ヴァルキリーインパクトアジア・オセアニア

種類 シリーズEX
担当 切磋巧実
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 06/17〜06/21
前回のリプレイを見る

●本文

●TVCM
 ――これまで多くの戦乙女を誕生させた番組が、新たな局面を迎えた。
 最強の戦乙女を決定するトーナメント戦である。
 旋風の蹴りと疾風の突きを予感させるAブロック3位決定戦!
 美少女同士が艶やかに舞うBブロック3位決定戦!
 女子プロレスラー同士が立ち技のみで闘うAブロック決勝!
 銀髪乙女達の蹴りとボディブロー! 歌い手と奏者の闘うBブロック決勝!
 さぁ、準備は整った! ヴァルキリー達よ、戦に身を焦がすがいい!
 只今、ヴァルキリーインパクトでは出場者募集中!!
 ☆尚、番組の対戦カードは予告なく変更される場合があります。

●エキシビジョンマッチの可能性
「えぇっ!? 本当なんですか‥‥あちこち痛いんですけどぉ」
 紗亜弥は腰や太股に手を運んで辛そうな表情を浮かべた。合宿での筋肉痛が残っているらしい。
「まぁ、可能性があるって話だ。その時はトレーナーも用意する予定でいる」
「トレーナー!? ほ、本格的ですね‥‥」
「怪我しちゃったら大変でしょ? 出場が決まればの話なんだけどね♪」
 妖艶な美女が微笑んで見せた。彼女の予想では出場の可能性は薄いようだ。
「まぁ富TVには世話になっている訳だから、頑張ってくれないか?」
 一時期、仕事が殆ど無かった演歌歌手の少女だが、TV局とスタッフのおかげで最近は忙しくなった。ここで我侭を言うのは今後が危ぶまれる可能性だってある。紗亜弥はグッと拳を固めた。
「‥‥わかりました。やってみます!」

●試合形式
 グローブを嵌めての2分2ラウンド制。
 2ノックダウンシステム。
投げ、関節技は無し。膝蹴りOK。手足以外での攻撃、及び背後からの攻撃は反則。
 勝負はKO・TKO・判定で決定。
 エンターティンメント性を高くしており、衣装は組み技が無い為自由(但し金属物が付いたものは禁止)。制作サイドである『ヴァルキリークリエイト』と打ち合せて下さい。

●募集区分
・ヴァルキリー(格闘技未経験者参加OK)
 試合を行う選手です(これまで出場していなくても参加OK)。
【コスチューム】
 自由(但し、クリエイトの方と連携していない場合、描写は最小限とさせて頂きます)。
【対戦相手】明記して下さい。
【格闘スタイル】空手とかテコンドーとか。
【自己PR】インタビュー等で表現される予定です。
【試合の組み立て】どのように試合を組み立てるのか明記。
1R:(前半)(中盤)(後半)
2R:(前半)(中盤)(後半)
【得意技(コンビネーション等)】
 得意技は有利に展開した選手がフィニッシュで発動できます。
 サポート参加があれば、特訓したとして、対戦者と同じレベルだった場合、有利に展開できるかもしれません。

・実況
 状況を視聴者に伝える方です。選手のキャッチコピー等明記。
 殆ど実況で状況が伝えられます。自分の個性を出せるよう台詞を決めておくのも一興です(実況がいなければ地の文章で表現されます)。

・控え室リポーター
 選手の控え室をリポートする人です。普通は遠くから様子を窺うのみですが、勇気があれば突撃して見ましょう(笑)。後は選手との駆け引きです(プライベートな事なので打ち合せて置きましょう)。

・解説者
 格闘技を生業としている女性で、試合の状況に解説を入れる方です。
 ヴァルキリーインパクトは素人も参加可能な格闘技ですので、無名でなければ担当できます。

・セコンド
 選手につくセコンドです。出番は少ないですが、セコンドがいると対戦中にアドバイスを受けて有利に展開できるかもしれません。
 尚、紗亜弥を入れても特殊効果(?)は発動しません。

