GUN&ROAD T7南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/25〜06/29
前回のリプレイを見る

●本文

●TVCM
 ――荒野の中、追う者と追われる者あり。
 少女達は何かを追って幌馬車駆って町から町へと旅烏。
 そんな少女達を追う者の、目的とは如何なるものか。
 辿り着いた先で起こる騒動に鳴り響くは銃声。
 正義の化身か悪の破壊神か。
 今日も硝煙の匂いを漂わせ、少女達を乗せた幌馬車は行く――――。

 幌馬車で旅を続ける少女は四人。
 ゴールディ・ゴールドウィン:賞金首を倒してお金を稼ぐ為に銃をコレクションする娘。
 リリィ・ザ・タートル:部族を虐殺された過去持ち、シルクハットの者追うインディアンの娘。
 エイミー・ライム:過去の過ちを背負い、贖罪の旅を続ける修道服の娘。
 リネット:記憶喪失だが、製造元不明のシングルアクションリボルバーを所持する娘。
 そんな少女達を追う者。
 ヴィシャス・バイパー、Mr.エンブレム、レイラ・シフォン。
 次第に浮かび上がる片鱗に浮かぶは正義か悪か。
 そして、リネットの記憶に浮かび上がるウェスタンハットにマントを靡かせる者とは?
 新たに現われたジャパニーズガールカスミの目的とは!?
 新西部劇『GUN&ROAD』絶賛放送中!!
 今日も何処かで少女達の奏でる銃声が響き渡る――――。

「マズイわ‥‥マズイわマズイわマズイわぁッ!!」
 サミィ・ライナー監督はテーブルに肘をつき、金髪を両手が押えて叫び声をあげた。
「‥‥いつものミルクティーですが、美味しくありませんか?」
「‥‥カップの中身をぶっ掛けられたいのかしら? この作品の状況よ! キーパーソンいなくなってどうするのよ! リネット役の娘に連絡とれなかったの!?」
「‥‥出演意志が自由なのはWEAのシステムではありませんか?」
 冷静な助手の声に小柄な少女は爪を噛む。
「そ、そんな事は分かってるわよ! これからって時に‥‥Mr.エンブレムじやないけど、邪魔が入ってるのかしらね! 兎に角、新キャラが出てくれて助かったわ。主役志望にしてはチョット取り組み方が淡白で私が演出追加してけど、他のアクターの演技方針を学べば良いわよね」
 サミィは金髪から覗く眼鏡の奥に浮かぶ青い瞳を研ぎ澄ます。
「最悪レギュラー3名が消えると仮定すると、制作も危ぶまれるわ! 放送打ち切りなんて洒落にならないわよ!」


●緊急募集! 新規キャラクター募集!!
 新西部劇『GUN&ROAD』では、レギュラー陣の優先募集期間後、枠が空いていた場合、新規キャラクターを募集します。
 募集区分は『少女達の味方』『少女達の敵』どちらでも構いません。性別不問。レギュラー陣の知り合いや友人という設定でも構いませんし、全くの新キャラクターでも構いません(影で動くキャラ以外は登場頻度も高くなるかも)。


●trigger7――狙われた幌馬車
 今回のストーリーは町に寄りません。
・予定プロット:配役の相談による修正可能。
起:次の町を目指して荒野をゆくゴールディの幌馬車。
 あれこれ雑談したり、顔見知りと会ったり(この辺は承以降でもOK)しながらゆったりと進行。

承:荒野に転がっている馬車の残骸や死体を発見。
 暫らくすると行く手に何者かに襲撃を受けた後のような現場に直面する。息のある者(追う者の誰かでもOK)の話に因ると『この一帯を通る者を襲う野盗がいる』との事だ。
 しかし、迂回すれば飲み水や食料が尽きてしまう。覚悟を決めて先を行くと決めるゴールディ達。

転:圧倒的な数で襲撃する野盗軍団! 危うしゴールディ一行達!
 予想以上の数と手馴れに苦戦する事となる(それぞれ危機を演出)。リネットがいた場合、ここで銃を弾かれ、銃底からエルドラドの引きへ繋がる何かが出て来る予定。

結:危機一発!! 形勢逆転の鍵は!?
 ここで鍵となるのは、ここから登場する者となる。つまり、ゴールディ一行と共に行動し、襲撃された場合、打開策は無い。相手が若い娘ばかりなので殺される事はないだろうが、ラストシーンは野盗のアジトへ連れて行かれる場面となるだろう。

