WAKUWAKU−BEAST−LAND2アジア・オセアニア
種類 |
シリーズEX
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
2.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/31〜02/14
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前回のリプレイを見る
●本文
「やっぱり、スタッフの層も充実させないと駄目ね」
大友女史は去年放映されたスペシャル版を携帯の端末で見た後、腕を組み直した。
「というより、女の子抜きって結構痛くないか? 男の子のみとか、そういう不純な動機の人ならDVDが出ても買ってくれるだろうし」
ガード下のおでんの赤提灯で丹先輩は牛筋を突きながら応える。
「とにかく、受けを狙うのが大事ね。それに作品そのもののクォリティを上げないと──」
「受けイコール、お前の煩悩って訳じゃないからな。もう一杯呑むか?」
お銚子を大友女史に傾ける、丹先輩。
「とにかく、しっかりとした撮影スタッフをそろえて、元気な子供たちがタロンガ動物公園あたりで楽しそうにやっている様を取ればいいじゃないか、(半獣化だって)コスプレの範疇ですと言い切れば良いんだ? 視聴率が一番大事じゃないか? そうだろう」
「視聴率が何よ、やっぱり美少年がいいのよ。小学生なんて贅沢は言わないから‥‥中学生でもこの際は良しとして、人と金を集めるのよ。そう、放送は爆発よ!」
「しかし、カメラなどが日常的に持ち込まれる動物園ではナイトウォーカーに気をつけないとな、特に身内をWEA関係者で纏めていると、ガードに入る大人も若干必要だろう」
「丹先輩、今回はあなたに任せるわ──疲れた」
言ってぐったりとなる大友女史であった。
カット10、スタート。
●リプレイ本文
赤道を渡り、飛行機はいざオーストラリアに着く。
そこは真夏日である。
さすがは世界の裏側と言った所だろうか?
「という訳で、今回のヘッドライナーはカケルくんに頼んだから」
丹先輩に、ヘッドライナーとして指名された芹沢駆(fa1281)は周囲をキョトキョトと見回すと。一礼して──。
「非力ながらやらせてもらうね」
──と、口には出しつつ。胸中では──。
(やった、ついに僕の時代が来た。よしっ、アピールするぞ)
──等と意気込んでいた。
「上野の次はオーストラリアなんて一気にとんだねー。でも、しっかり準備しておいたからね」
(夏服に水着にパスポート、海外旅行は日本食が恋しくなるっていうから日本のお菓子も持って行こうっと、日焼け止めもいるかな?
大友さんあんなにがっくりするなんて思わなかったな、今回はちゃんと半ズボン履くから機嫌直してくれないかな?
でも、やっぱり売ってそうにないから僕じゃ手に入れようないし。
プロダクションとかにあるなら僕に似合いそうなの選んで持ってきてくれるようにお願いしておかないと。
それでも、変なの持ってきたらはかないからね)
「やったね、カケルさん。あ〜あ、次は誰かな?」
「まだ、気が早いよ」
クッキー(fa0472)がカケルに抱きついてくる。
5センチの身長差と醸し出す雰囲気からは判りづらいが、8歳児に見えるくぅとカケルは同い年である。
丹先輩にとってはパスポートを預かって何気なく広げて初めて気がついた事実である。
「ま、初代はやらせてもらったから、よろしくな二代目」
カケルの肩を叩く月岡優斗(fa0984)、彼も見た目は小学生だが、実は中学生であると丹先輩が気づいたのも最近であった。
「しかし、実際に飛び出してから言うのはアレだけど、海外に飛び出るとはスケールでっけーなー‥‥ともあれ、今回もよろしくー」
と大友女史に声をかけるゆーとであった。
「な゛あ゛、な゛あ゛『ヘッドライナー』って何だよ、あずさ」
子供たちの紅一点、あずさ&お兄さん(fa2132)が、いかすマッチョなオカマのパペット『お兄さん』を使っての腹話術でひとり会話を繰り広げる。
「う〜ん、お兄さん、それはね前回参加した子に聞いてみるのが一番早いかな?」
