PARADISE ARMY A4南北アメリカ
種類 |
シリーズ
|
担当 |
三ノ字俊介
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
やや難
|
報酬 |
4.9万円
|
参加人数 |
7人
|
サポート |
1人
|
期間 |
07/17〜07/23
|
前回のリプレイを見る
●本文
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【タイトル】
PARADISE ARMY
【内容】
何をやっても中途半端。フリーターで社会からは落ちこぼれの青年ジャック・スレッジは、一念発起して幼馴染のフランク・ブレックとアメリカ陸軍へ入隊する。訓練の中で意外な適正を見せたジャックは伍長へ昇進し、中東(仮想イラク)へ派兵される。
配属は補給部隊の給水小隊(水をろ過して飲料水にする部隊)になるが、水の輸送中にゲリラに襲われて小隊は孤立してしまう。そしてなんと、ゲリラがミサイル(仮想スカッドミサイル)を使って大規模な攻撃をしようとしている情報を入手してしまう。
敵地に一番近いのはジャックの居る小隊。そしてジャックの小隊に、敵駐屯地を空爆するための作戦行動が指示される!
果たして、ジャックたちは作戦を成功させることができるか!
【脚本概要(全4回中の第4回)】
第5525給水小隊は補給を受け取り、空爆作戦のサポートを行うことになった。装備は充分。足りないのは運だけという状況で、最大最速の作戦行動を要求される。
ゲリラの元へ戻った一同は、スカッドミサイルの空爆のために静かに接近する。空爆が開始されるが、F−117の初弾は外れ5525も発見されてしまう。戦闘を開始する5525。その間ジャックがレーザーポインター構え空爆の第2波に備える。
成功する空爆。爆発するスカッド。5525は撤退するが、ゲリラの残党に追われる。
あわや全滅のピンチというところで、先行していたジャックが給水車で帰還。全力放水でゲリラをなぎ倒し、遊軍の救助までの時間を稼ぐ。
無事に帰還する5525。アメリカへ戻った彼らを迎えたのは、ブラスバンドの勇壮な演奏と家族達だった。
【募集】第5525補給小隊
・主人公:ジャック・スレッジ(伍長)
・サブ主人公:フランク・ブレック(一等兵)
・ヒロイン:ホリー・ホーランド(一等兵)
・いわゆる鬼軍曹:アーネスト・ジョンストン(軍曹)
・色々と前途多難な小隊長:ロジャー・ブラックアウト(少尉)
・その他、個性的な小隊仲間など。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「いよいよ最後‥‥っと。ばっちり決めましょう」
ここに、新人監督が一人いる。名前はデビッド・ワード。軍事オタクで、軍事映画を撮るのが趣味の映像マンである。といっても真面目な軍事物ではなく、コメディ主体で映像作品をリリースしていた。そして今回の『PARADISE ARMY』は『潜望鏡下げろ!』に続き、WWBから企画原案があがりデビットにお呼びがかかったという次第である。
作品は25分を4本。連続ドラマであるので、『継続して出演出来る者』という縛りがある。特に主人公やヒロインは必須である。
本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。
●リプレイ本文
PARADISE ARMY A4
●戦争は‥‥?
戦争に善悪はあるか?