「予定としてはMr.エンブレムがキーパーソンよ。つまり、裏で手広くやって野盗を組織している影のボスでも成立するし、野盗は邪魔なので表の顔で助けに現われるでも成立するわ。ちょっと、今まで出番が薄かったから、そろそろ何とかしようと思っていたけど、もっと話数が進んでからと望むならお任せするけどね」

●募集区分
・ゴールディ一行:女性(1人〜)
 幌馬車で旅をする少女達です。新規キャラの場合、仲間になる等演出OK。

・主人公達(幌馬車)を追う者:性別不問(1人〜)
 何らかの理由で少女達を追い続ける者です。誰をどんな理由で追っているのか決めておいて下さい。
 今回は変則型です。どこで登場するかタイミング次第。

・今回のサブキャラクター:性別不問(登場頻度が少ない方、メインとして登場しない方)
 野盗団ボス/生き残り/その他
 今回のNPCです。上記のように、置き換える事が可能です。尚、アクターが演じないNPCの場合は最低限の登場しかしない予定です。アクターが演じる場合、名前はお好きに☆

・サポート関連
 衣装作成/脚本協力/大道具・小道具など前準備関連。
 名前とどんな仕事をしたか載る予定です。


●演じる為に必要な書類項目
・配役:幌馬車の少女達/幌馬車を追う者/今回のサブキャラクター
・役名:登場人物の名前です。本名で出演してもOK。
・服装:簡潔に。衣装はイメージに合うものを用意する予定です。
・設定:どんなタイプ(設定)のキャラクターを演じるか明記して下さい。
・容姿:髪型や髪色、瞳の色や口調など、明記していなければ役者のそのままとします。
・武器:敵と戦う時に使用する武器です。
 尚、結構ノリで制作されている為、とんでもない銃以外は採用予定です。
 勿論、所持していなくても、格闘武器でも構いません。

●今回の参加者

 fa0558 クールマ・如月(20歳・♀・亀)
 fa1028 水島 無垢(19歳・♀・狼)
 fa1047 芹沢 紋(45歳・♂・獅子)
 fa1107 小比類巻レイジ(25歳・♂・蝙蝠)
 fa1266 百瀬 愛理(17歳・♀・猫)
 fa1788 碧野 風華(16歳・♀・ハムスター)
 fa2121 壬 タクト(24歳・♂・兎)
 fa3464 金田まゆら(24歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●trigger7
「どういう事だ?」
 ランタンの薄明かりの中、灰色の髪を少し逆立てた男が真っ直ぐに視界を見据える。精悍な風貌の左目を眼帯で覆っており、皮製の生地が多く使われた黒を基調とした衣装は、見るからにワイルドだ。
★(CAST)アレン・バクスター:壬 タクト(fa2121)
「俺の部下が近くの町でこれを見つけたぞ!」
 アレンが一枚の紙切れをデスクに叩き付けた。WANTEDと書かれたモノは紛れも無く賞金首を指し示す手配書だ。眼帯男の背後に映る、薄汚れた帽子を目深に被った『少年』が綻びの目立つ衣服から覗く細腕を組み、少女のように唇を尖らせて青い瞳をデスクに流す。
「オレが町へ遊びに出掛けて拾ったんだ」
★リーン・スティール:百瀬 愛理(fa1266)
『それが、どうかしたのかね?』
 アレンとリーンを映したまま、男の声が訊ねた。再び眼帯男が声を荒げる。
「どうかしたかじゃねぇだろ! この賞金額は何だと聞いているんだ! それに『鉄の棺』と名前が知れているのは何故だ!」
『同じ場所に出没する野盗‥‥賞金額も跳ね上がるだろう。名前は常に人の気を引くものだ。そこらの屑より有名だよ、あなた達は。私に不服かね?』
「‥‥確かにアンタの援助物資で俺達は絶大な力を得た。だが、わかんねぇ、一体何を考えてるんだ?」
『全ては引き寄せる為の罠、とだけ言っておこう。なに、あれだけの武器と部下がいれば按ずる事はないだろう? 手筈通りに頼んだぞ?』
 椅子を引く音が流れた後、靴音が聞こえ出す。やがて鈍い音でドアが開き、閉める音が響き渡った。声の主が一室を出ると、アレンは吐き捨てるように舌打ちする中、リーンが視線を送る。
「ボス、オレ、アイツ気に入らない! 何で言い成りになってんだよ?」
「うるせぇ! ‥‥なにしてやがる? もう用事はねぇ、さっさと部屋から出て行け!」
「‥‥わかったよ。オレ、アンタの為なら何でもするからな♪」
 満面の笑みで振り返り、少年は告げると、部屋から出て行った。一人残されたアレンは、ゴツゴツとしたシルバーリングを幾つも嵌めた指を固め、左手を口元に当てる。
「‥‥わかんねぇ」

