照魔鏡奇譚 アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
4Lv以上
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獣人 |
4Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
19.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/02〜01/06
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前回のリプレイを見る
●本文
TOMI TVがお送りする青春特撮ドラマ「照魔鏡奇譚(しょうまきょうきたん)」では、ただいまキャストを募集中です。
このドラマは、12月初旬に放映された「照魔鏡奇譚」の後編となります。
前編で、現代に生きる若者・三浦義純が平安時代の巫女姫・凪砂の召喚術によりタイムスリップし、仲間たちと共に妖狐・玉藻の前を倒しました。
後編の大まかな設定は、現代に戻った義純を甦った玉藻が襲い、察知した平安時代の仲間たちが彼の窮地を救うために現代にタイムスリップ、となっています。
☆ストーリー☆
現代の若者・三浦義純(みうら・よしずみ)が平安時代にタイムスリップし、陰陽師や巫女姫、半妖の武士達といった仲間たちと共に魔族による日本支配を企てた妖狐の化身・玉藻の前を倒して数日(平安時代での)が経過していた。
その仲間の一人である巫女姫・凪砂(なぎさ)は、長兄である鳥羽天皇を救い、平和を守り通した思い出を振り返りつつ、斎王(伊勢神宮の巫女)となるべく、伊勢への出立の準備をしていた。
義純が振るった名剣・神息丸を神棚に祀り、義純の面影を思い浮かべて凪砂は微笑を浮かべた。
(「今一度、お目にかかりたかった‥‥いえ、私は斎王として民の幸せを祈らなければならぬ身。義純殿‥‥斎宮から、幸せをお祈りいたしておりまする」)
神息丸に向かってしばし瞑目した姫に、兄・鳥羽天皇の声がかかる。
「凪砂、支度は出来たのか」
「はい。明くる日には出立いたしまする」
「寂しやのう‥‥妹姫の中で一番幼く可愛ゆいお前が、斎王となり、旅立ってしまうとは‥‥清嗣も泰親も、思いは同じじゃ。経定もああした奴ゆえ顔には出さぬが、寂しゅうて仕方ないのじゃぞ」
「そんなことを仰っては困ります。私は祈りで、兄上は政(まつりごと)で民の幸せを守るのですもの。同じ役目を兄上と分け合えること、私は嬉しく思っておりまする」
健気に、凪砂が白い笑顔を向けた。
「おお‥‥そうであったな」
天皇はそっと袖で眼を押さえた。
「かたかたかた‥‥」。
妙な音がした。音の出所を探った二人の視線が、神息丸の上で止まった。剣が震えているのだ。
「神息丸につば鳴りをいたしおりまする‥‥何ぞ義純殿に凶事でも‥‥」
凪砂姫は息を呑む。
「うむ‥‥しかし、お前は明日には伊勢に出立する身。滅多な行動は慎むがよいぞ」
兄の言葉に、凪砂はうつむく。伊勢神宮において斎王として神を祭り、京の都を守らねばならない、その責の重さを凪砂は細い両肩で受け止めようとしているのだ。
しかし‥‥
その夜。
凪砂は照魔鏡を前に、祈っていた。
「兄上‥‥お許しくだされ。胸騒ぎがいたしまする。凪砂は義純殿をお守りせねばなりませぬ。義純殿は‥‥兄上をお救い下さった、恩人なのですから‥‥照魔鏡よ、凪砂を義純殿のもとへ送り届けておくれ‥‥」
低い祈りの声が、斎宮に響いた。
◆
一方‥‥
こちらは現代に相変わらずのほほ〜んと生きている三浦義純。叔父の営む古道具屋を手伝う日々。店番をしていると、カンカン‥‥と鉄骨を組み立てる騒音が響いてくる。
店の隣に、大きなビルが建設中なのだ。
「和装ぎゃらりー・MISUZU」
なんでも、所有者はうら若い女性で、彗星のごとく現れ、着物や化粧品でめきめきと売り出し中のデザイナーなのだとか。
「‥‥にしても‥‥妙だよな」
あの建物の周囲を歩くと、何か変な気分になる。どうしても思い出してしまうのだ。玉藻の前が封印され、姿を変えた殺生石を見たときのような、頭の芯がグラグラする感じ。
もうひとつ、広告写真や報道に現れるデザイナー「MISUZU」はいつも黒いサングラスをかけていて、素顔はよくわからないが、いつも笑っているような桜色の唇を見ると、やけに既視感を覚える。
時折建築の進行状況を確認に来るのはMISUZUブランドの従業員らしいが、皆一様に地味な衣装を着て、「建築中、ご迷惑をおかけします」と数人のスタッフがこの店に挨拶に来た時も、抑揚のない喋り方で、一様に無表情。
まるで新興宗教の信者じゃないかと義純は思ったことがある。
人の心を操る術に長けた妖狐と戦った経験があるせいで、妙な先入観を持ってしまうのかもしれないが。
‥‥まさか玉藻の前が再び石から封印を解かれ、現代に甦ったなどということは‥‥?