という事で一行の中で一番小柄な、星山航太(fa2700)に話しかける。
「ねえ、ねえ、星山さん? ヘッドライナーって何なのかな? 私WAKUWAKU−BEAST−LAND初めてだから、判かんない☆」
屈んで視線を合わせる航太とあずさ。魔の手が迫りつつあるのを知らない航太は顔を赤らめ。
「えーと、俺の知っている所だと、バンド用語で、複数のバンドでコンサートをやる際主役を張るバンドの事だって──確か」
「‥‥べー、ぞう゛な゛ん゛だ」
お兄さんに重低音を響かさせながら、あずさは唇も接さんばかりに近づいていく。
「こら、そこまで」
自分の分以外にもトランクケースを担いだ、凛華(fa1528)が不純異性交遊(笑)を止めようと、一歩進み出ると、凛華の巨乳が揺れる。Hカップは伊達ではない。
「く‥‥」
何となく敗北感を感じながら、あずさは航太から一歩退くのであった。
凛華の夫、武厳皇(fa1482)も豊満な肉体で大きなトランクを自分の分も含めて5つばかり抱えながら近づいてくる。
「いや〜、愚妻が何か、不始末でもしでかしたでしょうか?」
「何でもないわ、あなた。娘を思い出しただけ」
妖艶に微笑む凛華。
「あいつもこれ位の年頃か」
感慨深げに武厳皇が頷く、すると抱えていたトランクのバランスが崩れ、右往左往する。
「おっとっとっとっと」
意外にバランスを完全に崩さない妙技と、堂に入った発音が周囲の人々の目を引きつける。
最後には体力に秀でるダンディ・レオン(fa2859)が、力任せにトランクを押さえ込んで、片を付ける。
「やっぱり、借り物のスーツだと遠慮が出るのだ‥‥今度は自腹で購入するのである」
借り物の黒スーツに身を包み、ついひとりごちるレオン。
「しかし、随分な大荷物である。我が輩、そんなに長旅をした事はないのだが、やはり女性で15日間となると、相応の大荷物になるものであるなぁ」
追いついてきた大友女史曰く(チェックアウトで手間取っていたらしい。)
「あ、それ全部半ズボン」
「どうりで軽いと思ったのですが」
武厳皇が呟く。
「半ズボンね、最近は見ないから随分と懐かしいわ」
凛華が呟く。
カケルは背中を氷柱で刺し抜かれたような感触を覚えて一歩下がる。(本気だ、大友さん本気だ。蛇の巣穴を突いたのかも知れない)
まあ、後で現物を見せて貰った、いや見せつけられたのだが、趣味の悪い半ズボンは無かった。
むしろ、今に通じる趣味の先見性を感じさせた。
(大友女史‥‥あの行動力は、敵にすれば恐ろしいけど、味方にすればこれ程頼もしい相手はいないかもしれない──)
あずさは戦慄を感じながらも、半ズボンがトランクにして5個分の光景を想像しようとした──しかし、あっという間に想像の因果地平に辿り着いてしまった。
(おそるべし、大友女史)
その一方で航太は凛華に話しかけて、詫びようとする。
「‥‥あ、あの俺がはっきりしてないから、辛い事を思い出せてすいません」
「え、何の事?」
「だから、娘さんの──」
「ああ、美咲の事? 若気の至りだと思っているわ、まだ十代の時に産んだのだから」
そう言って凛華は折りたたみ式携帯電話を取り出すと、画面に娘の画像を表示する。
高校生程度であるが、胸はやはり母親に似ているようだ。
「俺のエモーションを返せ!」
空港ロビーで叫ぶ航太。
頑張れ少年。
ともあれ、スケジュールに余裕がある事もあり、子供たちからリクエストもあった事で、まずは海に出る事になる。そこから撮影開始。
「海っしょ! 海!!」
ゆーとのテンションは飛行機で海岸を見下ろした時から高まりっぱなし。
準備よく、水着を持ってきていた航太とカケルはさておいて、くぅとゆーとはプロダクションの経費で落として貰って水着を買い込む。
「あずさも開放的になれば?」
絵になるんだし、と大友女史は勧めるが、とりあえず固持。
下はパレオでどうにかしたとしても、上はさすがに──男と女では乳首の作りが違う。さすがに水着用のパッドまでは持ち合わせがない。
一方、下は海パンにサンダル。上はTシャツの腹に大きなポケットを付けた航太がカメラが回り出したのを確認して、おもむろにTシャツのポケットからマイクを取り出す。それを笑って受け取るカケル。
