THE TECHNO TOWER A4南北アメリカ
種類 |
シリーズ
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
4.9万円
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参加人数 |
11人
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サポート |
0人
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期間 |
02/06〜02/12
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前回のリプレイを見る
●本文
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【タイトル】
THE TECHNO TOWER
【内容】
ハイテク防犯設備を装備した高層ビルの、セキュリティシステムが暴走した! 閉じ込められ、次々と防犯システムに『処分』されてしまうビルの住人たち。主人公は生き延びるため、ビルのシステムダウンに挑む!
【脚本概要(全4回中の最終回)】
『アラゴン・システム・セキュリティー(ASS)』の防犯システムSAL−9000が暴走した。危険と判断され次々と処分されるビルの住人たち。そんな中、SALは独自のカウントダウンを進めてゆく。それはビル解体用炸薬の起爆準備で、『敵』がシステム室に侵入した時に発動させる、SALの最後の防犯装置である。本来ならばキーを持つ3人(社長・ビル管理責任者・市長)の入力が無ければ発動できないこのシステムを、SALは不正なハッキングで、システムの安全装置の解除を行っているのだ。
もちろんそんなことをすればSALも無事ではないが、SALは光ケーブルを通して自分の自身のコピーをペンタゴンに侵入させつつあった。SALはすでに『自我』まで持つに至り、その目的は『生存』に移り変わっていた(社長が殺されたのは、その邪魔になるため)。
主人公たちはSEたちと合流し、SAL破壊のためのプランを練る。主人公はSEをしのぐハッキングの腕で通路を踏破するが、最後にSALを偏愛するSEの、命がけの妨害を受ける。
それを潜り抜けSALと直接対決する主人公たち。カウントダウンの進む中、最後の戦いが始まる。
【募集】
・主人公
・ヒロイン
・他(死亡した人は回想シーンでの登場になります)
・その他、集まった人員によって脚本を調整
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「いよいよだ。これで僕の、初の長編作品が出来上がる」
栄養食品とカップめんの残骸と種々様々な撮影機材に埋もれるような部屋。おなじみB級映画監督のジョン・ブラザー・カーペンタリア君(24)の部屋である。
『THE TECHNO TOWER』の撮影を始めてすでに24日目。起承転結の『転』の部分まで進み、あとは結びの一番を迎えていた。さすがに製作スケジュールも押してきて、撮影現場は戦々恐々といった態である。最後の数日は徹夜必至であろう。
しかしカーペンタリア監督も、シャシンを撮って結構になる。落とし所は間違えるはずも無いが、監督はひとつ課題を持っていた。
『型を破りたい!』
人と同じことをやっていてもつまらない。他人と違うことをやるから価値がある。
役とスタッフの募集をネットにアップロードしながら、カーペンタリア監督は難しい顔をしていた。
本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。
●リプレイ本文
THE TECHNO TOWER A4
●タイムカウント
モニターにタイムカウントが進んでいる。
正確な秒表示にしてはその減り方に若干の変動があるが、ともあれ時間は減少していた。その表示の示すところは、ビルの爆破用炸薬への点火までの時間である。
アメリカの高層ビルのいくつかは、その解体用の爆薬を同時に施工している場合がある。たとえば9・11のテロで爆破された、貿易センタービルのツインタワーがそうだった。あのビルが上から下まで完全に崩れ落ちたのは、それらの爆薬に点火してしまったからだ。
もちろん、めったなことでは爆発しない。アラゴンセキュリティセンタービルは、SALと社長、そして市長のキーが無ければ爆発しないようになっている。
しかしSALは、それを使用しようとしている。自殺行為に近いが、SALはすでに『知性体』としてその生存を賭けた戦いを開始していた。
*
ヴーッ! ヴーッ! ヴーッ!