「なーんてね。まさかな‥‥ふわわ〜」
あくびをして、義純は店番(という名目での昼寝)に戻った。
◆
そして真夜中‥‥建設中のビル。一人の女性が、不気味な呪詛を繰り返していた。
「見つけたぞえ‥‥三浦義純。わが術破りし恨み‥‥その身に受けるがよいわ‥‥くくくっ」
桜色の口元が歪む。愛くるしい童顔といえそうな顔立ちだが、そこに浮かんでいるのは魂まで底冷えするような邪笑だ。
現代の世で、玉野藻(たまの・みすず)‥‥「MISUZU」と呼ばれているその女性は、ビルの隣の小さな古道具屋を見下ろしていた。
こーん‥‥街中だというのに、どこかで、獣の鳴き声がしたような‥‥
●リプレイ本文
●巫女姫&泰親襲来!?
「起きろよ、ヨシ兄っ!」
乱暴にゆすり起こされ、三浦義純(=Iris(fa4578))はようやく夢から覚めた。
「もう五時だぜっ。閉店の準備! ったくぅ小学生に叱られてんじゃねーよ」
ウルフカットの茶髪を揺すりたて生意気に言い立てつつ店のシャッターを閉めるのは義純の小学生の甥、三浦真人(まおと=谷渡 うらら(fa2604))。
「ふわ‥‥もぉそんな時間!?」
眼をこすりつつ椅子からずり落ちかける義純。その姿を見て誰が彼を妖狐玉藻を聖剣で倒したヒーローだと思うだろう。
彼は大学に通う為に叔父宅に居候し、時折叔父の経営する古道具屋の店番を手伝っている(というか、ほとんど居眠り)。今日も叔父が真人の面談に行くというので、その留守を守っていたのだが。
「寝癖ついてやんの、だせぇ。つか、よく毎日そんなに眠れるなあ。あ、もうすぐメシだから支度手伝えや」
ポンポンと真人は指摘しまくるのだが、義純は夕方の冷えにぶるっと身を震わせ。
「寒っ。ちょっと着替えてくるわ」
と自室に引っ込んだ義純。ふと眼が行くのは、ベッドの宮に置いてある銅鏡。平安にタイムスリップした記憶が甦る。取り分け思い出すのは巫女姫凪砂のことだった。
(「斎王候補だって言ってたな。斎王って生涯未婚なんだっけ」)
胸が痛くなる思いと共に。
と、突然鏡が光輝いた。
光はやがて人間の形となって‥‥
「きゃあ!」
「はあ!?」
義純(着替え中&半脱ぎ)の胸に、鏡から飛び出してきた凪砂(=千架(fa4263))がよろけ込む。凪砂は胸に名剣神息丸を抱きしめている。
「なっなっ凪砂姫!?」
とベッドのシーツを剥ぎ取り体を隠す義純。
「みみみ三浦殿、そのお姿はっ!? いえ私は私は何も見ておりませぬ!」 とカーテンに包まりつつ凪砂。
「姫、ど、どうしてここに!?」
「神息丸が鍔鳴りを‥‥義純殿に何かあってはならぬと‥‥」
お互い変な格好のまま会話は進む。
「何かって‥‥今んとこ何もないけど‥‥? おい神息丸、お前間違ってんじゃね?」
「それならようございました‥‥いえあの、義純殿は兄上の恩人ゆえご心配申したのです」
やっと眼を合わせる二人。何か言いたげに凪砂が口を開いた。が、すぱかーん、とその後頭部に誰かのゲンコがヒットした。
「この抜け駆け巫女っ!」
「い、痛ぅございまする! ‥‥はっ!? 泰親殿」
凪砂の後ろにいつのまにかいて、その頭に突っ込みを入れたのは男装の殴り系陰陽師・安部泰親(=七萱 奈奈貴(fa2812))。
「天皇から神息丸のことを聞いたのでね。魂応の術を仕えるのは巫女だけじゃないし」
じとり。と泰親の視線が凪砂に突き刺さる。あわや、義純をめぐり恋バトル!?
