ヴァルキリーインパクトアジア・オセアニア
種類 |
シリーズEX
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
10.4万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
1人
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期間 |
12/31〜01/04
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前回のリプレイを見る
●本文
●TVCM
――これまで多くの戦乙女を誕生させた番組が、新たな局面を迎えた。
最強の戦乙女を決定するトーナメント戦である。遂に大晦日決戦を迎えて動き出す。
クールビューティの日本拳法に、野に咲く可憐な花のグローブが唸るか!?
Jカップ美少女の空手に、お気楽極楽マルチアイドルのボクシングは通用するのか!?
格闘アイドル女優と八極拳の使い手、二人の魅惑的な肢体が躍動する試合にワクワクが止まらない!!
そして、疾風の荒鷲は前大会2位のフリーシンガーに勝てるのか!?
前哨戦たるエキシビジョンマッチは如何に!?
さぁ、準備は整った! ヴァルキリー達よ、戦に身を焦がすがいい!
只今、ヴァルキリーインパクトでは出場者募集中!!
☆尚、番組の対戦カードは予告なく変更される場合があります。
●次なる企画。
前回よりプロデューサーに演出クリエイターから企画申請があった。
――4人リーグを2ブロックに分かれて行う『リーグ戦』の開幕である。
これはトーナメントで敗退した者の気力を維持させるというものだ。
番組としては有り難い提案だが、選手を長期間拘束するという問題もある。
「この企画は選手に意見を聞いてからスね。今回の選手にアンケート用紙は渡しておくスよ。ふむ、選手からの要望とかも聞いた方が参考にもなるスね」
そう、選手がいなければ企画は成立しないのだ。リーグ戦は選手の手に委ねられた――――。
●試合形式
グローブを嵌めての2分2ラウンド制。
2ノックダウンシステム。
投げ、関節技は無し。膝蹴りOK。手足以外での攻撃、及び背後からの攻撃は反則。
勝負はKO・TKO・判定で決定。
エンターティンメント性を高くしており、衣装は組み技が無い為自由(但し金属物が付いたものは禁止)。制作サイドである『ヴァルキリークリエイト』と打ち合せて下さい。
●募集区分
・ヴァルキリー(格闘技未経験者参加OK)
試合を行う選手です(これまで出場していなくても参加OK)。
【コスチューム】
自由(但し、クリエイトの方と連携していない場合、描写は最小限とさせて頂きます)。
【対戦相手】明記して下さい。
【格闘スタイル】空手とかテコンドーとか。
【自己PR】インタビューや対戦前のスクリーン等で表現される予定です。
【試合の組み立て】どのように試合を組み立てるのか明記。
1R:(前半)(中盤)(後半)
2R:(前半)(中盤)(後半)
【得意技(コンビネーション等)】
得意技は有利に展開した選手がフィニッシュで発動できます。
サポート参加があれば、特訓したとして、対戦者と同じレベルだった場合、有利に展開できるかもしれません。体力/格闘/軽業 から1つ選択して下さい。
・実況
状況を視聴者に伝える方です。選手のキャッチコピー等明記。
殆ど実況で状況が伝えられます。自分の個性を出せるよう台詞を決めておくのも一興です(実況がいなければ地の文章で表現されます)。
・控え室リポーター
選手の控え室をリポートする人です。普通は遠くから様子を窺うのみですが、勇気があれば突撃して見ましょう(笑)。どんな事を訊ねるのか事前に打ち合わせましょう。
・解説者
格闘技を生業としている方で、試合の状況に解説を入れる方です。
ヴァルキリーインパクトは素人も参加可能な格闘技ですので、無名でなければ担当できます。
・セコンド
選手につくセコンドです。出番は少ないですが、セコンドがいると対戦中にアドバイスを受けて有利に展開できるかもしれません。体力/格闘/軽業 から1つ選択して下さい。
因みにサポートで特訓するより、セコンドの方が有利です。
尚、紗亜弥やリザーバーを入れても特殊効果(?)は発動しません。
リザーバーのセコンドも試合を行っていなければ可能です。
・紗亜弥トレーナー(サポート参加)
エキシビジョンマッチで紗亜弥が指名された場合、トレーナーとして1日を使い特訓する事が可能です。
尚、彼女のレベルはサポート参加者の数で変化します。体力/格闘/軽業 から1つ選択して下さい。
・ラウンドガール
選手のつかの間の休息時に、リングで彩りを与えます。
●リザーバーNPC:枠が合わない、エキシビジョン希望などに指名できます。
*紗亜弥(演歌歌手)
闘う演歌歌手。事務所に騙され嫌々出場したり合宿を経て、成長を見せたか!? 最近デビュー1周年を迎えた。今年最後の仕事納めとなるのか?