●GUN&ROAD――狙われた幌馬車
 ――アタシ達の旅から仲間が一人消えた‥‥。
 記憶を思い出して一人で行っちゃったのか、誰かに攫われたのか分かっちゃいない。
 ただ‥‥大切な銃を残して行方が途絶えたんだ――――。
★リリィ・ザ・タートル:クールマ・如月(fa0558)
 幌馬車に揺られる中、荷台後部に腰を下ろしている褐色の娘は、怠慢な動作で伸び始めた白い前髪を指で弄んでいた。思い詰めたような、或いは憂鬱とも見れる表情を浮かべたまま、ナイフの切先を白髪に向ける。プツンっと静寂を破る音と共に、黒い瞳に被さり掛けていた前髪が切り揃えられた。
 ふと、視線を感じて背後に瞳を流す。視界に映ったのは、修道服に身を包む銀髪の娘だ。
★エイミー・ライム:水島 無垢(fa1028)
 赤い瞳で見つめるだけで口を開かないエイミーに、リリィがナイフを見せて微笑んで見せる。
「ん? ああ、コレ気に入ってンのよ〜♪ 可愛いでしょ?」
「‥‥そうだな」
 短く応えると、修道服の膝に広げていた聖書に視線を落とした。再び外へ顔を向けると共に、褐色の娘は笑顔を掻き消す。彼女のナイフは愛した男の形見であり、レインの無念を忘れない為のモノだが、仲間には伝えていなかった。背中を向けたリリィにエイミーが再び眼差しを向ける。
「‥‥なぜ、髪を?」
「最近、楽しい事が多かったからねえ‥‥気持ち、引き締めないとな〜って」
 今度は振り向かず、前髪を弄りながらアッケラカンとした調子で応えた。修道服の娘が、どこか寂しげな赤い瞳を和らげる。
「‥‥そうだな。楽しい事が多かった」
「あーっ! もぅッ、空気悪いわね!」
 荷台の前方から少女の声が響いた。馬車のリズムに合わせ、金髪のツインテールを揺らす着飾った華奢な背中が映る。
★ゴールディ・ゴールドウィン:碧野 風華(fa1788)
「今までだって出たり入ったりした仲間はいたでしょ? それに、あの娘は仲間じゃないわ。これは投資よ。いずれきっちり返して貰うんだから!」
 強がるゴールディだったが、二人の娘にはお見通しだ。高音の声は震えており、普段よりも低く、寂しさの色を響かせていた。エイミーとリリィは顔を見合い、苦笑しながら肩を竦める。
 ――ここで普段の様に明るく振舞ってアタシがからかう所だけどね‥‥。
 それぞれが本心を隠していた。互いに気付いていたとしても――――。
「それより、あんた達、そろそろ準備しなさいよ?」
 僅かな沈黙の中、あどけなさの残る愛らしい風貌を肩越しに向け、ゴールディが円らな青い瞳を流した。
「‥‥準備?」
「この辺に野盗が出没してるそうなのよ。賞金も出ているわ。それに‥‥」
「それに‥‥何よ? ゴールディ?」
「‥‥な、何でもないわ!」
 ――あの娘の消えた手掛かりが掴めるかもしれないじゃない。

