潜望鏡下げろ! A3南北アメリカ
種類 |
シリーズ
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
4.9万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
02/07〜02/13
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前回のリプレイを見る
●本文
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【タイトル】
潜望鏡下げろ!
【内容】
主人公ハンス・マーベリック中佐はアメリカ海軍の問題児。潜水艦の副長を務めているが、デッキでゴルフをするようなフランクさ。過去何度も潜水艦の艦長に就任するチャンスがあったが、その素行の悪さで上官からは目のかたきにされている。
しかし、そのハンスにもチャンスが回ってきた。潜水艦の艦長になれという辞令が来たのだ。さっそく意気揚々と艦に向かうハンス。しかしびっくり仰天。その艦は第2次世界大戦時に使われていた超骨董品だった! 彼に下された命令は、このポンコツ潜水艦でアメリカ海軍の防衛戦を突破し、標的艦を撃沈すること! 最新鋭の原子力潜水艦を相手に、無謀で痛快な戦いが始まる。
【脚本概要(全4回中の第3回)】
チャールストン侵攻を成功させたバラオ級潜水艦『スティングレー』と、ハンス・マーベリック中佐以下、癖のありすぎる乗組員たち。次はノーフォーク海軍基地。しかしまたも原子力潜水艦『オーランド』の哨戒網にひっかかり、潜伏を余儀なくされる。しかし潜水技官ヘンリエッタ・イムスのミス(単なる実戦経験不足)から、海底に着底するときに大音響をあげてしまう。
物音ひとつ立てられない状況を、今度はソナー員のウォルター・パトロピタの『クジラの鳴きまね』で回避するが、ヘンリエッタはすっかり自信を失ってしまった。
そしてノーフォーク沖。海軍の哨戒網を突破するために、ハンスは奇計を用いる。それはタンカーのスクリューの間に艦を入り込ませ、そのウォッシュバブルで艦のスクリュー音を消してしまうというのだ。ただこれには、精密かつ大胆な潜水操艦が必要になる。それが出来るのはヘンリエッタしかいない。
ハンスはわざと進路や深度を間違えてヘンリエッタに覚悟を決めさせ、そしてヘンリエッタは見事にそれを成し遂げる。米軍哨戒網は、スティングレーを見失うのだった。
【募集】乗り組み員募集!!(原則男のみ)
・艦長:ハンス・マーベリック中佐(主人公)
・口うるさい副長:ジム・スキナー少佐
・海軍初の女性潜水技官:ヘンリエッタ・イムス(女性)(ヒロイン)
・超耳のいいソナー員:ウォルター・パトロピタ
・ベテラン機関長:ニック・ゲーブ
・好意的な海軍将校:ドナルド・カトー中将
・機関室員:若干名
・操舵手:若干名
・他、キャラクター性あふれる乗組員
・その他、集まった人員によって脚本を調整
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「順調順調っと」
ここに、新人監督が一人いる。名前はデビッド・ワード。軍事オタクで、軍事映画を撮るのが趣味の映像マンである。といっても真面目な軍事物ではなく、コメディ主体で映像作品をリリースしていた。そして今回の『潜望鏡下げろ!』は、WWBから企画原案があがりデビットにお呼びがかかったという次第である。
作品は25分を4本。連続ドラマであるので、『継続して出演出来る者』という縛りがある。特に主人公やヒロインは必須である。
本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。
●リプレイ本文
潜望鏡下げろ! A3
●ノーフォーク海軍基地で
「報告します」
ドナルド・カトー中将(藤岡作治(fa2579))の『ひざの上で』、側近の美人秘書ミネルバ・ランス伍長(ベルタ・ハート(fa2662))が報告を読み上げた。
「スティングレーはチャールストンを『侵攻』し、行方をくらましました」
「たいしたものだ」
コーヒーを飲みながら、カトーは言う。
「アベレック少将は海域の警戒防備第二波を発令。必勝の体勢で迎え撃つつもりのようです‥‥アベレック少将は、今回の模擬戦の戦果をもって、中将への昇進を狙っているようですね」
「私と並ぶつもりか!」
呵々と笑い、カトーが言う。
「アベレックの奴は、以前から私に敵意をむき出しだからな。私が日系なのが気に入らんらしい」
そう言って、カトーは海域図を見た。
「三星は、そう簡単ではないぞ? アベレック」
いたずら小僧のように、カトーは言った。
●ノーフォーク沖
ノーフォークの海底は、比較的浅い。これは潜水艦などに対する防備が易いことも理由の一つになっている。
そこに、アベレック少将は予定の倍の戦力を差し向けた。スティングレーに予告せずにである。何が何でも、勝ちに行くつもりなのだ。
「艦長!」
トマトソースのパスタを食べていた艦長ハンス・マーベリック中佐(ダン・バラード(fa2603))の所に、ソナー員のウォルター・パトロピタ(村上繁昭(fa0794))が飛び込んできた。
