雪上のブラッドダンサー南北アメリカ

種類 シリーズ
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 07/26〜07/30
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●本文

●イントロダクション
 雪を覆われた世界スノエルでは二つの陣営が長きに渡る内戦の歴史を刻んでいる。
 古き伝統と規律を重んじる貴族主義のプリンシパルに対し、改革を謳うリバイズはプリンシパルの王都陥落を目標として侵攻。
 カリアッハ山脈を越えねばならない状況下を強いられたリバイズは、駐屯基地を築き、プリンシパル防衛拠点『イグルー』を落とすべく動き出すが‥‥。

●陣営の簡単な設定
【プリンシパル】任務:イグルー基地防衛。
 中世の騎士をイメージとして捉えて下さい。服装も優雅で気品が漂うものが用意します。実用性より機能美を優先する傾向。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(最大人数までOK)。
 8mの人型兵器です。防衛用として短時間使用に特化されており、ホバリング機構を持つ機動性重視の短期戦タイプ。基本外観はシャープな造形で、高貴さが漂う鎧のような感じです。装甲は薄く、燃料消耗が激しいのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(剣)、銃器(銛のようにワイヤーの付いた射出アンカー機構あり)があります。

【リバイズ】任務:イグルー基地攻撃。
 プリンシパルに反乱する形となっており、同志の集団的なイメージとして捉えて下さい。野外活動が多い事から、実用性重視の防寒着を用意します。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(1機または副座型か2機まで)。
 8mの人型兵器です。基本外観は流線型なフォルムの傘状上半身下に、武骨な腕部や脚部があります。このデザインは雪上行動の特殊性とリアルさを強調しており、雪が機体に積もらず、腕や脚を風雪から守るようなイメージとなっています。脚部は長いスキー板のようになっており、安定性を保つ為に杭上の突起が施されています。装甲は強固ですが、機動性は鈍いのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(腕部から射出する杭)、銃器があります。
・ブラッドダンサー
 リバイズの特殊部隊名です。SGの機動力不足を補う為、スキーやスノーボード(ときにはスケート)を駆って機動戦を繰り広げるエキスパート。生粋の軍人より、スカウトされた学生等の若者が多いらしいです。
 今回は氷上の為、スケートとなりますが、雪原移動が困難となる為、スキーやスノーボードと分けるのもアリです。

●tactical04
 イグルー基地侵攻経路である一つが大規模な雪崩により閉ざされたリバイズは、残った二つの経路「アイスリンク」と「クーノ」から侵攻した。
 しかし、アイスリンクはプリンシパルの苦肉の策で氷解。クーノ雪原は神の怒りの如き雪崩により、皮肉にも両陣共同での救出作業を行う結果となり、互いに生身の敵を垣間見る事となった。
 あれから数週間後、アイスリンクを進行中のプリンシパル輸送隊の情報をキャッチしたリバイズは、物資補給阻止の為にアイスリンク下流へ向かう。
 アイスリンクはプリンシパルの重要な交易路である。吹き荒ぶ吹雪は上空からの輸送を不可能としており、山岳地帯の樹木と傾斜は大型の輸送を困難にしていた。
 リバイズのSGは雪上という悪路を進行するのに、最適化されていると言えるのかもしれない。

 今回のエピソードは『3:新兵器か機体導入、破壊作戦』に相当するシナリオである。
 当初SPの予定であったが、10月まで番組枠を確保できそうな事と1ヶ月空いた事もあり、前後編に分ける予定でエピソード話数が増加となった。
 今回は当初の『4:追加兵器実装と新戦法訓練』へ繋げる為にも、シナリオ的には物資補給阻止作戦は失敗に終わるまでを描く。