平和主義者の皆さんはすべからく、『戦争は悪』という。しかし戦争という手段でしか解決できない事象があるのも確かだ。物事に優劣や勝負があるように、闘争のみが解決できる案件はあまりに多い。
なぜ戦争が起きるのかと問われれば、大きくは『個人』というものが存在し『個体差』があるからであろう。世界が共産主義のように、全てのものに必要なだけ全てのものを平等に供給出来るならば、はなから戦争など起きはしない。生物というのは、小さくはミトコンドリアに至るまで『生存競争』という競争社会の中に在るのだ。食物連鎖があるように、弱肉強食があるように、生命そのものの命題として『戦争』は存在する。それは生命だけではなく、物質についても同じだ。我々が物質と呼ぶものは普遍ではなく、緩やかに崩壊している。安定しているようでその実、意外と不安定なのである。
「イラク戦争は、政府の政治的手腕が問われる戦争だ」
『ハンビ』軍用ジープを運転しながら、副官のアーネスト・ジョンストン軍曹(小鳥遊真白(fa1170))にそう語ったのは、第5525給水小隊(すでに給水小隊ではないが)の隊長、ロジャー・ブラックアウト少尉(守山脩太郎(fa2552))である。
「連合各国は、すでに撤退を始めている。テロで死ぬ兵士も増えた。あの日本でさえ撤退を始めるような状況だ。現場の『感想』は黙殺され、政府はオイルダラーとその利権の確保のために引き際を誤った。いや、政府じゃなくて、金を稼ぎたい『企業』かな? まあ、資本主義社会のリーダーシップを取っている我が国の政府としては、企業の言いなりになるしかない。現場で何人死のうが、死守しろと命令するしか無いんだな、これが」
「隊長‥‥それは政府批判ですか?」
ここのところこういうゴネを言う隊長に慣れてきたアーネストが、口を挟む。
「いいや、『感想』さ。政府批判なんぞやろうものなら、首が飛ぶ」
アーネストが、やれやれという顔をする。
「確かに、私も現場の『感想』をレポートすることはありますが‥‥よく少尉どのは隊長になれましたね」
アーネストの言葉に、ロジャーは支給品の煙草を噛んで笑った。
「いらん『感想』ばかり言うから、この年で補給部隊隊長なのさ。が、『感想』一つ言えない現場など糞食らえだ。俺は今まで、どの現場でも死人を出さなかったことだけが自慢なんだ。退役前に要らん黒星はつけたくない。この作戦、必ず成功させてとっとと帰るぞ」
●作戦名『砂漠のカラス』
「作戦名『デザート・レイヴン』作戦要項‥‥なんや、デタラメな作戦やなぁ」
黒人の女兵士クレア・リットマン一等兵(サラール(fa1335))が、取り急ぎ回されてきた作戦要項の内容を言った。強い西部訛りだった。
作戦要項は、補給品の中にあった無線FAXで受信された物だ。小型軽量。盗聴も不可能で、画質もまともで文字も読める。
「ジャック、隊長は何か言ってた?」
ホリー・ホーランド一等兵(佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378))がジャック・スレッジ伍長(朝守黎夜(fa0867))に問いかけた。
「ピックアップ(引き上げ)ポイントまでが勝負だって言っていた。攻めるより逃げる方が大変だからね」
地図とGPSの座標を確認しながら、ジャックが言った。
「それ間違ごうとるで」
クレアが、ジャックのつけた地図のマークに『×』印を付けなおす。
「このルートは昼間逃げたときに見張られていたヤツや。こっちに迂回せんと、うちの神様のお世話になるで」
「あなたの神様って?」
「『ボン・デュー』」
「ブードゥーかよ!」
「ブードゥーを馬鹿にしたらアカン。伍長殿なら死んでも働けるように出来るで。さて、今度はウチの哨戒の番や」
言うだけ言って、クレアが機銃座に着く。5.56ミリの軽機銃だが、取り外して携行機銃として使用することも可能だ。
2台のハンビは1小隊を乗せて、着実に空爆地点を目指していた。
●空爆来たる
ゲリラのモマフ(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))は、無線テントで相変わらず飲んだくれていた。先日無線番を仰せつかっていたのを違う部族の人間に押しつけていたのだが、その若者がトンズラこいてしまい、さぼっていたのがばれて今もまた無線番をしているのである。
その無線に、急報が入った。ゲリラ間の無線ネットワークに、哨戒中のヘリから航空機の飛行機雲を発見した旨の連絡が来たのだ。
奇跡に近い確率での発見だが、砂漠の夕刻は長い。斜陽で飛行機雲の影が、太くくっきりと現れたのもある。そしてその飛行機雲の方向がモマフの居る位置をかすめると聞いて、モマフの酔いは一気に覚めた。
「(アラブ語)敵機接近中!」
わっ。
モマフの言葉に、周囲に緊張がみなぎる。しかし暮れた夜空を飛ぶステルス戦闘機を、肉眼で目視できたらびっくり人間大賞で賞が取れるだろう。
*
その頃、ジャックたちは丘陵の陰にハンビを隠し、装備を持って物陰に隠れていた。レーザーポインターの出力は充分だが、それでも結構接近しなければならない。
ポインターはジャックが持ち、ホリーとクレアが突撃銃を携え、指揮のためにアーネストが同伴した。
「俺がやっていいんですよね?」
ジャックが、重大な責任を負っているのにお気楽に言う。
「お前が一番射撃が上手いからな。お前が指揮を執るなら私がやってもいいぞ?」
ジャックはアーネストの言葉に、肩をすくめた。こういうイベントは好きでも、責任を負わされるのはゴメンだ。本当にアーネストの方が射撃が上手くても、だ。
「照準しました。指示を」
「ホールド・イット(保持しろ)」
ジャックの持っている装置は、テレビカメラにカバーを付けたような代物だ。カバー部は防塵で、装置とバッテリーが入っている。映像を映すカメラ部分がレーザー発信口で、そこから爆撃照準用に周波数の調整されたレーザービームが照射されている。
――ィィィィィィィィイイイイイイイイイ!!
