GUN&ROAD T3南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 切磋巧実
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/25〜03/01
前回のリプレイを見る

●本文

●TVCM
 ――荒野の中、追う者と追われる者あり。
 少女達は何かを追って幌馬車駆って町から町へと旅烏。
 そんな少女達を追う者の、目的とは如何なるものか。
 辿り着いた先で起こる騒動に鳴り響くは銃声。
 正義の化身か悪の破壊神か。
 今日も硝煙の匂いを漂わせ、少女達を乗せた幌馬車は行く――――。

 幌馬車で旅を続ける少女は四人。
 ゴールディ・ゴールドウィン:賞金首を倒してお金を稼ぐ為に銃をコレクションする娘。
 リリィ・ザ・タートル:陽気な人懐っこい性格の良く喋り・食べ・飲むインディアンの娘。
 エイミー・ライム:過去の過ちを背負い、贖罪の旅を続ける修道服の娘。
 リネット:記憶喪失だが、製造元不明のシングルアクションリボルバーを所持する娘。
 そんな少女達を追う者。
 ヴィシャス・バイパー、Mr.エンブレム、レイラ・シフォン。
 Mr.エンブレムとリリィの交差した瞳は何を意味するのか?
 そして、リネットの記憶に浮かび上がるウェスタンハットにマントを靡かせる者とは?
 新西部劇『GUN&ROAD』絶賛放送中!!
 今日も何処かで少女達の奏でる銃声が響き渡る――――。

「第3話もなかなか巧く演じてくれたわね♪ リネットが忙しくて打ち合わせ不足だったけどね。レイラ役の娘も体当りで演技してくれるわね☆」
「そろそろ登場しますかね? このまま端役を続けても演技の幅は広がりますけど‥‥」
「ある程度の方向は固まって来たって聞いたわ。さて、第4話ね♪」
 サミィ・ライナー監督は浮いた足をブラブラと揺らしながらパソコンのキーを叩き出す。
「そーねぇ。冒頭のタイトル前のプロローグ部分も任せましょうか☆ やはり冒頭の掴みは大切だもんね♪ あ、偶にお遊び的な話も用意しとこうかしら? 水着の町とかぁ、美青年の支配するハーレムの町とかさぁ☆」
 ――‥‥監督、西部劇じゃなかったんですか?

●trigger3――復讐に正義はあるか?
 基本は、『町を訪れ、トラブルに巻き込まれ(トラブルを作ってしまい)、力押しで解決(?)して 次の町を目指して旅立つ』です。

・予定プロット:配役の相談による修正可能。
(起)幌馬車の少女達は町に舞い降りた。
 主人公達の訪れた町『名称未定(相談で決めて下さい)』は近代化の進んだ立派な所だ。治安も安定しており、平穏そのものに見えた。
(承)夜に蠢く死霊と町の歴史。
 深夜、町が騒がしく動き出す。死霊と呼ばれる死人が現れたというのだ。主人公達も初めは疑うが、確かに朽ち果てた肉体が徘徊していた。町の自警団と応戦。聞けば、この町は先住民を追い払って作られた歴史があり、今も先住民の生き残りが恨みの呪いを掛けているという。近く、抹殺が行われるらしいが‥‥。
(転)翌日、気になって先住民の住む村へ赴く主人公達。
 先住民は言う『多くの民が殺された。だから闇の儀式を行使しても復讐するのだ』と。
 インディアンのリリィ。贖罪の旅を続けるシスターのエイミー。そして、ゴールディとリネット。説得かどちらかとの共闘か?
(結)全てが集束する道は‥‥。
 夜になれば再び死人を甦らせ、復讐の刃を向けるという先住民の生き残り。次に襲撃があったら翌朝には抹殺に動き出すという自警団。それぞれの想いが交差する中に下す決断とは?


