雪上のブラッドダンサー南北アメリカ

種類 シリーズ
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 09/24〜09/28
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●本文

●tactical04 白煙に巻かれて〜全長版〜
 アキラの放った煙幕弾により、リバイズは戦線離脱する事が出来た。満身創痍でブラッドダンサー達を乗せて歩く機体の足取りは一層重い。
「目的は達成できませんでしたがホラ、よく言うじゃないですか。逃げるが勝ちって」
「アキラさんの言う通りです。‥‥この荒れようでは追撃は難しいですし、これ以上イスカリオテが動かなくなったら、サラちゃんを安全に運べません。SGは相討ち‥でも戦局的にはこちらの方が被害は大、ですね。敵に新型が渡ったかもしれません」
 カーゴ内から輸送リストを入手したナシアスが顎に手を運んだ。ラグナは苦虫を噛んだような表情を浮かべる。
「自分が巧く立ち回っていれば‥‥」
「‥‥皆、無事だったんですから良かったじゃないですか。引換は予備の部品・兵装の破壊‥‥。いいえ、後々響かせてあげる」
 微笑むものの、サラは複雑な色を浮かべていた――――。

 ――氷上輸送艇。
「注文の荷物、確かに無事に届けたで。‥‥確かに届けたで?」
 改めてリストを眺め、ミルテはソッポを向いて頬を掻く。カーゴ破壊及び一部強奪された事実に、頭の上で汗マークが浮かぶ。シリアは少女の声が届いていないのか顔を上げたまま返事もしない。
「新機体、だっけ? あの子(スティンガー)みたいに素直な子だといいんだけど。見るからにじゃじゃ馬って感じじゃない、これ‥‥」
 眠りから目覚めようとする機体のフォルムは、あらゆる部分が大きく膨らんでおり、重装鎧を纏った騎士を連想させた‥‥。

●陣営の簡単な設定
【プリンシパル】任務:イグルー基地防衛。
 中世の騎士をイメージとして捉えて下さい。服装も優雅で気品が漂うものが用意します。実用性より機能美を優先する傾向。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(最大人数までOK)。
 8mの人型兵器です。防衛用として短時間使用に特化されており、ホバリング機構を持つ機動性重視の短期戦タイプ。基本外観はシャープな造形で、高貴さが漂う鎧のような感じです。装甲は薄く、燃料消耗が激しいのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(剣)、銃器(銛のようにワイヤーの付いた射出アンカー機構あり)があります。

【リバイズ】任務:イグルー基地攻撃。
 プリンシパルに反乱する形となっており、同志の集団的なイメージとして捉えて下さい。野外活動が多い事から、実用性重視の防寒着を用意します。
◆配備人型兵器SG=SteelGrave(1機または副座型か2機まで)。
 8mの人型兵器です。基本外観は流線型なフォルムの傘状上半身下に、武骨な腕部や脚部があります。このデザインは雪上行動の特殊性とリアルさを強調しており、雪が機体に積もらず、腕や脚を風雪から守るようなイメージとなっています。脚部は長いスキー板のようになっており、安定性を保つ為に杭上の突起が施されています。装甲は強固ですが、機動性は鈍いのが弱点。基本装備として格闘戦用武器(腕部から射出する杭)、銃器があります。
・ブラッドダンサー
 リバイズの特殊部隊名です。SGの機動力不足を補う為、スキーやスノーボード(ときにはスケート)を駆って機動戦を繰り広げるエキスパート。生粋の軍人より、スカウトされた学生等の若者が多いらしいです。

●tactical05
 アイスリンク下流での攻防は双方のSG大破という結果に到った。しかし、プリンシパルは機体を失ったとはいえ、新型は無事確保。対するリバイズは一部物資の強奪は成功したものの、SGの損傷は激しい。
 プリンシパルに新型が実戦配備されるのは時間の問題。限られた戦備と損傷したSGの有効活用に賭けるしかなかった。

 今回のエピソードは『3:新兵器か機体導入、破壊作戦』に相当する後編のシナリオ。
 破壊作戦は失敗しつつも、不慣れな新型SGから攻略法を見つけ、次回の『4:追加兵器実装と新戦法訓練』に繋ぐ必要がある。
 尚、アクターの今後のスケジュール次第だが、次回最終回SPも考慮しているらしい。前半を新型機の模擬戦と新戦法訓練に当てて終局まで描くケースと、回想で模擬戦や訓練を描いて一気にクライマックス突入のケースを想定中。