「ヨシ兄―、メシ出来たぜ‥‥ってはうっっ!? ヨシ兄が女連れ込んでるぜ、しかも二人!!」
呼びに来た真人が大事件とばかりに三浦宗仁(=二郎丸・慎吾(fa4946))を呼ぶ。
「いらっしゃい。‥‥おや? (手をぽむ)仮装行列の練習かな?」
職業柄なのか年齢の割には股引履きのドテラルックとしっかりオヤジナイズされている宗仁が、平安時代の服装の二人におっとりのんびりリアクション。
「いやよかったよかった、カツも多めに揚げてあるし」
と凪砂と泰親を食事に誘う。
「こ、これは新たなる照魔鏡にございまするか!?」
居間のテレビを見てのけぞる凪砂。
「ふーむ‥‥この時代のオナゴはすこぶる大胆だな‥‥」
水着ギャルのポスターをしげしげ観察する泰親。とんかつにポテトサラダという庶民的なおかずを恐る恐る口にして、
「美味でございまする〜☆」
「まことに!」
感動しながらもやっぱり、義純をめぐり火花を散らす二人であった。
「おっちゃん、飯おかわ‥‥」
と茶碗を宗仁に差し出す義純に、
「義純殿、私がっ」
「いや、僕が!」
「まあまあ。お二人とも、食後のハーブティをどうぞ」
真人が心得顔に割り込んだ。
この真人、女性に口車を使うことに天性の才能を持つ小学生である。将来は間違いなくホスト、との呼び声も高い。
「お姉様達の着物姿、とってもお似合いですね。もしかしてこのイベントにお姉様たちも参加されるんですか?」
と差し出すチラシを見て、凪砂の顔色が変わった。チラシには「和装ぎゃらりーMISUZU」のオープンの知らせと、MISUZUこと玉野藻(=都路帆乃香(fa1013))の写真が。珍しくサングラスをかけていないその顔は‥‥玉藻の前に瓜二つであった。
●MISUZUの正体
玉野藻は玉藻の前の転生に違いない、今すぐ倒しに行かねばと焦る凪砂を、義純は引き止めた。
「まず服だな。その格好で外に出てもらうわけにいかないし」
時代ギャップのありすぎる二人の服装を、「よかったら母さんの服を貸してあげなさい」という叔父の申し出により、足りないものは商店街のブティックへ真人が走り、
「丈が‥‥丈が少々短うございまする」
「うん、これは動きやすくてよい」
フレアワンピースとボレロ姿の凪砂と、ジーンズにフリース姿の泰親となった。
ワンピースの裾をひっぱりひっぱり歩む凪砂を、「そこの巫女、遅いっ」と泰親が叱り飛ばしつつビルに到着した時は、もう夜になっていた。商店街は灯りを消して閉店し、暗い通りの中にぽつりとぎゃらりービルだけが明るい。中に、開店の準備らしく、スタッフ達に何か指示している藻がいる。
「‥‥玉藻‥‥!! 迷うて出たか!」
きっと表情を変えた凪砂が印を結びつつ飛び込んだ。が‥‥
「え‥‥? あの‥‥何か?」
ぽかんと佇む藻。側には髪をさらりと束ねた、いかにも業界人といった雰囲気の青年(=葛城・郁海(fa4807))が寄り添って、
「藻に何か御用ですか? ファンの方なら、今はプライベートですので」
と藻の肩を抱き寄せる。その二人の姿には、玉藻の前にあった邪気が感じられない。
「ちょっ、凪砂姫。落ち着いて。どうどう‥‥し、失礼しました〜」
義純はぺこりと頭を下げ、凪砂を引っ張り外へ飛び出した。
「また人違いか‥‥ったくこの巫女はとことん‥‥」
ふるふるとやり場をなくした拳を振るわせる泰親も続く。
そんな三人の後を、こっそり尾行していた真人がいた。
「ヨシ兄の奴美女二人連れて夜の街へ繰り出したと思ったら‥‥何やってんだ?」
