GUN&ROAD T2南北アメリカ
種類 |
シリーズEX
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担当 |
切磋巧実
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/25〜01/29
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前回のリプレイを見る
●本文
●TVCM
――荒野の中、追う者と追われる者あり。
少女達は何かを追って幌馬車駆って町から町へと旅烏。
そんな少女達を追う者の、目的とは如何なるものか。
辿り着いた先で起こる騒動に鳴り響くは銃声。
正義の化身か悪の破壊神か。
今日も硝煙の匂いを漂わせ、少女達を乗せた幌馬車は行く――――。
ゴールディ・ゴールドウィンの駆る幌馬車で旅を続ける少女は三人。
リリィ・ザ・タートル:陽気な人懐っこい性格の良く喋り・食べ・飲むインディアンの娘。
エイミー・ライム:過去の過ちを背負い、贖罪の旅を続ける修道服の娘。
リネット:記憶喪失だが、製造元不明のシングルアクションリボルバーを所持する娘。
そんな少女達を追う者。
ヴィシャス・バイパー、Mr.エンブレム、レイラ・シフォン。
そして、リネットの記憶に浮かび上がるウェスタンハットにマントを靡かせる者とは?
新西部劇『GUN&ROAD』絶賛放送中!!
今日も何処かで少女達の奏でる銃声が響き渡る――――。
「第2話もなかなか巧く演じてくれたわね♪」
「でも監督、レイラ役の女優さんは困惑していたようですよ? だから脇役の少女を演じたんじゃ‥‥」
「そお? 身体張って頑張ってくれたじゃない♪ レイラの方向性は何時でも修正が利くわ。彼女の頑張り次第よ。そーねぇ、ゴールディかリリィに絡めるのも良いんじゃない? 初回の展開からだとゴールディに絡めるのが自然かなぁ? 結果的にリネットとゴールディが傍にいて、撃たれる前に助けたんだし☆ リネットを狙っていても構わないけどね。要は視聴者に不自然さを突っ込まれない説得力が必要なだけ。本当は敵だったけど、気紛れ子猫さんでリネットを助けたでもアリよね」
いつにも増してブロンドヘアの少女は口数が多かった。詳細をアクター達に任せる方向性に変更はないようだ。シリーズの役者に変更が無かったのが嬉しかったのだろう。ビジョンが換わる事ほど不自然なものはない。上機嫌の中、サミィ・ライナー監督は微笑みを浮かべる。
「第3話は野盗から町を防衛する用心棒でいこうかしら♪ 野盗が賞金首なら色々と絡められるんじゃない?」
●trigger2――この町を守れ!
基本は、『町を訪れ、トラブルに巻き込まれ(トラブルを作ってしまい)、力押しで解決(?)して 次の町を目指して旅立つ』です。
・予定プロット:配役の相談による修正可能。
(起)幌馬車の少女達は町に舞い降りた。
主人公達の訪れた町『名称未定(相談で決めて下さい)』の民は、何かに怯えるようにドアを固く閉ざす。
(承)酒場または買い出しの中。
幾多の蹄の音と共に鳴り響く銃声。町に現れたのは少し離れた山間にアジトを構える野盗集団(名称未定:相談してね☆)だ。保安官はヤル気なし、応援を呼ぶ事さえしない体たらく振り。女や金を嵐の如く奪い、奴等は去っていく。主人公達(または情報通)は気付く。
あのボスは確か賞金首だ。
(転)町の用心棒を引き受ける少女達。
何らかの理由(切っ掛け)により、町の防衛を買って出る主人公達。町の外で次の襲来時に迎え撃つか、アジトに奇襲を掛けるか、いずれにしてもドンパチへ展開。
今回の敵は軍用に開発されたガトリングガンを強奪所有している。
(結)野盗のボスを倒し、町に平穏が訪れる。
●募集区分
・主人公:女性(1人)
今回の主人公です。メインの4名の内から相談して決めましょう。
・主人公の仲間:女性(3人〜)
メインの3名です。
・主人公達(幌馬車)を追う者:性別不問(1人〜)
何らかの理由で少女達を追い続ける者です。誰をどんな理由で追っているのか決めておいて下さい。
構成としては毎回なぜか追い着くが、また旅立たれて追跡となる予定。
・今回のサブキャラクター:性別不問(登場頻度が少ない方、または追う者として今回登場しない方)
野盗ボス/野盗ボスの仲間(愛人や信頼されている者等)/町の民(野盗に攫われる等)/その他