・紗亜弥トレーナー(サポート参加)
 エキシビジョンマッチ希望がある場合、紗亜弥が相手となります。但し、募集区分を担当していない、または出番の少ない方に限らせて頂きます。
 尚、彼女のレベルはサポート参加者の数で変化します。【体力】【格闘】【軽業】のいずれかを鍛えた事で1ポイント能力に加算されます。

●今回の参加者

 fa0160 アジ・テネブラ(17歳・♀・竜)
 fa1163 燐 ブラックフェンリル(15歳・♀・狼)
 fa1449 尾鷲由香(23歳・♀・鷹)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2814 月影 愛(15歳・♀・兎)
 fa3116 ヴィクトリー・ローズ(25歳・♀・竜)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3342 不破・美影(18歳・♀・狐)
 fa3392 各務 神無(18歳・♀・狼)
 fa3489 森木 久美(18歳・♀・熊)

●リプレイ本文

●ヴァルキリー最強決定トーナメント第2回戦
『(只今よりエキシビジョンマッチを行います! 選手入場!!)』
 カメラが花道を彩る北欧神話のヴァルキリーをイメージした絵を映し出す中、アナウンスの声がコロシアムに響き渡ると共に、ベースとギター、そしてドラムをメインとしたハイテンションなスタンダードロックが鳴り響く。淡いグリーンのスポットライトが降り注ぎ、姿を浮かび上がらせるは、シースルー素材の外套を纏い、錆の浮かぶ鎖を首と腰に巻き付けて垂らしている、燐 ブラックフェンリル(fa1163)だ。今回も所属団体からの指示か、囚われ妖精という危ういシチュエーションのキワドイ衣装に、端整な風貌が羞恥に染まる。二度目とはいえ恥かしいものに変わりない。
「ま、またこの衣裳を着る事になるなんて‥‥」
 燐の若さと容姿をイメージした愛らしさに、鋭さと凛々しさを表現した『疾駆』の旋律が奏でられる中、リングへ向かう少女をスポットライトが照らし続けた。
 続いて雷光の如く黄色と紫色のレーザー光と照明を明滅させると共に、落雷のような轟音が響き渡る。エレキギターを主軸としたヘビーメタルな厳しいリズムが刻まれる中、肩から反対側の腰にかけて雷の一閃を施した暗色のリングスーツに身を包む、ブリッツ・アスカ(fa2321)が花道を歩いてゆく。ボーイッシュなルックスと魅惑的なスタイルの彼女をイメージした『雷光』の旋律は、爽やかさを醸し出して奏でられた。燐の時は男の声援が殆どだったが、何気に黄色い女子のものが多い。
『(ヴァルキリーインパクトR1 レディ)』
「「「「「「「「「「ゴーーッ!!」」」」」」」」」」
 腕を高く突き掲げる観客達が割れるばかりの声を張り上げた。
 甲高いゴングと共に二人の戦乙女が時計周りに動いて様子を見合う中、足を出して来たのはアスカだ。牽制程度に放たれるローキックに、褐色の太腿が僅かに体勢を崩す。