*フォビトン・フルート(女優)
SteelGraveのTV版アルマイトの旗宣伝に来日か!? セミロングヘアの眼鏡美少女。
*法衣 麻奈華(学生)
やる気はあるがチャンスに恵まれない未知数の格闘大好き娘。 誕生日がクリスマスイブでなかなか複雑な人生を送って来たらしい。因みに今年も複雑だったようだ。
●リプレイ本文
●波乱の大晦日最強決定戦
北欧神話の女神――スクルドが描かれた花道からカメラを引き、会場を映し出す。北欧風に厳しい冬と待望される春の訪れを演出したリング周りを捉える中、葉月竜緒(fa1679)の声が響き渡る。
『ヴァルキリーインパクトよ、うちは帰ってきた‥‥出戻り実況の葉月竜緒や、よろしゅうなっ。なんや今回は参加者の入れ代わりの激しい大会になってもうたけど最終順位はどないなるんやろ? うちもブランクが永いさかい上手くやれるかは不安やけどしっかりやったるで!』
円らな緑の瞳を和らげ、屈託の無い笑みを浮かべる中、番組は穏やかなムードで進んでゆく。
●エキシビジョンマッチ
ピアノとヴァイオリンをメインにした入場曲『Thinker』が、やや早めの曲調で奏でられてゆく。スポットライトに姿を見せたのは、黒のスーツに白のトレンチコートを羽織った各務 神無(fa3392)だ。派手過ぎないクールで落ち着いたイメージの衣装で、長い銀髪が揺れる。
『格闘家ではない彼女がリングに上がり続ける理由は何か? 戦うバイオリニスト、各務神無!!』
実況の竜緒が声を張り上げると共に、上部巨大モニターに怜悧さを醸し出す風貌が映った。
「まさか、紗亜弥と戦う日が来るとはね。‥‥今、言える言葉は無いよ。尤も、試合が終わればあるかも知れないけどね」
声援が飛び交う花道を進みリングに上がると、神無が花道へ視線を流す。演歌が流れる中、スポットライトを浴びるは、桃色のレオタードにフリルを縫い付け、可愛らしさを演出した衣装の紗亜弥だ。モチーフはピンクウサギらしい。結い髪の少女が緊張した面持ちでリングへ向かう。視界に捉えるは凛とした風貌だ。
――神無さん‥‥。
『これまでの試合で紗亜弥選手は各務選手のセコンドをしていました。つまり、これは師弟対決となるのか!? 師匠が彼女を対戦相手として選んだ目的とは!?』
<セコンドアウト‥‥R1――レディ―ファイト!!>
『さあ、ゴングが鳴りました。両者互いに間合いを詰める。紗亜弥のローキック! そのまま受けた各務がフェイントを交えた可変蹴りで牽制。スピードのある散らせた蹴り技に紗亜弥は後退。ここで追撃せず間合いが離れた! 各務は様子を見るようだ』
(「うわっ、やっぱり速いなぁ‥‥先手を取って押すつもりだったけど‥‥。でも、あたしにも分かる‥‥神無さん試しているんだ‥‥ッ!」)
『再び間合いを詰める紗亜弥。ローから入ってワンツー、次いで中段廻し蹴り! 各務は的確にガードしてゆく。おっと、ここでカウンターを入れた。紗亜弥がよろけるが追撃はしない!』
(「本当、紗亜弥と戦う事になるなんて思ってもいなかった。指名して言うのも可笑しいけど、妹の様に思っている子と戦うのは‥‥。でも‥‥」)
『再び攻めに出る紗亜弥。各務はガードからカウンターを叩き込んだ。おっと、ここでゴング!』
<R2――レディ―ファイト!!>
――きっと闘い方が変わるっ! だけどあたしはっ!