●募集区分と提出資料
 このドラマは8名を二つの陣営に分けて展開します。4対4が望ましいですが、偏っても構いません。基本的に、リバイズのイグルー基地攻撃に対処するプリンシパルという知恵比べ的な展開の中で、互いに宿敵を感じてゆく物語となっています。
――――――――テンプレート――――――――
【勢力】プリンシパルかリバイズ。
【名前】役名または芸名そのままでも構いません。
【設定】どんな立場で、どんな性格のキャラクターを演じるのか。
【役割】双方のSG乗りか、リバイズのブラッドダンサーか、プリンシパルの白兵部隊、または氷上輸送艇乗員(新規キャラクター:アクターが同じで名前変えはOK。但し2役はNG)を選択。
【補足】機体名や装備、服装、得意、苦手など補足する設定がある場合に活用して下さい。
【演技】今回の主なプロットです(打ち合わせで変更OK)。台詞や行動を明記して下さい。
*舞台は第2回のアイスリンクより下流地点です。状況はアイスリンク氷解により先に進めない為、下流地点で合流となっています(アイスリンクも再び凍ってはいますが、重量があるものが踏み込むには危険という状態です)。
・起:アイスリンク下流地点で合流を待つ氷上輸送艇。樹木も多く道らしい道のない合流地点は両陣共に到達は困難である。
・承:氷上輸送艇確認。ブラッドダンサー接近。交戦が開始される。
・転:リバイズは氷上砲撃で輸送艇ごと沈めるという手段があるが、あわよくば強奪も踏まえている事も合わせ、砲撃不可能な状況に先手を打たれた事にして欲しい。
・結:リバイズのSG大破を防ぐ為、援護。結果的に輸送阻止失敗。次回へ。
――――――――――――――――――――――――
 今回のプロットは不確定の部分が多く占めています。
 先ず、新兵器か機体か決まっておらず、どちらが先に合流地点に辿り着くかも決定されていない為、盛り上がる方向で打ち合わせて下さい。
 次に次回への繋げ方ですが、仮に新型機体の場合は乗り換えて起動させるまでを描いて次回戦闘とするケースと、リバイズ撤退として次回の破壊作戦に繋げるケースが考えられます。
 また、新型機の場合、リバイズに1機位は奪われるのもアリかもしれません。
 いずれにしても新型機の場合、扱い難さは演出して下さい。

●サポート
 裏方担当。フイルムに余裕がある場合、サポートしたアクターとのシーンが流れるかもしれません。
 例)サポートしたアクターへ衣装(脚本/弁当)を渡して激励。演技指導をするなど。
 但し、初日のみですから、ニュアンスを間違えないで下さい。

●今回の参加者

 fa0065 北沢晶(21歳・♂・狼)
 fa2903 鬼道 幻妖斎(28歳・♂・亀)
 fa3293 Even(22歳・♂・狐)
 fa3936 シーヴ・ヴェステルベリ(26歳・♀・鷹)
 fa4465 ミルティア・リーエン(15歳・♀・犬)
 fa4874 長束 八尋(18歳・♂・竜)
 fa4905 森里碧(16歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

●tactical04
 武骨なシートにパサリと防寒着が放り投げられた。
 鈍い音と共にハッチが開かれると、一気に外気が粉雪と共に吹き込んで来る。
「はぁー☆ ええ空気や♪」
 ミルテ・ラクーン(ミルティア・リーエン(fa4465))は、氷上輸送艇の甲板で両腕を開き、上気した頬に恍惚の色を浮かべた。薄い布地から覗く褐色の双峰で、粉雪を蒸発する。
 彼女は熱がりなのだ。船内の暖房に耐えかね度々外に出たり、胸元を肌蹴させる行為は、クルーに馴染みの光景である。プリンシパル下士官であるミルテの存在は、悪環境任務のストレスを軽減させてもいた。
「しっかし、こんな見通し悪い所を指定するなんて‥‥何があったっちゅーねん」
 緑の瞳が映し出すのは、左右を樹木に覆われる光景だ。氷上の進路はクリアだが、いつ敵襲を受けても不思議はない。
『んんー♪ 絶景かな〜★』
 双眼鏡の視界に褐色の少女を捉え、アキラ(北沢晶(fa0065))は、のほほんとした声をあげた。執拗にミルテの豊かな胸元をズームし、雪に濡れた膨らみに歓喜の声を洩らす。そんな彼の愉しみに水を差したのは、ナシアス・フロイト(Even(fa3293))の呆れたような声だ。
「聞いていますか? 作戦の確認をしているのですよ。‥‥くしゅんッ」
「了解ですよー♪ おや、風邪ですか?」
「そんな筈は‥‥きっと誰かの噂ですよ。サラちゃんから通信が入る前に戻りましょう」
 脳裏に赤毛の美女を浮かべ、端整な風貌の青年はニッコリと微笑んで見せた――――。

