GUN&ROADout南北アメリカ
種類 |
シリーズ
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
10/25〜10/29
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前回のリプレイを見る
●本文
●濁流渦巻く滝に呑まれて
「きゃああぁぁッ!!」
ネグリジェの胸元にナイフが刺さった少女は、悲鳴と共にベッドから半身を跳ね起こした。
円らな瞳を見開き、荒い息を弾ませる頬に汗が伝う。
「‥‥夢か‥‥ひっ!?」
サミィ・ライナーはベッドルームの光景を見て戦慄く。瞳に映るのはベッドの高さにまで及ぼうとする水面だ。
「な、なに?」
――ぎしッ!
ドアが軋む。小刻みな鈍い音が次第に激しさを増すと、一気に弾け飛び、赤い濁流が怒涛の勢いで注ぎ込んだ。あっという間に室内は赤い水の中。酸素を奪われ、バタバタと足掻く少女の足が幾つもの手にガッシリと掴まれた。
恐る恐る視線を下ろすと、撮影に来なくなったアクター達が水中で歪んだ笑みを浮かべていた――――。
「きゃあぁッ!!」
ネグリジェの胸元にナイフが刺さった少女は、悲鳴と共にベッドから半身を跳ね起こした。
「夢‥‥? もぉ、なにツマラナイB級映画みたいな夢を見ているのよ‥‥」
長い金髪を掻きながら溜息を吐く。しかし、安堵を浮かべた表情は直ぐに不安の色を滲ませる。
「私‥‥恨まれてるのかしら?」
――GUN&ROAD。
もう直ぐ1年を迎えようとしているB級西部劇連続アメリカドラマだ。
好調な滑り出しを見せたドラマは回を追うごとに初期アクターが次々に撮影をキャンセルするようになり、前回は撮影すら危ぶまれる有様だった。もはや当初から主役の少女達は2名。空白のエピソードが増える一方である。
「前回はTV局で12時台が抑えられていたから30分遅らせたけど、結局なにも番組は入ってなくて、TV局で用意済みの番組が放送されたのよね‥‥なに? また妨害? ううん、そんな事より、これからよ。アクターと親睦の場を持つべきね」
●招待状(注:全て英語と補完しましょう)
GUN&ROADでお世話になっております。
この度、サミィ・ライナーの別荘で親睦を兼ねた食事会を開催したく、招待状をお送り致しました。アクターの皆様も多忙と思いますが、ご参加お待ちしております。
つきましては、以下の項目に目を通して頂きたいと思います。
○今後の要望(全て埋める必要もありません。勿論全て埋めてOK)
・今後の展開をどうするか。
前回の方針で地図の断片編/別の方法でエルドラド探索/暫く1話完結モノで遊ぶ?/全く別の流れにする(明記)
・どんな物語にするか簡潔に。
・その物語の見所は?
・その他、聞きたい事、喋りたい事、やりたい事など(台詞歓迎☆)。
●役者が揃わなかった場合
自分をアピールして売り込みましょう。または、何らかの理由で(道に迷ったとか、別荘に車で突っ込んだとか)巻き込まれ。
これまでのGUN&ROAD、またはサミィ作品に関わったアクターの参加も歓迎します。
●サポート参加
別荘に行く事は出来ませんが、親睦会時に手紙等として演出させて頂きます。
●サミィ・ライナー別荘
断崖絶壁に建つホラー映画に登場しそうな外観ですが、豪邸ではありません。荒れ狂う大海原が眼下に覗え、インスピレーションを高めてくれるらしい。人里から離れた場所にあり、付近の森も不気味な感じです。迷わないよう気をつけて下さい。
●リプレイ本文
●6人様‥‥ですか
1830年代の趣きのある黒馬車で迎えに来たフランケンは思わず呟いてしまった。