(「軽いけど躱せないのかな? あぅッ! あッ、ヤバイよ! きゃぅッ」)
 次第に頻度を増すローキック‥‥その刹那、アスカの足はグンと伸び、燐の端整な風貌を捉えた。身構えた瞬間、ハイキックと思わせた蹴り技は一気に高度を下げ、再び褐色の太腿へ振り落とされる。フェイントを駆使した攻撃と共に、パシンッと乾いた音が歓声と同時に響き渡った。
(「何だよ、俺の隙を狙ってるのか? なら、いかせてもらう!」)
(「わっ! 仕掛けて来たんだ! 駄目だよ、ガードも避けも間に合わない! またハイ!? あれ? 足が‥‥きゃふッ!」)
 フェイントで放たれたミドルキックを脇腹に受け、クンと腰を撓らせる燐。中段がクリーンヒットすれば、ズンと重いインパクトが強襲するのだ。しかも浴びせられ続けたローキックに褐色の足は戦慄き、思った以上に動きを鈍らせていた。アスカのミドルやローに合わせて観客の声が重なる。このままレフリーストップが入ってしまうのか!?
 ――その刹那、ラウンド終了を告げるゴングに燐は救われた。
(「やっぱり強いよ。でも、一撃だけでいい、アスカさんを超える一撃をっ!」)
『(ヴァルキリーインパクトR2 レディ)』
「「「「「「「「「「ゴーーッ!!」」」」」」」」」」
(「まだ攻めないのかよ! ならコッチからやらせてもらうぞ!」)
 アスカの猛攻は継続中だ。遂にハイキックを解放し、ミドルとローで幻惑させながら次々と叩き込んでゆく。稲妻の洗礼に燐は完全にサンドバック状態と化した。褐色の太腿は変色し、ふわふわと柔らかそうな結った銀髪が舞い、苦悶の色が浮かぶと共に遂に膝が折れる。
『(ダウン!)』
(「クッ! やっぱり食らい過ぎた。でも、一撃だけ! このまま終わるなんてイヤだよ!」)
 カウントが続く中、戦慄く足を踏ん張り、立ち上がってファイティングポーズを構えた。レフリーの声と共に試合は続行される。
(「このまま2ダウンも悪くないけど! 自分も、そして試合を見に来てくれた皆も満足できるような試合をしなきゃな! ‥‥っ!?」)
 ――それは一瞬の隙だったのかもしれない。
 研ぎ澄まされた緑の瞳が冷たい光を放ち、渾身の一撃がアスカの胸元へと叩き込まれた。体力任せに放たれた突きに稲妻娘がロープへ吹っ飛ぶ。
(「なんてパワーだ。咄嗟にバックステップで跳んだけど、格闘技術を覚えたら油断できないな。面白いじゃないか!!」)
 少年のように不敵な笑みを浮かべ、アスカが一気に間合いを詰めた。しかし、ダメージが残ったのか、左キックを振り上げるが燐の手前で空を切る。
 ――チャンスっ!!
 観客席から津波の如きどよめきが溢れた。
 銀髪を揺らして渾身の一撃を叩き込もうとした刹那、アスカは振り切った遠心力を利用してバックスピンキックを放ったのだ。強烈な一撃に燐が吹っ飛び、戦慄く膝は体勢を維持できず、遂にガクリと腰を落とした。
「これが狙いだったんだ‥‥」
 ゴングと共に腕を掲げて声援に応えるアスカを、燐は呆然と見つめていた‥‥。