好奇心満々の瞳を輝かせつつ。そして残業中の玉野藻を見つけ、
「おっラッキー☆うん、スリーサイズは予想外だけど、儚げ清楚でいいねー」
そして愛用の携帯電話のシャッターを切る。その画面をいそいそ見つめた真人の瞳がまん丸になった。画面の中の藻は、妖狐の耳と九本の尻尾を持っていたのだ。
●決戦!! 〜清嗣再会
またも? 人違いにしょんぼりと肩を落とす凪砂を義純は慰めていた。
「いや、姫のせいじゃなくて悪いのは神息丸だって。こらっ」
と神息丸をこつんと叩く。そうして叔父の骨董店に帰ってきた義純は、店先で呼び止められた。同じ大学で義純と同じく考古学を学ぶ二階堂清海(=正輝 草紙(fa5139))だ。
骨董品集めが大好きな名門のお坊ちゃまで、ちょくちょく叔父の店に来る。今日もぶらりと立ち寄ってみたらしい。
「義純‥‥また新しい彼女か? しかも二人」
凪砂と泰親を見て遠慮なく二階堂が口にした。
「『また』‥‥? そんなに女出入りが激しいのか?」
ぎろりと見る泰親の視線に義純が凍りついた時。メールの着信音が鳴った。真人からだ。
送られてきたメールの写真に、義純の表情が変わった。
「こ、これは‥‥玉藻」
凪砂も覗き込んで息を呑む。
義純達は再びぎゃらりービルに向かった。
「義純殿、そのお姿も凛々しゅうございまする」
表情を引き締めて歩む義純に、凪砂が頬を染めるが、義純の服装は愛用のジャージだ。取り合えず動きやすい服装というのでこの姿になった。何か間違っている気もするが。
建築中のビルには二階から上に青いビニールシートがかけられ、そのシートが夜の風にはらはらと鳴っている。
「ヨシ兄ぃ〜」
真人の泣き声がする。見ると、鉄骨が剥き出しになった3階の柱に縛り付けられているのだ。
「またも鼠が邪魔に現れたかや。三匹一緒とは好都合、まとめてあの世へ送ってくれるわ」
鉄骨から鉄骨へ、軽々と跳びつつ現れた玉藻がほほ‥‥と艶やかな笑い声を上げた。
先ほど見た恋人らしき青年が、真人の傍らに立っているが、表情が空ろに暗い。魂を抜かれ玉藻の式代わりに利用されているようだ。
「真人まで巻き込むなんて‥‥っ、わわっ!? こっこら神息丸っ。ここじゃ切った張ったは罪になるんだ。お前も神剣なら時代のニーズに合った戦法‥‥って聞いてる!?」
相変わらず義純を引っ張り回そうとする名剣に、義純は説教した。
真人だけでも助けなければと焦る凪砂が、式を消そうと印を結びつつ真人に駆け寄った。
だが、式が無表情のまま凪砂に手にした刀で切りかかる。その時、真人が叫んだ。
「姫、今こそご恩返上仕りまする!」
りぃん‥‥凪砂が真朱に託されて肌身離さず持つ鈴が響いた。真人の瞳が赤く輝く。真人を縛る綱がはらりと解け、真人が式に噛み付いた。
式の呪がそれで解けたのか、式は糸の切れた人形のように倒れた。
(「今の声‥‥真朱?」)
凪砂は息を整えつつ、思った。真人は子狐の化身の転生だったのだろうかと。だが、玉藻はその間に義純に向かい呪詛を唱える。
「くぅっ‥‥」
義純の体が金縛りとなる。
「義純殿には指一本指させませぬ!」
凪砂が言い、印を結び変えた。呪いを義純から自らの体に移し変えたのだった。凪砂は紙のような顔色となり倒れた。
「姫っ」
動揺する義純を、泰親が叱咤した。
「あの大ボケ姫が捨て身で作った好機だぞっ。今を逃してどうする!」
はっと神息丸を握りなおし。義純は深く一呼吸した。
(「バカだよな俺‥‥やっと気づいた。何の為に戦うのか。守りたかったのは‥‥」)
「っっりゃああああ!」