●鉄の棺
 ゴールディ一行を乗せた幌馬車は、ゆったりとしたリズムで荒野を進んでいた。
 その時だ。待ち構えていた人影が側面から姿を浮かばせる中、男の声が響き渡った。
「止まれ! 吹っ飛ばされたくなかったら大人しくするんだな。悪いが俺は手加減ってものを知らねぇんだ」
 マグナムを構えて忠告するのは、左目に眼帯を付けた精悍な風貌だ。次の瞬間、馬車の車輪や馬の直ぐ脇を狙い、強力な銃弾が叩き込まれた。
「なに? きゃあぁぁぁッ!!」
 車輪が破片を吹き飛ばしながら砕け、馬の嘶きと共に幌馬車は体勢を維持できず転倒。不意の攻撃にバランスを崩したゴールディの小柄な身体が、荒野に滑り込み、砂埃を舞い上げる。
「けほッ、ちょっと何よ? ‥‥!!」
 うつ伏せのまま汚れた顔をあげたツインテールの少女が捉えたのは、数台の馬車と、軍団とも言える数の馬に跨る荒くれ共の姿だ。
「ちょっと、何よこの数!?」
 ゴールディはうつ伏せのまま時間稼ぎに転じた。
「待ちなさいよ! 悪いけど金目の物は無いわ!」
 視線を横転した馬車に流すと、悟られぬように這い出るリリィとエイミーを捉える。どうやら大した怪我を無さそうだ。少女の声に、アレンが口を開く。
「金目の物はねぇだと? なら、いらねぇよ。女ってだけで十分だからな!」
 歓喜の声が取り囲むように沸いた。ゴールディ達から距離は遠く、互いに表情までは分からないが、眼帯男は下卑た笑みをゆっくり掻き消すと、部下に緑色の瞳を向ける。
「いいか? 女子供に乱暴するんじゃねぇぞ! これはビジネスだ! 女抱きたきゃ金が入ってから町にでも行くんだな」
 荒くれ共に睨みを利かせると、軽く舌打ちし、マグナムを構え直す。
 ――好かねぇ仕事だぜ!

「ちょっと、ゴールディってば、どうするのよ?」
「どうするって、このまま大人しく玩具にされる訳ないでしょ!?」
「‥‥だが、策はあるのか?」
 相手は軍隊なみの勢力だ。エイミーがスナイパーライフル『アンゼルス』を構えて見せるが、数が多過ぎる。
 ――あの娘がいれば‥‥。
 過ぎった美少女の笑顔に、ゴールディはツインテールを左右に振る。青い瞳で野盗を睨み、ゆっくりと立ち上がった。フリルとレースが施された長いスカートが風に靡く。
「私達が欲しいなら力尽くで奪ってごらんなさい! 野盗団『鉄の棺』賞金首アレン・バクスター! 賞金稼ぎのゴールディが、その首を戴くわ!」
 ビッと指差し声を響かせる少女。子供のような娘の宣戦布告にアレンが舌打ちする。
「賞金稼ぎか! 野郎共! 気ぃ抜くんじゃねぇぞ! リーン、分かってるな?」
 部下の奇声が波打つ中、小声で傍の少年へ顔を向けた。リーンはナイフで爪を磨いていた青い眼差しをボスへ向け、スと掌を差し出す。
「あぁ、分かってる。オレにも銃をくれよ? ッ!?」
 クシャクシャと帽子を被った頭を撫でると、アレンがニヤリと笑みを浮かべる。
「子供に銃なんて危険なもん預けられるかよ。自分の得物を使うんだな」
「ちぇッ! また子供扱いかよ! ‥‥分かったよ」
 上目遣いで頬を膨らますと、少女のように微笑み、少年は帽子を直すと駆け出した――――。

「狩りの始まりだぁッ!!」
 砂塵を巻き上げ、夥しい数の荒くれを乗せた馬が駆けて来る。片手で手綱を捌き、構えるは拳銃だ。馬車からは接近するまでの間、威嚇の銃弾がバラ撒かれてゆく。
 横転したゴールディの幌馬車に風穴が開く中、荷台を壁に少女達も応戦に入る。地表に並べられるは荷台に詰めてあった銃の数々だ。ツインテールの少女はスカートの裾を口に咥え、小型拳銃を次々と身に付けてゆく。
「リリィ、エイミー、周り込まれるんじゃないわよ!」
「OKよん☆ 撃って撃って撃ち幕ってやるわ♪」
 テンガロンハットを目深に被り直し、荷台の隙間から動向を窺いつつ、ボロボロのマントへ拳銃を呑み込ませてゆく褐色の娘が、不敵な笑みを浮かべた。その隣では修道服の娘が、背中にアンゼルスを背負い、先端に銃剣が取り付けられた純銀に輝く二挺のライフル『クルセイダーズ』を構えながら、赤い瞳を流す。

