GUN&ROAD T8南北アメリカ
種類 |
シリーズEX
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
10.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/25〜07/29
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前回のリプレイを見る
●本文
●TVCM
――荒野の中、追う者と追われる者あり。
少女達は何かを追って幌馬車駆って町から町へと旅烏。
そんな少女達を追う者の、目的とは如何なるものか。
辿り着いた先で起こる騒動に鳴り響くは銃声。
正義の化身か悪の破壊神か。
今日も硝煙の匂いを漂わせ、少女達を乗せた幌馬車は行く――――。
圧倒的数の暴力でゴールディ達の幌馬車は野盗集団『鉄の棺』に襲撃を受けた。
銃弾は底を尽き、アジトへと連行される少女達。そこに待ち受けていたのはMr.エンブレム。
善良な紳士の仮面を脱いだ男に、復讐すべき相手と認識したリリィが挑むが敢え無く返り討ちに合い、ゴールディとエイミーも成す術がない状態に陥る。レオノアは言う。
――邪魔が入る前に訊きたい事があるのです。
彼がこれまで少女達と同じ町にいたのは偶然か、それとも必然だったのか?
そんな中、一度はエイミーを助け、引き止めたヴィシャスが追跡の末、アジトを突き止めた。
――ヴィシャス、私が捕えられたら助けに来てくれるか?
青年が彼女を助けようと挑むは、約束故か、それとも‥‥。
「もし、俺が死んだら‥‥祈りの一つでも捧げてくれるかい? シスター‥‥」
孤高の救出劇に乗り出すヴィシャス。
そして、謎のジャパニーズガール――霞(カスミ)の不可解な行動にある意味とは?
新西部劇『GUN&ROAD』絶賛放送中!!
今日も何処かで少女達の奏でる銃声が響き渡る――――。
「さて、CM流れちゃったけど、集まってくれるかしらね‥‥」
テーブルに肘を突き、額を押えながらサミィ・ライナー監督が呟いた。前回は確定要素が不明確だった為、異例の前後編としたのである。しかし、度重なるアクター交代に不安は津波の如く少女を襲っていた。
「あの‥‥もし集まらなかったらどうするのですか?」
「他の話にするわ! 幸いCMは宣伝で次回予告じゃないもの。前編の後に後編が来るなんて法則はないのよ。最悪、ビデオにして後編はお買い上げ下さいってのも手よね‥‥視聴者のクレームを覚悟すればだけど」
肩を竦めて両手を挙げると、おどけて見せるサミィ。強気に振る舞ってはいるが、心境は穏やかではないであろう。とくに――――。
「カスミが心配ね。展開上あの立ち位置なら仕方ないけど‥‥」
●trigger8――野望と誓い
・鉄の棺アジト初期設定(配役の相談による修正可能)。
岩山の洞窟を住処としたもの。元は鉱山だったらしく、彼方此方に穴が伸びており、内部は広い。鉱石が採掘できなくなり閉鎖した所を利用したようだ。レオノアの援助により、最低限の生活は不自由なく出来るよう手が加えられている。
前編でボス――アレンの個室がある意外は未確認だが、奪った貴金属保管室や、食料保管庫、何かと利用される共同個室はあるだろう。
仮設定:洞窟は大きな川に繋がっており、帆船(えぇ!?)がある。これは万が一襲撃を受けた際に逃亡用に用意されたものである。川は海に繋がって流れているらしい。
・今回の課題。
1:ゴールディ一行の状況。
牢獄に囚われているのか? アレンの個室でレオノアによる尋問(拷問)が行われているのか?
2:レオノアが訊きたい事とは何か?