●Aブロック3位決定戦
『(只今よりAブロック3位決定戦を行います! 選手入場!!)』
 照明の落とされた入場口にレーザーを明滅させながらスポットライトが駆け巡る。
 スローテンポな中国民族音楽風のドラムと笛の音が『天空』の雄大な出だしを奏でる中、シンセサイザーで風の音を混ぜた旋律が大空を力強く羽ばたく鷲を連想させてゆく。空に切り込むような鋭さに移行するロックと共に浮かび上がるは、白いタンクトップに、緑基調の裾部分を折っている迷彩の短パン姿の、尾鷲由香(fa1449)だ。
(「今回は負けられない試合だからな1ラウンドで決めてみせるぜ! ブリッツ、ローズ、見ててくれよな、あたしの戦い方」
 緑基調の迷彩バンダナを巻き、両腕にリストバンド、胸元でドックタグが揺れている。底が平らな茶色のヒモブーツで悠然と花道を歩く様は正に戦士。
『一瞬たりとも目が離なせない、その瞬間にも大鷲の眼は獲物を狙っているのだから』
 燐のアナウンスが終わると共に、闇に包まれた入場口後方から強い光が放たれた。逆光にマントを纏った、ティタネス(fa3251)の黒いシルエットが浮かび上がり、稍クラシックの技法を混ぜた『鋼』の重厚なロックが低音のピアノと共に響き渡ると、迫り来る要塞の様な威圧感を与えながらテンポよく奏でられてゆく。
『その姿は高くそびえる黒鉄の砦。万夫不倒の要塞は目の前の敵を叩くのみ』
 リングに上がり、小さな飾りの施されたマントを放り投げると、肩や背中の位置に施された銀糸の刺繍が雄大に映った。
(「2試合目だけど、やっぱりまだ少し慣れないな。怖くないと言えば嘘になるけど、今回もとりあえず精一杯頑張るだけだよ」)
『(ヴァルキリーインパクトR1 レディ)』
「「「「「「「「「「ゴーーッ!!」」」」」」」」」」
 ――なにッ!?
 ゴングと共に両者は一気に間合いを詰めた。先に動いたのはティタネスだ。ダッシュした由香は行く手を遮られる形となる。刹那、スタントマンの娘は軽やかに腰を捻ると、褐色の鉄壁へ浴びせ蹴りを放った。避けではなくガード重視で身構えた娘は洗礼を浴び、互いに体勢を崩す。素早く立ち上がったのはアーミールックの女戦士だ。再び褐色の長身が間合いを詰めるとパンチを繰り出す。
(「チッ! 速いッ!」)
(「キックの間合いでやったら絶対不利! 間合いを潰す!!」)
 グローブの洗礼を受けながらも、由香は膝へ内側からのローキックを叩き込んだ。間合いを詰められてもローは放てる。まして彼女の格闘技経験はティタネスを凌駕していた。
(「クッ、なんて重い蹴りだ‥‥ッ!!」)
 茶の瞳に映る由香が、構えたグローブから鋭い緑の眼光を放つ。
(「そうかよ! そんなにキックが嫌ならッ!!」)
 ティタネスの拙いガードの隙間から引き締った腹部にボディーブローを叩き込んだ。
 ――うぉらあぁぁぁぁッ!!
 連打! 連打! 連打! 連打! 連打! 連打――――!!
 呼応するように客席から歓声が涌き上がる中、褐色の肢体が渾身のアッパーに崩れた。
『(ダウン!)』
 どんなに強靭な肉体を持っていても防ぐ手段が無ければダメージは蓄積される。まして、左右に繰り出したパンチも空を切る派目になっていたのだ。
(「クハッ! 蹴りの間合いを潰しても駄目か‥‥どうする? あたし」)
 ここでゴングが鳴り響いた。
 茶のショートヘアの少女がセコンドに待つコーナーへティタネスが戻ってゆく。ダウンを取られたものの、スタミナのある彼女は回復が早そうだ。
『(セコンドアウト! R2 レディ‥‥)』
 再び間合いを詰めに入るティタネスだが、由香のローキックが叩き込まれた。続けて膝蹴りをボディーに食らい、それでも前進して互いのグローブが繰り出される展開となる。
(「当たらない!?」)
 棒立ちで打ち合うなら兎も角、格闘経験者は腰の捻りを効かせ体捌きの応用で突きを繰り出すものだ。クリンチするにもタイミングが重要‥‥‥‥ならば――――。
(「うっ、ティタネス? ‥‥まさか」)
 長身とスタミナを利用し、押し込みに入った。つまり時間稼ぎだ。
(「経験不足は分かったよ。でも、悪いけどダウンする訳にはいかない!」)
 長身で自分の間合いすら殺す押し込みはクリンチに近い手段である。何度もレフリーから引き剥がされ、仕切り直しとなった。しかし、頻度が多過ぎれば警告は免れない。
 ――今回は負けられないな‥‥。あたしに負けた者が誇れるようにあたしは勝つ!
 由香は間合いを詰めて来たのに合わせ、膝へ蹴りを放つと内側からローキック、右ストレートから左アッパーのコンビネーションを叩き込んだ。
 グラリと褐色の肢体が揺れる中、ゴングが鳴り響く。判定は由香の勝利だ。