「WAKUWAKU−BEAST−LAND、オーストラリアスペシャルだよ。まずは真夏の海からお送りしています。今回のヘッドライナーは僕、芹沢駆が務めさせて貰います。1時間よろしくお願いします」
「あ、亀さんだ」
くぅが波頭のまにまにに見える大きな影を示す。
「すげぇ、オーストラリア来たばかりなのに、いきなり海亀かよ、行くぜ俺は!」
海に飛び込むゆーと。
しかし、海亀の周囲の観光客はざわめきだしている。
獣人たる彼等も気がつき始めた、この嫌な感触は──ナイトウォーカーだ。
「いかんのである。我が輩がやらねば」
未来ある子供達が傷つけられようとしているのを、黙って見ていられようはずがないレオン。
スーツのまま、海に飛び込んでいく。
「カメラ止めて!」
凛華が素早く指示を出す。
CappelloM92を取り出すあずさ。しかし、その瞳は瞑られたまま。
「生兵法は怪我の元、あずさも下がって」
武厳皇も海に、抜き手を切って飛び込んでいく。髭達磨が海坊主になった。
「ちぇすとー!」
張り手を浴びせる武厳皇。レオンは体術の差で先んじたにも関わらず、武厳皇に先行されてしまう。
「気をつけて下さい、こいつの手足は刃になっています!」
手足を振り回し、武厳皇の分厚い脂肪を超えて出血を強いる。
そこへレオンが到着。後ろから回って、動き止める。
「いくのである、武厳皇レオンツープラトンスペシャルを決めるのであろう」
「おっしゃあ」
ウォークライを上げる武厳皇。
足場の無いところから、強引にボディプレスによるぶちかましをかけ、下からはレオンの膝蹴りが甲殻を砕く。
亀を汚染したナイトウォーカーはふたりの豪傑の前に敗れ去った。
「ふたりとも──無茶したわね」
地元の治安組織にはWEAを通してプレッシャーをかけ、人の口に蓋をした上で、凛華が人の見ていない所で獣人化し、一角獣の力もて、ふたりの傷を丹念に癒やしていく。
活性化していく肉体の治癒能力。
「今だったらタダだったのに、ってカケルは言ってたわよ」
怪しげな笑みを浮かべる凛華。
「それは困ったな。獣人の力は保険が利かないですから」
「我が輩まで治して頂き、感謝に絶えないのである」
「どうせ、うちの旦那はこれから一時間治せないのだから、ついでよ、ついで」
「何にしろ子供たちが無事で良かったのである」
こうして1日は事あれど、実質上の被害なく済んだ。正確には服を破られた分を、経費として計上するのに丹先輩(大友女史ではなく)が頭を痛めたくらいである。
「タロンガの意味って知ってますか? って、これから僕たちが行く動物園、タロンガ動物園の名前の由来ですけれど、アポリジニ語で、“美しい水の眺め”という意味なんだそうです。これからシドニーを出るフェリーに乗り込みます」
マイク出しキャラとしてイメージが定着しつつある、航太からマイクを受け取り、カケルは真っ先にフェリーに乗り込む。
無論、根回し済みである。
「この便を逃すと、午前のコアラの撮影に間に合いません。
このタロンガ動物園では、コアラとガラスのしきりも無しに記念撮影が出来るんですよ!」
「よっしゃ本場のコアラ見んぞー! うぉー、生コアラか、すげーな。俺はやるぜ、俺はやるぜ」
ここで一同の衣装を確認。
パネルを何点か抱えた、くぅはオーソドックスに茶色のサファリルック。
盛り上がるゆーとは、器用にサッカーボールをリフティングしながら、半獣化の身をカメラに晒し、半袖の日本選抜のユニフォームに、ふさふさのリスの尻尾と、可愛らしい耳を晒している。
「ひとりで行っても、カメラさえあれば、動物園のスタッフの方が撮影してくれるそうですよ」
そう言う、ヘッドライナーのカケルは、半獣化して額から角を一本生やし、ワンサイズ大きめのタンクトップを上に着込み、大友女史と協議の上(?)、選択したレトロな半ズボン姿。
そのタンクトップの背中には小さなコウモリの翼を生やし、ちょっぴり小悪魔風。
因みに尻尾の毛も纏めてスプレーで固めて、先に矢尻をくっつけている。
「狙っているわね」
とは大友女史の弁。
「というか狙わせたんだろ?」
ツッコミ返す丹先輩。
「‥‥」
「否定しろよ」