●募集区分
・主人公:女性(1人)
 今回の主人公です。メインの4名の内から相談して決めましょう。

・主人公の仲間:女性(3人〜)
 メインの3名です。
 
・主人公達(幌馬車)を追う者:性別不問(1人〜)
 何らかの理由で少女達を追い続ける者です。誰をどんな理由で追っているのか決めておいて下さい。
 構成としては毎回なぜか追い着くが、また旅立たれて追跡となる予定。

・今回のサブキャラクター:性別不問(登場頻度が少ない方、または追う者として今回登場しない方)
 自警団リーダー/先住民の生き残り/町の民/その他(死霊!?)
 今回のNPCです。上記のように、置き換える事が可能です。今回の主人公に関連付けして、過去エピソードを盛り上げるもアリです。


●演じる為に必要な書類項目
・配役:今回の主人公/幌馬車の少女達/幌馬車を追う者/今回のサブキャラクター
・役名:登場人物の名前です。本名で出演してもOK。
・服装:簡潔に。衣装はイメージに合うものを用意する予定です。
・設定:どんなタイプ(設定)のキャラクターを演じるか明記して下さい。
・容姿:髪型や髪色、瞳の色など、明記していなければ役者のそのままとします。
・武器:敵と戦う時に使用する武器です。
 尚、結構ノリで制作されている為、とんでもない銃以外は採用予定です。
 勿論、所持していなくても、格闘武器でも構いません。


●前回の役者が揃わなかった場合
 物語上、役名は変えられませんが、目的等前回語られない部分は修正可能です。

「‥‥って監督、またゾンビですか?」
「違うわ! 死霊よ。先住民とか宗教的な感じが出るじゃない?」

●今回の参加者

 fa0558 クールマ・如月(20歳・♀・亀)
 fa1028 水島 無垢(19歳・♀・狼)
 fa1047 芹沢 紋(45歳・♂・獅子)
 fa1107 小比類巻レイジ(25歳・♂・蝙蝠)
 fa1701 華夜(18歳・♀・猫)
 fa1788 碧野 風華(16歳・♀・ハムスター)
 fa2328 赤倉 玲等(20歳・♂・狐)
 fa2462 ティーナ・アリスン(18歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

●trigger3
 ――闇の中で、幾つもの銃声が鳴り出すと共に、様々な悲鳴が響き渡った。
 バチバチと火の粉が燃えるような音も聞えるが、火事だろうか‥‥。
★(CAST)リリィ・ザ・タートル:クールマ・如月(fa0558)
「女子供は早く逃げて! 誰か、護衛について頂戴!」
 辺り一帯の家々が燃え盛る中、炎に照り返した少女が映る。獣の皮を縫った丈の短い衣服を纏う褐色の肌には赤い香料のペイントが施されており、インディアンの娘だと読み取れた。未だあどけなさは残るが、白い髪と魅惑的な肢体から、彼女が数年前のリリィ・ザ・タートルと予感させる。
★(暗転と共に)ゴールディ・ゴールドウィン:碧野 風華(fa1788)
『一人も残すな! 撃ち殺せ!』
 四方八方で響き渡る銃声と断末魔。リリィは虐殺の中を必死に逃げ惑う。手に持っている得物は一本の槍だ。鉛の弾と遣り合うにはあまりにも頼りない。素足が地を駆け、荒い息遣いが響く。
★リネット:華夜(fa1701)
「はっ!?」
 刹那、リリィの行く手を遮ったのは黒い巨大な影だ。戦慄を浮かべた黒い瞳に映るは、馬が嘶く姿と、テンガロンハットを被った馬上の男。ニヤリと口元を歪ませ、ゆっくりと銃口が向けられた。絞られるゆく引鉄。乾いた銃声が鳴り響く。
★ヴィシャス・バイパー:小比類巻レイジ(fa1107)
 鮮血が舞い散る中、崩れたのは馬上の男だ。しなやかな両足を戦慄かせ、呆然と立ち尽くすリリィ。地面に倒れた男の首に深く突き刺さるは一本のナイフ。少女の泳ぐ瞳が一点に絞られる。
★レイラ・シフォン:ティーナ・アリスン(fa2462)
「レイン‥‥」
 リリィの瞳に映るは獣皮の衣服を纏う羽飾りを着けた男だ。両頬と額に軽くペイントが施された赤銅色の風貌は、彼女の仲間である事を示す。
「怪我は無いか? おいッ!?」
 地を蹴ると共に少女が抱きつき、レイン・ザ・タートルは動揺の声を洩らした。男は震えるリリィの身体を静かに包み込んだ。
「‥‥レイン、無事だったんだね」
「あぁ、私は大丈夫だ。さあ、ここを早く離れよう‥‥!!」
★レイン・ザ・タートル:芹沢 紋(fa1047)
 レインが突然リリィを抱き締めたまま身を翻した。少女の白い髪が舞い流れる中、一発の銃声が鳴り響く。一瞬、何が起きたか分からず呆然とする少女から、ゆっくりと崩れる男。
「レイン? レインッ!? どうしたの!? レインッ!! 血が‥‥‥‥!!」
 撃たれたのは背中。レインはリリィを庇ったのだ。悲痛な声で泣き叫んだ少女が、ゆっくりと瞳をあげる。視界に映るは銃口から硝煙を漂わせ、炎に照り返すシルクハットの影――――。