今回のNPCです。上記のように、置き換える事が可能です。今回の主人公に関連付けして、過去エピソードを盛り上げるもアリです。
●演じる為に必要な書類項目
・配役:今回の主人公/幌馬車の少女達/幌馬車を追う者/今回のサブキャラクター
・役名:登場人物の名前です。本名で出演してもOK。
・服装:簡潔に。衣装はイメージに合うものを用意する予定です。
・設定:どんなタイプ(設定)のキャラクターを演じるか明記して下さい。
・武器:敵と戦う時に使用する武器です。
尚、結構ノリで制作されている為、とんでもない銃以外は採用予定です。
勿論、所持していなくても、格闘武器でも構いません。
●前回の役者が揃わなかった場合
物語上、役名は変えられませんが、目的等前回語られない部分は修正可能です。
●リプレイ本文
●trigger2
――夜が白み始める中、薄汚れた幌馬車はノンビリとしたリズムを刻みながら荒野を進んでいた。
手綱を握るは未だ幼さの残る風貌の少女だ。金髪ツインテールを馬の歩調に合わせて揺らす、優雅なドレスに身を包んだ娘の表情はかなり眠そうである。ゴールディ・ゴールドウィンは、コクリコクリと睡魔に負けそうになっては薄汚れた地図を眺めていた。
☆銃声SE(CAST)ゴールディ・ゴールドウィン:碧野 風華(fa1788)
ふとゴールディが背後に顔を向ける。瞳に映るは寝息をたてる3人の少女達だ。
リリィ・ザ・タートルは褐色の肌からボロボロのマントを肌蹴させたままアルコールのボトルを抱いており、エイミー・ライムは寝相良く仰向けで穏やかな表情を浮かべて銀髪を振動に揺らしていた。傍に置いてあるのは1冊の聖書だ。
☆(CAST)リリィ・ザ・タートル:クールマ・如月(fa0558)
☆(CAST)エイミー・ライム:水島 無垢(fa1028)
ゴールディの視線が流れ、シーツに身を包んだ少女を捉える。リネットは細身を横にして寝苦しさから端整な風貌に眉を戦慄かせていた。リリィとエイミーは兎も角、未だリネットは馬車で眠る事に慣れていない。
☆(CAST)リネット:華夜(fa1701)
そんな少女達を眺めて薄く微笑み、金髪の少女は再び前を向いて手綱を引く。
更にゆっくりとしたリズムを刻んで歩む幌馬車の後方を、馬に跨ったまま遠くから窺う視線があった。漆黒のスーツを着込み、洒落た帽子を被っている青年の腰に浮かぶは2丁のリボルバー。ヴィシャス・バイパーは地図に指を走らせ、その先に町がある事を確認すると、不敵な笑みを浮かべた。
☆(CAST)ヴィシャス・バイパー:小比類巻レイジ(fa1107)
響き渡ったのは汽笛の音だ。ヴィシャスが赤い瞳を向ける中、薄明かりに列車が浮かぶ。視界が遠方に捉えた列車の窓にズームしてゆき、かなりカサ高いシルクハットを被った紳士を映す出す。腕を組んだまま俯いているのはMr.エンブレム。車掌が横切ってゆくのに気付き、何か手短に話し掛けた後、窓から外の景色を見つめた。
☆(CAST)Mr.エンブレム:芹沢 紋(fa1047)
列車が騒音を響かせて線路を走ってゆく中、砂塵が巻き上がり、幾つも銃創が刻まれたタイトルが模られゆく。
●GUN&ROAD
俯瞰から『フィッシャー・ヴィル』の町が映し出される。早朝の所為か、人影は疎らだ。
町の一郭に視界がズームしてゆき、保安官事務所の窓を映す。
机に長い足を放り出して椅子に踏ん反り返っているのは、帽子を目深に被った1人の青年だ。蹄と車輪の音が聞え、面倒そうに端整な風貌をあげる。セオドア・シモンズの視線を通り過ぎてゆくのは、ゴールディ一向の幌馬車だ。手綱を握る金髪の少女を瞳に捉えてシニカルな笑みを浮かべると、保安官は何事も無かったかのように再び帽子の端を下ろし、再び眠りに入った。
☆(CAST)セオドア・シモンズ:赤倉 玲等(fa2328)
ゴールディの瞳に映るフィッシャー・ヴィルの町は異様だった。町の住人は幌馬車を捉えると、足早に家の中へと駆け込んで行く姿が彼方此方で見られ、開いた窓やドアが次々と勢いの良い音を響かせて閉じられてゆく。幌馬車の窓から顔を出して町を見つめるリネットも不安気に顔色を曇らせた。
「何だか‥‥様子が変ですね。皆さん、表情が暗いというか‥‥」
「‥‥妙だな‥‥この町は。何を脅えている‥‥?」