●絶対不利の攻防
 ――銃撃戦は繰り広げられた。
「近付けるものなら近付いて見なさいよ!」
「テキぃーラぁぁー!! イィィーヤッハー♪ ウィスキーGOGO!! アンタ達を捕えて禁酒も解消よーッ☆」
 荷台を障壁とし、ゴールディがペーパーボックス銃を撃つ中、リリィが両手に構えた二挺のリボルバーを次々と撃ち捲っては、ダイナマイトを放り投げる。派手に爆煙が舞い上がり、馬上の荒くれ共が吹っ飛んだ。それでも砂煙から浮かび上がる馬上の連中が銃を撃ち幕って接近して来る。
『ヒュー♪ 大人の女もいるじゃねーか! うぉッ!』
 歓喜の奇声をあげる荒くれに、エイミーのライフルが火を吹いて接近を食い止めてゆく。
「‥‥罪深き者よ、神の鉄槌を食らうがいい。‥‥ゴールディ、左へ行ったぞ! リリィ、右へ周り込まれるぞ! ‥‥おい、リリィ!?」
 低い姿勢からライフルを撃つ修道服の娘が注意を促がす。隣で応戦する褐色の足元に、次々と弾を使い果たした銃が転がってゆく。顔をあげたエイミーの視界に、両手で一挺のリボルバーを構えるリリィを捉えた。表情が苛立ちと不安を彩っているようだ。
「分かってるわよん! んもぉッ、当たらないッ!」
「‥‥まさか、弾切れが近いのか?」
 中央に位置する娘が赤い瞳を左へ流す。スカートを舞い躍らせながら銃を抜いては撃つゴールディが映った。地表に転がっている薬莢から察するに、かなりの弾を使い果たしたらしい。
『へッへッへッ、嬢ちゃんよぅ、色っぽさが足りねぇがセクシーに広げて見せるじゃんかよ!』
『踊れ踊れッ! うあッ!』
「煩いわね! 油断してると片っ端から眠らせてあげるわ!」
 ゴールディは身長の低さから、軽快に動いても荷台が壁となっている所為で、華麗なダンスと如く舞い踊り銃弾を叩き込んでいた。止まった標的よりも、動く標的を撃つ方が難しい。まして、ボスからは警告を受けているのだ。下手に撃った弾が華奢な少女に命中すれば、命の危険もある。
 ――しかし。
(「ゴールディの方に数を来ているのは確かだ。リリィの弾が底を尽くのも時間の問題‥‥」)
『おいッ、女が出て来たぞ!』
 深いスリットからしなやかな足を覗かせ、エイミーが横転した馬車から飛び出した。彼女の修道服から浮かぶ揺れる胸元や、白い肉感的な太腿に荒くれ共が歓喜する。
『シスターじゃねーか! 勿体ねェ身体してやがるぜ♪』
『神様に捧げるなら俺達に捧げてくれよ! この白い肌をよぉ!』
「退けッ!」
 銀髪を棚引かせる娘は、クルセイダーズの切先を薙ぎ振るい、群がる馬上の男共に跳び込んでは鮮血を散らせてゆく。疾風のように肉迫するエイミーの洗礼に馬が嘶き、野盗が次々と崩れた。
 ――その時だ。
 遅れて集まって来た新たな連中が銃声を響かせ、白い足に鮮血が舞い散る。ガクンと体勢を崩して宙を舞いながら倒れ込むエイミー。ズッシリとしたライフルが落ち、腕を伸ばした所に銃弾が叩き込まれた。うつ伏せのまま顔をあげる娘の視界が馬上の荒くれに包囲される。
「クッ!」
『仲間を置いて逃げるとは見上げたシスターだぜ』
『本当にシスターなのか? こんなライフル持っててよぉ』
『ひん剥いちまえば分かるだろうぜ、武器を隠しているかもしれねぇ』
 うつ伏せから腰を捻って睨む娘に、猥褻な視線が突き刺さる。
「‥‥き、貴様等」
 野盗共が次々と馬から降りる中、エイミーに幾つもの手が伸びた――――刹那、銃声が続け様に響き渡り、次々と荒くれ共が鮮血を散らして崩れてゆく。
『誰だ!? うぉッ!』
 ――今だ!
 隙を突いて腕を伸ばすと、クルセイダーズを構えて残りを血祭りにあげた。当然、良からぬ行為に及ぼうとしていた連中は銃を抜く余裕など無い。
「これで俺への評価をあげてくれたかな? シスター」
 聞き慣れた声が流れ、慌てて視線を泳がせる中、視界に映るは、黒いスーツに身を固め、洒落た帽子を被っている端整な風貌の青年だ。二挺のリボルバーから硝煙が揺れる。
「き、貴様は!?」
★ヴィシャス・バイパー:小比類巻レイジ(fa1107)
「貴様‥‥か、もう少し遅れて助けた方が有り難味があったかな?」
「な、何をバカな事をッ! ‥‥助かった、礼を言う」
 岩陰に隠れていたヴィシャスに駆け寄り、エイミーは視線を逸らして告げた。青年の口元にニヒルな笑みが浮かぶ。
「まぁ、いい。さて、どうする? 流石に一人加勢に入ったとしても戦況は変わらないぜ。キミの事だ、連中の注意を逸らそうとしたんだろ? だが、数が多過ぎた」
「‥‥その通りだ。‥‥はッ、幌馬車が!?」
 銃声と奇声が響き渡る戦場に振り返った娘が赤い瞳を見開いた。視界に捉えたのは、数多の荒くれが駆る馬に取り囲まれつつあるリリィやゴールディの奮戦する姿だ――――。