●募集区分と提出資料
 このドラマは8名を二つの陣営に分けて展開します。4対4が望ましいですが、偏っても構いません。基本的に、リバイズのイグルー基地攻撃に対処するプリンシパルという知恵比べ的な展開の中で、互いに宿敵を感じてゆく物語となっています。
――――――――テンプレート――――――――
【勢力】プリンシパルかリバイズ。
【名前】役名または芸名そのままでも構いません。
【設定】どんな立場で、どんな性格のキャラクターを演じるのか。
【役割】双方のSG乗りか、リバイズのブラッドダンサーか、プリンシパルの白兵部隊、または氷上輸送艇乗員(2役はNG)を選択。
【補足】機体名や装備、服装、得意、苦手など補足する設定がある場合に活用して下さい。
【演技】今回の主なプロットです(打ち合わせで変更OK)。台詞や行動を明記して下さい。
*舞台はアイスリンク下流地点氷上輸送艇。
・起:応急修理を済ませ、再度侵攻するリバイズ。
・承:ブラッドダンサーが船内に侵入。格納庫を見つけるものの新型は起動。これ以上、物資を奪われる訳にはいかない為、乗員退避後爆破。
・転:脱出したブラッドダンサーと不慣れながらも戦闘する新型。
・結:何か打開策を見出しつつもリバイズ戦線離脱。次回へ。
――――――――――――――――――――――――
 前回の展開を元に、今回は『リバイズ撤退として破壊作戦に繋げ、乗り換えたプリンシパル新型との戦闘により、再び撤退』となります。
 課題としては、破壊作戦失敗、不慣れな新型から性能特性を見極め対抗手段を見出す必要があります。つまり、新型にはリバイズのSGとブラッドダンサーの新戦法で攻略できるような欠点を設定しておく必要があるでしょう。
 尚、氷上輸送艇は修理も必要な事からアイスリンク下流に停泊中です。再度の襲撃を考慮し、再航行できるまで護衛対象となっています。流石に新型届けて終わりというのは無理がある為、新規キャラクターとして、メカニック主任が乗り込んでいたとするのもOKです。彼or彼女の台詞で、扱い難さとパイロットが不慣れな部分を演出するのもアリ。
 今回は前回と展開が近い為、ブラッドダンサーチームは唯一のSGパイロットを護衛しながら輸送艇侵入、あわよくば新型といかなくとも機体強奪を目論むという展開も可能かもしれません。

●サポート
 裏方担当。フイルムに余裕がある場合、サポートしたアクターとのシーンが流れるかもしれません。
 例)サポートしたアクターへ衣装(脚本/弁当)を渡して激励。演技指導をするなど。
 但し、初日のみですから、ニュアンスを間違えないで下さい。

●今回の参加者

 fa0065 北沢晶(21歳・♂・狼)
 fa0854 永瀬真理(27歳・♀・鴉)
 fa3936 シーヴ・ヴェステルベリ(26歳・♀・鷹)
 fa4465 ミルティア・リーエン(15歳・♀・犬)
 fa4905 森里碧(16歳・♀・一角獣)
 fa5602 樋口 愛(26歳・♂・竜)

●リプレイ本文

●tactical05
 ――満身創痍のSG『イスカリオテ』は、機体を軋ませながら吹き荒む雪上を突き進んでいた。
 サラ=サユリ・ナラシノ(森里碧(fa4905))が小刻みに震えながら、風穴から吹き込む冷気を堪えて操縦する中、ひび割れた視界に駐屯基地を捉える。同時に確認したのは中型輸送車だ。
「‥‥中型?」
 サラが訝しげな色を浮かべた刹那、黒灰色スーツ姿のシン・マツド(樋口 愛(fa5602))が駆け付ける。
「盛大な歓迎を受けたようだな。おまちどう‥‥尤も俺が持って来れたのは長尺マシンガンだけだ」
「武器だけですって? 人手が割かれたままなのに‥‥」
「仕方ないだろ。機動性と装甲強化、遠近両対応武器搭載なんて無茶、どれだけの動力源を積めというんだ?」
 頬を愛らしく膨らます少女に、シンは太い腕を組んで呆れた。サラはSGに振り返る。
「いいわ! イスカリオテを緊急補修したら、その物干し竿担いで奴等に見舞ってあげる」