「ありとあらゆる音が聞こえます」
ウォルターの報告に、ハンスは私室を出た。ウォルターがそれに続き、ヘッドセットをかぶる。
「哨戒機3、駆逐艦4――ソノブイが投下されました」
「潜望鏡下げ。急速潜航!」
ハンスが指示を出す。そして、艦内放送用のマイクを取った。
「無音潜航、戦闘体勢」
「アイ・サー。急速潜航! 負浮力タンク注水、下げ角最大、深度120フィート!」
女性潜水技官ヘンリエッタ・イムス(百瀬愛理(fa1266))が、ハンスの命令を復唱し具体的な指示を出す。
「いっぱいまで潜れ。艦を海底に着底させろ」
「着底?」
ヘンリエッタが、不安そうな顔をした。
「海底と艦を識別できなくするんだ」
「ア‥‥アイ・サー。下げ角20。トリムいっぱい!」
「下げ角20。アイ!」
操舵手エリック・パルサー(沢渡操(fa1804))が、舵を切る。ぐわりと、艦が下を向いた。本気の潜水操艦だ。
「深度300フィート通過」
と、ヘンリエッタ。
「海底に接近中‥‥ロブスターが喧嘩してます」
ウォルターが、状況報告をした。
「下げ角2度‥‥訂正! 下げ角1.5度!」
緊張した面持ちで、ヘンリエッタが言った。かなりいっぱいいっぱいの様子に、ハンスが声をかける。
「大丈夫か?」
「海底鎮座は初めてです」
「安心しろ、楽勝だ」
「はい‥‥下げ角1度! 訂正‥‥訂正なし」
「海底まで約10フィートです」
「機関停止! 下げ角0.5度!」
ぐわん!
その瞬間、スティングレーは激しい振動に見舞われた。
*
「ソナー感。激しい音です!」
『オーランド』ソナー員カイン・フォークス(カイン・フォルネウス(fa2446))が、『オーランド』艦長ジーン・プロクター中佐に報告した。
「どんな音だ」
「衝撃音です。おそらく潜水艦と思われます。距離9000ヤード。探信(ピン)しますか?」
オーランド司令室、カインがプロクプター中佐に提案した。
「受聴(パッシブ)のみ。探信(アクティブ)はよせ」
冷静に、プロクターが言う。
*
スティングレー機関長ニック・ゲーブ(田中雪舟(fa1257))は、機関室でぶっ倒れていた。頭を振り、意識を戻す。
「やったな、すごい音だ」
『全員音を立てるな。無音状態に』
スピーカーからハンスの声が響いてくる。
●クジラ作戦
スティングレーの司令室は静まり返っていた。メインの電気も落とされ歩くこともできない状態である。
副長のジム・スキナー少佐(アルテライア・シュゼル(fa2400))は転倒した姿勢のまま、じっと動かないでいた。通信士のジョナサン・バーグナー(ユリウス・ハート(fa2661))は、息をするのもためらっている。
ヘンリエッタが、うつむいて考え事をしている。落ち込んでいるのだ。
「君のせいじゃない」
ハンスが、小声でヘンリエッタに言った。
*
「このあたりから音がしました。今は死んだフリをしています」
オーランド司令室。カインがプロクプター中佐に言う。
オーランドは無音航行でスティングレーのほぼ直上まで来ていた。そのPX(売店)で、乗組員の一人が買い物をしようとしていた。
「ガムをくれ。ミントのやつだ」
「25セント、無音で噛め」
その時、小銭を取り出そうとした乗組員のポケットから、硬貨がこぼれ落ちた。
*
「おわっ!」
ウォルターが声を上げた。
「艦長、オーランドです。すぐ上に来ています」
「なぜ分かった?」
「誰かが45セント落としました」
「確かか?」
「はい、10セントが2枚に25セント」
「我慢比べだな‥‥」
Booooo!!
その時、何か変な音が海中に響いた。通信士のジョナサンが、顔を真っ赤にしてうつむいている。
*
「何の音だ?」
「何かの‥‥爆発音のようです」
オーランド司令室。カインが、プロクプター中佐に言った。
*
そのころ、スティングレーの艦内は大変な事になっていた。
臭い、である。
潜水艦は密閉された空間である。そしてスティングレーには大型原潜のような空調設備は無い。
つまり誰かの放屁が、大変な事態を巻き起こしているのだ。
「これはたまらん‥‥ウォルター」
「はいっ」
「作戦がある」
小声で、ハンスはウォルターに指示を出した。
*
――キュー、クォックォックォックォッ。
――チチチチチ、ケケケケケケ。
オーランドの司令室にその音が入ってきたのは、なぞの爆発音から数分後だった。
「何の音だ?」
「何か生物の‥‥クジラか何かのようです」
オーランド司令室。プロクターの問いに、カインが答える。
――クエーッ、ケッケッケッケッ。
――キュー、クォックォックォックォッ。
「二匹いるようです」
そこで、プロクターはため息をついた。
「くそっ! 警戒の必要なし。潜望鏡深度で全速全身!」
*
「オーランドが去っていきます! 全速で!」
ウォルターが言った。
今しがたのクジラの声は、ウォルターの鳴きまねである。それに引き寄せられて、一匹本物のクジラが現れたのだ。
ちなみにザトウクジラだそうである。
「よし、ジョナサンを2番魚雷発射管に詰めろ。方位027、全速前進。浮上後換気だ」
ハンスの命令は、忠実に実行された。
●玉を据えろ!