反対側の窓から様子を窺うエイミーも、赤い瞳を研ぎ澄まし、異常さを感じ取っていた。そんな中、ゴールディが興味なさそうな口振りで声を響かせる。
「気にする必要ないわよ、どーせ娼婦か何かと思ってるんでしょ。それよりいつまでも眠っている酒飲みを起こしてくれない? あら? 人が出て来たわ。‥‥酒場みたいね」
誰もが家の中に閉じ篭る状況で、1軒の酒場から姿を見せたのは、灰色の髪を三つ編みに結った1人の少女だ。入口の傍にある小さな花壇に水を注ぐレイナ・ハワードが幌馬車に気付き、そばかす顔を向けて明るい表情で微笑む。
☆(CAST)レイナ・ハワード:ティーナ・アリスン(fa2462)
「おはよう☆ 旅の方? フィッシャー・ヴィルにようこそ♪」
元気一杯に挨拶するレイナに、唖然とした表情を浮かべるゴールディ一向。気にする必要はないと言ったものの、この町の雰囲気から掛け離れた少女に僅かな動揺の色を見せた。
「お、おはよう‥‥。丁度いいわ。この店、もう開いてるの?」
「軽食程度なら大丈夫よ♪」
「そ、じゃあ馬車を停めたら伺うわ」
幌馬車がゆっくりと通り過ぎる後ろ姿を、レイナの背中が見送っていた。
●朝の酒場と町の状況
「はい☆ おまちどうさま♪」
酒場で軽食を頼むと、レイナが簡単な料理を運んで来た。まだ開店して間に無いのか、それとも開店前なのか、店内にいる客はゴールディ一向のみだ。何時ものように四種四様で、朝食に食らいつく。先ほどまで眠気眼だった白い前髪が右目を覆うショートヘアの少女は、早速酒を喉に流し込み、柔らかそうな銀のロングヘアの少女は修道服の豊かな胸元で手を組み、祈りを捧げてからパンを千切って口に運ぶ。金髪ツインテールの少女は、黙々と料理を口に放り込んでいた。そばかす少女はトレイを胸に抱き、彼女達を見つめていると、カウボーイルックに身を包んだロングヘアの美少女と視線が合う。
「あの、お客様? 私の顔に何か?」
「ううん。何だか懐かしいなぁって‥‥私もね、数日前まで酒場で働いていたの♪ あの時、みんなに出会わなかったら今の旅は無かったわ」
リネットはこれまでの経緯を掻い摘んで話した。レイナは夢物語でも聞くかのように、表情をコロコロと変えてワクワクしたものだ。しかし、次第に表情が曇ってゆく。
「レイナさん? どうしたの? ‥‥つまならかった?」
少女は三つ編みを左右に揺らしてかぶりを振る。
「ううん‥‥実はこの町、野盗の度重なる襲撃に晒されているの。このままじゃこの町も‥‥」
食事を続けるゴールディ達の鋭い視線がレイナに流れた。なるほど、これで町の人が何かに怯えているように見えた事に納得がいく。途端に張り詰めた空気と、食事の手を止めた少女達に慌てて看板娘は明るい声で取り繕う。
「ううん、いつまでもこんなこと続くわけ無いから頑張らないと! ゆっくり食べてね♪」
満面の笑みで背中を向け、厨房に戻るレイナ。弱気になる自分を垣間見せながらも明るく振舞ういじらしい態度に、リネットが囁く。
「ねえ、ゴールディ‥‥」
「駄目よ! いちいち無料奉仕してられないわ」
ぴしゃりと告げられ、流石に少女は愛らしく頬を膨らます。
「そんなぁ、お金お金って‥‥」
「あんたねぇ、バカじゃないの!? いい? 銃を撃てば弾だって減るのよ! 怪我したら治療だってしなきゃいけないの! 銃が壊れたら修理代だって掛かるわ! あんたが身体でも売ってお金を稼いで依頼料を払ってくれるわけ?」
「か、身体って‥‥」
「‥‥止さないか、二人共。まだ、食事中だ‥‥」
落ち着いた響きで、顔を紅潮させるリネットとゴールディを注意するエイミー。空かさずリリィがおどけた調子で宥めるように口を開く。すっかり酔って一人上機嫌だ。
「そうよぉ♪ ゴールディも言い過ぎだよ〜」
「酔っ払いは黙って頂戴!」
リリィ・ザ・タートル秒殺。修道女が穏やかな眼差しをリネットに向ける。
「‥‥私が言える立場ではないかもしれないが‥‥察してやってくれないか」
「う、うん、分かったわ。ゴールディごめんなさい‥‥。私、買物と宿を探して来ます」
「‥‥待って」
呼び止めたゴールディにゆっくりと振り向きながら微笑む。
「高い宿は選びませんよ☆」
行って来まーす♪ とそのまま酒場を出て行くリネット。ツインテールの少女は浮かせた腰をストンと落とし、頬杖をついてバツが悪そうに唇を尖らせた。そんな少女にエイミーが苦笑する。
「‥‥察してやれ」
●強襲! ルール無用のダムダム団!!
