残念だが、五行が司っているのは青龍だ。ロンであってドラゴンではない。我々、竜人族はどこまで行ってもドラゴンになるのが限度だ。龍人ではないのだからな」
「五行に関して不勉強だったな──」
と、頭を掻くセイ。
ちょっと普通じゃないとはいえ、高校生が五行に精通していたらそれはそれで怖いものがあるが。
「さて、俺の立ち位置を確認したいが」
フェイロンはファーンと腹を割った話し合いを始める。
「まず、ウェンフーの天帝殺しは復讐でもあるが、正しい者が報われず、奸臣がのさばっている天界を憂いた義挙の側面もあること」
「側面だな、君側の奸を除く、というのは珍しい事ではない」
「そうか、では。ウェンフーはルーロンを一目見て、自らの息子だと認識している。そして、いずれは己を徒なす存在に成長する資質があることを見抜いている」
「それは当然だな」
「ルーロンを動揺させる為にも自ら父親だと名乗る」
「いや、それはファンランの役目だが──あえて、事実を突きつけたいというなら、止めはしない」
「交渉は決裂する。拳を交える。圧倒的な力の差を見せ付けるものの、覚醒したルーロンの必殺技に倒れる」
「うむ、その流れでいかないと逆に困る」
「台詞として、『よくぞ我が許に辿り着いた、我が息子ルーロンよ。
そう、お前は我とファンランの間に生まれた、ただ一人の息子。そこの天帝の娘にとってはお前は親の敵の息子と言うことだ』というのを入れたいんだ」
「リンホァンが生きているかどうか未定だからな──」
「なるほど、ならば。『一方的に我を悪と断じる前に自らの頭できちんと考えてみるんだな。お前も我が息子なら事の善悪は判断がつくであろう』これは問題ないはずだ」
「よし。どう、斬り返させるかは、リューキに任せよう」
「続く言葉もある『考えてみるのだな、天界の守護者であり、何人にも侵される事の無いはずの天帝がなぜ、一介の天将に過ぎぬ我に破れたのかを。
天は我を是としたのだ。我に逆らう事はすなわち天に逆らう事だ。天を味方に付けた我にお前が勝てるはずもあるまい』」
「さて、リューキがどう斬り返すかな。と、いうよりリンホァンの生死次第で結構転ぶような台詞だな。ま、トセイがいるから、返答はするだろうが」
「楽しみに待とう」
そこでふたりは固い握手を交わす。親殺しで殺される者同志の握手であった。
握手を終えた後、シンがファーン監督に決断を迫る。
最終決戦シーンの撮影プランについてである。
案としては、ハッタリ重視として完全フルCGにするか、またはカタルシス重視として組んだセットを丸ごと破壊しまくるか。
しかし共に予算と時間を喰いまくるので、折半するか、質を下げるか‥‥或いは開き直って行き着くとこまで暴走するか。
「まぁ、最終判断は監督に一任って事で。その代わり腹を括ったのなら、裏方衆全員死ぬ気で付き合いますが」
「ならば結論はひとつだ。再現性のあるCGなんぞクソ喰らえ、NGの許されないセットの大破壊だ。ランタオ島全部を造って破壊する位の意気込みで行くぞ!!!」
「予算は!」
「息子の主演する映画に金を惜しめるか、造りたいだけ造って、壊したいだけ、壊せ!」
ともあれ、リンホァンが死ぬかどうかの決断は撮影ギリギリまで引き延ばされた。
リハーサルは6月の14から募集を始める予定となる。