スティングレーは、ノーフォークに近づきつつあった。しかし海上には15隻以上の駆逐艦が警戒網を敷いている。
「方々探信音だらけです」
ウォルターが言う。
「海上も海中も海底も、どこもかしこもです」
「やはりな。不必要な会話は、今後禁止だ」
ハンスが言った。
「探知されました。探信音、12000ヤード」
「進路維持。商業船舶の音を聞け」
*
オーランドには、アベレック少将自ら乗り込んで指揮をしていた。
「距離11000ヤード接近中」
「魚雷発射用意。見ていろマーベリック。借りを返してやる」
カインの報告に、舌なめずりするようにアベレックは言った。
*
「海上の様子はどうだ?」
「駆逐艦5隻、フリゲート艦3隻。それと超大型タンカー1隻」
「フィラデルフィアのデナリ号だな」
ハンスが居住まいを正した。
「よろしい諸君。任務達成まで残る目標はあとひとつ――ノーフォークだ。我々を阻止するために何隻もの船が港を封鎖している。突破するには、奇抜でしかも極度に危険な戦術が必要だ」
そこで、ハンスは言葉を切った。
「反対の者は申し出たまえ」
「俺たち危険で奇抜は大好きです」
操舵手のエリックが言った。
「敵の裏をかいてやりましょう」
ジョナサンが言う。
「よろしい、ではタンカーに向かって全速前進」
「タンカーにですか?」
ヘンリエッタがハンスに問いかけた。
「そうだ。下にもぐる」
「方法は?」
「スクリューの間に入るんだ」
「目的は?」
「スクリューのキャブテーションで、艦の音は消される。敵が探知するのはタンカーだけだ」
そこで、ヘンリエッタが声を落として言って来た。
「未経験の操作です‥‥」
自信なさげに、ヘンリエッタが言う。
「ピンポイント操作と同じだ」
「艦長」
ヘンリエッタが、ハンスの言葉を遮った。
「自分には出来ません。私が失敗したら、艦長の努力はすべて水の泡です‥‥お願いです、勘弁してください‥‥」
「‥‥よし、私がやる」
「すいません艦長‥‥」
「‥‥深度125フィート!」
「125了解」
*
「敵を探知。距離8000ヤード、射程内」
「軌道をロックしろ」
オーランドは着実に、スティングレーを追い詰めつつあった。
「勝ったな‥‥」
アベレックがほくそえむ。
*
「タンカーまで200ヤード。2分で接触」
ウォルターが報告する。
「下げ舵3度」
「3度ですか? 艦長」
「何かね? 中尉」
「な、なんでもありません、サー」
頓狂な顔をしていたヘンリエッタが、押さえ込むように黙りこんだ。
艦は、どんどんタンカーへと接近してゆく。しかし、軸が微妙にずれていた。
「下げ舵2度。訂正、2.5度」
「1.5度のほうが‥‥!」
「黙れ、君が指揮しろ!」
ハンスの言葉に、ヘンリエッタは逡巡した。その間も、乱流に船は揺れる。そして確実に、その揺れは強まっていた。
「危険です! 艦体がこれ以上もちません!」
操舵手のエリックが言った。舵を持つ手はきしむほどである。
「取り舵1度!」
「駄目です艦長! 取り舵ではなく面舵1度に!」
「なら君が指揮をしろ!」
「不適任です!」
「君は潜航指揮のプロだ!」
そして、ハンスはヘンリエッタを見た。その顔には決意の表情があった。
ヘンリエッタは一瞬だけ逡巡の様子を見せたが、覚悟を決めたように前に立った。
「機関1/3。面舵いっぱい!」
「面舵、了解!」
「距離10フィート!」
「機関2/3。スクリューの間へ、下げ舵0度! 方位270。タマ据えて突っ込め野郎ども!」
ヘンリエッタが叫んだ。
面舵に固定したスティングレーが、スクリューの間に入ってゆく。まさに数センチ単位の操艦だった。
*
「探信音が途切れました。敵を探知出来ません」
「何だと! ふざけたこと言うな!」
カインの報告に、アベレックが目を剥いた。
*
「成功だ」
ハンスの言葉に、艦内に歓声が上がった。
「艦長」
ヘンリエッタが、ハンスに向いた。
「あと何秒待てました?」
「あー、0.5秒かな?」
「あなたは‥‥そこまで部下を信じる事が出来るのですね‥‥私は、部下を信じ切れなかった。自分が恥ずかしいです‥‥このジム・スキナー、艦長に何処までも付いて行かせていただきます!」
ジムが敬礼した。
【つづく】