●(呻き声の如く吹き荒ぶ風のSE)GUN&ROAD――復讐に正義はあるか?
 リリィは涙で濡れた瞳を見開いた。視界に薄汚れた木製の低い天井が映る。小刻みに身体を揺らす感覚は馬車の中である事を示す。
「‥‥そうか、ゴールディの幌馬車の中なんだっけ‥‥」
『リリィ、そろそろ起きたら?』
 聞き慣れた少女の声が飛び込む。視界を流すと着飾ったドレスに身を包んだ小さな背中が、振動に揺れる金のツインテールと共に浮かんだ。ゴールディ・ゴールドウィンの隣にはカウボーイ風の衣服を着込んだ、腰まで届く艶のある黒髪の美少女がいる。
「次の町って、もう少しで着くんですか?」
 リネットの問い掛けに、ゴールディは薄汚れた地図をガサゴソと開く。
「ええと、クリムゾン・ヴァレーって街よ」
「クリムゾン・ヴァレー‥‥血に染まった谷‥‥なんだか不吉な名前ですね」
 口元に指を当て、ぽやんとした口振りで美少女が白み始めた空を見上げた。
「不吉な名前? そうかもねぇ。昔住んでたインディアンと戦って、勝ち取った土地だって話よ。ゆっくり出来れば構わないわ」
 首を左右に傾げるゴールディ。安堵の表情を浮かべる少女は馬車を駆る長旅で疲れも溜まっているようだ。そんな中、眠気眼でリリィが顔を出す。
「えぇ〜〜、ここには行きたくないって、ワタシは前から言ってたじゃないの〜」
「酔っ払いの意見なんて却下よ。用事があるって分かれたエイミーと合流しなきゃならないし、この先に暫らく町は無いんだから」
 軽い口調で告げられ、褐色の娘はガクリと項垂れた。朝日が昇る中、山間の谷に『クリムゾン・ヴァレー』が浮かび上がる。

