潜望鏡下げろ! A2南北アメリカ

種類 シリーズ
担当 三ノ字俊介
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 4万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 01/16〜01/22
前回のリプレイを見る

●本文

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【タイトル】
 潜望鏡下げろ!

【内容】
 主人公ハンス・マーベリック中佐はアメリカ海軍の問題児。潜水艦の副長を務めているが、デッキでゴルフをするようなフランクさ。過去何度も潜水艦の艦長に就任するチャンスがあったが、その素行の悪さで上官からは目のかたきにされている。
 しかし、そのハンスにもチャンスが回ってきた。潜水艦の艦長になれという辞令が来たのだ。さっそく意気揚々と艦に向かうハンス。しかしびっくり仰天。その艦は第2次世界大戦時に使われていた超骨董品だった! 彼に下された命令は、このポンコツ潜水艦でアメリカ海軍の防衛戦を突破し、標的艦を撃沈すること! 最新鋭の原子力潜水艦を相手に、無謀で痛快な戦いが始まる。

【脚本概要(全4回中の第2回)】
 バラオ級潜水艦『スティングレー』をレストアし、大西洋へと乗り出したハンス・マーベリック中佐以下、癖のありすぎる乗組員たち。さっそく限界深度までの潜水試験を行うがそこでトラブルが起きてしまう。しかしハンスの的確な判断でトラブルを回避し、ハンスは少しずつ乗組員の尊敬を受けるようになる。
 最初の目標チャールストンを侵攻する前に、原潜『オーランド』の哨戒網に引っかかるスティングレー。しかしハンスはわざとスティングレーを浮上させ、ライトアップして歌を歌い漁船と誤認させる。オーランドはディーゼル船を漁船と誤認して去って行き、そしてスティングレーはチャールストンで照明弾を発射。『侵攻』に成功する。
 そして、次の目標はノーフォーク海軍基地である。

【募集】乗り組み員募集!!(原則男のみ)
・艦長:ハンス・マーベリック中佐(主人公)
・口うるさい副長:ジム・スキナー少佐
・海軍初の女性潜水技官:ヘンリエッタ・イムス(女性)(ヒロイン)
・超耳のいいソナー員:ウォルター・パトロピタ
・ベテラン機関長:ニック・ゲーブ
・好意的な海軍将校:ドナルド・カトー中将
・機関室員:若干名
・操舵手:若干名
・他、キャラクター性あふれる乗組員
・その他、集まった人員によって脚本を調整
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「順調順調っと」
 ここに、新人監督が一人いる。名前はデビッド・ワード。軍事オタクで、軍事映画を撮るのが趣味の映像マンである。といっても真面目な軍事物ではなく、コメディ主体で映像作品をリリースしていた。そして今回の『潜望鏡下げろ!』は、WWBから企画原案があがりデビットにお呼びがかかったという次第である。
 作品は25分を4本。連続ドラマであるので、『継続して出演出来る者』という縛りがある。特に主人公やヒロインは必須である。

 本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。

●今回の参加者

 fa0389 KISARA(19歳・♀・小鳥)
 fa0794 村上 繁昭(32歳・♂・蝙蝠)
 fa1257 田中 雪舟(40歳・♂・猫)
 fa1335 サラール(16歳・♀・猫)
 fa2400 アルテライア・シュゼル(24歳・♀・一角獣)
 fa2603 ダン・バラード(45歳・♂・狐)

●リプレイ本文

潜望鏡下げろ! A2

●ウォーゲーム
 USS『スティングレー』、SS161。バラオ級潜水艦は、晴天の大西洋を洋上航行していた。就航間もない寄り合い所帯に、海軍の問題児ばかりを集めたアウトローの巣窟。それには艦長であるハンス・マーベリック中佐(ダン・バラード(fa2603))も当てはまる。まさに、『海の近所迷惑』の名に恥じない陣容だ。
 スティングレーの任務は、仮想敵船としてアメリカ東海岸を侵攻することである。
 現在、ロシアから多数の旧式潜水艦が売却されている。行き先はリビアや北朝鮮など。その情報をスパイ衛星の写真から得たアメリカ国防総省(ペンタゴン)は、海軍軍令部に一つの指令を出した。
『ディーゼル潜水艦が侵攻してきた時、海軍の哨戒網が万全に機能し、万が一にも敵船がその防衛ラインを突破できないことを証明せよ』
 要は模擬戦闘(ウォーゲーム)なのだが、これが馬鹿にできない。ディーゼル船だって、その気になれば核装備できる。それがもたらす被害は、計り知れない。
 その任務に選ばれたのが、スティングレーとハンスであった。ハンスは抜群の成績と実績を持ち、ウォーゲームでも負け知らず。経歴も実力も申し分なく、ただ一点『ニアミス事故を起こした』という点で艦長就任を長く見送られていた。
 それで待ちに待った艦長就任が、原子力潜水艦ではなくディーゼル潜水艦というのはあまりな仕打ちだが、それも海軍中将が見込んでの就任である。
『もし任務に成功すれば、原潜の艦長に推薦してもいい』
 果てしなくゼロに近い確率だが、ゼロではない。
 最初の目標はチャールストン。そこで照明弾をあげれば、まず1勝である。