『ゴングと共に紗亜弥が接近! 1Rと同様にコンビネーションを繰り出すものの、各務のガードは固い!』
――でも、紗亜弥なら。私が表舞台で戦い続ける理由も教えてくれる気がするんだ。
『またしても各務のカウンター! 紗亜弥の脚が腫れてゆく! 動きも止まった! 否、動く! 尚も師匠に向けて詰めてゆく! しかしカメラから捉える表情は苦しそうだ!』
(「立っていられるなら‥‥攻める! あぁん、足っ、言う事を聞くんだよっ、ぴよぴよ解除っ」)
小さな単発のカウンターと言えど、避けやガードが間に合わなければ、力量の差によりダメージを蓄積させる。ジャッジ次第だが、このまま判定に入れば積極的な手数で紗亜弥にポイントが入る可能性もあれば、各務の消極性は負けを意味する場合もあるだろう。声援が少女を後押しする中、銀狼のセコンドからは決めろの指示が飛ぶ。
(「速度とパターンは見切ったよ。でも‥‥ここまでかな」)
『さあ、リングは紗亜弥コールに包まれる中、覚束ない足取りで尚も立ち向かってゆく。師匠、これが紗亜弥の闘い方です! このまま弟子の踏ん張りを見守るのか各務!? おっと、鋭い前蹴りが繰り出された!! 紗亜弥ダウン!? マットに膝を着いたまま右肩を押さえて震えています!!』
VTRがモニターに映る。各務の爪先を立てた槍の様な鋭い前蹴りは、紗亜弥の右肩関節間へ叩き込まれた。脱臼させる事を目的にした“裏”の技らしいが、関節へのダメージも重いだろう。
『ここでゴング! テクニカルノックダウンです! せめてもの手向けとでも言うように放った一撃で勝敗は決しました! おっ、各務選手が紗亜弥選手に慌てて近寄ります』
「大丈夫か? その、て‥‥」
「本気、だったんですよね? 手加減なんかしてないですよね?」
「!! (私は、楽しければ勝敗は如何でも良いと思っていた。でも、これは相手に失礼だよね)。今度私の技を教えてあげるよ。ありがとう」
「? やですよぉ、お礼を言うのはあたしじゃないですか。ありがとうございました☆」
『拍手の響き渡る中、グローブを外した師弟が今、握手を交わしています!』
――私はね、多分、情熱が欲しいんだと思う。
だから、それを教えてくれた紗亜弥には感謝しているよ。ありがとう――――。
●第一試合
<只今より、第二回ヴァルキリーインパクト最強トーナメント決定戦を行います!! 選手入場!!>
響き渡ったのは、『冬の夜空』をクラシックで表現した旋律だ。重奏的でありながらも冬の静けさや冷たさを表現した曲と共に、雲や雪を連想させる純白のマントを羽織った神楽(fa4956)がスポットライトに浮かび上がる。
『冬空より今氷の乙女が舞い降りた、神楽!』
竜緒の紹介と共に、神楽がセミロングの黒髪を靡かせてマントを脱ぎ払う。曝け出されたのは魅惑的な肢体を包む、冬の夜空を思わせる濃紺ワンピース水着だ。銀の刺繍でオリオン座があしらわれており、キャッチフレーズに相俟っている。上部モニターでクールビューティが瞳を研ぎ澄ます。