●再会
 幌馬車が門を潜ると、ゴールディとリネットは感嘆の声をあげて周囲を見渡した。地面は極めて平らで、住民は皆紳士淑女の雰囲気を醸し出している。店先も活気に満ち溢れ、子供達がハシャギながら走り回る光景が治安の良さと平穏を物語っているようだ。
「すっごいいい街ねぇ! 私たちも大分旅してきたけど、こんな街はそうそう無いわよ!」
 茶色の瞳を爛々と輝かせて期待に胸を膨らますツインテールの少女と裏腹に、リネットは何処か釈然としない面持ちで、胸元に手を当てながらポツリポツリと呟く。
「平和で‥‥平穏で。綺麗な町‥‥でも、何か‥‥」
「見慣れてないだけよ。閑散として荒くれ共が朝っぱらから酒を呑んで、銃声と女の悲鳴が響き渡るだけが世の中じゃないわ。ここなら、リネットの過去も何かあるかもしれないじゃない?」
「えぇ? そうですか? こんな綺麗な町に‥‥私の過去なんて‥‥」
「記憶喪失には衝撃的な体験が効果的なのよ。ふ〜、久し振りに楽しめそうだわ♪ 先ずは食事よね☆ あそこで馬車を預かってくれるのかしら?」
 ゴールディ一行は馬車を預けた後、町を散策してゆく。気のせいか住民の瞳が少女達に注がれており、怪訝な表情を向ける者も見掛けられた。恐る恐る周囲を見渡し、リネットが呟く。
「やっぱり‥‥何か、変な感じです‥‥」
「変ねぇ? 馬車を預けた時も急に愛想笑いが消えたし‥‥あ、ここにするわよ‥‥って、なに?」
 食堂を見付けて中に入ろうとしたゴールディが怪訝な色を見せた。リネットが看板に瞳を流す。
「‥‥インディアン、お断り?」
 両腕を頭の後ろに回し、苦笑したのはリリィだ。
「やっぱりね‥‥いーわよ、お酒だけ頂戴。馬車で大人しくしてるから」
 思えば、町に着いてから何時も陽気な少女が静かだった。住民の視線が痛かった理由に察しが着く。
「分かったわ。ボトルで買ってあげるから待ってて」
「えぇ? ゴールディ、リリィは何もしていないじゃないですか?」
「いいんだよ、リネットちゃん。町には町の決まりがあるんだから‥‥。気にしないで、ワタシはお酒が呑めれば良いから♪」
 俯いて自嘲気味に笑みを浮かべるリリィの瞳は、テンガロンハットから覗く長い白髪で見えない。ゴールディからボトルを受け取ると、ボロボロのマントで風を切りながら戻って行く。
「ふん‥‥山や風は、変わらないのに‥‥」
 一方、食事を済ませたゴールディとリネットは、町を散策していた。早く馬車に戻ろうと黒髪の美少女が告げたが、金髪の少女は耳を貸さなかったらしく、浮かない顔のまま付いて行く。
「あれ? あの女の人、前に会っていませんか?」
 リネットが前を指差して声をあげた。視界に映るは、胸元の開いたカウガール風の衣服に身を包み、深いスリットの入ったスカートを履いた女だ。数名の男達と話していたレイラ・シフォンは、灰色のショートヘアを軽やかに揺らし、円らな赤い瞳を向けると、僅かに驚愕の色を浮かべた。
「あら、この間の‥‥元気してた?」
「‥‥誰? リネット」
 ゴールディの一言にレイラは固まる。慌ててリネットがフォローに入った。
「だ、誰って‥‥えーと、多分、助けてもらった事があったような‥‥」
 ぽけ〜とした表情で、口元に指を当てながら空を見上げる美少女。当てにはならないようだ。
「ちょっとちょっと、二人してその反応はなに? まぁ、真夜中だったし、名前も告げた覚えはないけど‥‥。レイラ・シフォン、これでも命の恩人よ?」
「命の恩人?」「‥‥らしいです」
「(な、なんて記憶の悪い娘たちかしら)ま、まぁ、恩を着せる訳じゃないから気にしなくていいわ。ふーん、この町に来たんだぁ♪」
 軽く腕を組んでニンマリと微笑むレイラ。ゴールディが訝しげな表情を浮かべる。
「‥‥なによ、何か言いたい事でもあるわけ?」
「何でもないわぁ☆ また会いましょ♪」
 思わせぶりな態度で背中を向け、灰髪の少女は街角へと姿を消した。刹那、ポンと手を叩き、リネットが声をあげる。
「あーッ、思い出しました!」
「もういいわ。先を急ぐわよ」
 えぇ〜〜!? 残念そうな少女の声が棚引いてゆく――――。