エルドラドの件か? その場合、ゴールディ達との辻褄合わせ必須。
3:ヴィシャスの鉄の棺アジト襲撃。
どのような展開とするのか? アレンやリーン、そしてカスミとの辻褄合わせ必須。
とくに、アレンはどうなるのか? リーンはどうするのか? 今回の結末まで決めて置く事。
4:カスミとレオノアの設定と展開。
今回発展させる場合、どのような展開とするのか辻褄合わせ必須。
5:ゴールディ一行の引き。
今まで使っていた馬車はもう使えないので新たな移動手段が必要となる。
(a)野盗の幌馬車を奪って旅を続ける。
(b)新展開! 未知なる大海へ! 帆船を奪って旅を続ける。
(c)徒歩で荒野をさまよう。
(d)レオノアに囚われながらエルドラド探索の旅へ。
以上を起承転結に分け、自分の立ち位置を配置して演技して下さい。
「は、帆船ですか!? 荒野ですよ?」
「なに言ってるのよ? ドラマに意外性は付き物じゃない。陸は海と繋がっているものなのよ♪ パイレーツ物も流行っているそうじゃない? それに選択肢の一つよ?」
「‥‥エルドラドってそんな遠い場所なんですか(その内に宇宙とか言わないでしょうね)」
●演じる為に必要な書類項目
配役、役名、服装、設定、容姿、武器は前回と変わり無ければ記さなくても構いません。または変更部分だけでもOKです。
起:(行動や演出、台詞など)
承:(同上)
転:(同上)
結:(同上)
●サポート関連
衣装作成/脚本協力/大道具・小道具など前準備関連。
名前とどんな仕事をしたか載る予定です。
●何らかの事情で優先期間を越えてアクター枠が空いた場合。
新規、または復帰(?)キャラ募集します。ハングリー精神歓迎です。
この場合、物語は続編ではなく1話完結モノ(番外編夢オチとか)を演じて頂きます(勿論、代役を務めるなら続編で構いません(演技の見せ所ですね)。テーマは『夏』(えぇっ)。基本的に西部劇風のシチュエーションさえあれば、どんな脚本にして頂いても構いません。
●リプレイ本文
●trigger8
――月明かりに浮かんだ淡い桜の花びらが風を巻いて踊った。
闇に響き渡るは幾つもの鈍い打撃音と男の短い呻き声。僅かな間を置いて崩れる音が洩れる。
盛り上がった着物の合わせ目に十手をしまい、赤い番傘をたおやかな肩へ運ぶと、毛先を組紐で結わえただけの長い黒髪を揺らして、和服美女が円らな青い眼差しを向け微笑んだ。
★カスミ(霞):金田まゆら(fa3464)
続けて月明かりの照らす岩場を、風の如く黒いスーツの後ろ姿が駆け抜ける様を一瞬だけ映す。
★ヴィシャス・バイパー:小比類巻レイジ(fa1107)
二挺のリボルバーを引き抜き、目深に被った洒落た帽子から覗く端整な顔の前で腕をクロスさせると、小さな靴音を闇夜に響かせ、見張りが崩れている洞窟へと跳び込んで行く。
揺れる視界が松明に照らされる『鉄の棺アジト』を突き進む中、曲がり角から野盗の男が姿を見せた。侵入者に気付き腰の銃へ手を伸ばすものの、左右に大きく軌道を揺らしながら疾走するヴィシャスを捉えられない。研ぎ澄まされた赤い瞳が悪魔の如く妖しい色を浮かべ、肉迫と同時、野盗の胸と額に冷たい鉄の塊を押し付けた。
「懺悔は済んだか?」
まっ――。二つの銃口は男の命乞いを遮るように死の洗礼を放ち、硝煙と共に鮮血と銃声が弾けた。
洞窟内に反響すると、幾つもの靴音と野盗の怒声が溢れて来る。青年は瞳を閉じて耳を澄ます。
靴音が響く最も近い方向に細いシルエットを忍ばせ、赤い瞳を見開くと、岩陰から姿を見せて銃声を響かせてゆく。硝煙に煙るアジト内で幾つもの人影が鮮血を散らせて崩れた。
『向こうから聞えたぞ!』
再び近付く靴音。今度は背後か? ヴィシャスは身を屈めて片膝を着くと、肩越しに赤い視線を疾らせ、背中を向けたまま銃口を流す。再び鳴り響く銃声と断末魔。視界が煙る中、一気に接近して確実に洗礼を叩き込んでゆく。
「あの世に逝く準備はOK?」
ここは閉鎖空間に近い敵のアジト内だ。持久戦となれば不利である。自らの命を顧みない、鬼神の様な戦い振りに、野盗連中は悪魔に襲われたと慄いた事だろう――――。
●GUN&ROAD――第一部完結編
――刻はヴィシャス強襲前に遡る。
床に傷だらけの白い背中が崩れた。少し遅れて宙を舞った長い銀髪が地を泳ぐ。
「エイミー!! なにするのよ! 知らないって言ってるじゃない!」
悲痛な声で仲間を按じた後、愛らしい風貌に怒りを露に、半裸の金髪娘がツインテールを揺らす。
★ゴールディ・ゴールドウィン:碧野 風華(fa1788)