●Bブロック3位決定戦
 ピアノメインの落ち着いた旋律に、時折混ざるドラムが優美ながら冷たいリズムを刻んでゆく。
 次第に激しさを増すと共に照明が明滅し、『陰影』に疾走感が伴うと共に駆け巡るスポットライトの光を浴び、ホールターネックにマイクロミニスカート姿の不破・美影(fa3342)がリングへ走る。
 今回は対戦相手が出場できない為、リザーバーとして3位決定戦に抜擢されたのである。視聴者には、前回のセクシーリポーターとして知られているであろう。
『何人たりとも破ること能わず。リングに踊る美しき影』
 次に奏でられたのは笛の音だ。『月光』の旋律はドラムとベースを少しずつ混ぜ、明るく軽快な中にどこか艶っぽい激しさを奏でてゆく。照明やレーザーがライヴの如く明滅を繰り返す中、浮かび上がるは、体操着にブルマ姿の月影 愛(fa2814)だ。愛らしい中学生にしか見えない娘にマッチした衣装といえるかもしれない。尤も、職業柄か妙な色香が漂い危うい雰囲気も醸し出しているが‥‥。
『月は生死の象徴といいます。今宵その影に映るのは対戦相手の生か死か』
 ライヴ風の演出に当てられてか、観客に満面の笑みを振り撒き、手を振りながら花道を行く。
「舞うように闘うセクシーなわたしを見てよね〜☆ あと‥‥ちょっとでも興味でたらビデオの方もよろしく〜♪」
『(ヴァルキリーインパクトR1 レディ)』
「「「「「「「「「「ゴーーッ!!」」」」」」」」」」
(「訓練もしたし、今回も思いっきりやってみよう♪」)
 左側に纏めた黒い長髪を揺らし、軽くリズムを取る愛に美影が飛び込んでゆく。
(「ローが来ない? ならコンビネーションを叩き込んでやる!」)
 バックステップでピョンと避けた一見中学生の少女に軽いジャブが薄くヒットし、端整な風貌が切なげな色を浮かべた。
(「やん★ ちょっと痛いじゃない。でも、避けられないなら!」)
 ブンブンと豊かな胸を揺らし、グラビアアイドルが見よう見真似のボクシングで繰り出すコンビネーションパンチを、愛は次々とグローブで捌き出す。
(「クッ! 全て弾かれているだと!? 月影さんを捉えているのにッ!!」)
 身長差は直接リーチに繋がる。円らな赤い瞳が輝くと、スルリと間合いに小さな身体を滑り込ませ、下段廻し蹴りを放った。ガクンと美影の膝が戦慄く。
 ――いけるかも♪
 美影が体勢を崩した刹那、激しい動きにチラリチラリと白い素肌を体操着から覗かせ、右ジャブから速攻の左ジャブを連打すると、グンと細くしなやかな足を大きく振り上げた。丁度、美影の喉元で止まり、愛はそのまま渾身の踵落としを叩き込んだ。自分が受けたダメージより大きいダメージを相手に与えるというコンセプトの元、短期決戦で挑んだグラビアアイドルが膝を着く。
『(ダウン!)』
 スピードも無ければ体力も無い。まして肝心の格闘技経験も皆無の美影はその後も果敢に挑んだものの、『艶武』の艶やかな舞いにより、実力差を浮かび上がらせ2度目のダウンを取られた。
「みなさーん! ビデオ買って下さいねー☆」
 ふわりと捲れ上がる体操着も気にせず、ピョンピョンと跳ねて声援に応える愛。学園を舞台としたビデオが売れたかもしれない。