「チッ! 切りが無いわね!」
 薬莢を地面に転がし、ポケットを弄ったツインテールの少女が、弾切れに凍り付く。視線を流す中、一挺のリボルバーが映った。謎の多い記憶喪失の少女が愛用していた拳銃。
 ――投資した分には足りないけど、返して貰うわよ!
 ゴールディはリネットの残したリボルバーを構えたものの、跳弾が拳銃の底に当たり、弾かれる。右手の痛みを左手で庇いながら青い瞳でリボルバーを探す。
「つッ! ‥‥え? なに?」
 地表に転がった拳銃のグリップ下部から紙の巻き付いた金属片が飛び出していた。慌てて滑り込み、解いて見る。クッと円らな青い瞳が驚愕に見開く。
「こ‥‥これって、エルドラドへの地図? ‥‥の、切れっ端ね。これだけじゃなーんにも分からないわよ‥‥でも、どうしてあの娘が‥‥エルドラドの事を‥‥記憶喪失と何か関係あるの?」
 ――‥‥後悔、していないか?
 ――はい、旅に出て、色々なものを見たら、何か思い出せそうな気がするの‥‥。
 ――OK♪ 新しい仲間に乾杯しなぁい?
 ――仲間? 勘違いしないで、これは投資よ。いずれきっちり返して貰うんだから!
 いずれきっちり返して貰うんだから――――。
(「まさかあの娘、その為に銃を置いて行ったの?」)

「‥‥弾切れ!? ひゃっ!」
 引鉄を絞っても撃ち出されない銃弾に、戸惑いと焦りを浮かべた刹那、褐色の娘へ馬上の男が跳び込んだ。押し倒される形で背中を強かに打ちつけ、リリィの手から拳銃が転がる。鈍い音を背後に聞き、ゴールディがツインテールに弧を描かせ振り向く。
「リリィッ! きゃあぁッ!」
『嬢ちゃんよ、敵に背中を見せるとは甘いじゃねぇか?』
「やッ、やめなさいよッ!」
 うつ伏せの少女に覆い被さる男が、愛らしい頬へ舌を這わせた。不快感に強気な声が戦慄き、形の良い眉が歪む。刹那、首の襟元にゴツイ手が掛けられ、力任せに左右へ引っ張られた。布地の裂ける不快な音と少女の悲鳴が重なる。
「いやあぁッ! な、なにするのよヘンタイッ!」
『騒ぐんじゃねぇ! ほら、黒人のネェちゃんと一緒に可愛がってやるぜ!』
 同じように押し倒されたリリィが必死に抗い続けていた。
「こ、こんな所でッ‥‥!! 負けてられないのに‥‥!!」
 悔し涙を流すリリィ。状況は非常にマズイ。屈強な男に押えられては、足掻くにも限界がある。まして力で攻められてはゴールディは非力過ぎた。容易く仰向けに転がされる。
「こらッ! あ、アンタ、私に何しようってんのよ! やッ、やめッ!」
 血走った瞳に露となった白い肩を覗かせる涙目の少女を映し、ゴツイ手が胸元の布地へ伸びてゆく。
 刹那、風を切って放たれたのは一本のナイフだ。切っ先はゴツイ手に深く突き刺さり、男は悲鳴をあげる。続けてリリィに馬乗り状態の男へも刃の洗礼が叩き込まれた。
『て、てめぇ‥‥』
「ボスは乱暴するなって言ったよな?」
 視界に捉えたのは澄んだ声を響かせた少年だ。数本のナイフを弄びながら、帽子の縁から覗く青い瞳が睨む。明らかに表情は不愉快な色を浮かべていた。
『ガキは黙って引っ込んでろ!』『バレなきゃ良いんだよ! てめぇが死んでもな!』
 荒くれ共が少年へ銃口を向ける中、リーンは不敵な笑みを浮かべ瞳を研ぎ澄ますと、銃声より先に両手のナイフを薙ぎ放つ。次の瞬間、娘達の上から男の背中がゆっくりと崩れた。
 ――なに? 私達を助けてくれたの?
 しかし、半身を起こしたゴールディの背中に少年は風の如く周り込み、ナイフを白い喉へあてがう。
「ゲスは嫌いなんだ。そっちのアンタも大人しくしな!」
 ゴールディを盾にされては反撃しようがない。荒くれ共が集まり、後ろ手に縄を巻いてゆく。