少女の青い瞳に映り込むのは、嵩高いシルクハットの男だ。
★Mr.エンブレム(レオノア・エンブレム):芹沢 紋(fa1047)
「なら、ミス・ゴールディ。貴女の衣服から出て来た『コレ』は何だね?」
後ろ手に縛られた少女に不敵な笑みを近付け、小さな地図の切れ端を見せるレオノア。
「だからリネットの銃から出て来たのよ! それ以上は知らないわ!」
「なら、ミス・リネットは何処に行ったのですか? 床に転がっているシスターと同じ仲間ではありませんか?」
ゴツイ手で小さな少女の顎を掴んで、むりやり視線を交錯させる。もはや紳士の仮面は皆無だ。
「入るも出るも気にしないのが私の遣り方よ!」
レオノアはゴールディの顎から乱暴に手を払うと、苛立たしげに室内に靴音を響かせた。顎鬚を弄びながら視線を周囲に流す。修道服とフリルの施されたドレスが床に散らかっており、ゴールディの隠し持っていた小型拳銃やパーツが転がっていた。例の地図もドレスから出て来たものだ。直ぐ傍には、エイミーが倒れている。そして、下着姿で睨むツインテールの少女。
――‥‥本当に知らないのか? この小娘も痛めつけるか? いや、鞭と飴ですね。
「アレン! ドアの前にいるのでしょう? 入って来い!」
レオノアの声から僅かな間を置き、灰色の髪を少し逆立てた眼帯男がワイルドな姿を見せた。精悍な風貌はどこか不愉快な色を浮かべている。
★アレン・バクスター:壬 タクト(fa2121)
「何だ? 俺は小娘を苛める趣味になんざ手を貸さないぜ」
「フッ、野盗風情が紳士気取りかね? まぁいい。眠っているシスターを牢に運んでおけ」
アレンがエイミーを担ぎ上げる中、レオノアが穏やかな笑みをゴールディに向けた。
「な、なによ!」
「いえ、私も大人げ無かった。改めてビジネスの話をしませんか? 知っている事を包み隠さず教えて頂ければ、私の側近に致しましょう。私は後に世界を掌握する者なのです。気に入った土地を貴女にあげても良い」
「ふーん、随分と機前の良い話ね」
ゴールディは薄く微笑んで見せた――――。
「うぅ‥‥」
ランタンの灯りに褐色の娘が苦悶の色を浮かばせる。
★リリィ・ザ・タートル:クールマ・如月(fa0558)
岩壁から伸びた鎖が傷だらけの手足を拘束しており、磔状態で力なく項垂れていた。豊かな胸元や腹部に巻かれた包帯が痛々しい。呻き声と共に、太股に白い布を巻いていたしなやかな手がピタリと止まる。
「あッ、悪い! 痛かったか?」
薄汚れた帽子から覗く少女に見紛う端整な風貌をあげ、『少年』はリリィを見つめた。
★リーン・スティール:百瀬 愛理(fa1266)
『リーン』
「あ、ボス。あちゃー、またこの娘も酷いな‥‥」
聞き慣れた男の声に振り向いた少年は、抱えられた傷だらけのシスターを見て形の良い眉を顰めた。
「隣の牢に入れる。手下共がバカを起こさないよう頼んだぜ」
腰のベルトから鍵を抜いてリーンへ渡すアレン。少年は薙ぐように放り投げられた鍵を手中に収めた。
「あぁ、ちょっと前に来た奴の手にお仕置きしてやった。‥‥なぁボス。オレ、やっぱりMr.エンブレムは気に入らねぇよ!」
「あぁ、分かっている。だが、もう少し辛抱してくれ。これが済んだら、おまえにも着飾って」
「やめてくれ! 先代とボスしか知らない事だ‥‥オレは今のままで、十分、幸せだから‥‥」
「‥‥そうか」
慈しむような眼差しを向けた刹那、アジト内に銃声が響き渡った。慌てたように手下が駆けつける。
「ボス! こんなとこにいやしたか。侵入者ですぜ!」
「侵入者だと? 小娘の仲間かよ。ったく! これだから女なんかに関わると碌なことがねぇな! リーン、小娘は任せたぞ!」
「あ、あぁ」
●漆黒の悪魔と策略の真相
地面に薬莢が転がった。一挺の拳銃を口に咥えて何度目かの銃弾を込めるヴィシャスの横を、岩壁を削って火花が散る。思えば3人の少女達でさえ人数に押されたのだ。どんなに屍の山を築いたとしても、何時までも有利に進む訳がない。
「チッ! 遮蔽物の多い限られた空間ってのが救いか。死ぬには良い日だ‥‥!」
銃声が僅かに減ったタイミングで青年は岩壁から飛び出して肉迫してゆく。二挺の銃口が火を噴き、断末魔が響くと共に、放たれた洗礼がヴィシャスの肩から鮮血が散らせる。それでも怯む事なく至近距離で野盗共を葬る様は相変わらず無謀だ。しかし、これは包囲されない一つの賭けでもあった。多少の痛手は覚悟しても包囲されず、尚且つ前進できる戦術は幾らかマシであるが――――。
地面に鮮血が次々と滴り落ちた。
「フッ、頭がボゥっとして来たな。‥‥!」