「フランケンさんお久しぶりです。相変わらず素敵なお名前ですね♪」
クールマ・如月(fa0558)がノホホンと挨拶しながら、ぽろろ〜ん♪ と携えたウクレレを鳴らす。チャイナドレスに肉感的な肢体を包む姿とかなりアンバランスだ。
「‥‥有り難うございます。本名ではありませんが、嬉しく思います。お荷物は私が」
差し出された手は碧野 風華(fa1788)に向けられる。可愛らしいフリル一杯のリボン沢山施された白とピンクの甘ロリドレス姿の少女は、短めの茶髪の両脇にも大きなリボンがあしらわれていた。思わずクールマは問わずにいられない。
「一寸ふーかさん、この大きなカバンは何ですか?」
「着替えなの、自作のコスプレ衣装なのー」
口調と雰囲気はゴールディと異なるものの、2人が会話する姿は本編のようだ――――なんて感じながら、馬車は深い森を駆け抜け、ホラー映画に登場しそうな外観の別荘へ辿り着く。
「ふーん、道程どーなってるんだろって思ったけど、馬車が迎えに来るなんてねえ」
馬車から降りる魅惑的な着物姿の娘は金田まゆら(fa3464)。続いて、カーミラなる気品漂わすゴシックドレスに細身を包む百瀬 愛理(fa1266)が顔を覗かせる。
「チョビッツ、置いて来たけど大丈夫ですわよね?」
「心配いらないよ。僕は途中でタクシー降ろされたんだから★」
「どうやら悪い噂が多いらしく、ここまで来る者は殆どいないそうだ」
シルクハットを被り、細身を燕尾服に包んだ壬 タクト(fa2121)が微笑む中、タキシード姿の工口本屋(fa4421)が続けた。馬車の窓から別荘を窺う風華はビクビクと小動物の如く震えている。
「はう〜サミィちゃんのおうちに来るのも久しぶりなの〜。あいかわらずすごい所なのぉ‥‥」
「ようこそ♪ 長旅お疲れ様☆ あら? 6人? 遅れてるのかしら?」
別荘から姿を見せた小柄な少女はサミィ・ライナー監督だ。パッと見、風華と背丈は大差ない。フランケンが静かに「これで全員です」と告げた。動揺の色を浮かべたが、順に挨拶を交わす。
「久しぶりのお呼ばれですね〜♪ これお土産です。サミィ監督(ちっちゃくて)可愛いですねぇ」
「‥‥ウクレレを弾く意味があるのかしら? 何かリリィを思うと心の中が読めるようだわ。あら、お酒? ふーん、未成年に呑めと? 有り難う☆」
続いてシルクハットを脱ぎ、紳士のようにガーベラの花束を差し出すタクト。
「サミィ監督、いつもお世話になっています。今回はお招き下さり有り難うございます♪ お気に入りの専門店で購入した紅茶葉の缶です。香りがとても良いから監督も気に入ってくれれば嬉しいな」
「まあ☆ 紅茶は好きよ」
次に一歩を踏み出したのは愛理だ。顔色を曇らせて俯きながら口を開く。
「前回は‥‥その‥‥相談不足等申し訳ありませんでしたわ。プロとしてあるまじき内容・評価でしたもの。‥‥これ、美味しいと評判のお菓子ですわ」
前回の失敗を詫びながら、箱を差し出した。サミィは侘びに困惑しながら受け取る。
「あ、有り難う。でも、気にしないで頂戴☆ 次に良い演技してくれればノープロブレムよ♪ さ、そろそろ中に入りましょうか?」
「あの、サミィさん」
金髪を翻して背中を向けると、モトヤが呼び止めた。振り返った少女の眼鏡に端整な風貌が映る。
「お招きありがとうございます。酒は不味そうだと分かっていたから‥‥これを受け取って下さい」
ポケットから小さな箱を取り出し、蓋を開く。中に入っているのは指輪だ。
「俺と結婚して下さい」
――何を言い出すんだ外見年齢30歳。
「‥‥いいわよ」
「「「「「「えぇーっ!?」」」」」」
そりゃ誰もが驚愕の声をあげた。いきなり求婚する方も何だが、返事がウエハースの如く軽い!