●Aブロック決勝戦
 薄暗い赤の照明が浮び上がる中、恐怖を喚起する様な不協和音が響き渡り、様々な色のスポットライトが乱舞すると共にギターベースのハードロック『真紅』が、激しく派手に奏でられてゆく。
 照らされるのは、薔薇をイメージした極彩色のゴシックロリータ調の衣装を身に着けたヴィクトリー・ローズ(fa3116)だ。激しいロックの中に西洋のお祭り風味な荒々しさを加味する旋律に合わせ、胸元にドットチュ−ルの4段フリルを上から紫、藍、緑、黄の色彩順に重ねた薔薇のケミカルレースで彩ったスクエアネックの赤いレオタードの女が、胸元と同じ順に五重に五色重ねたミニのパニエを揺らして歩いてゆく。両肩に5色のレース地で造ったモダンローズの飾りを両腕の総レースの長手袋に縫い合わせており、シンプルなローズレッドのウェストコルセットが魅惑的なボディーを引き締め、無数の茨をつたわせた様なデザインのオーバーニーソックスが脚線美を飾る。赤毛を彩るは薔薇モチーフの施されたレースのヘアバンドだ。気品と威厳を象徴する完璧なる薔薇の女王が戦乙女として降臨した錯覚すら覚えただろう。
『四角いリングは秘密の花園。そこに咲くのはただ一つ、勝利を冠する薔薇一輪』
 続いて鳴り響いたのはテ−マを『祭囃子』とした旋律だ。ピアノとドラムに笛を混ぜた軽妙な音色が、速めのテンポでリズムを刻み、ポップス調で明るく楽しく元気の良い和の祭りをイメージさせる。
 入場曲に合わせて姿を見せるは、エキストラが担ぐ神輿に乗った森木 久美(fa3489)だ。
『弾ける元気は太陽のよう。その輝きは増すばかり、活躍めざましいスーパールーキー』
「(相手は私よりも強い人。それに私の得意分野は禁止。逆境で強い人と戦う訳ですから、ここは一つ勉強と思って)頑張るぞーッ!!」
 花火の効果音が響き渡り、照明が明滅する中、漂白した長サラシの上にスカイブルーの半被を纏い、半被よりやや薄い色の腿の半ばより僅かに丈の短いショートパンツを履いている少女が、元気な気合を張り上げ、健康的な色香を振り撒く。茶色のショートヘアにはヤギ印の手拭いだ。
『(ヴァルキリーインパクトR1 レディ)』
「「「「「「「「「「ゴーーッ!!」」」」」」」」」」
(「相手の得意な間合いはミドルレンジ。ここは弱いダメージでもいいから」)
 やや身体を屈めると、グローブでガードしながら懐へと飛び込むべく久美がマットを蹴った。これならスピードが遅くとも接近時に蹴りを受ける確率は低い。しかし――――。
 グローブの隙間から映る女の赤毛が揺れた瞬間、腕が痺れるような衝撃を受けて視界が横へ吹っ飛ぶ。一瞬、新人プロレスラーの少女は何が起きたのか分からなかっただろう。
(「ミドルキック!? ガードの上からでこの衝撃なの!?」)
 圧倒的な破壊力を身体が覚え、久美の頬を汗が伝う。空かさずローズが視界に入り、肝臓目掛けて左ミドルキックを連打! 電気を浴びたような衝撃が強襲する中、次第にガードが揺るんだ。
(「チャンスっていうかぁ、体力消耗ってカンジぃ」)
 薔薇の女王が緑色の眼光を研ぎ澄まし、左ジャブから右フック、左ストレートと執拗にボディーを狙い続けて洗礼を叩き込む。少女の短髪が汗を散らせて舞い踊り、呼吸も出来ぬ、苦悶の色が浮かび上がった。続けてローキックの連打だ。強い! 圧倒的な強さだ! 遂に久美がマットに崩れた。
『(ダウン!)』
(「かはッ! ガードも間に合わないし、攻撃は弾かれる‥‥闘いのセンスがある人って分かっていたけど‥‥つッ、腕も足もガタガタだよ」)
 何とか奮闘するものの、試合は第2ラウンドへ――――。
『(ヴァルキリーインパクトR2 レディ‥‥)』
 ゴングと共に互いに間合いを詰めてゆく。再び長身から左ミドルを放つローズに、久美が肘を突き出すもののタイミングが合わない。続いて繰り出すローキックの太腿へ向けて膝蹴りを合わせようとするが、逆に体勢を崩す羽目に陥った。ローズとて女子プロレスラーだ。動きの変化を鋭く読み取る。
(「あらあら、反則っていうかぁ、狙ってるってカンジぃ?」)
 技量が互角なら警戒するかもしれないが、薔薇の女王は余裕の微笑みを浮かべていた。
(「気付いている? 私が反則しても合わせられないから笑ったっていうの!? ぐふッ!」)
 レバーブローが叩き込まれ、鈍い衝撃と共に意識が遠ざかる。霞む視界に映る赤毛の女がミドルレンジに間合いを取った。
 ――蹴りが来るッ! さ、させない!
 覚束ない足取りで間合いを詰める久美。繰り出すジャブと同時にカウンターで左ストレートが炸裂し、少女がクラリと揺れる。刹那、茨が目の前に飛び込む。ローズの左ハイキックが薙ぎ放たれたのだ。マウスピースが宙を舞う中、空かさず腰を十分に捻ったバックスピンキックが追い討ちを掛ける。まるで薔薇の花びらが弧を描いたような軌跡に、半被の背に描かれた太陽と裏に隠れた白い雲の模様がマットに沈んだ。