●ブラッドダンサー潜入作戦
「まさか相手も、こんなに早く再戦を挑まれるとは思ってないでしょうかねー」
 双眼鏡で氷上輸送艇を偵察しながら、呑気そうにアキラ(北沢晶(fa0065))が微笑む。視界に映るのは修理の火花を散らす人影だ。刹那、歓喜の声をあげた赤いバンダナの青年にシンが視線を流す。
「どうかしたのか?」
「いえ、サービス旺盛な娘っていいですねー」
 視界に捉えたのはタンクトップ姿のミルテ・ラクーン(ミルティア・リーエン(fa4465))だ。少女は魅惑的な褐色の肌を覗かせ、船体修理に努めている。傍に歩み寄るナーダ・エテルノ(永瀬真理(fa0854))が上着を差し出し恰好を注意しているようだ。
「潜入時に口説かないでくれよ」
「ご心配なくー。それより、負傷が転向理由と聞きましたがー」
「ま、BDにはロートルでも強奪は得意技だ。奇抜な動きは無理だが、敵の女に見惚れる若造に任せられんからな」
 高所から眺める胸の谷間に釘付けのアキラに視線を流し、男はサブマシンガンにサイレンサーを装着させながら不敵な笑みを浮かべた。

 ――親愛なるマイスイート、お元気ですか?
 敵の輸送阻止は失敗してしまい、雪原の盗賊再びです。
 ラグナさんとナシアスさんは跳弾による負傷が思ったより酷く、元BDのシンさんと作戦を行う事になりました。お目当ての物にキミが乗っていたら、僕の全てを掛けて攫う所なんですがー‥‥。

 ――アイスリンク下流地点氷上輸送艇内。
「アンカーを増設する事で、今までの機体と比べて緊急時の機動力がアップや。本来なら姿勢制御バーニアも付いてたんやけど、先の襲撃で吹っ飛んでもうた。そん代わり、じゃじゃ馬なんは当社比5割増しや」
 ミルテの解説を聞きながら、シリア・イェンネフェルト(シーヴ・ヴェステルベリ(fa3936))は未塗装のSGを見上げながら腕を組む。地金に輝く機体は、肩回りや胸部に前腕、スカートアーマーの装甲が大きく膨らんでおり、重装鎧騎士を連想させた。
「じゃじゃ馬どころか暴れ馬じゃないの‥‥」
「‥‥あと、運用試験もまだ済んでへんのや」
 ポリポリと頬を掻いて苦笑する下士官の少女に、シリアは溜息を洩らした。
「‥‥背に腹は変えられないわね」

 暫しの刻が経過した後、輸送艇内に潜入を果たしたブラッドダンサーはカーゴを切り離すべく動いていた。既にカーゴへ推進装置を仕掛けており、慣性に任せて滑走させれば済む。氷上ならではの強奪戦法だ。
「後は嬢ちゃんの回収次第だな。これが新型か。‥‥こんな上物、奴等に勿体無いな」
『だ、誰ですか? 勝手に入って良い所では‥‥あっ』
 ナーダが格納庫に姿を見せた。アキラが一気に肉迫すると、技術者はドア付近の警報スイッチを身体ごと体当たりして押し込んだ。けたたましい音が鳴り響く中、怯える眼差しの眼鏡に映るアキラが硬直する。
「無体な真似をするつもりはないのですがー、せめて名前を聞いてもいいですか?」
「は? ナ、ナーダ‥ですけど‥‥」
「アキラ! 脱出するぞ!」
 二人が格納庫から離脱しようとする中、駆け込んで来たのはミルテとシリアだ。
「敵が来てるやて!」
「新型を奪いに来たの!?」
 女達の声に思わずアキラが振り返るが、シンに急かされ逃げに転じる。男が銃弾を放つ中、応戦するシリアが機体へ向かう。同時にミルテがナーダに状況を聞き、端末を確認する。
「潜入してたんは二人だけなんやな?」
 技術者の眼鏡に映る少女が、何故か安堵の色を浮かべたように見えた。
「あかん! カーゴが切り離されてるわ! 他も奪取される前に自爆装置を使こて脱出や! 小型艇に物資を積めるだけ積むで。ナーダ、何しとんのや、急ぐで! ああ、カーゴがぁ‥‥」
 滑走してゆくカーゴを捉え、涙を浮かべるミルテ。技術者はシリアの出撃まで調整を続けていた。
「待って、あと少し‥‥バーニアが使えない分機体バランスを微調整しないと‥‥。まだ、アンカーの最終チェックが‥‥ッ。行けます、どうぞ!」
「こうなったら、ややこしい事してくれたお礼はきっちりしてあげるわ!」