薄く笑みを浮かべた青年の帽子が、銃声と共に吹き飛ぶ。続いて洞窟内に響き渡るは男の声だ。
「派手に暴れてくれたものだな。何者だ?」
「なに‥‥シスターに祈りを捧げて貰いに立ち寄っただけの男さ」
「あの小娘の男か。俺は先代から連中を預かったボスのアレン・バクスターだ。そんなに大事なのかよ?」
「‥‥もう、あの時と同じ想いはしたくない‥‥ただ、それだけだ」
「そうか。じゃあ西部式に決着をつけようじゃねぇか」
「それは有り難いね」
互いにホルスターに拳銃を収める。西部式――つまり1対1の抜き撃ちだ。
静寂の中、両手を同じ幅に広げて対峙し、研ぎ澄ました赤い瞳と緑の瞳が交錯する。ヴィシャスの頬を鮮血が伝い、細い顎で溜まると、ゆっくりと滴り落ちてゆく。一気に銃へ手を運ぶ両者。鮮血が地面で弾ける中、互いの銃声が響き渡った。
――刹那、赤いものが跳び込み、同時に銀の閃光が唸る!
遅れて靡いたのは淡色の桜と艶やかな長い黒髪だ。乾いた衝撃音の中、番傘に弾かれた弾丸と、十手で弾かれた弾丸が地面に転がる。有り得ない展開だが、B級ならではの演出だ。
「この勝負、私が引き取らせて貰うわね☆」
呆然とするヴィシャスとアレン。特に眼帯の男は割って入った新たな闖入者に精悍な風貌を崩した。そりゃそうだろう。どこに放たれた弾丸を叩き落す女がいようか。
「なッ? 女! 男の勝負に何てことしやがるッ!」
「カスミ、だったな。美味しいとこ持っていき過ぎだぜ‥‥」
美女は穏やかに微笑むと、番傘を閉じてビッと眼帯男に先端を差し向けた。
「アレン・バクスター。先代の事でお話があるのよね♪」
スとしなやかな動作で身を寄せ、何やら耳打ちするカスミ。アレンの表情が驚愕に染まる。
「な、なんだとぉ!? 優男、一時休戦だ!」
吐き捨てるようにヴィシャスに告げると、男は怒りを露に奥へと駆けてゆく。
立ち尽くす青年は何が起きたのか分からず途方に暮れているようだ。カスミがニッコリと微笑む。
「それじゃ、私は他にやる事があるから失礼するわね☆」
「何だったんだ? 敵にしたくない女だ‥‥!!」
再び響き出す靴音とヴィシャスを探す声。
『おい!』
背後から少女のような声が跳び込んだ。慌てて銃口を向けた先に、綻びの目立つ薄汚れた衣服に身を包む、愛らしい風貌の少年を捉えた。
「‥‥助けに来たんだろ? ついてきな。見つかると面倒だ」
●裏切りと脱出の狭間で
「うむ‥‥先代のボスに関して、だったな」
レオノアはアレンと共にアジトの外で出ていた。
現ボスの眼帯男が訊ねると、壮年の男は場所を変えようと提案したのだ。
月明かりの中、スーツ姿の背中にアレンが口を開く。
「あぁ、そうだ。俺は事実が知りてぇ。あの女が言った事は本当なのか!」
――先代のボスはレオノアに利用された挙句、策略によって殺されたのよ。
「(女だと?)ツマラナイ話だ。貴様がボスとして暴れられるのも、先代がいないからではないのかね?」
肩越しに顔を向けたレオノアの口元が醜く吊り上がっていた。アレンの緑色の瞳が見開き、ゴツゴツとしたシルバーリングを幾つも嵌めた指が拳を固めて戦慄く。
「本当なんだな! ボスを殺したのは貴様なんだな!」
嵩高いシルクハットの背中にホルスターから銃を抜く擦れる音が洩れた。だが、スーツ姿はピクリとも動かない。
「まったく‥‥バカは所詮バカか。小娘といい、貴様といい、うんざりさせられるよ! あぁ、その通りだ! 私が罠に嵌めて殺した! 強い者が生き残るのが西部の掟ではないかね? 貴様も権力を手に入れた! 手放すような行為に出るとは残念だよ、アレン・バクスター」
「俺は、否ッ、俺達『鉄の棺』は貴様とは違うんだよ! 抜け! レオノア! ッ!?」
一騎撃ちで勝負するつもりのアレン。銃を戻し構えた表情が次第に驚愕の色を浮かべる様を捉えたまま、レオノアの笑い声が被さる。
『‥‥もう少し利用したかったが、立候補に名乗り上げる者は少なくないのでね』
――牢が不規則に並ぶ洞窟の最深部にゴールディは囚われていた。
胸元に返されたドレスを抱き、腰を屈めて途方に暮れている。
閉じ込められてから、松明の僅かな灯りに浮かぶ仲間に呼び掛けたが返事は来なかった。時々、二人の小さな呻き声が流れたが、今の自分にはどうする事も出来ない。
「リリィ、エイミー、居心地は悪いけど暫らく休んでなさい‥‥。それにしても、さっきの銃声と侵入者って‥‥! まさかリネット!? ‥‥じゃないわよね、アジトに連れてかれる私達を見たなら、その前に助けに来るわよ。あの娘に尾行してから、なんて頭は無いわ」
――ならば、侵入者とは誰なのだろう?