ジェットの金切り声が聞こえたかと思うと、ゲリラの間から空に向かって銃が放たれ始めた。
「ナイスだ。騒音でこっちのほうに気づいていない」
アーネストが暗視スコープ付きの双眼鏡を見て言う。
金切り音が、ドップラー効果を引いて遠のいていった。
ぐわっ!!
ゲリラのアジトが、爆発した。
「畜生! 外れた!」
ジャックの言うとおり、精密爆撃弾頭はミサイルに直撃しなかった。
「そのまま照準を離すな! 第2波攻撃準備!」
アーネストが一喝する。「了解!」と、ジャックが小気味良く応える。
「急いで。私たちの存在も気づかれたはずよ!」
ホリーがジャックに言った。レーザー照準による精密爆撃は、中東戦争でもその威力が知られている。
「急げ急げ急げ急げ急げ!」
ジャックが、喉から飛び出しそうな心臓を飲み込んで言った。
――ィィィィィィィィイイイイイイイイイ!!
ドガ――――――――――――ン!!
「「ビンゴ!!」」
第2波の攻撃が、スカッドミサイルとその燃料車に命中した。パイプを伝って、派手に誘爆する。
「よし、撤退だ!」
アーネストが言う。一同は証拠を残さぬよう装備一切を持ち、撤退を開始した。
●ワルキューレの『奇行』
「隊長、うまく逃げられたようですね」
夜明けの朝日を見ながら、ホリーがロジャーに向かって言った。
「いや、そうでもない」
ハンドルを握ったロジャーが、バックミラーを指して言う。
地平線に、ヘリが現れた。そしてさらに、ゲリラのものとおぼしき車両多数。
BGMはワーグナーの『ワルキューレの騎行』。
「戦闘準備! 弾は出し惜しみするな! ピックアップポイントまで逃げるんだ!」
無線でロジャーが指示を出す。
『隊長、俺に考えがあります!』
無線から、ジャックの声が響いてきた。
*
モマフは怒りに身を千切られそうになりながら、ヘリの上から銃撃していた。
敵は二手に分かれたようだった。モマフは、先頭を走っていた車をヘリのパイロットに追わせた。
しばらくすると、モマフは妙なことに気づいた。奴らが同じ所をぐるぐると回っているのである。
「モマフ!」
パイロットが叫んだ。座席の右側――ヘリが低空飛行していたのでほぼすぐ横――の丘陵に、半壊した大型車両が併走して走っていたからだ。
そこの上に乗っている人影を見て、モマフは驚いた。
――無線番をすっぱかしたガキ!
『チャオ☆』
ずばっしゃーん!
ジャックがそう口を開いた瞬間、ヘリは水鉄砲の直撃を受けた。
*
「あの馬鹿は私の手に余ります」
アーネストが、デタラメな攻撃でデタラメに墜落したヘリを見て言う。
ジャックは放棄した給水車両を持ち出し、残りの水を放水してヘリを撃墜したのだ。エンジンの吸気口に水を突っ込まれ、ヘリは見事に墜ちた。低空なので乗組員は死んではいないだろうが、痛い目は見ただろう。
「あれはバカか、すごいバカのどっちかや」
クレアが、呆れたように言う。
時間稼ぎという点において、ジャックの攻撃は銃撃より効果的だった。そもそも放水は、暴徒鎮圧にも使用される。運転手を狙撃して殺すより、運転をしくじらせた方が数が減って都合も良い。
「やつには、勲章を申請しなきゃならんな」
ロジャーがご機嫌で言った。
●帰還
勇壮なマーチの流れる空港に、ジャックたち第5525給水小隊は降り立った。歓待、歓待の嵐。戦果を挙げた彼らは、まさにヒーローだった。
「ジャック、これからあなたどうするの?」
共にタラップを降りながら、ホリーがジャックに問う。めずらしくホリーがはしゃいでいる。
「再入隊の志願をするよ。ピザ屋のバイトよりイケそうだ」
ジャックが、くしゃくしゃの書類を出して言った。
「じゃあ、私もそうするわ」
そしてホリーは、ジャックの頬にキスをした。
ジャックは、小さくガッツポーズをした。
そして、家族の元へ――。
【END】