PARADISE ARMY A2南北アメリカ
種類 |
シリーズ
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
4.9万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
06/14〜06/20
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前回のリプレイを見る
●本文
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【タイトル】
PARADISE ARMY
【内容】
何をやっても中途半端。フリーターで社会からは落ちこぼれの青年ジャック・スレッジは、一念発起して幼馴染のフランク・ブレックとアメリカ陸軍へ入隊する。訓練の中で意外な適正を見せたジャックは伍長へ昇進し、中東(仮想イラク)へ派兵される。
配属は補給部隊の給水小隊(水をろ過して飲料水にする部隊)になるが、水の輸送中にゲリラに襲われて小隊は孤立してしまう。そしてなんと、ゲリラがミサイル(仮想スカッドミサイル)を使って大規模な攻撃をしようとしている情報を入手してしまう。
敵地に一番近いのはジャックの居る小隊。そしてジャックの小隊に、敵駐屯地を空爆するための作戦行動が指示される!
果たして、ジャックたちは作戦を成功させることができるか!
【脚本概要(全4回中の第2回)】
第5525補給小隊はのんびりと任務をこなしていた。基本的に補給部隊に英雄は居ない。主人公も「軍隊に入った動機は食いっぱぐれないからです」とか答えた始末。ただ主人公の作る水は補給地には好評で、第5525補給小隊はどこでも歓迎を受けていた。
が、それが逆に注目を集めることになったらしい。第5525補給小隊は、武装ゲリラの襲撃を受けたのである。
「わ〜お、本物の戦争だ」
などと実弾の飛び交う中をボケる主人公。しかし武装ゲリラは本気なのでギャグでは許してくれない。水も欲しいし。
戦場と砂漠を突っ切り、なんとか逃げ延びる第5525補給小隊。しかし護衛とははぐれ武装らしい武装も無く、砂漠のど真ん中で給水車一台を囲んでほとんど立ち往生してしまう(注:後半の展開のために補給される武装類(その主なものはミサイル誘導用のレーザーポインターと車両類)は後ほど空輸投下される)。
砂漠をGPSのみを頼りに(地図は無くした)行くと、その途中でゲリラの駐屯地を見つける。そこにはスカッドミサイルがあり、なにやら大規模な作戦行動の気配が伺えた。
5525補給小隊の面々は長距離無線機を拝借するためゲリラの内部に潜み、本隊に無線連絡を行う。そして出た命令は、「補給するから空爆の補助をしろ」であった。
【募集】第5525補給小隊
・主人公:ジャック・スレッジ(伍長)
・サブ主人公:フランク・ブレック(一等兵)
・ヒロイン:ホリー・ホーランド(一等兵)
・いわゆる鬼軍曹:アーネスト・ジョンストン(軍曹)
・色々と前途多難な小隊長:ロジャー・ブラックアウト(少尉)
・その他、個性的な小隊仲間など。
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「良い感じになってきましたね」
ここに、新人監督が一人いる。名前はデビッド・ワード。軍事オタクで、軍事映画を撮るのが趣味の映像マンである。といっても真面目な軍事物ではなく、コメディ主体で映像作品をリリースしていた。そして今回の『PARADISE ARMY』は『潜望鏡下げろ!』に続き、WWBから企画原案があがりデビットにお呼びがかかったという次第である。
作品は25分を4本。連続ドラマであるので、『継続して出演出来る者』という縛りがある。特に主人公やヒロインは必須である。
本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。
●リプレイ本文
PARADISE ARMY A2
●いきなりピンチである
「なあ」
ジャック・スレッジ伍長(朝守黎夜(fa0867))は、眼前に広がる広大な砂漠を見ながら言った。
「なんです?」
フランク・ブレック一等兵(ウォンサマー淳平(fa2832))が、コンバット・レーションを食いながら言う。
「俺たち、なんでこんなとこに居るんだ?」
「ゲリラの襲撃があったでしょう?」