太陽が昇り空から陽光を照りつける昼時、リネットは買物を済ませ、安宿の帰路に着いていた。両手に紙袋を抱えた細身の少女は満足気な表情で、小気味良くウエスタンブーツの靴音を鳴らしてゆく。
「フィッシャー・ヴィルって魚の獲れる町だったのね。保存が利く食べ物が豊富で助かったわ♪」
刹那、響き渡ったのは銃声と幾つもの蹄の音だ。次第に耳に近付いている事が分かる中、周囲では外に出ていた住民が蜘蛛の子を散らすように駆け回り、次々と家中のドアや窓が音を立てる。
「えっ‥‥な、何?」
ロングヘアを左右に揺らし呆然と立ち尽くして周囲を見渡すリネット。視界に映ったのは走る子供の転んだ瞬間だ。
「あ、だいじょう‥‥」
駆けつけようとした刹那、一発の銃声と共に鮮血が舞い、立ち上がろうとしていた小さな影がパタリと倒れた。少女は紙袋を地面に落とし、両手を頬に当てて戦慄の表情を露に甲高い悲鳴を響かせる。
「きゃあぁぁ!」
『ひぃやっほーッ!! 命中したぜ!』
『おい、もう1人いるぞ! ありゃあ女じゃねーか?』
マズイ! 腰に手を回すものの身を守ってくれる得物は無く、慌ててリネットは一気に駆け出した。間一髪で銃弾が地面を削り土煙を舞い上がらせる。馬の嘶きと共に蹄の音が追い掛けて来る。
――そうだ! 保安官がいたわ!
向かう先々で蹄の音が駆け回り、彼方此方で悲鳴と銃声が響き渡った。少女は建物を障壁とし、隙を窺いながら保安官事務所に駆け込んだ。腰を屈めて荒い息を吐きながら周囲を見渡すと、椅子に踏ん反り返った背中を捉える。既に絶命したのか? ゆっくりと近付く中、靴音に気付いた青年が端整な風貌を向けた。思わず素っ頓狂な声をリネットがあげる。
「‥‥えっ? ち、ちょっと、なに呑気そうにしているんですか? 町が大変な事に‥‥」
「あぁ、ダムダム団ね。最近、この辺りを荒らしてる野盗だ。偶に来ては好き放題暴れて行くんだよねぇ」
はい? まるで悪戯っ子が騒いだだけのような感覚の若き保安官に、一瞬言葉を失う。
「だ、だったら早く何とかして下さい! さっき目の前で、子供が‥‥」
「おいおい、俺が生きてるからこの位で済んでるんだぜ? 俺がいなきゃ皆殺しさ。ここに暫らくいれば連中は帰るぜ♪」
シニカルな笑みを浮かべるセオドア。
「し、信じられない‥‥。応援とか呼べばいいじゃない! 何のための保安官なの! 腰の銃は飾り物!? そのバッヂだって‥‥!」
「応援? 面倒臭いしよ、あれだけの数に対抗できる人数がこんな田舎に集まるとも思えねえ。保安官として最低限の命は守る‥‥俺は間違っちゃないと思うんだがなあ‥‥ところでお嬢ちゃん、可愛いな。どうだい、今夜酒場で」
ペラペラと青年が話す中、リネットは俯きながら肩を震わせてゆく。セオドアが口説き始めた刹那、怒りを露に少女が顔をあげた。
――ぱんっ★
「呆れたわ! 話にならない! 銃を借りるわよ」
保安官の頬を勢い良く叩くと、頬を赤く腫らし呆然とする青年の腰から拳銃を引き抜く。刹那、セオドアがリネットの腕を思いっきり掴んだ。
「きゃっ、い、痛いじゃ‥‥」
「大人しくしろって! 連中の御帰還だぜ。ここで騒ぎを起こして見ろ。お嬢ちゃんを見つけるまで町を荒し捲るぜ」
次第に響き渡る数多の蹄の音。保安官事務所の窓から映るは、ダムダム団の乗った馬の後ろ姿だ。肩に女を抱える者がいれば、馬の背で気を失ったまま連れ去られる娘も見掛けられた。連中の一人が窓から中を覗い、下卑た笑みを浮かべてゆく。
「セオドアよぉ、この状況で女と仲良くやってるとは結構な身分だなぁ♪」
『いやぁッ、放して下さいッ!』
――この声は!?