「ゴールディ! リリィ!」
「待て! 今飛び出してどうする!?」
 手を握り、仲間の元へ駆けようとするエイミーを止めた。振り解かず視線だけを向ける。
「‥‥私は敵にマークされていた。三人だと知っている筈だ」
「なら、俺と逃げるんだ! 敵のアジトを突き止めれば良い!」
「‥‥ヴィシャス、私が捕えられたら助けに来てくれるか?」
 一人逃げたと知られれば警戒は厳重となる。ここは全員捕えたと油断させた方が潜入は楽だ。
「エイミー‥‥俺を信じてくれるのか? 逃げ出すかもしれないぜ?」
「‥‥それでも構わん。神の天罰と思う事にする‥‥!!」
 グンと手を引っ張られ、そのままエイミーはヴィシャスの懐に抱き締められた。不意の出来事に、赤い瞳を見開くと、僅かに抵抗を見せる。
「‥‥な、何を? 放せ!」
「‥‥キミの温もりで、俺に勇気を与えてくれ。必ず助けに行く!」
「‥‥ヴィシャス、もう、行かなければ‥‥」
 スと両手で青年の胸元を押して身を離すエイミー。赤い瞳を交差させると、お互いに何も告げる事なく別れてゆく。
 銀髪を靡かせ、アンゼルスを構えると、颯爽と敵陣へ向けて飛び込んだ‥‥。