●死霊
 深夜、リリィは幌馬車の中でボトルと抱きながら眠っていた。
 食堂が『お断り』なら宿屋とて同様だ。すーすーと寝息を立てる少女の耳に、呻き声が流れて来る。馬も動揺を露に幌を揺らした為、寝惚け眼をゆっくりと開く。
「‥‥ん、なぁに? もお、静かにしてよ〜」
 次に響き渡ったのは幾つもの靴音だ。男達の声も聞える。
『また現れたぞ! 死霊だ! 急げ!』
 ガバッと跳ね起きるリリィ。機敏な動作で馬車から飛び降り、得物を構えた。遠くの方から銃声が響き渡る。
「‥‥何が起きたっていうのよ。死霊?」
 ――Woou、u
「誰!?」
 背後から飛び込んだ呻き声に少女はマントを翻して銃口を向けた。視界に映るは、月明かりに浮かぶ朽ち果てた肉体だ。因みに昼の番組なので特殊効果はほどほどに処理されている。昼の食事時に気味悪い者など見せる訳にはいかない。
「インディアン‥‥こいつらまさか、『形容しがたき物』‥‥!?」
 少女の呟きに呼応する如く、死霊は大きく口を開き、赤い眼光をギラつけせると、腕を前に突き出して尚も間合いを詰めて来る。血塗れの背中がリリィに近付く中、頭に向けて発せられた銃声と共に、死霊――形容しがたき物――は崩れた。
「どうして‥‥あれが‥‥まさかッ!?」

 その頃、宿屋の周辺も騒がしくなっていた。銃声も聞こえて来れば自然と目も覚める‥‥尤も寝起きが良いかは微妙だが‥‥。
「ほえ? 銃声? んー‥‥」
 シーツで白い肢体を覆い、目を擦りながら窓へ向かうリネット。眼下に瞳を向けると、交戦中の光景が映った。ウロウロと徘徊する幾人の群に、自警団が発砲の火花を迸らせている。中には突起物で接近戦に挑む者もいた。しかし、あろう事か、銃弾を受けても鉄槌を食らっても徘徊する者は崩れないのだ。流石に少女は何度も目を擦り、瞬きを繰り返した。
「え? えぇー!? な、なに!? 嘘‥‥」
「ふにゃー、煩いわね‥‥なによ? 覗き?」
 素っ頓狂な声を響かせたリネットに顔を向け、長い金髪をベッドに泳がせた少女が眠気眼で訊ねた。動揺を露に口をパクパクさせながら黒髪の少女が言葉を返す。
「し、ゴール、し‥‥ゴ‥‥ん、ゴールディ! し、死霊ですッ!」
「しりょー? なに寝ぼけた事‥‥‥‥ってマジぃぃ!?」
 面倒そうに窓に向かい、ブンブンと腕を振って指差す先を見て、長い金髪の少女は身を乗り出した。慌ててガウンを羽織り部屋を飛び出すゴールディ。「あん、待って下さい」なんて呼び止めるリネットの声など聞こえていない。