青年が愛想笑いを張り付ける中、リネットは注意深く窓から外に視線を流す。瞳に映ったのは、両手足を縛られ、馬の背に括り付けられて連れ去られようとするレイナの姿だ。抵抗の痕が浮かぶ汚れた衣服が痛々しい。しかし、今、飛び出したとしても何も出来ないのは事実だ。現に青年は細い手首を腰の前で掴み、窓から映る自分達が有らぬ誤解を見せる格好となっている。
――きっと‥‥きっと助けるからッ!
「よお、保安官。また近い内に来るからよ。しっかり働かせて美味い食料と女を用意しとけよ」
ヌゥッと顔を覗かせたのは髭面の男だ。端整とも精悍とも程遠い風貌に、セオドアが満面の笑みを贈る。どうやらダムダム団のボスらしい。
こうして吹き荒れた暴力の嵐は治まり、町の住民達がドアや窓を開けてゆく。ある者は互いの無事を喜び合い、ある者は名前を呼び叫ぶ。路上には逃げ遅れた骸が転がり、生気の失せた瞳で引き摺ってゆく。正に弱肉強食の無法地帯が、当たり前のように浮かび上がっていた。
「なんてこと‥‥」
酒場の前では、小さな花壇が崩れ、水を入れた硝子瓶が割れていた。恐らくレイナは花に水をやる為、外に出た所を連れ去られる結果となったらしい。リネットが傷心の色を浮かべたまま、軋む酒場のドアを開く。瞳に映ったのは、3人の仲間達だ。
●幕間・漆黒の男
「町側は腕利きの用心棒を雇った様子‥‥どうだ? 俺を雇ってみないか? 絶対に損はさせない」
端整な風貌を洒落た帽子から覗かせる青年が、髭面の男に眼差しを向けたまま、瞬速で背後に銃声を響かせた。崩れるは2人の野盗。怒りも露に次々と銃を抜く中、腰を捻って数発の銃声を鳴らす。
「こんな無能な連中抱えるより1人雇った方が得だぜ?」
青年に銃口を向ける者は誰1人としていなくなっていた――――。
●反撃の反則ガールズ
「ダムダム団のボス、プリンス・ダムダムね。プリンスって顔じゃないわよね、あの髭面」
「すっごーい☆ ゴールディってば知り合いなのぉ?」
野盗の正体をズバリ言い当てた少女に、リリィが両手を胸元で組んで感嘆の声をあげた。
「バカ言わないでよ。私の頭には全ての賞金首が入ってるのよ♪」
ふふん♪ と自慢気に人差し指を出して微笑むツインテールの少女。刹那、賞金首に反応したのは2人の少女だ。その1人であるエイミーが赤い瞳を研ぎ澄ます。
「‥‥賞金首だと?」
「なら、やっつければ賞金が入るんじゃないですか?」
「賞金‥‥賞金あれば、お酒飲めるわよねぇ♪」
食い入るように顔を寄せるリネットとリリィ。しかし、ゴールディの答えは期待を裏切るものだ。
「賞金ったって、安いのよー。いいえ、安過ぎるの‥‥弾代の方が高くつくわ〜」
『それがそうでもないのですよ』
聞き慣れない男の声が流れた。否、彼の声に修道服の少女は驚愕の色を浮かべる。ゴールディを説得していた2人の少女が腰を捻って振り返り、椅子に腰を降ろしている金髪の少女と銀髪の少女が瞳を向けた。彼女達の視線を一身に受けるのは、かなりカサ高いシルクハットを被った紳士だ。刹那、リリィの表情が鋭さを増す。精悍な男は黒い瞳を流し、口を開く。
「またお会いしましたね、シスター」
「Mr.エンブレムさん? あの時は‥‥お世話になりました。紹介する‥‥孤児院の件で‥‥援助してくれた、方だ」
「Mr.エンブレム〜? エイミーちゃん、それ本名な訳〜?」
「リリィ! 失礼だぞ!」
明らかに訝しげな表情を見せる褐色の少女を、修道服の少女が咎める。Mr.エンブレムは穏やかな表情で両の掌を向け、苦笑した。
「まあまあ。私の事はお気にならさず。それより、賞金首の話ですが‥‥」
途端に男の瞳が険しい色を放つ。
「彼等の賞金は3倍に跳ね上がりました。輸送中のガトリングガンを強奪したようでしてね‥‥それに、凄腕の助っ人もついたらしく‥‥」