 何かが打ち込まれた音にブラッドダンサーが振り返ると、アンカーに引っ張られた鎧騎士が姿を見せた。
「ち! 若いの! 逃げ回って逆に相手を釘付けにしろ! 援護射撃は俺が持つ!」
 シンはアキラに撹乱を指示すると氷上に飛び込み、身体を倒しながら滑り込んで銃口を向ける。バンダナの青年は半ば苦笑気味だ。
「こういうのは向いてないんですが、まあ成り行きというかー仕方ないですねー」
 スノーボードで氷を削りながら巧みにシュプールを描き、煙幕弾を投げつけてゆく中、サブマシンガンが銃声を奏でる。白煙に霞む視界で標的に火花が迸り、シンが舌打つ。
「兵装が欠けて完全装備外の筈なのに、大したものだ」

●プリンシパルの重騎士
「カーゴ離脱確認、鮮やかなコソ泥だわ‥‥。後で拾わな‥‥!! プリンシパルの新型?」
 エスカリオテを待機させていたサラが敵機を捉えた。畏怖すら感じさせる装甲に覆われた新型は、次々と肥大した装甲からアンカーを射出して二人を追撃する。
「何‥あの装甲‥‥アンカーですって? 装備足りない筈じゃなかったの? FA射撃しながら接近、近接戦闘に入ります! ‥‥苦手だけどやるしかない!」
 応急修理を済ませた痛々しい機体がゆっくりと前進しながら、装備したばかりの得物を構えた。敵機の反応にシリアが視線を流す。
「白いやつ、まだ果ててなかったの?」
 エスカリオテの銃弾が唸ったと同時、重騎士はアンカーを数メートル先の岩壁に射出すると、一気に引かれる事で洗礼を免れた。氷上を滑走する機体は制御が追い着かず、そのまま岩壁に激突する。
「いったぁい‥‥そもそもシートも私のお尻には小さすぎるのよね。って、ふざける前に立て直さないと!」
 再びアンカーを次々と射出し、重騎士の制動に努めた。傷跡の残るSGの銃弾を左右に躱す度、急激な挙動にシリアの赤毛と胸元が激しく揺れる。
「んあぁんッ、こらッ大人しくしなさいッ! 視界がブレて狙いが‥‥」
 楔の洗礼を叩き込みたいが、機体制御が間に合わない。そんな戦況はナーダ達をヤキモキさせる。
「やっぱりパーツが足りないから重量バランスが‥‥ああ、見えなくなる!?」
 夢中になった眼鏡娘がフラフラと戦場に近付くと、褐色の手が肩を掴んだ。流した視線に苦笑気味のミルテが映る。
「なにしてんのや? これ以上戦場に近付いたらアカンやろ」
「で、でもッ‥‥。ああッ、そんな使い方だと負荷がかかりすぎちゃう!」
 再び戦況を捉え、ナーダは苛立ちの声をあげた。アンカーを誤って樹木に打ち込んでしまった重騎士は、大木が砕けると共に制御を失い転倒する。思わずシリアの愚痴が通信機から飛び込んだ。
『ちょっと、何よこのじゃじゃ馬! セッティングの癖が強すぎるんじゃないの?』
「あー、もう、機体に文句言ったって、自分だってじゃじゃ馬じゃないですか!!」
『‥‥なんですって? 男に抱かれた事もないメカフェチ女が言ってくれるじゃない』
「なっ!? だ、だ‥‥」
「えーから、さっさとなんとかしぃや。トークショーはその後や」
 真っ赤に染まり戦慄くナーダから通信機を奪い、呆れたような響きでミルテが伝えた。シリアは直ちに戦闘に意識を集中させる。
「いいわよ、乗りこなしてみせるわ! 味方マーカーセット‥‥」

 不完全な挙動はサラの目にも明らかだ。
「あの新型‥‥アンカーに頼らなければエスカリオテより鈍いんじゃ‥‥。ブラッドダンサーと連携を取って制動が崩れた隙に廻り込めれば‥‥でも人数が‥‥やってみる!」
 アキラとシンの撹乱に合わせ、接近しようとした刹那、鎧騎士は両腕を広げると、機体のあらゆる箇所から幾つもの楔を解き放った。全方位に射出されたアンカーの洗礼がブラッドダンサーに鮮血を散らせ、エスカリオテに再び傷を増やす。戦慄の色を浮かべたのはサラだ。
「動力は無事? アキラさんとシンさんは?」
 少女の瞳が安堵を描く。無傷とはいかないものの、掠り傷程度だ。全てのアンカーを放ったらしく、追撃は来ない。洗礼が衝撃と共に引き抜かれる中、エスカリオテは撤退を余儀なくされた。
「ブラッドダンサー収容、カーゴの回収に向かいます」
 戦線を離脱してゆく敵機を捉え、シリアが安堵を色と共に微笑む。
「さぁて、暴れ馬ちゃん‥‥次までには素直になってもらうわよ?」