●潜水試験
「要所の監視とハッチの閉鎖をしろ。われわれはこれより潜水テストを行う。限界深度までもぐるぞ」
「アイ・サー。潜水用意!」
 ハンスの言葉に、副長のジム・スキナー少佐(アルテライア・シュゼル(fa2400))が復唱した。そしてジムからコーヒーを受け取る。
「緊張しているようだな。ドリフトに注意しろ。潮流が早いぞ」
「いいえ大丈夫です。すでに想定済みです」
 ヘンリエッタ・イムス潜水技官(KISARA(fa0389))が、定位置で不動の姿勢で待っていた。
「以前に艦を沈めたことは?」
 ハンスの言葉に、ヘンリエッタが非難的な視線を向ける。
「もちろん事故や撃沈されてじゃない」
 ハンスはあわてて言い直した。
「模擬訓練で300回以上。75回は強い潮流です」
 ヘンリエッタが言う。
「さぞかし好成績をあげたんだろうな」
「艦長よりも」
 ハンスの言葉を塗りつぶすように、ヘンリエッタはつけ加えた。
「ほう、なぜ私の成績を?」
「記録を調べました」
 インテリっぽく、ヘンリエッタが言う。
「なるほど」
 ハンスは肩をすくめた。
「だが模擬訓練と実戦は違う。模擬訓練で英雄は生まれない」
 ヘンリエッタは、鼻白んだように腕を組んだ。ハンスの言うことは正論だが、それをそのまま聞いてしまうのは、男所帯で一人がんばってきた『女性初』の潜水技官のプライドが許さないのだ。
「潜行用ー意! 深く静かに潜行だ!」
 ジムが艦内放送を入れた。
「深度62フィート」
「了解、深度62フィート。機関2/3。負浮力タンク注水」
 ハンスの命令を、ヘンリエッタが復唱する。
 ソナー員のウォルター・パトロピタ(村上繁昭(fa0794))が、やれやれというような顔をした。
「坊主土も、深く潜るぞ」
 機関室で、機関長のニック・ゲーブ(田中雪舟(fa1257))がエンジンを止めた。これより船は、電力のみでの航行となる。
 スティングレーは、潜水を始めた。
 ぐわん。
 艦が右へ傾いた。バランスを崩した乗組員が、いっせいに艦の床を右へとすべる。ヘンリエッタやジムも例外ではなく、潜水指揮に専念していたヘンリエッタなどは、倒れて計器に頭をぶつけてしまった。それは機関室でも同じだったが、ニックはさすがベテランだけあって、片足を軽くつっかえ棒にして転倒を免れていた。
「あかんなー、死ぬでこれは。オッズは5対1くらいかなー」
 そう舵手のラベル・ジョーンズ(サラール(fa1335))が、ハンドル式の舵につかまりながら強い西部なまりで言う。
「氷山にぶつかったのか?」
「ノーフォーク沖で?」
 誰かが言った。
 ガシャーン! パリーン!
 激しい破壊音は、キッチンの皿であろう。
「右舷に12度傾斜」
 ヘンリエッタが、顔色を変えて言う。
「ベント弁の確認を」
 無表情に、ハンスが言った。
「表示板には『開放』とあります」
「分かっているよ」
 ハンスは声を落として言う。
「きっと浸水です」
 ジムが、さすがに血相を変えてハンスに言う。
「いや、ベント弁だろう。ベント弁を調べさせろ」
 数秒後。
『ベント弁2−Bが閉じています』
 艦内放送で、報告が来た。
「開け」
『了解』
 ごぼごぼごぼっ。
 空気がいっせいに抜ける音がしたかと思うと、艦の傾斜が水平に戻ってゆく。
 全員あぜんとしていた。まあ、下手すれば死んだかもしれないので、しょうがあるまい。
「ひどいコブだな」
 ハンスが、ヘンリエッタの額を見て言った。
「手当てしたまえ」
「いいえ、潜航を続けます」
 真剣なまなざしで、ヘンリエッタが言う。
「わかった、続けよう。では、深度500フィートに潜航しよう」
「イエス・サー。深度500フィート、下げ角7度。一気に潜航」
 ヘンリエッタが言うと、艦内の多くの者が十字を切った。
「やるでぇー」
 ラベルが男気のある顔になっている。
 ハンスは、コーヒーカップに口をつけた。その様子をジムが見ていて、思わず目が合う。
「うまいコーヒーだ」
 ハンスが、ジムに言った。
「ど、どうも‥‥」
 ジムが答える。
 それは先ほど、ジムがハンスに渡したコーヒーカップである。
 ハンスは、コーヒーを一滴もこぼしていなかった。