●Bブロック決勝戦
 いよいよトーナメント第2戦最終試合のコールが響き渡った。
 闇の中に白い閃光の如きレーザーが放たれ、強い曲調と弱い曲調が交互に来る変調曲が奏でられてゆく。曲がっても折れない『柳』をイメージした和風の旋律に、暗く激しい低音ベースのロックが彩りを与える。姿を見せるは、鎖つき足枷を引き摺る各務 神無(fa3392)だ。衣装の裾が多少ほつれており、ワイルドな雰囲気を醸し出す少女をスポットライトが追う。
『各務の名が示すのは、鏡。覗いてはいけない、なぜならそこに映るのは神をも食らう大神の牙』
 続いてバイオリンの穏やかな旋律が奏でられ、シンセサイザーの音色が一気にテクノ系に変化させる。呼応する如く照明が明滅し、神秘性を兼ね備えた爽やかなアレンジの『飛翔』と共に、ピュアホワイトのレースワンピースに肢体を包んだアジ・テネブラ(fa0160)が浮かび上がった。レースの模様は鳥の羽と翼をモチーフにしており、胸元から肩や背にかけて無数のレースを重ね合わせ翼をイメージした飾り付けで、肩甲骨の辺りは翼が生えていると錯覚する様に少々広げ膨らませてある。腰周りを腰当の様に纏めたミニスカート状の布地が飾っていた。
『凛と立つ姿はまさに美しい銀嶺。リングの上では苛烈に吹雪く美しき巨峰』
 複数のスポットライトが交互に照らす中、観客の声援に淡々と応えてゆく。
「応援してくれている皆さん、今回も皆さんの期待は裏切りません‥‥応援よろしくお願いします」
『(ヴァルキリーインパクトR1 レディ)』
「「「「「「「「「「ゴーーッ!!」」」」」」」」」」
 ゴングと共に両者はゆっくりと周りながら間合いを取った。アジが牽制のローを放つが、神無もフェイントを混ぜた巧みな蹴りを散らせ、左右に素早く回り込もうとするシンガーの接近を許さない。
(「流石に決勝戦ね。弾いても簡単に近付けないか‥‥」)
(「動きはあちらが断然速い。避けよりもガードで牽制した方がプレッシャーを掛けられる」)
 息詰まる攻防が続く。自分の力量を知っているからこそ互いに不用意な行動に移れない。二人のミュージシャンは蹴りを放ってはガードしてのカウンターを繰り返し、まるでセッションを奏でているようだ。時間が刻々と過ぎてゆく。
 ――ガードを崩したいアジ。膝をあげてブロックし、カウンターの蹴りを放つバイオリニスト。
 決定打を互いに叩き込めないままゴングは鳴り響いた。神無が紗亜弥の待つコーナーへ戻ってゆく。
「お、おつかれさまです! 思わず息をするのも忘れて倒れそうになっちゃいました☆」
「‥‥どちらにせよ2Rが勝負、1Rの全ては布石だよ。それにしても、あれだけ動かせてもスタミナが切れないなんて‥‥!! ん? なんだ?」
 津波のような観客のどよめきに視線を流す。赤い瞳に映ったのは、コスチュームを脱ぎ捨て水着姿となったアジの姿だ。リボンをあしらったシンプルな白のベアサイドワンピースの水着から魅惑的な肢体が浮かび上がり、歓声が沸きあがる。
「あーっ、サービスショットってやつですかぁ? ずるいです! わっ!」