一方、あずさは夏服のセーラー服に加えて半獣化して、発生したハムスター耳の上から、コアラ耳を装着している。
「コスプレというより正装ね」
「どこの世界にコアラ耳を着けた正装がある?」
「あら、学生服やセーラー服は冠婚葬祭、どこに着て行っても通用するわよ」
「それは日本だけだろう」
「しかし、あの『お兄さん』は‥‥」
あずさの手にするお兄さんは無慈悲にも改造され、クチバシに水掻きが追加され、カモノハシ仕様になっている。
「紅一点のプライドを捨ててかかっているわね、私にはそれが判る!」「判らない方が幸せな様な‥‥あれさえなければな──」
無言で丹先輩の臑を蹴り上げる大友女史。
「イタタ──いつか折れるぞ」
「手加減しているわよ」
で、航太のコスプレは──。
「ワラビーね」
「ワラビーだな」
当人も自分の身長上、カンガルーと言い張りたくても、ワラビー扱いされるのを承知の身を張ったコスプレである。
茶色で統一された、三角の耳に、長く垂れた尻尾、袋をつけたシャツ。お腹の袋は四次元に通じている訳ではないが、色々なガジェットが詰まっていた。
そして、コアラとの対面時間。
「うわー、こんなに近くていいのかよ!」
予想を裏切らず、ゆーとがエキサイトする。
予め飼育員と、話をつけておいて、ユーカリの葉を袋に忍ばせて貰っていた航太が。
「じゃじゃーん、ユーカリの葉。ユーカリの葉は醗酵すると、毒になるから真似しないでね。でも、この動物園は広いねー、えーと56ヘクタールだって? 本気で来るなら、計画を立ててから来るのをお勧めするよ。あ〜、コアラがユーカリの葉をむしっている感触が‥‥」
食べ終わった所でゆーとがコアラを抱き上げる。
「え、触って良いの?」
「だよ。フォト、プリーズ、お願い」
職員にお願いして写真を撮って貰うゆーと。
「あ、私も」
「俺も」
あずさと『お兄さん』も争奪戦に加わる。
この後、しばらく子供たちの間で、コアラ争奪戦が続き、コアラも些か消耗したようだ。
争奪戦が一段落した所で、くぅがボードを読み上げる。
「えーと、コアラは有袋類と言って(この漢字なんて読むの? え、みじゅく)、みじゅくなまま、生まれてきてお母さんの袋の中で表に出られるまでの期間を過ごします」
一生懸命読み上げるくぅの姿に大友女史は──。
「ああ、ちょっと舌っ足らずな所が萌える──」
「だから、仕事相手に萌えるな、と」
──と、丹先輩から注意を受ける。
「あら、仕事相手じゃ駄目なの?」
くぅの言葉は続く。
「このタロンガ動物園は、日本の動物園と交流が深くて──」
言いながら移動する一同。
今度はウォンバットの展示ポイントである。
「東京都多摩動物公園や、北九州市のグリーンパーク・ひびき動物ワールド、冬季五輪を記念して長野の茶臼山動物公園、それに、沖縄こどもの国動物園に贈られています」
「ほらほら、お兄さんウォンバットだよ」
言いながら、あずさが見てみるが、何もいない。地面にあながぽっかり空いてるだけである。
「ウォンバットは夜行性なんだよ。どうせ、眠りこけているんだろう? おら、起きやがれ!!」
『お兄さん』の声に飛び出して歯を剥くウォンバット。黒く小柄な身体に似合わぬ凶暴さである。
「あー、びっくりした。心臓が止まるかと思っちゃった」
だみ声であずさ。
「全く困ったモンだぜ、あの程度で驚いていたら、世の中渡っていけないな」
と、『お兄さん』は可憐な声で返答する。
ゆーとが一生懸命×印を出して、あずさに合図する。
「何だ、サッカー小僧? 俺様に何か文句でもあるのか? それとも俺に抱かれたい、とか──」
と、あずさ。
「ええい、おまえ等、入れ替わってるって言うのが、自分で判らないのじゃんか?」
切れたゆーとが、遂に声に出して言ってしまう。
「ええ、ええ?」
と、お兄さん。
「すいません、今のシーンNGにして貰えませんか?」
と、パニックから立ち直ったあずさ。いや、むしろマイナスにマイナスをぶつけてプラスにしたのかもしれない。
「ハプニングも見せ場の内」
丹先輩は悪びれもせずに言う。
「あー、イメージだい無しだよ。どうしよう『お兄さん』?」
「まあ、気にすんなって。人生山有り、山有りだよ」