「‥‥このままで終わってはあまりにも悔しい。この戦いで捲土重来を期します」
続いて流れる旋律は、キーボードをメインとした『Fall』の、やや暗めで疾走感のある曲調のシンフォニックメタル。スポットライトを浴びるは、淡い青系に直線を主体にした雪の結晶の模様を入れたタンクトップに、ジーンズタイプのショートパンツの叢雲 颯雪(fa4554)だ。雪をイメージした衣装に魅惑的な肢体を包んだ幼さの残る少女が、艶やかな黒い長髪を揺らして花道を進んでゆく。
『白雪のような肌を朱に染め、それでも勝利に向って走り続ける! レースドライバー、叢雲颯雪!』
「えっと、役不足とは思いますけど、年の終わりを締め括れる様な戦いが出来ればと思っています。よろしくお願いしますっ!」
上部モニターの中、明朗快活そうな少女がはにかみながら頭を下げた。
<R1――レディ―ファイト!!>
『さあR1‥‥おっ、開始と共に一気に間合いを詰めたのは叢雲だ。速いッ! 黒髪を舞い躍らせて至近距離からグローブを唸らせる! 先手を取られた神楽、防げない! 正にレースドライバー! 走り出したら止まらない!』
――体力も技術も向こうが上‥‥。なら私に出来るのは、スピードで翻弄して手数で攻める事。
――踏み込ませるつもりはなかったが、予想以上の速さね。でも‥‥隙だらけよッ!
『ここでローキックの反撃だ! 鈍い音と共に叢雲が苦い表情でバックステップ! 速いっ! 絶妙なドライビングテクニックで神楽の攻めを躱してゆく!』
――カウンターは拙いよね。距離を取るのが遅れた‥‥。
――当てたのは一発!? 乱打戦に持ち込めればッ!
『ヒット&アウェイで攻防のバランスを取る叢雲。神楽もダメージを蓄積させてゆく! おっと、タイミングを合わせてのカウンターに叢雲が揺れる! 判断ミスが命取りになりそうだ! と、ここでゴング!』
(「油断したわ。でも相手はボクシングスタイル‥‥そこが狙い目ね」)
(「このままなら勝てるよ‥‥でも、勝とうとしてジリジリ戦うのって、本当は性に合わないんだよね」)
<R2――レディ―ファイト!!>
――スタミナならあたしに分がある! 休ませないよ!
――まだ動きを追えるんだよ!
『両者一斉に間合いを詰めた! 叢雲の動きは軽快だ。畳み掛けるような攻めを左右に振って躱す! 神楽捉えられない! 客席に突風を起こしそうなパンチや蹴りが空を切る!』
――息切れしていない!? あたしよりスタミナがあるだと!?
正確には違う。だが、スピードで翻弄した分、颯雪のダメージは少なかった。況して機敏さでは倍以上の差がある。スタミナが消耗したとしても、動きが目に見えて鈍りはしない。
しかし、颯雪には決定的な弱点があった。このままなら判定で勝てたかもしれないが‥‥。
――やっぱり今年最後なんだから、うんと楽しまないとねっ!