リーンと呼ばれる少年に牢まで連行される間、鳴り響いていた銃声も今は聞こえない。
「やられちゃったの? どうやって脱出したものかしら‥‥!」
膝を抱えて溜息を吐いた時、駆けて来る靴音が近付いて来た。一つは軽快だが、もう一つの靴音は鈍い。
『こっちだ。おい、大丈夫か?』『気に、するな‥‥』
――この声はリーンって少年と‥‥。
「やぁ、お姫様をナイトが連れ出しに来た、ぜ‥‥」
「ヴッ、ヴィシャス・バイパー!?」
岩肌に身を預けるようにして姿を見せたのは、血を滴らせるボロボロの青年だ。荒い息を吐きながら、青褪めた顔色で微笑んで気取って見せるが、あまりにも痛々しい。「カッコつけてる場合か?」と、リーンに突っ込まれる有様だ。いや待て、ここはツインテールの少女も確認したい事がある。
「どういう事なの? 助けに来たのか敵に捕まって連行されて来たのか分からないんだけど‥‥」
ジトリとした眼差しを青年へ向けるゴールディ。答えはリーンが牢の鍵を開け出した事で察しが着いた。
「オレはエンブレムの遣り方が気に入らない。だから出してやるんだ」
「武器は?」
「そこまで手が回らないよ」
「ふっ‥‥目に見える武器を奪っただけじゃ、ゴールディ様は負けないわ。ようやく掴んだエルドラドへの手がかり‥‥石に噛付いてでも、辿り着いて見せるわよ! 3分待ってね♪」
カラン★ と小さな音を洩らして小型ナイフを足元に落とし、ドレスを裂くと幾つかの部品を取り出した。慣れた手付きで手中に収まるサイズの小型拳銃を組み上げてゆく。
「私の父も、ガンスミスだったの。ガンマニアなのは血筋ね。流石に弾は少ししかないから慎重に行くわよ! まずは全員の武器とエルドラドへの地図を取り戻さないとね!」
「うぅ‥‥アタシも、行くよ」
「バカ! まだ傷口が閉じてないんだぞ!」
覚束ない足取りで牢からリーンに付き添われて、リリィが弱々しい声を出した。当然、少年は青い瞳を不安に彩り注意を促がすが、褐色の娘は視線を落として微笑んで見せる。
「アンタが包帯巻いてくれたんだね。ありがと☆」
「あ、あぁ。礼を言われるような事は‥‥!?」
帽子を目深に被り直して照れ隠しした刹那、遠くの方で銃声が響き出した。リーンが視線を流す。
「銃声! 何が‥‥オレに出来るのはここまでだ! 巧く逃げろよな!」
肩越しに振り返り告げながら、少年は駆け出した――――。
●セッションのフィナーレ
松明の灯るアジト内を駆けてゆく中、次第に響き渡る銃声は数を増していた。
目まぐるしく揺れ動く視界が突き進むと、三人の野盗を捉えた。
「なにやってんだ! あの銃声は‥‥!?」
リーンの行く手を阻むように壁を作る男達。口元はニヤニヤと笑みを浮かべているようだ。少年は上目遣いに睨み、凄んで見せる。
「どけよ! 邪魔じゃないかよ!」
「なぁに、不審者を見つけたから始末しているとこさ。ガキが行っても仕方ねぇよ」
『アレンの始末は外に任せる。不審な女がアジト内にいる筈だ! 全ての通路を探せ』
微かに流れて来た声はレオノアのものだ。リーンは直感した。
「ボスの始末って‥‥オマエら!」
舌打ちと共に豪腕を繰り出す男をスルリと躱し、風の如く刃を煌かせる。鮮血を腕から散らせ、悲鳴をあげる中、二人の男がリーンに掴み掛かった。確かに子供であるからには腕力には劣る。だが、ナイフを得物として扱う少年の敏捷性は侮れなかった。身を捻って体捌きで妨害を潜り抜けると同時にナイフの洗礼を叩き込み、或る者は太股を、また或る者は手から鮮血を流して悶える。
「ハッ、何処狙ってやがる! ‥‥っ!? うあぁッ!!」
擦り抜けた余裕に後方を振り向いた時である。前方から歩いて来た屈強な男の薙ぎ振るった豪腕が炸裂し、リーンの華奢な身体が派手に吹っ飛んだ。激しい衝撃に背中を強かに打ち、呻き声を洩らす男達の傍へ戻された。
「つぅ‥‥油断したぜ‥‥ッ!」