「これ以上侵入させないで! ここで阻止するのよ! 俄かには信じ難かったけど、本当に死霊が出るとはね」
 路上では自警団に混じり、レイラが防衛に努めていた。握っている得物は銃身の長いカスタムガンで、自警団とは違う種類の人間である事を物語る。後方から靴音が響き、流した視線に映るは、長い金髪を舞い躍らせる少女と、シーツを巻いたのみの黒髪の美少女だ。
「あらあら☆ サービスしてくれるわねぇ」
 ゴールディとリネットは得物を構え、共闘を買って出た。ペッパーボックス拳銃が火を噴き、メーカー不明のシングルアクションリボルバーが唸る。
「駄目‥‥効かない‥‥!」
 威力不足か、リネットの洗礼に死霊は崩れる様子を見せない。鈍い動作で腕を伸ばし、苦悶の表情に眼光をギラギラさせる化物に、少女は戦慄いた。
「‥‥あ、あぁ(こんな格好で死霊に襲われたら大変だわ)」
 死霊が大きな呻き声をあげ、口を開いて詰め寄った刹那、一発の銃声と共に、化物が衝撃で吹っ飛ぶ。涙目のまま、ゆっくりと瞳を流した先に映るは、漆黒のスーツをビシッと着込んでいる青年だ。ニヒルな微笑みを浮かべ、片方の銃身で洒落た帽子の縁をあげる。
「美女と野獣‥‥ならぬ美女と死霊か。やあ、奇遇だね? お嬢さん方。今日も良い夜だ。オマケに目の保養まで出来るなんて、俺は運が良い」
「ヴィシャス・バイパー!?」
「ヴィシャスさん‥‥ッ、えっと、これはつい急いでいて‥‥そんなに、見ないで下さい‥‥」
「ゴールディ! リネッ‥‥トちゃん‥‥」
 次いで駆け着けたのはリリィだ。流石に危うい姿で恥かしがる美少女を捉え、戸惑いを見せた。最近天然系になりつつあるリネットだが、幾ら何でもこれは無いだろう‥‥。因みにオフレコの余談になるが『色気が足りませんね〜』と呟いた華夜の一言が監督のお色気魂に火をつけてしまったらしい。

 かくして自警団との共闘は続いた。防衛戦が終わったのは夜が白み始めた頃だ。突然死霊共は一斉に背中を向けると、町の外へ戻って行ったのである。安全が確認されると、レイラがゴールディ達に近付く。金髪の少女は彼女の得物に瞳を研ぎ澄まし、訝しげに訊ねる。
「‥‥あんた、この街の自警団じゃないわね? 保安官って訳でもない‥‥何者なの?」
「あら? 余計な詮索はお互いの為に良くないわよ? 神出鬼没の謎の女ガンマンって事にして頂戴♪ 偶々立ち寄って、あなた達みたいに共闘しただけの話よ☆ そうね、場所を変えましょ♪」
 灰髪の少女の話に因ると、先住民だったインディアンの生き残りが復讐の為に呪いを掛けて死者を甦らせたという。
「‥‥ふぅ。それでクリムゾン・ヴァレーね。血に染まった谷‥‥とんだ由来もあったもんだわね」
「周りの町への波及効果を防ぐ為にも実力行使も止むを得ないと自警団は結論に至ったわ。それに、町の被害をこれ以上出させない為にも生き残りの抹殺も計画されているの」
 驚愕の表情を浮かべるリリィ。刹那、リネットが立ち上がり、憤りを露に見せる。
「先住民を抹殺‥‥!? どうして、そんなに簡単に、力だけで解決しようとするの‥‥?」
「‥‥連中も力を使って来ているからさ。不可思議な力に対抗するには、コッチも力を使わなければならないだろ?」
 席には着かず、壁に背を預けて腕を組んでいるヴィシャスが口を開いた。リネットへ流す赤い瞳は、何かを試しているような色を放つ。美少女は「でも‥‥」と呟いたまま次の言葉を出せなかった。

●接触
 朝焼けの中、ゴールディ一行は先住民の集落を訪れる事となった。リリィを先頭にレイラから聞いた場所へ向かうと、黒い人影が朝霧に浮かび上がる。
「‥‥ッ、ヴィシャス?」
「やあ、お嬢さん方。先に訪ねさせて貰ったよ。リーダーがいるから話を聞いて来るといい」
 軽い挨拶程度の言葉を返しながら、漆黒のスーツを着込んだ青年は少女達と交差した。俯き加減の帽子から覗く赤い瞳が流す先は誰への眼差しか‥‥。そのままヴィシャスは町に戻るようだ。