『おぉっ、叢雲が攻めに転じた! グローブが音速で唸る! 神楽も日本拳法のコンビネーションで一気に勝負を掛けた! 観客もヒートアップだ! 神楽のローキックが炸裂!』
(「ぐッ!」)
――全力を出して戦えれば、それはきっと楽しい事だよね。
神楽さんに取って私が役不足で無いかどうかだけど――――。
鈍い衝撃に膝が戦慄いた。瞳に映る神楽の右脚が大きく弧を描いて薙ぎ振るわれる。スローモーションに見えたが、身体が動かない。衣装に散りばめた星が、やけに目に焼き付いた‥‥。次に強襲したのは、脳を揺らすインパクトだ。
――私が楽しくても神楽さんが詰まらなければ意味が無い物ね。
神無姉、私、間違っているかな――――。
『叢雲ダウン! テクニックの差か、ハイキックにマットへと沈んだーっ!!』
その後、ファイティングポーズを見せて試合は繰り広げられたが、判定により神楽が勝利を掴んだ。
敢えて全力で挑む道を選んだ颯雪を、演歌歌手の少女は労ったという。
――闘いは勝つか負けるかしかありません。勝つ事が全てと唱える者もいます。
でも、たとえ負けたとしても自分が精一杯を出し切る闘いが出来たのならば‥‥それは――――。
●第二試合
エレキギターをメインとした『Rapid』の軽快なメタリックロックが掻き鳴らされてゆく。スポットライトに因幡 眠兎(fa4300)が姿を見せる。シンプルな白のバトルスーツに、赤のジャケットを羽織り、軽快なリズムに合わせ、円らな赤い瞳の少女が優麗に流れる黒髪を波打たせながら花道を進む。
『その才能は格闘技からバラエティーまで幅広く! マルチタレント因幡眠兎!』
「もう負けない‥‥誰が相手だって」
幼い風貌に決意を漲らせて凛とした色を浮かべた少女が、上部モニターで告げていた。
続いて鳴り響くは、同様にエレキギターをメインに据えた『新世界から』をアレンジしたバリバリのハイスピード・メタルだ。赤基調の和柄セパレートレオタードに、純白のミニの着物の上着を羽織ったMAKOTO(fa0295)がスポットライトを浴びる。レオタード+巫女風味の和洋折衷衣装で長い金髪を煌かせ、美少女が声援に応えながら花道を行く。
『その実力は伊達じゃない! 一撃必殺の打撃力は参加者中NO.1! 容姿端麗実力兼備! 皆さんお馴染みの格闘家MAKOTO!!』
「今年一年応援ありがと〜〜! 来年も頑張るからよろしくね〜〜!」
<R1――レディ―ファイト!!>
『ゴングと共にMAKOTOは左構えでステップを踏む。対する因幡はボクシングスタイルで小さな身体を振りながら間合いを詰める。さあ、この身長差を如何にして埋めるのか!?』
(「ピーカブーでガードを固めるようじゃなさそうだね。さあ、どうするんだい?」)
『因幡のロー! 否、同時にMAKOTOのミドルキックが先に当たった! 次いでジャブからのワンツーロー! おおっと! 因幡堪えているのか? そのままローとミドルキックを返す! ガクンと揺れたMAKOTOに接近して散らせたワンツーを炸裂させた! 何が起きたー? 確かに先手を取ったのはMAKOTOだが、ダメージを負っているようなのも彼女だ!!』
――効いていないだって!? しかもなんて威力の蹴りなんだよッ! クッ、脚がっ!
――スピードが落ちた!
『更に追撃するかのように接近する因幡! ヘッドスリップやショルダーガードで攻撃を掻い潜る様に距離を詰め――ボディブローだー!! しかし、MAKOTOも怯まない! お返しとばかりにボディブロー! っと、膝を飛ばしたー!!』
身長差があれば膝蹴りは容易とも言える。しかし、眠兎はボクシングスタイルに合わせてタフだ。しかも格闘技に精通した者なら容易く顎を出さない。円らな赤い瞳に射抜かれ、美少女は緑の瞳に戸惑いの色を見せた。体力やパワーに自信を持っていたが、小柄な兎は更に上回っていたのだ。
『尚も猛攻を加える因幡! この小さな身体にどんな力が隠されているのか!? MAKOTOがフロントキックで押し戻す! 何て事や! 僅かに弾かれたのみで距離を保ってロー!! 艶やかな金髪を舞わせてMAKOTOが膝を着いたー!?』
<ダウン!>
――何がどうなっているんだよ? 僕がダウン?