予想外の展開に言葉を失ったのはモトヤだ。刹那――――。
「ほら、次の台詞は?」
「台詞‥‥ですか?」
「まだまだ演技が薄いわね。先を読んで台詞を用意しなきゃ。次の機会まで指輪は受け取れないわ」
いや、演技も台詞も‥‥。呆然とする中、ポンとタクトが男の肩を叩いて微笑み首を横に振った。
ジョークにジョークで返されたのか否か? それはモトヤにしか分からない。
●食卓を囲みながら
「さて、集まって貰ったのは他でもないわ。今の現状よ!」
ビッとナイフを向けるサミィ。肉汁が跳ぶ中、まゆらが胸元を揺らしながら素早く躱す。
「もお、行儀悪すぎだよ? 展開は別手段で探索かな? 事件や騒動を持ってくる人が居ないから、地図か、エルドラへの鍵になるものや外れ多い何かの争奪とか」
「この状況を逆に利用するしかないですよね。新しい仲間たちもまた魅力的な面子ですし」
ぽややんと口を開いたのはクールマだ。
「断片を持つ個性的なハンターを1人1話ずつ倒して行く、とか。そのステージのボスを倒す、と言った趣でしょうか。テレビゲームじみてるけどシリアスもコミカルもボス次第。新しい仲間との関係を構築しつつメインストーリーも進められるかと‥‥」
「そうですわね。できれば地図の断片編で進めたいところではありますが‥‥なかなかレギュラーが揃わない現状をどのように纏めるかが問題ですわね。参加できない理由もおありでしょうし‥ムリに復帰して頂くのは負担等考えると得策ではありませんわ」
頬に手を当て小首を傾げる愛理。
「完全に地図の断片を追って旅を進め、その中にエピソードという‥‥重点を逆にするのはいかがかしら? ストーリーとしての纏まりを出し、今まで1話完結だったものをもう少し次回に絡めて行くことによって、今まで停滞していた流れを少しでも戻せたら‥‥と思いますわ」
「僕も地図の断片編の流れでエルドラド探索を希望するよ。今後どうするにしても、エルドラド関係に何らかの決着は着けた方が良いのではと感じます。こんなのもどうでしょう?」
タクトがコップの水を喉に流した後、人差し指を出して続ける。
「地図の断片を集め、エルドラドに辿りつくが‥‥」
彼のプランは最終的な問題だった。この辺は次の機会に語るとしよう。
「個人的には、時にシリアスに時にコミカルに‥と一話完結の形で少女達の旅を描いていく‥でも良いかなと思います。巻き込まれ型というか、この作品の最初の紹介に書かれていた『基本は、町を訪れ、トラブルに巻き込まれ、力押しで解決して次の町を目指して旅立つ』と言う感じですね」
そう、初期の方針はMr.エンブレムの死から行われていない。流れを新たにする事でパターン化を変えようとしたのだが、そこからサミィの番組は難破の傾向を見せた。
「そうだな。やはりエルドラド探索はしないと‥‥」
腕を組んでモトヤが提案した事もタクトと同様に先の話だ。刻が来れば語られるであろう。
結果的に5人の意見はエルドラド探索で話を展開させる案のようだ。
「有り難う、参考になったわ‥‥って、あの娘、どこに行ったの?」
「監督、呼びに行った時に衣装換えとかドア越しに言ってました」
『じゃーん! ふわははは! 今回はこのホラーハウスに相応しい格好も用意してきたわよ!』
本編さながらの声が飛び込み、一斉に瞳が注がれた。視界に捉えたのは、ゴールディの金髪ロングツインテールに吊り目メイクを施し、マントとミニスカ魔女服に身を包み、箒にカボチャでハロウィンを演出した風華の姿だ。
「魔女ゴールディの完成なのー!!」
「あなたねぇ‥‥真面目にやらないとあなたにとって本当のホラーハウスにしちゃうわよ」
ジトリとした眼差しでサミィが溜息を吐いた。ジョークに聞こえないのは気のせいか。
「ちゃんとマジメに考えてるのー」
風華は携えて来たノートパソコンを起動させた。液晶モニターにGUN&ROADのスチール写真が表示され、懐かしいレギュラー陣の顔ぶれに、少女が顔色を曇らす。
「当時とはだいぶ事情が変わっちゃったの。初期の主役いなくなっちゃったから、纏めるとしたら地図の断片、エルドラドの謎と解決、終幕かな? リネットが遺跡の守人の末裔で人造人間でエルドラドは超文明とかいろいろ考えてたの。番外編として単発番組をするとか‥‥そっちが本編より有名になっちゃうアニメとか日本であったなのー」
「参加しなくなったレギュラーの方々が復帰しやすいような流れが作れればよろしいですわね♪」
パン☆ と両手を合わせて微笑む愛理。しかし、サミィの表情は苦しかった。
「通常枠に戻すのは考えているわ。問題は8人揃うかよね」
●一泊の夜
「サミィ監督」
親睦会なる打ち合わせの後、クールマが呼び止める。
「今回はお願いしたい事があったんです。あの『死んだように眠れる斧』使ってみたいな〜♪」
「‥‥構わないわよ。ちょっと待ってなさい」
「あ、それと。お悩みのようですが、少なくともワタシは最後までこのお仕事を全うするつもりです。こんな素敵な作品に出演させて頂いて、感謝してます。まだまだお付き合いしますよ、監督」
ぽやんと笑みを浮かべる娘に、少女の青い瞳が潤んだ気がした。弱々しく微笑み口を開く。
「ありがと☆ 頼りにしているわ」
「眠れないのでしたら、添い寝でもして差し上げましょうか‥‥な〜んて」
「‥‥窒息して永眠しそうだから止めとくわ♪」
たわわな膨らみを見つめた後、少女は苦笑して踵を返した――――。