 ――辿り着いた集落は、リリィにとって懐かしい感じを漂わす場所だった。
 全て自然のモノで作られた民家。女達は畑を耕し、子供達が手伝いをする様子は、長閑そのものだ。男達が少ないのは、山へ狩りに出掛けているからだろうか。
「こんなに平穏そうなのに‥‥復讐を考えているなんて‥‥きゃッ!」
 リネットが周囲を見渡して呟いた刹那、左右から斧が放たれ、少女達の足元に突き刺さる。瞳を研ぎ澄ますリリィとゴールディ。響き渡ったのは見張りを務める若者の声だ。
『ここに何の用だ! 前のおまえ、俺達の仲間か?』
 褐色の肌に伝統的なインディアンの衣装を纏ったリリィに問うと、少女は眼光をギラリと流す。
「ここのリーダーに会わせて欲しい。ワタシはインディアンの、リリィ・ザ・タートルだ!」
 リリィがいるだけ待遇はマシだったかもしれない。少女達は得物を預け、女達の入念なボディチェックを済ますと、先へ案内された。待っていたのは、奇抜な仮面で顔を隠し、白と緑を基調とした装束を纏った人物だ。僅かな沈黙の後、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
『‥‥今日は客人が多い。放浪する白き狼よ、如何なる用だ?』
「(この声‥‥)ワタシはこの土地の生き残りのリリィ・ザ・タートルです」
『!! ‥‥リリィ、ザ、タートル‥‥共に戦う為に訪れたのか?』
「いいえ‥‥何故、戦うのですか!? 多くの仲間が命を落としたのは知っています! だけど、町の住民に復讐なんて!」
『リリィ! 多くの仲間が散った事を承知の言葉とは思えないな。忘れたか! あの一方的な虐殺を! 私達は女も子供も区別なく殺された! 先住民の土地を奪う、それだけの為にだ! 許せると言うのか? 今の繁栄は我々の土地を奪って手に入れたものだぞ!!』
「甘ったれないで!!」
 口を開いたのはゴールディだ。
「大体ね、復讐のために同じ部族の死者を使役する、その事も酷い事じゃないの? この世の問題は、生きてるあたしたちで解決すべきでしょ?」
『ならば金の尾を結ぶ者よ、無残に散った者の怒りはどうする? 虐殺により殺された者に怒りがあるからこそ、形容しがたき物となり得るのだ。繁栄と文明に守られし者に我等が果たせる復讐の術は、それしかない!!』
 確かに自警団の所持している銃は性能の高い物だ。インディアンの生き残りが抗っても、容易く返り討ちに合うだろう。ゴールディは呆れたような溜息を吐く。
「リリィ、リネット、戻るわよ。これ以上話しても無駄だわ」
 着飾ったドレスの裾を揺らして踵を返す金髪の少女。ツインテールが弧を描く中、リリィはリーダーの仮面に振り返った‥‥。

●決戦を前に‥‥
 クリムゾン・ヴァレーでは、レイラの指示の元、幾つもバリケードが設置され、襲撃に備える準備が進んでいた。少女達が戻ると、街角から洒落た帽子の青年が姿を現す。ぽやんと微笑むリネットと対照的に、ゴールディが訝しげに睨んだ。
「おいおい怖い顔するなよ。それで、お嬢さん方はどうするんだ?」
「あたしは街の側につくわよ。インディアン側についたからってお金にならないし」
「なるほど。君らしい答えだ。リネットはどうするつもりかな? 大切な存在を奪い去った者を、許す事等出来はしない‥‥。それが例え、どんなに愚かな事だとしても。君はどう思う?」
 挑むような赤い眼差しが美少女に向けられた。リネットは長身の青年を見上げる。
「!? ‥‥どんな理由があろうと、死者を使役する先住民側には立てません。町の自警団側に付きます」
 その答えに帽子の縁を下げ、ヴィシャスが口元を歪めた事に彼女は気付かない。
「‥‥そうか。それが君の答えか‥‥どうやら敵にならずに済んだようだな」
「ヴィシャス、あんた‥‥って待ちなさいよ! ‥‥ったく、何か気に入らないわね。リネット、気をつけなさいよ! あんたみたいな緩そうな顔している娘が危ないんだから!」
「緩そうって‥‥そんな隙だらけじゃないです!」
 ――否、初登場から十分隙だらけだったぞ、リネット。
 そんな天の声など聞える訳もなく、リネットは思い出したように口を開く。
「あ、私、強力な銃が欲しいんです! 高威力の45口径ってないですか?」
「なに? そんなの自分のお金で買いなさいよ」
 えぇ〜〜!? 少女の声が棚引いてゆく――――。