「新型機は開発済なのに兵装が揃わないって! 高性能でも配備が遅れたら意味ないわ。だから軽騎兵装備中心のプリンシパルに先手を‥‥あぁんッ、苛々するわっ」
 リバイズSG『イスカリオテ』のコクピットで、サユリ・ナラシノ=サラ(森里碧(fa4905))は愛らしく頬を膨らます。明らかに不機嫌な少女に、偵察から帰還したラグナ・アルフェロフ(長束 八尋(fa4874))は苦笑気味だ。
「やれやれ‥‥本部の通信からご機嫌斜めだこと。サラ、通信は送るなよ。敵の輸送隊に傍受されたら水の泡だからな」
『わかってますッ! あっ、戻って来た! 遅いですよ、もぉっ!』
 ブラッドダンサー運搬用リフトのパイプから荒げた声が響いた後、視界にアキラ達を確認した安堵の色が洩れた。赤いスノーボードの青年と共に、白いスキーウェアに赤いバンダナの青年が、シュプールを描いて滑走して来る。
 ――親愛なるまいすぃーと、お元気ですか? 
 僕は現在、敵の補給部隊から物資を頂いちゃおう作戦を決行中です。
 あのコンテナの中がキミの作ったコーンポタージュだったらやる気も10倍なんですがー――――。

●補給物資強奪作戦
「やはり地理的要因から連結船団ね。作戦開始! ブラッドダンサー隊出動して下さい!」
 氷上輸送艇を捉えたサラの指示が飛んだ。ナシアスが目標を視認すると、ペイント弾装填済みの銃口を向ける。
「ん、鋼鉄の鎧を纏ったお嬢さんはまだいないみたいですね〜。SGばかりでなく、精神にも鎧づくめでしたけどね。先ずは僕が一番頭の目を潰します」
 銃声が寒空に響き渡った。ミルテの表情が一変する。
「敵襲やて!? いわんこっちゃない! うあぁんッ」
 続いて放たれたのはアキラの無反動砲だ。轟音と共に氷上が揺れ、たわわな胸元を弾ませる中、体勢を整える。
「うちらごと沈めるつもりなんか?」
 しかし、これはアキラの判断ミス。慌てて青年は得物を下ろし、「苦手なんですけどねー」と呟きながらライフルに持ち替えた。敵が動揺する中、アイスブルーの防寒着で風を切り、ラグナがスケート靴で氷上を滑走する。先のペイント弾によるジャミング効果で、接近を許してしまったのだ。ミルテは船内に指示を飛ばしながら、甲板に備え付けられた重火器で応戦。
「左舷へ! 味方が来るまで持ち堪えるんや!」
 甲板から銃弾をバラ撒く度に反動で褐色の肢体が弾む。氷上を削りながら、青年は華麗なダンスを舞う如く洗礼を潜り抜け、二丁拳銃を撃ち捲くって凌いだ。
「チッ、厄介だな。黙らせるか!」
 青年はブースト機構を点火させると、一気に急接近を試みた。次第に人影が迫る中、少女のトリガーが緩む。下手すれば氷上に当たってしまう。
「何する気や! 爆弾でもセットする気なんか!? なッ!?」
 ミルテの驚愕した瞳にラグナが飛び込む。彼は勢いに任せて船体を滑走したのだ。スケートの刃で鋼鉄に火花を散らせ、得物をスティレットに切り換え甲板に躍り出る。同時に少女も得物を引き抜いた。互いの切っ先が突き振るわれる中、躍動する肢体を包む衣服が突き裂かれ、褐色の柔肌が覗いてゆく。
「やるやないか‥おやっ? アンタ‥」
 零れそうな胸元を庇い、ミルテが訝しげな色を浮かべた。ブースト効果を止めた青年は、片手を突き、両脚を開いた体勢で身構え動揺の色を覗かせる。
「君‥‥何処かで?」
「将来を期待されてたアンタが、テロリストに落ちぶれるなんて! 両親が知ったら悲しむで!」
「両親、だと?」
 徐々に記憶がはっきりしてゆく。短剣を預け出て行った父‥‥。その数日後起きた市街戦‥‥。
 だが、頭痛に遮られ、完全には思い出せない。苦悶の色を見せるラグナに少女は躊躇する。
「アンタ‥‥まさか」
 甲板で対峙する人影を捉え、アキラは更に露出度を増した少女を視界に焼き付けながら呟く。
「あー、ラグナさんってああいう娘がタイプなんだ。僕も気持ちは分かり‥‥ん?」
『SG確認! イスカリオテは至近威嚇のため接近FA射撃に入ります!』
 接近する深紅の機影を捕捉し、リバイズのメンバーは瞳を研ぎ澄ませた‥‥。