 頬を膨らました紗亜弥が思わず身を引いた。薄布一枚となった少女が円らな青い瞳を研ぎ澄ませてコチラに顔を向けたのだ。フッと神無が微笑む。
「サービスショットなんかじゃない。本気を出すって宣言してくれてるんだよ」
「じゃあ、各務さんも脱いでこたえますか?」
「‥‥なんでそうなるんだよ? 全力を尽くすのが彼女への応えさ!」
『(セコンドアウト! R2 レディ‥‥)』
 エールを受けながらリング中央に向かうと、第2Rのゴングが戦闘の合図を鳴らした。
 1R同様に距離をおいて放つアジのローに膝をあげて合わせる神無。
(「速度は追えるが、瞬間は叩けないか。さて、どうやって判定で勝つ?」)
 ――行くわよ!
 刹那、アジの動きが変わった。しっかりとガードする神無の左右へローキックの連打を叩き込む戦法へと転じたのだ。激しい動きに合わせて銀の束ねた三つ編みと二つの膨らみが踊る。それはまるでサビに入って盛り上がるアップテンポの歌! ヒートアップする少女の肢体に客席が沸く。
 ――マズイ!?
 スピードを活かしたローの連打だけならガードを続けていれば最小限のダメージで済んだかもしれない。問題はインパクトだ。強烈なローキックをガードする度、白い足が変色して戦慄く。
(「足が重い!? 支え切れないだと? 来るッ!?」)
 神無は薙ぎ放たれた褐色の足をグローブでガードした。体重を掛けたハイキックの衝撃に戦慄いた足は堪え切れず、ロープへ吹っ飛ぶ。グローブの隙間から覗く視界に、銀の歌い手が肉迫する!
(「避け切れない! だが、観察すれば未だ追える!」)
 神無は冷静に対応した。アジが叩き込もうとするパンチに合わせてガードし、貫かせない。見た目にはかなり劣勢に見えるが、ダメージは急激に襲っていなかった。
(「巧い! でも、足を殺された各務さんが打ち合いに出れば崩せる!」)
(「やはりパンチの威力も凄い‥‥食らい過ぎたな。かと言って‥‥」)
 ここでゴングが鳴り響いた。互いの力量を自覚している闘いは僅差の判定で、アジが勝利を掴んだ。
「いい試合だったよね」
「そう、ですね。あなたの覚悟に応えられた、でしょうか?」
 アジの差し延べた手を握り返す神無。答えは健闘を称え合う握手が物語っていた――――。


●結果
 現在の順位は以下の通りである。
・Aブロック優勝:ヴィクトリー・ローズ
・Aブロック2位:森木 久美
・Aブロック3位:尾鷲由香
・Aブロック4位:ティタネス
・Bブロック優勝:アジ・テネブラ
・Bブロック2位:各務 神無
・Bブロック3位:月影 愛
・Bブロック4位:不破・美影

 続いて最強決定戦へと駒を進める。トーナメント最終戦だ。
・ヴィクトリー・ローズvsアジ・テネブラ
・森木 久美vs各務 神無
・尾鷲由香vs月影 愛
・ティタネスvs不破・美影

 果たして薔薇の女王をアジは止められるのか!? 戦乙女達の闘いの行方は!?
 ――メインイベントの準備は整った!!

 次回ファイナルバトル:0712OK?