半身を起こした少年は優麗に揺れるロングヘアに青い瞳を見開いた。慌てて、自分の髪を左右から掴み、焦りの色を浮かべる中、宙を舞っていた薄汚れた帽子が、ポトリと地面に小さな音をたてた。
「ちっ、しまったっ! ‥‥うあっ!」
乱暴に長髪を引っ張られ、悲痛な声をあげるリーン。松明の薄明かりに浮かび上がる風貌は、少女のものだ。致命傷を外したのが仇となったか、屈強な影が重なってゆく。
『おい、おまえ女だったのかよ』
『なんか乳臭えと思ったんだよな』
『こいつ、怯えてやがるぜ。男か女か剥いちまえば分かるってもんだ』
「げ、ゲス野郎! 仲間じゃないのかよ! い、いやだッ、触るなぁッ!」
手足の自由を奪われたリーンが足掻くが、腰を振る程度しか抵抗の動きを見せられない。逆に悲鳴をあげて涙を散らす姿が、荒くれ共の欲情に拍車を掛けた。元々上質ではない布地が耳障りな音を響かせてゆく。
(「くそッ! 好きになんかさせるもんか!」)
瞳を固く閉じて悔し涙を流しながら、ゆっくりと舌を歯の間に挟んだ――――その時。
『うっ!』『ぐあっ!』『かはッ!』『ひきゃッ!』
断末魔と共に、少女の頬に生暖かい液体が降り掛かった。ゆっくりと瞳を開くリーンの視界に、鮮血がボタボタと滴り落ちる。
『女の子は乱暴に扱っちゃ駄目よ? って、もう聞えないかな?』
穏やかな女の声に、解放された少女が半身を起こした。瞳に映るは淡いピンクに彩られた着物美女の微笑みだ。リーンと視線が合い、カスミは腰を落として頬に付いた血をハンカチで拭う。
「ごめんなさいね。急いでたから加減が出来なかったのよ。でも間に合ったみたいね☆」
周囲を擬視するまでもなく、ジャパニーズガールの携える赤い番傘からはドロリとしたものが滴っており、彼方此方で血溜まりが形成されていた。
「あ、ありがとう‥‥助かった。あんただろ? レオノアが言ってた女って‥‥探してるぜ」
裂けた衣服の胸元を庇いつつ、リーンは立ち上がった。和服娘は顎に指を当てて、おっとりと応える。
「ふーん、ご丁寧に彼、確認しちゃったのか。ねぇ、ゴールディ達の居場所を知らない?」
「この奥だ! 男と一緒にここを通って来る筈さ!」
――その頃、アジトの外では鳴り止まぬ銃声が響き渡っていた。
岩陰を巧みに障壁とし、アレンが居場所を移しながら裏切り者達の腕や足を撃ち抜いてゆく。
「テメエの部下の躾もなってねぇとは、俺もまだまだだな。‥‥お前ら、誰に逆らったのか‥‥たっぷり教えてやるぜ!」
そう、レオノアが金をちらつかせて野盗共を手中に収めていたのだ。ゴールディ達を捕らえれば野盗団など、どうでもいい。計算高い彼は万が一の為に懐柔していた訳である。
「何をしているのだ! さっさと殺してしまえ! 仕留めた者に倍額を払ってやるぞ!」
身の安全を確保した後に行動したレオノアだったが、完璧と思えた計算にズレが生じていた。それはアレンの腕の良さだ。流石はボスと言った所か。簡単に眠ってはくれない。
だが、消耗戦となれば一人では限界がある。まして――――。
「ひいぃぃっ! ボスッ、命だけはーっ!」
「腰抜けが! さっさと俺の前から消えやがれ!」
仲間思いの良いリーダーかもしれないが、アレンは甘かった。一人一人動けなくして銃を奪えば持ち堪えられるものの、命乞いをそのままに受け入れていたのである。
「くそッ、弾切れも近いな。ゲスの言葉にテンションあげやがって‥‥ッ!」
月明かりを遮って人影が飛び込んで来た。咄嗟に銃を向けて引鉄を絞った刹那、鈍い音が闇に響く。弾切れだ。ギラギラと欲望に染まった眼光で野盗が乾いた銃声を響かせた。呻き声と共に鮮血が散る。
「ボスッ!」
鮮血は手に刺さったナイフに因るもの。駆けつけたのは長い髪を舞い躍らせるリーンだ。
「リーン? おまえ、髪‥‥それにその恰好は‥‥」
「もうバレちまったよ。こんなに裏切り者が‥‥。仲間より金かよ‥‥最低のゲス野郎だな! ゴールディ達は無事だよ、オレも女に助けられたんだ」