「3倍ですって!?」
バンとテーブルを叩き腰をあげるゴールディ。ガクガクと膝が戦慄いている。どうやら相当な額になったようだ。穏やかな笑みを向けるエイミー。
「捨て置くわけには‥‥いかない。付き合おう、ゴールディ‥‥ヤツらに、裁きを‥‥受けさせてやる」
ググッと小さな拳を握り締め、ツインテールの少女が不敵な笑みを浮かべた。
「エイミー! リリィ! リネット! プリンス・ダムダムを撃つわよ! ついでにその武器、絶対私の物にするッ!」
●幕間・漆黒の男2
洒落た帽子を被った男がアジトの中を歩いていると、一室のドアが開き、野盗の男が呼び止める。
「よぉ、にぃちゃん。あんたもどうだ? 声も出さねぇが退屈凌ぎにはなるぜ?」
青年は鍵を渡されドアを開く。瞳に映ったのは、汚れたベッドの上で白い肢体を晒す三つ編みの少女だ。小刻みに震える背中に靴音を響かせると、レイナが涙に濡れた瞳をあげて睨み付ける。
「暇そうね‥‥どんな辱めを受けたって、私は屈しないわ!」
青年は静かにそばかす少女を見下ろしていた――――。
●銃声の中で交差する想い
――ならば私の情報を教えて差し上げましょう。
Mr.エンブレムの声が流れる中、少女達は戦闘準備に入る。エイミーがひざまづいて十字架を胸元で握り締め、リネットが細い腰にガンベルトを巻いて愛用の銃を握り、感触を確かめる。
――ダムダム団は谷間の家々を奪い、道をガトリングガンで護り、近づけないようにしています。
ゴールディが馬車に戻り、中から大量の銃器を取り出し微笑む。
「今回はどれにしようかしら‥‥うふふ☆」
リリィは保安官事務所に偲び込み、満面の笑みで銃や弾薬を身に着けてゆく。
「こんなトコで湿気っちゃってたら、勿体無いわよね‥‥うんうん、有効活用♪」
――しかし、過信は過ちの元。盲点を突けば突破するのは容易でしょう。
羽冠を被り、戦のメイクを顔に施した褐色の少女が、インディアンの伝統的衣装を纏って荒野を駆け抜ける。リリィはインディアンとしての土地感を活かし、抜け道を探し出そうとしているのだ。
「う〜ん‥‥この地形だと、こっちかな? よし、当ったり♪ へへ〜、偶には役に立つでしょ?」
「上出来よ☆ ふふん♪ 見てなさいよ〜ガンスモーク・ゴールディの意味を教えてあげるわ!」
大きく足を開き、左右に腕をクロスさせて腰から引き抜くは2丁のダブルペッパーボックスの拳銃だ。バレルが12覗える奇銃は両手に1丁ずつ――つまり計24発を同時にバラ撒ける代物である。常識ハズレな異常に幅広い銃身は比例して重さも相当なもの。プルプルと細腕を震わせつつ、ゴールディが駆け出しながらトリガーを絞る。
「当てるのが目的じゃないのよ♪」
一気に破裂音のような銃声を響かせ、銃弾がバラ撒かれてゆく。忽ち周囲が硝煙に曇る中、撃ち尽くした銃身を外してガンベルトに備え付けてある換えの銃身と交換する。再び鳴り響く銃声。
『襲撃だぁ!! くそッ、よく見えねぇ!』
『奴が言ってた町の用心棒かよ!? 構わねぇ、撃てッ撃ち捲‥‥ッ!』
『お、おいッ、何が起き‥‥ッ!』
次々と銃声が響き渡り、また一人短い断末魔と共に転がる。リリィの歓喜が響く。
「他人の弾だと、気兼ねなくぶっ放せるわよね〜♪ ‥‥いやん、興奮してきちゃった☆」
保安官事務所から奪った銃を両手に構え、恍惚の表情を浮かべて腰を振る。狩りの衣装が薄手の生地だけに、零れんばかりの二つの膨らみと、腰巻きが魅惑的に揺れていた。
「もう‥‥見てる方が恥かしいなぁ‥‥そこッ!」