●真の敵
「俺の部下がひでぇ事をしちまったみたいだな‥‥」
 鉄の棺が駆る幌馬車の荷台で、向かい合うアレンがツインテールの少女と褐色の娘に詫びた。彼女達の隣にはエイミーが同じく拘束されており、眼帯男の隣にはナイフの使い手、リーンが腰を下ろしている。キッとゴールディが青い瞳で睨む。
「‥‥危ない所を助けて貰ったのは礼を言うわ。私達をどうする気? あんたの玩具になるつもりもないわ!」
「強気なお嬢さんだ。俺達は何もしねぇ。アンタ達を欲しがっているお客様がどうするかは知らねぇがな?」
「お客? どうやら目的はハナから私達だったみたいね」
「まさか! リネットちゃんじゃあ!?」
「‥‥リリィ、衝撃的だが、それは無いだろう」
「まあ、好きに考えてくれ。あぁ、妙なマネはするなよ? こんな距離でコレを撃ったら軽傷って訳にはいかないからな?」
「ナイフだって同じだ。若いんだから顔に消えない傷は欲しくないだろ?」
 リーンが陽気な微笑みを浮かべながら、目の前にいるエイミーの頬にナイフを当てる。修道服の娘は哀しげに赤い瞳で少年を見つめる。
「‥‥何がおまえをそうさせた?」
「だ、黙れ! オレの事なんか、アンタに関係ないだろ?」
 視線を逸らすリーン。その後、沈黙が続き、ようやく馬車が歩みを止める。
「着いたみたいだな? さぁ、降りて貰おうか?」
 幌が広げられ、既に日が落ちたのだと気付いた。ゴールディ一行は指示通りに歩かされ、岩山にポッカリと開いた洞窟へと促がされてゆく。
 中に備え付けられた松明の炎が周囲を照らし出す中、奥へ奥へと進まされた。辿り着いた先に浮かぶ木製のドアを開く。
 部屋の中に、かなりカサ高いシルクハットを被った紳士の背中が浮かび上がった。
★Mr.エンブレム:芹沢 紋(fa1047)
「久し振りですね、ミス・ゴールディ、ミス・エイミー‥‥そして」
 ゆっくりとスーツに身を包んだ身体を向けてゆく。映り出されたのは顎鬚を生やした壮年の男だ。
「Mr.エンブレム?」「どうして貴方が‥‥」
 紳士は愉悦に口元を歪ませ、帽子の縁から覗く黒い瞳で蔑んだ眼差しを送る。
「忌々しいインディアンの生き残り‥‥リリィ・ザ・タートル」
 呆然とする褐色の娘。脳裏に甦るは部族虐殺の光景と――――。
「シルクハットの男‥‥‥‥部族の、仇‥‥ッ!! うおあぁぁッ!!」
 身体を戦慄かせると獣の如き形相を浮かべ、リリィが飛び出した。レオロア・エンブレムはゆっくりと獅子の紋章が施されたライフルを握り、後ろ手を結ばれた褐色の娘目掛けて薙ぎ振るう。
「ハッハッハッ! 嬉しい反応だな! 貴様ら! インディアンは! 人間の皮を被った! 獣そのものだ!」
 言葉の区切りでライフルを叩き込んでゆくレオロア。もはやエレガントな紳士の衣を脱ぎ捨て、残虐な色を曝け出していた。打撃の度にリリィが舞い踊り、鮮血が床を染める。
「や、やめて! リリィが死んじゃうわ!」
「おっと、そうでしたね。殺しては今までの苦労が無駄になる」
 鈍い音と共に褐色の娘が床に崩れた。鮮血と涙を流す中、紳士の靴が白髪の頭を踏み付ける。
「ミス・ゴールディ‥‥邪魔が入る前に訊きたい事があるのです」

 ――闇の中に漆黒のシルエットが浮かび上がる。
 岩陰から覗かせた赤い瞳に数人の見張りを捉えた。自嘲するかの如く、青年が薄く笑みを浮かべる。
「こんな大軍相手に‥‥自分でも正気の沙汰とは思えんな。しかし、銃を撃つ訳にもいかない‥‥気付かれずに接近して仕留めるしか術はないか‥‥」
「それは難しいんじゃないかしら?」
 背後から流れた女の声に、ヴィシャスは振り向き様に二挺のリボルバーを向けた。視界に映ったのは、淡いピンクの着物を身に着けた美少女だ。たおやかな容姿が月明かりに照らされ、毛先を組紐で結わえただけの長い黒髪が風に揺れる。手に携えるは閉じた番傘だ。
★カスミ(霞):金田まゆら(fa3464)
「キミは幌馬車レースに参加していた!?」
 良いのか? こんな遅いタイミングで登場して!? 監督もフォローできないぞ!? と青年が思ったかは定かでないが、驚愕の色を浮かべたのに変わりはない。
「助けたいんでしょ?」
「何故そんな事を知っている? 何者なんだ?」
「余計な詮索はしない方が良いわよ☆ 私もゴールディの髪を梳かしてあげたかったのよね♪ 髪は女の子の命だもの☆」
 ニッコリと微笑むカスミ。これから命賭けで飛び込もうとした刹那の事だ。青年は唖然として言葉も出ない。再びジャパニーズガールが口を開く。
「見張りは私が何とかするから、バイパーはエイミーを助けに向かって♪ でも、アジトの中も大変だと思うけどね☆ 私はゴールディ達の武器を回収しておくわ」
「ま、待ってくれ! もう一度訊くぞ? キミの目的は何だ? レイラと一緒じゃなかったのか?」
「悪党の義理も忘れた外道に容赦も慈悲も無いわ☆」
 クルリと踵を返してカスミは穏やかな微笑みを浮かべた。
「まぁ、いい。所詮は数が多いだけの烏合の衆‥‥頭を倒せばこっちのものさ」
 不敵な笑みを浮かべると、漆黒のスーツの裾を風に揺らして青年は一歩を踏み出した。
 ――もし、俺が死んだら‥‥祈りの一つでも捧げてくれるかい? シスター‥‥。

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