    *

「300フィート通過」
 ヘンリエッタが、報告する。声に緊張が見える。というのも、さっきからウォルターでなくともわかるほど、艦体のきしみ音がしているからだ。水圧で空き缶のようにぺしゃんこになりつつあるのである。
「380フィート通過。ジョーンズ、トリムタンク調整‥‥いえ、取り消し」
 ぎぎぎぎ、ごごごご。
「400フィート。浸水なし」
 ジムが言う。
「艦長、この艦には限界の深度です」
 ヘンリエッタが、ハンスに向き直って言った。
「ギリギリまで試そう――怖いか?」
「い‥‥いえ。下げ角7度を維持」
 ジムが『馬鹿につける薬は無い』というような顔をする。
 460‥‥470‥‥。深度は増し、艦の異音も増えてゆく。そろそろ艦内の部品にも変形が見えてきた。
 バキューン!
 ボルトが1本、変形に負けて飛んだ。司令室を跳ねて警告灯を割る。
「ビンゴ!」
 ハンスが叫んだ。
「やったぞ! 500フィートだ! 楽しい仕事だ」
 ハンスが陽気に叫んだ。
「今日のところはこれで充分だ。浮上する、潜望鏡深度につけろ」
 ハンスがマイクを取る。
『諸君おめでとう、理想的な潜航だった』

●歌う船
「何か音は?」
 ハンスがウォルターに問うた。
「ありふれた音ばかりです」
 陰鬱な表情で、ウォルターが言った。
「ラベルがオレオを食べています‥‥副長はトイレ――」
「艦の外の音だ」
 苦笑しながら、ハンスが言った。
「ええ‥‥洋上は荒れてますね。あとクジラが何匹かいます。話をすると、たまに返事が返ってきます」
 ウォルターが言う。
「そうか‥‥攻撃型原潜をみかけたら教えてくれるように言ってくれ」
「それが‥‥さきほど見たそうです」
「何?」
 ピン!
「しまった!」
 ウォルターが、声をあげる。
「探知(ピン)されました。方位030。近いです」
「もう来やがった、記録的な早さだ」
 ハンスが言う。
「‥‥敵は『オーランド』です。絶対に間違いありません。距離12000ヤード、接近中です」
「オーランド‥‥ジーン・プロクター中佐か‥‥」
 ウォルターの言葉に、ハンスが考え込むような顔になった。
「絶対に潜るべきです艦長」
 司令室にやってきたジムが言う。
「どうかな、浮上用意」
「浮上? どうしてです?――いえ、あの、了解しました」
 ヘンリエッタが言葉をさしはさみかけ、ハンスに見据えられて言葉をつぐんだ。ハンスがマイクを取る。
『浮上後プロペラ前進。誰か吊るしランプをもってこい』
『宝探しですか?』
 きみょうな指示に、艦内からきみょうな返事が返ってくる。

    *

「あれはなんだ?」
 原子力潜水艦オーランド司令室。
 潜望鏡を覗いていたプロクター中佐は、『それ』を見て実につまらない感想を抱いた。
 オーランドが探知したのは、ディーゼル船である。すなわち、潜水艦ではない――常識的には。
 そしてその船は、洋上にあってしかもライトを点灯している。
「漁船か?」
「艦長」
 オーランドのソナー員がプロクターを呼んだ。
「これを聞いてください」
 モニタースピーカーのスイッチを入れる。
「〜♪ 〜♪ 〜♪ 〜♪」
 陽気なだみ声が響いてきた。
「まいった」
 プロクターが、ばつの悪そうな声をあげる。
「酔った漁師どもを追尾したか」
 ブリッジに失笑が漏れる。
「北へ向けて全速で進め。深度200フィート」

    *

「敵が離れてゆきます! 全速でノイズを出しながら‥‥作戦は成功です!」
 ヤー!!
 艦内に歓声が上がった。
「信じられない‥‥こんな馬鹿げた作戦なのに上手くいくなんて」
 ヘンリエッタも呆然としている。
 ――何故この様な策で、我が海軍の精鋭が騙されるのだ!?
 ジムも驚きを隠せない。
 しかし、気分は良かった。してやったりである。ただ一人不満顔なのは、『歌』を茶化されたニックだけだった。

●チャールストン侵攻
 数時間後、チャールストン港に照明弾が上がった。まずは1勝である。
 アベレック少将が、地団駄を踏んだことは言うまでもない。
 次はノーフォークに向けて、警戒網を突破しなければならない。同じ手は通用しないし、こちらがディーゼル艦であることも発覚した。
 これからが、本番である。

【つづく】