リーンの言葉にアレンは察した。あの女に違いないと――――。
――刻を同じくして‥‥。
「借りは返してもらうわよ! 地図もね!」
アジト内ではカスミと合流したゴールディ達が武器を取り返して反撃の狼煙をあげていた。
地図はレオノアが持っている事を連中から聞き出した一行は、外の銃声へと突き進む。当然、邪魔する荒くれ共は両手に構えた拳銃で沈黙してゆく。正に水を得た魚。屈辱とうっぷんを晴らすような暴れっぷりだ。
出血の所為で意識を朦朧とさせながらも、カスミに身を預けながらリリィも応戦していた。いつもの奇声は出ないものの、乱射振りは健在だ。弾が尽きると徐に和服の胸元へ褐色の腕を突っ込みモニュモニュと弄っては銃弾を補給してゆく。
「やんっ、ちょっと、そんなに激しくっ」
「んー? お酒は無いのぉ〜?」
「ある訳‥‥んんッ、ないじゃないッ、あんッ、来るわよ」
カスミの切なげな声に一瞬動きを止めた野盗共に、包帯のみを纏った褐色の裸体が過ぎった。和服美女の身体を反動に横へ跳びながら、リリィが扇撃ちで確実な葬ってゆく。包帯は血を滲ませており、敵が崩れると同時に、クラリとよろめくのを再び支える。
「無理しないでよ。先は長いんだから‥‥! あんっ!」
背の低いゴールディが下からカスミの胸を突ついた。
「弾を頂戴! リリィ! カスミ! 外へ出るわよ!」
――ゴールディ達の加勢が入り、戦況は優勢に転じたように見えた。
しかし、参戦できた者はゴールディ、リリィ、カスミの三名。アレンとリーンを含めても五名だ。付け足せば、カスミの二つの膨らみは断じて四次元に繋がっている訳ではない。
アジト内の荒くれ共も湧き出し、レオノアの指揮の元、包囲網が狭められてゆく。
「フッ、正に袋の中の鼠だな。ミス・ゴールディ、私と共に歩むなら命は助けてやってもいいぞ」
「ふざけないで! 地図は取り返して貰うわ!」
「残念だな‥‥。蜂の巣にしてしまえ!」
『そこまでよ!』
白み始めた空に響き渡ったのは女の声だ。続けて野盗共が側面から放たれた銃弾に鮮血を散らせた。
レオノアが焦りの色を浮かばせる。脳裏に過るは妨害者の存在。
「私の邪魔をするのは誰だ!」
「Mr.エンブレム‥‥いえ、レオノア・エンブレム! 秩序を乱す反政府行動に対して、あなたを軍の名の元に裁くわ!」
姿を見せたのは、胸元の開いたカウガール風の衣服で腕を組み、深いスリットの入ったミニスカートの娘だ。ポニーテールの灰髪を風に揺らすと、円らな赤い瞳を研ぎ澄ます。傍に配置されているのはライフルを構える数名の兵士だ。
★レイラ・シフォン:ティーナ・アリスン(fa2462)
「軍だと‥‥情報機関か!」
「秩序を守る役人が野盗と結託していた証拠だけで罪状は十分よ。後は本部で色々と聞かせてもらおうかしら?」
レイラが軍の人間? 呆気に取られるゴールディ達だが無理もないだろう。一寸アブナイ趣味でリネットを追い回していた少女ではなかったのだ。
「チッ、私の緻密な計画を! こんな所で終わらせて堪るか!」
アジト内へ駆け出すレオノア。レイラは部下に威嚇射撃を指示すると、視線をゴールディ達へ流す。
「何してるの! さっさと追うのよ! 私が捕まえちゃうわよ☆」
軽くウインクして告げた少女に不敵な笑みを浮かべると、ツインテールに弧を描かせた。
「リリィ、決着は任せたわ!」
●復讐が果たされる日
軍の介入もあり、レオノアを守る者は誰もいなかった。
必死で松明の灯りのみのアジト内を突き進む中、水の匂いと川のせせらぎが聞えて来る。視界に飛び込んだのは、広い空間と小さな帆船だ。
「エンブレムッ!」
リリィの放った銃弾に嵩高いシルクハットが舞い跳んだ。ピタリと動きを止めたレオノアがゆっくりと振り向き様にスーツへ手を忍ばせ、護身用ピストルを引き抜く。放たれた銃弾を横に跳んで躱し、褐色の指が引鉄が絞った。刹那、撃鉄の落ちる鈍い音だけが響き渡る。
――弾切れ!?