「このウォンバットと熊を足したような生き物がタスマニアデビルです。こういう有袋類の中で、普通のほ乳類の中で負けずに分布を広げているのは、殆どなくて、たいていは絶滅への道を歩んでいるんです」
更に解説を続けるくぅ。
露骨に獰猛で、不機嫌そうな顔のケダモノにあずさも退き気味。
「また、やんないのか?」
からかい混じりにゆーとが促すが、あずさは二の足を踏む。
「年上をからかっていると、その内、酷い目に遭いますよ」
「大丈夫だぜ、そんなの?」
強がる、ゆーとであるが、リスの尻尾の毛が全て逆立っていた。
「次、行こうよ。とりあえずタスマニアデビル機嫌悪そうだし」
カケルも促す。
「あんまり画に成らなかったわね」
「絶滅危惧種が愛想を振りまくのもなんだと思うけどな?」
大友女史と丹先輩が言葉のキャッチボールを始める。
「世界は広いからタスマニアデビルの獣人のひとりやふたり」
「まー、一角獣はいなくても、一角獣の獣人は居るんだし──いや、そういう問題じゃないような気がするがな」
「さあ、番組最後はカモノハシで締めるぜ、ゲゲボ!」
ペースを取り戻したあずさが『お兄さん』に語らせる。
ボードを読み上げるくぅ。
「オーストラリアならではの野生動物といえば、コアラにカンガルーが真っ先に思い浮かびますけれど、この地球上でも非常に珍しい『カモノハシ』だって忘れちゃいけないのです!
タロンガ動物園では1日に数回、カモノハシの剥製に触れて、その生態についてレクチャーしてくれる時間もあります。‥‥実はカモノハシの体毛ってすごく柔らかい!
カモノハシはオーストラリア東岸沿いから南部にかけて棲息する小型の水性哺乳類。でも哺乳類でありながら卵を生むという、世界でも稀な原始的哺乳類で“単孔類”と呼ばれています。
18世紀後半に世界で初めて、この約6万5千年前から変わらぬ姿で生き続ける哺乳類の祖ともいえる動物が紹介された時、カモノハシの剥製が到着したロンドンでは『これは偽りだ! モグラか何かにアヒルのくちばしをくっつけた作り物にちがいない!!』と、まるで日本の“河童のミイラ”騒動のような騒ぎが起こったみたいです。
まぁ、見ればみるほど奇妙でユーモラスな姿をしているから、昔の人々がそう思ったのも無理からぬ話だと思います。
でも、カモノハシの生態は、今でも未知の部分が多く、生物進化の過程を知る貴重な手がかりとして、研究・調査が進められているのだそうです」
くぅの説明が終わると。
「あれ、出てこないですね? どうやら、巣穴の中に籠もっているようです」
「仲間だよ☆ 出ておいで〜?」
「おら、そんなタルイことやってるから出てこないんだよ。俺の美貌を見たさに出てくるさ、きっと」
あずさと『お兄さん』が懸命にガラスを刺激するが、出てくる様子は無い。
マイク片手のカケルが視聴者に詫びる。
「すいません、何時間待っていてもいいんですけれど、それじゃ番組が終わっちゃうので」
と航太のお腹の袋をまさぐり、DVD−RAMを取り出す。
「最近撮った、記録映像を流しながら、お別れにしたいと思います」
そして、水中を暗い中、滑稽な姿をさらけ出して、
(うん、こうやってると娘が皆と同じような年のころを思い出すわね。夫は力士から格闘家に転身してから、しばらく立った頃合いで、色々と忙しかったわ‥‥っと、思い出にふけるのは後にして。今は安全第一に警戒第一。撮影が終わるまで気を抜かずにおかないとね)
カメラのフレーム外で追憶に耽る凛華。
レオン、武厳皇も最後のカットの声が丹先輩から上がるまで、気を抜かなかった。
そして、撮影終了後、子供たちはやや早いがおやつの時間と洒落込む。
「じゃじゃじゃーん、ポテトチップス」
お腹の袋から、スナック菓子を取り出す航太。
「15日も日本を後にするんじゃ、みんな寂しいと思って、色々買ってきたんだ」
カケルも嬉しそうに日本製の菓子の袋を取り出す。
ゆーとは指を指して笑う。
「一番寂しいのは自分じゃないか?」
「し、失礼な!? そんな事はないよ」
「どうかな? ともあれ、大友さん、次回もよろしくー」
満面に笑みを浮かべつつも、自分をしっかりアピールする事も忘れないゆーとであった。