義純は剣を振り下ろした。玉藻の身は斬らずとも、迸る聖なる光により玉藻が弾き飛ばされ、和服が裂け、はらりと華奢な脚線が剥き出しになる。
「また‥‥しても‥‥三浦‥‥貴様は‥‥」
九尾の狐の本性を半ば現しながら、玉藻が執念でゆらりと立ち上がる。
玉藻の背後から掴みかかる影。いつのまにかついてきていた二階堂だった。
「何をしやるか!」
玉藻が妖力で弾き飛ばす。二階堂の体が一階下に叩きつけられる。が、その隙に義純が一気に距離を詰め、ざっくりと刀身を玉藻の美しい体に打ち込んだ。
凪砂が魂封じの呪を唱え、泰親が九字を切る。
「烈、在、前‥‥妖狐封印!!」
つんざくような悲鳴。閃光。
からん‥‥後にはちっぽけな石が残った。
義純は二階堂に駆け寄った。
「これで‥‥帝をお守りくだれし恩は‥‥返せ申したな」
「‥‥え、二階堂!? しっかり!」
「転生し、義純殿の役に立てたは僥倖。平安の世にて合間見えた折には、近衛府長官・二条清嗣と申したが」
にっこりする二階堂に、鳥羽天皇を守るため一度は義純達に剣を向けたが、玉藻を退治した後義純達に、この恩はいつか返す‥‥と誓った、平安時代の刑部省長官の面影を、義純はようやく見て取った。束帯姿とジーンズじゃずいぶん印象が違うものだと。
凪砂が泰親の呪で息を吹き返す。
「お姉様良かった♪」
真人がすかさず凪砂に抱きつき、泰親のパンチを食らっていた。
●凪砂の帰還
「これで安心して帰れるよ。よく‥‥頑張ったな。やっぱりキミとは恋人より親友でいたい感じだよ、うん」
妖狐を滅した泰親は、再び義純と腕をがしっと組むと、照魔鏡に吸い込まれ帰還していった。現代ですっかり気に入ったハンバーガーととんかつを土産に。
「私も‥‥これよりは斎王となり伊勢神宮より義純殿の幸を祈りまする」
凪砂姫も帰ろうとする。
「まってくれ。俺‥‥」
だが、義純は斎王となる決意そのもののように清らかな巫女装束に戻った彼女を引き止めきれなかった。
がっくりベッドに突っ伏して絶望する義純の背中にーーードン!
「わっ!?」
「きゃっ? も、申し訳ありませぬ!」
凪砂だった。泰親が天皇に、「恋をした巫女に斎王の資格はありませぬ」と掛け合い、凪砂は恋しい人の元に戻るようにと諭したという。一瞬、照魔鏡に鳥羽天皇の温顔が映った。
『義純殿、姫を頼む』
宗仁に似ているが堂々たる髭のあるその顔は、寂しげだが笑顔だった。
「そのようなわけで、ただいま戻りましてございます。あ、あの‥‥『すかーと』には馴染めませぬのでしばらくこの服装でよろしいでしょうか? このようなふつつかものでよろしければ末永う‥‥」
いいさした凪砂を、義純がしっかり抱きしめた。言葉はもう必要ない。人の思いだけは、術や鏡など無くとも時を超えることが出来るのだから‥‥
☆ おまけ〜メイキング集☆
●戦闘シーン後、衣装が破けたせくしー状態で着替えに駆け戻る都路さん
「み、見ないで下さいぃ〜! ちょっ、何撮ってんですか!?」
● 千架さん&Irisさんメイク中
千「だーっ重てぇ、この衣装(ずばっと巫女衣装まくりあげ)」
Iris「頼むから千架さん‥‥凪砂姫のままでいて‥‥(涙)」
● 平安時代の武官・現代大学生の演じ分けに苦労する正輝さん
「前編の平安時代の服装での格闘も難しかったけど、演技にはまた別な苦労があるんだよな(ため息)」
● スタッフに少年姿が似合うと褒められた真人役の谷渡うららさんの呟き
「そのうち‥‥ないすばでぃーになるんだもん(この後牛乳がぶ飲み)」