ジャックのぼやきに、簡潔かつ明瞭にフランクが応える。
が、フランクの言うことは明瞭ではあるが正確ではない。なぜなら第5525給水小隊は現在、護衛らしい護衛も無く砂漠のど真ん中に置いてきぼりを食ったからだ。
この状況、正確には『迷子になった』という。
「ちょっとジャック、こんなところでさぼっていないで、給水装置の点検をしなさいよ」
ホリー・ホーランド一等兵(佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378))が、給水車の中に居た二人に向かって言った。
「俺は伍長だぞ?」
「スレッジ伍長どの、給水車の整備をお願いいたします!」
ツンケンした様子でホリーは言い、敬礼して去った。
「なあ」
「なんです?」
「俺たち、なんでこんなとこに居るんだ?」
「ゲリラの襲撃があったでしょう?」
フランクは、別のレーションの缶詰に取りかかった。
●戦争は消費である
ロジャー・ブラックアウト少尉(守山脩太郎(fa2552))率いる第5525給水小隊は、イラクに派兵されて任地についた。後方の輜重部隊とはいえまだ中東の情勢は安定しないのだが、護衛には1小隊しか付けられないと聞き憤慨していた。
「ご機嫌を損ねたらお詫びします。何かありましたか?」
アーネスト・ジョンストン軍曹(金田まゆら(fa3464))が、上官のテントを出て沈痛が眉根を寄せている表情をしているロジャーに向かっていった。
「貴官は現状を理解しているか?」
「は?」
ロジャーはそう言うと、小声で言い出した。
「テロなどの破壊活動でインフラの回復は立ち後れ、アメリカはオイルマネーとその権益と引き替えに、膨大な人材と人命と物資を浪費し続けている。大統領のパフォーマンスにも最近の有権者は冷ややかで、支持率は下がりっぱなしだ。だが、こまっしゃくれた話をするなら、例え中東が『第二のベトナム』と言われようとも戦争は終わらない。なぜかわかるか?」
「いえ‥‥」
アーネストが、意を図りかねてもごもごと応える。
「戦争は『消費』だからだ。それも超弩級の。『消費(=需要)』が発生すると言うことは、その消費する物資なり機器なり兵器なりの『供給』が発生する。つまり、兵器メジャーから缶詰工場の親爺まで、戦争でイロイロと儲かるのだ。戦争が激化すれば、一部の経済が潤う。大統領がが資本主義下の民主主義で選ばれた以上、多数派の『資本者』は戦争が起きた方がありがたい。つまり資本主義のトップに居る者は、「戦争やってドンドン兵士を送って、ガンガン物資を消費してくれ」というのが本音なのだ。この場合、彼ら資本者にとって、兵士の命の重さは1セント硬貨より軽い。なぜなら、替えが効くからだ。親類縁者以外なら、死んで物資を無駄に浪費してくれたほうが、彼らにとって都合が良い。穿った言い方だが、彼らにとって兵士は『次の予約の決まっている上客』なのだ」
ロジャーの言っていることは、戦争批判である。
ブラックアウト少尉ぐらいになると、その程度の『上の事情』を察することぐらいは出来る。しかし自分の部下を死なせるわけにはいかない。故に上官に進言ということになったのだが、あっさり却下されたのだ。
胃の痛い話である。
アーネストは顔色を変えた。
「自分は、隊長の今の言葉は聞きませんでした! 出撃準備は整っております。ご命令を!」
「ああ、そうだな」
いつもの昼行灯然とした様子に戻って、ロジャーが口を開いた。
「出動だ。サマワを経由して内陸に向かう」
「はっ!」
●襲撃を受ける
さて、戦争経済論は置いておいて、第5525給水小隊である。護衛の陸兵小隊が、ハマー軍用ジープ2台に分乗して前後を警戒しており、5525は2台の大型給水濾過車とハマー1台という編成だった。
サマワを発って三日。そろそろ内陸のヤバい地域である。
「5501(給水小隊)が、この辺で武装ゲリラに襲撃されたという報告がある。警戒を厳にせよ」
「了解! 各員に通達、警戒を厳に!」
ロジャーの言葉に、アーネストが反応する。
「警戒を厳に‥‥って言われてもなぁ‥‥」
トランシーバーの命令を聞いて、給水車を運転していたジャックはぼやいた。
まあ、しょうがないだろう。道路は整備されているとはいえ、道行きは360度地平線なのである。道路を外れると砂漠で、砂丘がやや視界を妨げている程度だ。
はっきり言って、何かあれば発見できない方がおかしい。
が。
どっかーん!!