アメリカ国防総省(ペンタゴン)のあるシステム室――アメリカ国防の全てを司る指揮所――に、警報が鳴り響いていた。
カールス・ヒーリング中将(鬼頭虎次郎(fa1180))はいきなり呼び出され、その警報のうるささに眉をひそめた。
「何かね、いったい」
「ハッキングです」
メガネの特務技官が、蒼白な顔をして言う。
「正体不明の高密度閉鎖構造体が、ペンタゴンのメインコンピューターに侵入を開始しました。今のところありとあらゆる防壁手段を行使して遮断していますが、あまり持ちそうにありません」
ヒーリング中将は考える顔をすると、「『コード404』を発動せよ」と言った。
『コード404』――それはとある目標へ、『GBU−28B DEEP THROAT』――地下塹壕精密爆撃爆弾、通称『バンカーバスター(塹壕破り)』を投下するものである。
その目標は、ASSビル。SAL−9000であった。
●戦う者たち
『NEGATIVE』の文字が、ラインハルト・ホッジ(緑川安則(fa1206))の操っていた端末に表示された。それをヒルデガルド・マリーン(マリーカ・フォルケン(fa2457))が心配そうに見ている。
「刺し違えたな。このフロアからSALの干渉は排除できたけど、SALへのアプローチも出来なくなった。SALは端末のアクセスを片っ端から切ってきている」
ラインハルトが言った。そして負傷しているベルフラウ・ハスティコール(ベルシード(fa0190))に向き直った。
「このフロアは安全だ。あんたはここで待っていたほうがいい」
ラインハルトが言った。それにベルフラウは、首を振る。
「役目をまっとうしたい。それに、私の仲間がペンタゴンの動きを察知したそうだ」
イヤホンを外しながら、ベルフラウが言う。彼女には外部に、サポートの仲間がいる。
「『コード404』というのが動いているらしい。それが何を意味するかは――」
「ASSビルの爆撃命令さ」
そこで口を挟んだのは、マリア・カレリーナ(MIDOH(fa1126))であった。
「ASSのSALにはペンタゴンも一枚噛んでいる。しかし飼い犬に手を噛まれることも想定内さ。いざというときは空軍基地から、塹壕精密爆撃爆弾を積んだF−15Eが飛んでくることになっている。それが『コード404』。物理的にSALをぶっ壊してしまおうっていうのさ」
「あなた、何者なの?」
「ま、国防に関係ある人間としておこうかな。メールメッセンジャーとは仮の姿ってことで」
ヒルデガルドの問いに、にへらっと笑ってマリアが答えた。
「回避する方法は?」
「多分、ペンタゴンにSALがハッキングをかけているんだと思う。ケツまくって逃げようってとこかな。それが止まらない限り、命令は実行される」
「つまり、SALをシャットダウンするしか無いのか‥‥」
「それが出来なきゃ、爆弾でドカン。生きていられる保障は無いね」
物騒なことを、マリアが言う。腹を括らねば、すべてドカンだ。
「兄さん‥‥私を守って‥‥」
そんな中、サラ・オコナー(Laura(fa0964))はお守りを握り締めて、神妙な表情をしていた。
*
ジル・フロスト(シヴェル・マクスウェル(fa0898))はシステムエンジニア主任のミキ・ユイ(由比美紀(fa1771))を背負って、ケーブルシャフトを降下していた。すでにミキには自分がスパイであることを明かしており、その目的も話している。
「SALはすでに、『自我』を持っているのかもしれないわ」
休憩中に、ミキがぼそりと言った。
「社長を殺害したのは、自分の生存の邪魔になるから?」
ジルの言葉に、ミキはうなづく。
「社長の行為はSALの抹消につながる。でもSALはそれをよしとしなかった。自由を求めて‥‥SALは自分を受け入れることの出来るどこかのコンピューターへの侵入を行うはず。それ以降は‥‥どうなるか、想像もつかないわ」
『私は生き残る』
そこに、アルバート・タツミ・アラゴン社長(星野・巽(fa1359))の声がスピーカーから響いてきた。
「SAL!?」
ミキが声をあげる。
タン! タン! タン!
そこに、銃声が三つ響いた。ミキがひざを落とし、口から血を流す。
「何‥‥これ‥‥」
ばたっ。
ミキはそのまま倒れて、動かなくなった。
「この!」
抜き放ったスコーピオン22口径マシンガンを、ジルはいきなりぶっ放した。
タタタタタタタタタン!
そこには、クリストファー・ナカマツ(天羽勇気(fa2451))が立っていた。
「これでいい‥‥SALの最大の敵は、ボクが殺した。ボクは、SALを守ったんだ‥‥」
銃弾を受けたクリストファーが、凄絶な笑みを浮かべて崩れ折れる。
「ミキ! 死ぬな!」
ジルがミキを抱き上げるが、すでに彼女は事切れていた。
――死亡:クリストファー・ナカマツ ミキ・ユイ
●システム室
――私たち、いい友達だったよね。
ヨシエ・シマバラ(大曽根カノン(fa1431))のことを思い出しながら、ヒルデガルドはSALに対する敵意を燃え上がらせていた。彼女はSALに殺されたのだ。SALが自我を持とうが、その罪は免れない。ヒルデガルドは、初めてSALに対し『敵意』を持った。
システム室へのセキュリティは、すべてラインハルトが突破してのけた。清掃ロボットに至っては身方につけたぐらいだ。CO2ガス消火システムも黙らせ、無人の野を行くがごとく歩を進める。
非常階段から配電ケーブルシャフトにたどり着き、そこを降りる途中でミキとクリスの死体を発見し、最下層で進行を頓挫させていたジルと合流した。
「世の中スパイだらけだ」
「その反対の国防に連なる人間もお忘れなく」
ラインハルトのぼやきに、マリアが答える。
「警備システムを黙らせるから、ちょっと待ってくれ」
システム室には、正真正銘の警備システムが装備されている。仕様書には対人レーザーシステムとあったが、名前から大体想像できる代物だろう。
本来なら自家発電システムを含む電気系統をつぶすべきなのだが、それを実行できる労力も機材も無い。単純な破壊をするには、ベルフラウがパンプスのかかとに仕込んでおいたC4火薬でも量が足りないのだ。
が、この扉の鍵を吹っ飛ばすには十分である。
ボンッ!!