●鋼鉄の棺桶が燃える刻
「もう! 人様へのプレゼントを拝借しようなんて、礼儀がなっちゃいないわね!」
 シリア・イェンネフェルト(シーヴ・ヴェステルベリ(fa3936))は、SG『スティンガー』のコクピットで美貌に不敵な色を浮かべ微笑んだ。視界の状況を捉え、呆れたような響きを洩らす。
「白兵戦? 甲板で何やってるのよ、カーゴが襲撃されてるのに。‥って、白いSG!」
 ラグナ達を確認した後、イスカリオテの砲撃を躱して敵機に瞳を研ぎ澄ました。白い機体のコクピットでサラが吼える。
「せめて後続の自走カーゴを分断できれば‥‥物資を削いで! 貴女の相手は私よ!」
 輸送艇に接近したブラッドダンサーを容易に振り解く事は敵わない。イスカリオテはスティンガーの接近を許さず砲撃を繰り返す状況だ。
「一寸! こんな図体で大砲を氷上で撃たないでよ! ‥撃って来なくなった? ふーん、そっか☆」
 シリアは悪戯っぽい笑みを浮かべる。巧みな操縦で左右に旋回を繰り返し、輸送艇を盾に接近した刹那、イスカリオテの砲撃が止んだ。コクピットでサラが苦渋の色を浮かべる。
「外したら輸送艇に当たる! ラグナさんもいるのにッ」
「下手に撃てないのはコッチも同じよ! まったく、ベッドの上以外じゃ肉弾戦って苦手なのに‥‥! あなたとは今度遊んであげるわ」
 流した視線にナシアスを捉え、深紅のSGはイスカリオテに向けて速度をあげた。
「接近戦!? 速いッ‥‥きゃああぁッ!」
 急激な衝撃に、萌葱色と朱に彩られたパイロットスーツの肢体が弾む。スティンガーが肉迫と共に剣先で機体を貫いたのだ。最大出力ホバーの突撃で、二機は滑るように岸へ突っ込む。青白い光を迸らせる巨大な剣が眼下のコクピットを貫く中、サラは戦慄と共に微笑んだ。
「残念、そこは副座‥‥串刺しになりたい訳ね?」
 イスカリオテの腕部が目前の機体を捉える。次いで鈍い衝撃と共に射出杭が放たれ、白と深紅のSGは完全に固定された。
『おやおや、無茶をする』
 通信に割り込み半ば本心から忠告するナシアスの声を聞きながら、シリアはキーを叩き込んでゆく。幾つもの数字が表示され、電子音が鳴る中、赤毛の美女がシートごと姿を覗かせる。
「激しいプレイしてくれるじゃない。大盤振る舞いよ! 次は新しい子に乗ってきてあげるから楽しみにしてなさい!」
 ウインクと共に投げキッス☆ 刹那、シリアは脱出機構で宙へ射出された。サラの脳裏にアイスリンクでメルヘン少女が取った行動が過ぎる。
「これって‥‥自爆? 駄目ッ、振り解けないッ」
 状況はブラッドダンサーも確認した。甲板から足掻く機体を捉え、ラグナが戦慄の色を浮かべる。
「サラ!? このままじゃイスカリオテが! ‥‥君には今度聞かせて貰う!」
 ひらりと輸送艇から飛び降り、絶妙なタイミングでブーストを唸らせ機体へ向けて滑走した。
 状況は一刻を争う。アキラとナシアスの得物が腕部と刀身に洗礼を浴びせ、破壊に因る引き離しに努める中、駆けつけたラグナの二挺拳銃が唸る。
「まだだ‥‥まだッ」
 跳弾がブラッドダンサー達の肉を抉り、鮮血を飛ばす中、自爆のカウントが時を刻む。
 ――各自急速離脱! サラ、そのまま撃てッ!!
 少女は躊躇せずにトリガーを絞った。ショック吸収機構を下ろさず放たれた咆哮に、イスカリオテが吹っ飛ぶ。同時に深紅のSGは爆炎に包まれ、折れた巨剣が更にコクピットを抉り込んだ。
「ああぁぁぁッ!!」
 サラの悲鳴が響き渡る中、炎に包まれ飛び散った破片がカーゴーを襲い、彼方此方で爆炎が描かれてゆく。刹那、氷上に罅が走った。
 辛くも対岸に逃れた輸送艇でミルテが戦慄の色を浮かべる。
(「これが前線流なんかな?」)