「うわっ!」
前方で突然、爆炎があがった。
『襲撃! 隊は前へ! 5525は突っ走れ!』
護衛の小隊が周囲に展開する。輜重部隊は戦闘ではなく、補給物資を運ぶのが任務である。戦闘は極力避けるべし。さもないと前線が乾き死ぬ。
だが。
「ジャック! 右へハンドルを切って!」
隣に乗っていたフランクがいきなり言った。反射的に右へハンドルを切ったジャックは、命拾いした。
左翼前方から、旧式の武装ジープが2台、砂丘を越えて出現したのである。その台座には、世界一費用対効果の優秀なソ連製RPGロケットを持ったゲリラが、こちらをポイントしていた。
ばばしゅっ!!
2条のロケット噴射音が響くと、1発はロジャーたちの乗っていたハマーの下に着弾した。
どかん!
爆発! ハマーが反っくり返り――。
がしゃん。
1回転して着地した。中に乗っていたロジャーやアーネスト、ホリーは頓狂な顔をしている。着弾が30センチ上に逸れていたら、多分爆死してたはずだ。しかも後続の給水車にフランクが的確な指示を出していたお陰で、追突もせず2発目のRPGも回避していた。
ニュー○イプも真っ青である。
「アッラーフ、アクバル!」
ゲリラのほうから鬨の声が上がる。
「隊長、軍曹! 乗ってください!」
フランクが給水車の窓から身を乗り出し、走行不能になったハマーから乗員を救出する。
「わーお、本物の戦争だ」
「まるで映画みたいですね」
ジャックの言葉に、フランクがボケた。
あとは、よく分からない。ゲリラの襲撃から逃げ延びたが無線機と地図を失い、5525は迷子になった。
●ゲリラのアジト
夜。
「
(アーネースト・ジョンスソン軍曹の小言を小1時間ほどお聞き下さい)
」
「わかったわかった、そう言うな」
ロジャー少尉は、やれやれと手を振った。
「まったく、あのポンコツどもには呆れます。今まで生き残れたのは、神のご加護としか言い様がありません」
かろうじて所持していたGPSが方向と位置を示してくれるが、電池が切れればそれまでである。その前に救援を呼ぶか『なんとか』しなければならない。
「たいちょー」
ギン!
「ぼけた声のジャックを、アーネストとそばについていたホリーがにらみつけた。が、ジャックはそれを意に介した様子は見られない。
「偵察に行ってきました‥‥でぇ、やっかいなモン見つけちゃったんですけど‥‥」
*
砂丘を陰に、5525はある場所を見ていた。そこは軍かそれに類するものの駐屯地のようで、人がせわしなく動き回っていた。
で、『やっかいなモン』であるが。
「スカッドミサイルだ‥‥」
シンプルな鉛筆型の中型ミサイル『スカッド』。すでにミサイルとしては2〜3世代古い旧式になるが、中東では現役である。
発射台にあるのは3機。NBC兵器の存在は確認されていないが、1発で街の一区画ぐらいは吹っ飛ぶ。ゲリラ+ミサイルという図式で、花壇を作る相談をしているとは誰も思わないだろう。
「あのルートをゲリラが張っていたのは、この基地の存在を隠蔽するためだったんですね」
ホリーが優等生ぶりを発揮した。
「さて、看過はできんが戦力は無い‥‥どうしたものか‥‥」
ロジャーはそこまで言って気がついた。
「ジャックはどこに行った?」
●無線連絡
「あ〜〜〜〜、やってらんねーなー」
ゲリラのモマフ(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))は、酒を飲んでくだ巻いていた。ハジから無線番を仰せつかったのである。
というのも昼間の襲撃で下手を打ち、敵の一部を逃がしてしまったからだ。
その無線のテントの前を、見慣れぬ男が覗いている。
――こいつはいい。
どうやら新入りらしいその男を、モマフは丸め込んで無線番を押しつけることにした。よっぽど辺境の部族なのか言葉が通じないが、笑顔とジェスチャーで無線機の前のいすに座らせる。
「じゃ、後は頼んだぜ〜〜」
モマフがテントを去るとき、男はにこやかな顔で手を振っていた。
がばっと、布きれで中東人に変装していたジャックは、無線機に飛びついた。
●指令
「攻撃のサポートをしろだと?」
ロジャーは、帰ってきたジャックの報告に頓狂な顔をした。
「司令部より緯度と経度をいただきました。そこに装備を投下するそうです。空爆用のレーザーポインターに空挺車両のハンビと‥‥あと『必要そうなもの』を一式。攻撃は明日の12時ちょうどです。ステルスを寄越すそうです」
単独行動は糾弾してしかるべきであるが、すばらしい戦果である。
「無茶苦茶だ」
ロジャーが嘆いた。
【つづく】