リリィの仕草に頬を染めながら、リネットが身を隠しながら硝煙に浮かぶ影目掛けて愛用のリボルバーを撃ち捲る。派手さは無いが狙いの確かな腕は、次々と野盗を崩れさせてゆく。同様の戦法を行っているのは修道服の少女だ。深いスリットの入った白い足を幅広に構え、純銀に輝く2丁のライフル『クルセイダーズ』で、弾幕を抜けて来た連中を次々と沈めていた。刹那、煙る視界から1発の銃声が響き渡り、長いスカートの一部を散り飛ばす。研ぎ澄まされる氷のようなエイミーの視線に、1人の青年が浮かび上がり、赤い瞳を見開く。
「お前‥‥!」
対峙するエイミーとヴィシャス。彼が構えているのは2丁のネービーリボルバーだ。目深に被った洒落た帽子から瞳を覗かせ、不敵な笑みを見せておどける。
「こんな所で再会するとは、俺とお嬢さん方とはきっと運命の紅い糸で結ばれているんだな♪」
「孤児院の、一件は‥‥感謝している。だが、敵に回った以上、言っておこう‥‥顔見知りだといえ、懺悔は聞かない」
「こっちも同じさ。俺は用心棒だ、雇い主の善悪は問わないさ‥‥お嬢さんだけでも止めさせてもらう」
「‥‥笑止!」
エイミーが銀髪を揺らして地を蹴ると同時に銃声が鳴り、彼女のいた地点に土煙が舞う。肉迫せんとする修道服の少女が左右に跳びながらクルセイダーズの先端に輝く銃剣を煌かす。ヴィシャスのスーツの端が千切れ飛ぶと同時、銃弾が少女の身体を掠ってゆく――――。
――2人が鮮烈な決闘を繰り広げる中、ダムダム団の拠点は硝煙に包み込まれていた。
火力に任せて撃ち捲るガンハッピーなゴールディとリリィ。戦況を離れた場所から覗い、確実に仕留めるリネット。そんなカウボーイルックの少女が、瞳に映る物騒な影に戦慄する。
「ゴールディ! リリィ! ガトリング‥‥ッ!!」
リネットの叫びは、奏でられたけたたましい咆哮と共に掻き消された。左右に銃身を揺らしながらハンドルを廻す度に銃弾の雨がバラ撒かれ、流石の2人も素早く地に伏せて遮蔽物に転がる。
「ガトリングガン!! いいわねぇ、こっちが使いたい位だわ‥‥」
遠方から援護していた少女も身を隠して両手で耳を押えた。遮蔽物の一部が傍で弾け飛ぶ。
「ガトリングガン‥‥拳銃一つじゃ、対抗できないかも‥‥でもいいなぁ‥‥これ。欲しいかも」
何とか接近を試みようと顔を覗かせるが、鳴り止まぬ咆哮に再び頭を隠す。響き渡るは男の豪快な笑い声だ。
『ふっはっはーッ!! 隠れているネズミは出て来やがれ!!』
――ここまでのようね‥‥。
ツインテールの少女が愛用の銃をあげたまま姿を見せる。続いてリリィが魅惑的な容貌を晒し、リネットが両手をゆっくりとあげた。一陣の突風が砂塵を巻き上げ、3人の少女達が浮かび上がる。プリンス・ダムダムが髭を弄りニヤリと汚い歯を見せた。
「これはこれは、上玉のレディが3人もかよ! さっさと物騒な得物を捨てな。おまえ達にはもっといいものを握らせてやるぜぇ」
下卑た笑い声が沸き起こる。リネットは顔色を真っ青にして、ゴールディ達に瞳を向けた。
「仕方が無いわね。負けたわ‥‥待ってよ、取引しない? ゴールディって名前、賞金首なら知ってるでしょ? 私達を仲間にしてくれたら、そっちの美少女から順に一枚ずつ脱いであげるわ☆ どお? 丸腰と分かった方が良いし、そのまま楽しめるでしょ?」
「ほぉ、おまえが悪名高いゴールディ・グリーディとかガンスモーク・ゴールディと呼ばれている女かよ。こんな小娘とは意外だったぜ。‥‥おい、女、さっさと脱げ!」
「ちょっと! 何で私からなんですか‥‥!」
金髪の少女はリネットを見つめて瞳を研ぎ澄ます。ロングヘアの美少女は頬を染めると、渋々と屈み込んでブーツを脱いで手に持った。
「えっと‥‥それじゃブー‥‥きゃッ」
刹那、盛大な爆発音がダムダム団の背後で巻き上がった。炎と共に飛び散るはアジトだった建物の塊だ。この隙をゴールディは逃さない。フリルの施されたスカートを翻すと、中から大型拳銃を取り出す。慌てたのはプリンス・ダムダムだ――――。