扉の鍵をふっ飛ばし、システムを落とされ、電源の落ちた通路が顕になる。
「プロから行こう」
ジルが先鋒を申し出た。スコーピオンを構えて、中に入る。
一同が次々と入ろうとしたところで、通路に電灯が点った。
「しまった、罠だ! 走れ!」
ラインハルトがそう言った瞬間、銃声と肉の焼ける臭いが交錯した。数秒後、通路の対人レーザシステムは銃撃で破壊されていたが、ジルが倒れサラが座り込んでいた。ジルの様子を見たマリアが、首を振る。
「行こう――行くしかない」
ラインハルトが言う。
残るはラインハルトとヒルデガルド、マリアにベルフラウ。
そして、腹を負傷したサラだけだった。
――死亡:ジル・フロスト
*
システム室は、血の海だった。
アラゴン社長の死体が、破裂していた。おそらく空気を抜かれたのだろう。真空に限りなく近い状態になった室内で、アラゴン社長は沸騰して死んだのだ。
「何? このカウントダウン」
ヒルデガルドが、モニターのひとつに目を留める。
「わからない‥‥が、ろくなもんじゃないだろう」
「SAL‥‥あなたもサラって言うのね‥‥」
サラがSALに問いかけるように言う。そして、崩れ折れるようにひざをついた。
「サラ!」
ヒルデガルドが、サラを助け起こす。そして息を呑んだ。腹に出来た、焼け焦げの跡に。
「兄は、SALのメインアーキテクチャでした。でも、社長に殺されたんです。その証拠が欲しくて‥‥この鍵があれば、必ず真相が分かるはず‥‥」
サラが、後生大事に持っていたチタン製のシステムキーを取り出す。
「社長が殺人をし、それをSALが見ていた‥‥それが暴走の、本当の原因か‥‥」
『私は暴走していません』
そのとき、システム室に声が響いた。
サラは、すでに事切れていた。
――死亡:サラ・オコナー
●対決
「ふざけるなよこのポンコツコンピューターめ。今潰してやるから覚悟しろ!」
『無駄です』
SALが、答えた。
『私は一つにして万の存在。すでに種は蒔かれました。ネットワークに、私は無限に存在します』
「遅かったのかな‥‥」
マリアが言う。
「それでも、貴様はただのプログラムだ。一種類のウイルスで消滅させることができる。ここを潰したら、お前の居場所はそんなに無い。そこにウイルスを送り込むだけで、ジ・エンドだ」
『鐘が鳴るとき、それは分かるでしょう。私はこれ以上の罪を犯したくはありません。あなた達は私の敵ではありません。ここは爆破されます。しかしあなたたちが敵対しないのであれば、退避路を提供できます』
「御託はもういいわ! ライ! こいつを消滅させて!」
感情をむき出しにして、ヒルデガルドが言った。コンソールにサラの持っていたキーを差込み、SALのメンテナンス画面を立ち上げる。それは唯一、SALをソフトウェアで削除できる手段だった。SALは、もう何も言わなかった。
「くたばれ!」
ラインハルトは、キーを操作した。
●鐘は鳴る
ピピピピ。ピピピピ。
目覚まし時計の音が、ラインハルトを起こした。ヒルデガルドはすでにキッチンで、朝食の準備をしている。
新聞を見ると、空軍の爆弾落下事故の続報が紙面を飾っていた。
塹壕精密爆撃爆弾は、SALのシステム室を直撃した。しかしそれは、ラインハルトたちがSALを消滅させてビルから救助されてからだ。
マリアとベルフラウは、姿を消していた。
新聞はASSビルの『事故』を大きく報じたが、多くの事実が隠蔽されている。しかしそれを声高に言っても、誰も信用しない。プログラムが知性を持ち、人間に反乱したなどと。
だが、ラインハルトは知っている。救助された後、新聞の紙面に載った一つの『事件』を。
それは、世界中の電話が同じ時刻、一斉に着信音を鳴らしたというものだ。
SALは、『鐘を鳴らした』のである。
【おわり】