「‥‥? ふ、フハハハハッ! どうやら私のカードが上のようだな。命乞いでもするかね?」
リリィは無言でゆっくりと立ち上がった。川から流れて来る風が綻んだ包帯の尾を棚引かせる。褐色の胸元に手を運び、取り出したのは形見のナイフだ。白髪が揺れ、静かな怒りを湛える眼光が研ぎ澄まされてゆく。
だが、壮年の男から余裕の笑みは掻き消えはしない。
「ケダモノめ! ナイフが銃に敵うものか。直ぐに仲間の元に送ってやる! 野蛮人め!」
「うおおおぉぉぉぉッ!!」
しなやかな肢体を躍動させ、リリィが肉迫してゆく。レオノアがゆっくりと引鉄を絞る中、放たれた弾丸へ斬光を疾らせ、弾き落とす。慌てた男が立て続けに銃声を響かせた。
「バカな! 死ね! 死ね! 死んでしまえッ!」
銃声が反響する中、レオノアの懐にリリィが飛び込むと同時、動きが止まる。地面に零れ落ちるは夥しい鮮血だ。ガクガクと双方の足が戦慄くと、ズルリと男が崩れた。部族の仇を討ち取ったのだ。
リリィは天を仰ぎ何かを呟いた後、一筋の涙を流して倒れた――――。
●別れと新たなる旅立ち
帆船の前でゴールディ一行はレイラと対峙していた。
「エンブレムや鉄の棺の事後処理に専念する為これ以上一緒の旅は無理ね。カスミはどうするの?」
「私はゴールディについて行くわ。何かを期待させてくれるのよね♪」
たおやかに小首を傾げてニッコリと微笑む和服美女。彼女は、ゴールディのひたむきさ、真っすぐな眼、強くしなやかな心をもっと見たい、磨きたいと思って同行を決意したようだ。
「そう、カスミを頼むわよ☆」
スと顔を近付けてゴールディの愛らしい唇を奪うレイラ。予想もしていなかった事に瞳を見開き、そっと自分の口元に手を運んだ。ふふっ☆ と微笑み、灰髪のポニーテールに弧を描かせて背中を向ける。
「おまじないよ♪ リネット位かわいくなって戻るのね☆」
パタパタと手を振るレイラの肩は小刻みに震えていた――――。
「こいつは餞別だ。ガキには10年早いシロモンだが、脅し程度の役には立つだろ」
アレンはリーンに自分の銃を渡す。彼女も女である事がバレてしまった為、ゴールディ達に同行すると決めたのだ。眼帯男の精悍な顔を見上げ、少女が躊躇い勝ちに口を開く。
「‥‥いいのか? わっ!」
刹那、乱暴にリーンの頭を撫で回すアレン。
「お守りみたいなもんだ。‥‥じゃあな」
クルリと背中を見せたアレンの耳に靴音が遠ざかる。リーンが船に乗ったのだ。
「ボス! へっ、今に見てろよ! ‥‥いつか、必ず会いにくるからな!」
「次に会う時は、その口調を女らしく直しておけ! 縄を切るぞ!」
背中を向けたまま斧で帆船を固定していた縄を断ち切った。ゆっくりと川の流れに沿って、ゴールディ一行を乗せ進み出す。因みにヴィシャスとエイミーも一緒だ。
「リーン、後悔はしていないわね?」
「バレちまったもんはしょーがねーからな。なに、アンタらの強さってのにも興味出たし‥‥ついていくぜ。所で、この船、どこに出るんだ?」
「‥‥さあ?」
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