『MAKOTO立ち上がった。と、ここでゴング!』
(「マルチタレントは体力だって必要なんだよね。悪いけど、効かないよ」)
<R2――レディ―ファイト!!>
『おっと、因幡いつものピーカブースタイルでガードを固めて一気に飛び込んだ! MAKOTOも構えを変えて間合いを詰める! 凄い! 互いにボディブローの応酬だーッ!! 退かない! 二人とも尋常じゃないタフネス振りだーッ!! 客席からもどよめきがあがっている!』
MAKOTOは夫婦手に構えを変え、フェイントやコンビネーションに対処する戦法に出ていた。しかし、狙いは互いにボディブロー。偶に膝蹴りを交えたが、眠兎は怯まなかった。ボディ分を少し減らし、フックやストレートを混ぜて勝負に出ると、ローキックも織り交ぜてゆく。
『おぉー、再び何度目かのローキックにMAKOTOが揺れたー! 因幡のレバーブロー、アッパー、次いで大振りなフックが唸るーッ!! 金髪が大きく靡き乱れ、振り切った衝撃に大きな胸が横薙ぎに揺れたー!! 脚が利かないのか、そのまま膝を着くー!!』
<ダウン!>
――やっぱりダメージの元は‥‥。
立ち上がってファイティングポーズを見せ、試合は続行された。そしてゴング。判定は眠兎に軍配があがった。
MAKOTOも鍛えていなかった訳ではない。しかし、小柄な少女も著しい成長を遂げていたのである。
●第三試合
稲妻をイメージしたアップテンポのメタリックロックで『eclair』の旋律が掻き鳴らされてゆくと共に、黒と赤のツートンカラーに彩られたセパレートコスチュームを魅惑的な肢体に包み、ブリッツ・アスカ(fa2321)がスポットライトに浮かび上がる。コンセプトである『稲妻』を攻撃動作で
表現できるよう、グローブやブーツの一部に金色をあしらっていた。
『一度リングに上がれば誰もスパークする彼女を止められない! その鋭い蹴りは稲妻のごとく相手を消し炭とするか? 格闘アイドルタレント、ブリッツ・アスカ!』
ショートヘアのボーイッシュながら端整な風貌が花道を歩いてゆくと、早速乙女達の黄色い声援が飛んだ。上部モニターで稲妻娘がはにかんで見せる。
「前回は不完全燃焼だったんで、今回はその分までビシッと決めて、スッキリ年を越したいね」
続いて流れるは、リオのカーニバルを連想させる華美で賑やかな旋律だ。リオのカーニバルで女性ダンサーが着るような、露出度が高い派手な衣装を纏うダイナマイト・アスカ(fa0383)が、スポットライトを浴びる。
「サンバ! アミーゴ! セニョリータ!」
首元や手首足首周りの派手な装飾が華やかに舞い、頭部の派手でデカイ羽の被り物が雰囲気を増すようだ。野郎共が歓喜の雄叫びを轟かせる中、妖艶な踊りに魅惑的な腰や豊かな膨らみを激しく揺らし、褐色の少女が花道を突き進む。正にカーニバル。ダイナマイトに偽りなし!
『普段は海外で活躍中のプロレスラーが今回はキック一つで勝負! 燃え尽きることなく実力を爆発させる事ができるか!? ダイナマイト・アスカ』
観客が一斉にどよめいた。何事かと竜緒が視線を流すと、飛び込んで来たのは水着でジャグジーに入っているアスカのお色気映像だ。褐色の少女が愛らしくウインクと投げキッスを送る。
「事務所にジャグジーが有るんデス♪ 応援ヨロシクお願いしマス☆」
<R1――レディ―ファイト!!>
『さあ、この試合は色々な意味で見応えがありそうだ。アスカが間合いを詰める中‥‥待ってや、同じ名前やないか? ‥‥失礼しました。ブリッツが間合いを詰める中、アスカが構えたまま待つ。プロレスのように受けて見せるのかー? ブリッツのロー! おっと半歩前に出てダメージを殺したか? アスカもローキックを返す! おぉッ! まるでプロレスの我慢比べのようにローを打ち合う! それより合わせて揺れる胸の膨らみもダイナマイトだーっ!!』
――クッ! 稲妻は伊達じゃなさそうだな‥‥重いローを放つッ! ならッ!