――派手に爆発音が轟く中、二人の対決も終結を迎えていた。
ダムダム団のアジトが爆破されたと共に、構えていたリボルバーをあげてヒラリと切先の洗礼を躱してバックステップ。ヴィシャスが薄く微笑むと、エイミーが動揺の色を浮かべる。
「‥‥お前?」
「危ない危ない。敵を騙すには、先ずは味方から‥‥ってね?」
それでも用心深く切先を向け続ける修道服の少女。青年は両手をあげておどけて見せた。
「信用低いな‥‥。時限式発火装置を仕掛けておいたのさ。連れ去られた女性達は助け済みなんだがね」
「‥‥ならば、次の行動は‥‥承知しているな」
不敵な笑みを互いに浮かべ、2人は駆け出した――――。
「私の必殺技、見せてあげる!!」
大口径リボルバーを両手で構え、鈍い銃声を響かせた。衝撃にゴールディが尻餅を着く中、放たれた弾丸が遥かプリンスの頭上を通り過ぎた。呆気に取られるリネット。
――反動で狙いが狂った? ‥‥ってブーツなんか持ってる場合じゃないわ!
リリィとリネットが素早く銃を拾い上げようと腰を屈める。同時にガトリングガンの射手と髭面の男がニタリと歯を見せた。画面が分割され、双方の動きがスローモーションで描き出されてゆく。刹那、縦に割れた1コマに不敵な笑みを浮かべたツインテールの少女が映る。
――カンッ★
――キンッ★
弾丸は頭上の岩山に当たり、石を弾き飛ばしながら跳弾、次々と甲高い音と共に岩山が煙を吹き上げる中、ダムダム団の連中も頭を振って行方を追う。次第に下がって行く視線。次の瞬間――――。
――コッ★
響き渡った一際鈍い音と共にガトリングガンから大きな火花が迸った。目を痛めて絶叫する射手。パチン♪ とゴールディが指を鳴らす。
「BINGO!! ‥‥じゃな〜いっ! ズレた〜っ! 射手を撃つつもりだったのにぃ‥‥」
どうやら跳弾はガトリングガンの機構部を破壊してしまったようだ。ガクリとツインテールの少女が肩を落とす。
後の始末は簡単だった。切り札を無くしたダムダム団が戦闘再開と動き出すが、既に得物を構えたリネットとリリィ、駆けつけたエイミーにヴィシャスの活躍により、一つの悪が滅んだのである。
●リリィの眼差しとエンブレムの男
「やっぱり壊しちゃったぁ‥‥しょぼーん」
機能を果たさなくなった物騒な得物に、ペタンと尻を着くゴールディ。残念そうに指を咥えるリネットとリリィ。修道服のフードを被りながら少女が訊ねた。ツインテールを揺らし、涙目で答える。
「銃を欲しがる理由? 賞金首を倒してお金を稼ぐ為よ! お金を欲しがる理由? 銃を手に入れる為よ!」
「やれやれ、お前らしいな‥‥」
ゴールディの頭を撫でつつ苦笑するエイミー。そんな中、拍手を響かせながら男が姿を見せる。
「お見事です、皆さん」
獅子をあしらった紋付きライフル銃を小脇に抱えたMr.エンブレムの背後から、数名の男達が雪崩れ込み、ダムダム団を連行してゆく。後始末は任せて下さいと言った所か。
「おかげさまで強奪された武器も回収できました。賞金の方は後ほどお渡ししますよ」
ゴールディと握手を交すと、紳士はシルクハットを指で摘んで少女達に挨拶してゆく。交差するMr.エンブレムとリリィの視線。
――まさか‥‥あいつは‥‥!?
「これでこの町も平和になりますね☆ ‥‥リリィ?」
「う〜ん‥‥あ、何でも無いのよぅ♪ さ、これで酒が飲み放題よぉ☆」
「誰も飲み放題なんて言ってないわよ!」
「えぇ〜〜」
事件解決を喜ぶ少女達の声を背中で聞き、男は精悍な風貌に瞳を研ぎ澄ます。
――ふむ、警戒するべきはあの小娘か‥‥。
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