『あぁーッ、アスカが体勢を崩したー! 否、違うッ! ローリングソバットやーッ!! ブリッツまともに食らったーッ! しかし、体勢を先に整えたのはブリッツだ!』
――プロレスは正拳禁止、ならパンチは苦手か?
『一気に間合いを詰めるブリッツに合わせてアスカの散らせた蹴りが繰り出されるが、怯まない。そのままジャブ、ボディブロー!! コンビネーションが唸る!!』
――動きは速いがカスだな。そこッ、隙だらけだぞ!
『おっと、そこで褐色の脚が大きく弧を描いたー! これは、延髄蹴りだー!! しかし、浅いのか? ブリッツは倒れない!! ここでゴング!! 両者コーナーに戻ってゆく』
――プロレスラーの技はタイミングが難しいな。でも、俺だって特訓して来たんだ!
ブリッツの脳裏にツインテールの愛らしい『美少女』が浮かぶ。
「入場パフォーマンスで少し踊るから特訓するんだよね? 大晦日だし、やっぱり入場も少しは」
「俺は踊らねぇよ! じゃなくて‥‥あずさに頼みたいのは」
「機敏に相手の攻撃をかわす特訓だよね★ 秘密特訓だからこっちは獣化でいくよ♪」
――危うく出場キャンセルしなきゃならない血の滲む特訓だったぜ‥‥。
<R2――レディ―ファイト!!>
――食らえッ! ブリッツ・ストライクッ!!
『R2はどう動くのか‥‥ブリッツが正に稲妻のようなダッシュで間合いを詰めて‥‥跳んだー! 側頭部への変形浴びせ蹴りを食らわしたー!! 否! アスカはしっかりグローブを向けて受け流したようだ。体勢を素早く立て直すブリッツ。今度はローとミドルキックを叩き込む! これも受け流したアスカが今度は跳んだー! ブリッツの胸目掛けてのレッグラリアートー!! ロープへ飛ばされたブリッツに間合いほ詰め、キックのコンビネーションにダイナマイトな胸が揺れ暴れる! そこに返すブリッツのロー!! またしても我慢比べか!?』
――苦しそうじゃないか‥‥ここでダウンを狙うぜッ!!
――クッ! 私の方がダメージを蓄積させているだと!?
一見優勢に見えたのはアスカだった。相手の攻撃を受け流してカウンターを入れる戦法はダメージになれば効果的だったろう。しかし、ブリッツの稲妻を鎮めるに至らない。蹴り合う結果となれば全てを受け流すのは不可能であり、何発かの洗礼に褐色の肌は赤く彩られた。円らな赤い瞳に映るブリッツが、左ローと見せ掛けてのグンと段差を描かせたカケ蹴りを薙ぎ放つ。脳を揺らされ、アスカが遂にマットへ沈んだ。手数の差によるダメージの蓄積が僅かに秀でた格闘センスを凌駕した瞬間である。
<ダウン!>
その後もゴングまで闘い抜いたものの、判定でブリッツが勝利を掴んだ。しかし、僅差と言えるだろう。あと少しアスカのパワーがあれば、衝撃に稲妻は掻き消されていたかもしれない。
●第四試合
祝う様な琴の音色が奏でられた。白のレオタードの上から、鮮やかな青基調の着物をアレンジしたような上着を羽織り、帯を締めたアジ・テネブラ(fa0160)がスポットライトに姿を見せる。同時に『New』の旋律は和太鼓によるアップテンポのロックへ変容した。胸元に垂らした銀の三つ編みを揺らしながら、豊満な肢体を白い龍模様の施されたお正月仕様の衣装に包み、花道を進んでゆく。
『悠々と空を行く竜は猛然と空を行く大鷲を捕らえる事が出来るか!? 前大会二位の実力者! フリーシンガー、アジ・テネブラ!!』
上部モニターで端整な風貌の少女が、円らな青い瞳を研ぎ澄ます。
「二度目の挑戦になりますね‥‥今度こそは、必ず勝利を」
声援が飛び交う中、大空をイメージした荘厳たるクラシカルロックの旋律が、アップテンポで響き渡る。スポットライトを浴びるは、緑基調の軍服をイメージさせるノースリーブ仕様の衣装に身を包む、尾鷲由香(fa1449)が『Infinity Sky』の曲に合わせて花道を歩いてゆく。
『疾風の攻撃はまさしく獲物を狙い急降下する大鷲のごとく怒濤の責めを見せる! スタントマンの尾鷲由香!』
「自分の力を信じ全力でぶつかっていくぜっ」
凛とした風貌に緑の眼光を研ぎ澄ます由香。
『この試合が決勝戦! 間も無くゴングが鳴ります!』
<R1――レディ―ファイト!!>
――蹴りを繰り出して来た所に膝裏へカウンターを入れて足を潰す!
――前回二位の実力、見せてもらうぜ!
『ゴングと共に両者が間合いを詰める! アジの我流の構えに対して、尾鷲は半身となったテコンドーのステップを刻む! そこでサイドキックが炸裂、アジが飛ばされた! 空かさず追撃する尾鷲がグローブを突き上げ、アッパー! 次いで膝が鋭い爪の如く突き刺さる。だが、ダメージは浅いようだ。ファイティングポーズで見合う両者。互いに相手の動きを窺っているのか、手数が一気に減る! アジはジャブを繰り出しながら間合いを計っているかのようだ』
――誘いに乗らない? でも飛び込むような蹴りで来られたら避けられないかもしれない。
――動きを見極められねぇ‥‥迂闊に攻められないぜ。
『再び両者が動き出す。スピードは互角! しかしリーチの差か? 尾鷲の掛け蹴りが炸裂‥‥否、アジはグローブを固めてガード! 尾鷲の中段廻し蹴りの軸足目掛けて、アジのローキック! 強烈な一撃にバランスを崩す中、ここでゴング! 中盤の様子見が仇となったか?』
(「変則的な蹴り技にカウンターを合わせようとするのは危険だよね。問題はリーチの差をどうやって埋めるかな‥‥」)
(「ついにここまで来たな‥‥やっぱ強え相手は動きが見え難いぜ」)
<R2――レディ―ファイト!!>
『さあ2Rはどう出る。一気に攻勢に出るアジがジャブを散らしながらローキックを放ってゆく中、尾鷲は脛でガードから太股裏へローキックを返す。変則的に上下を攻めるアジにガードから連撃に転じる尾鷲。しかし、アジもカウンターに警戒しているのか、簡単に大技は食らわない!』
この試合は混戦と化した。スピードもテクニックも互角。僅かに尾鷲が打たれ弱いものの、リーチの差でアジはパンチを浴びせる事が出来ない。逆に尾鷲の蹴りはカウンターを警戒したアジにクリーンヒットしない。況して大技などは互角の相手にタイミングを掴まれる始末だ。
判定の末ドロー。延長線に入ったが結果的に決着はつかなかった。
互角の技術での闘いは互いにダメージを重ねるまま終演を迎えたのである。
『何てことや!? つまり今回の大会優勝者はおらんちゅうこと!?』
思わず実況席から腰を浮かせて驚愕の色を見せる竜緒。言葉遣いも普段に戻ってしまう。
「決着はリーグ戦に持ち越しって事だな」
「そう、みたいだね。今回の試合で、まだ闘っていない強者がいるのかもしれない」
差し出された由香の手に応えるアジ。今回の決勝を闘った二人には番組から賞金が送られた。
『えー、最終的な順位は表示されている通りです』
総合8位:叢雲颯雪
総合7位:神楽
総合6位:MAKOTO
総合5位:因幡眠兎
総合4位:ダイナマイト・アスカ
総合3位:ブリッツ・アスカ
準優勝:アジ・テネブラ/尾鷲由香
優勝 :ドローにより持ち越し
『実況は葉月竜緒でお送りしました。それでは、よいお年を♪』