 ――夜の帳が下り、町は緊迫した空気に包まれていた。
 雲間から月が輝き、漆黒の闇に僅かな光を注ぐ。浮かび上がるは、夥しい死霊の軍勢と、先住民の生き残り、そして、仮面の男だ。これまでにない死霊の数に自警団は戦慄する。月明かりに照らされたリーダーが両手を空に掲げて叫ぶ。
『怒り鎮まらん霊の魂と共に、今宵決着を着けよう! 我々は大切な者を虐殺した事を許さない! 我々から土地を奪った事を許さない! この恨み、己の血肉で償うがいい!!』
 一気に押し寄せて来る死霊の軍勢。それはまるで漆黒の大津波の様だ。死霊の上空をインディアンが放った雨の如き矢が降り注ぐ。開戦の刻が訪れたのだ。自警団が次々と銃声を響かせてゆく。
 羽冠を被り、戦のメイクを顔に塗りたくった褐色の少女が覚悟を決め、ボロボロのマントを放り投げた。月明かりにインディアンの伝統的な衣装を纏った魅惑的な容姿が浮かぶ。
「ゴールディ! リネットちゃん! 頭を狙って!」
「頭を狙うのね! 正確な狙いなら任せといて」
「はい! リリィ、分かりました!」
 散弾銃を撃ち捲り、弾切れと共に背中のライフルをぶっ放すリリィ。ゴールディは大口径ライフルの咆哮を轟かせ、リネットが入手したばかりの45口径マグナムの銃声を響かせた。カウボーイルックの細身が反動に揺れる中、死霊の頭を軽く吹き飛ばす。あまりにも高い威力に美少女は緑の瞳を戦慄かせた――――否、明らかに様子がおかしい。ダラリと優麗なフォルムの銃身を下ろし、放心状態と化していた。瞳に映るは自警団と死霊共の激しい戦闘。幾十もの銃弾が放たれ、赤黒いものをぶちまけて崩れる姿に衝撃が疾る。脳裏に重なる幾つもの悲鳴と銃声、飛び散る鮮血と‥‥。
「私、前に、この光景‥‥見たことが‥‥」
 呆然と立ち尽くす中、瞳に映ったのは目前に迫った朽ち果てた形容しがたき物だ。マグナムを構えようとした刹那、汚れた腕が薙ぎ振るわれ、リネットの手から得物が払われた。死霊は腐敗していながらも予想以上の力を持っており、細い身体を容易く組み伏せる。必死に足掻くものの、銃を失った少女はあまりにも無力だ。
「いや‥‥いやあぁぁ! やめて、助けて‥‥きゃふッ!」
 一発の銃声と共に、美少女の端整な風貌が真っ赤に染まった。涙に濡れた瞳を泳がせると、視界に灰髪の女が映る。
「‥‥なにやってるのよ? 今度こんな隙を見せたら‥‥狙っちゃうわよ?」
「‥‥レ、レイラさ、ん‥‥あ、ありがと‥‥んッ!?」
 助け起こすと同時、そのまま軽く唇を重ねたレイラ。一瞬なにが起きたか分からず、リネットはまたしても呆然と立ち尽くす。対する灰髪の少女はクスリと悪戯ッぼい笑みを浮かべた。
「ほら、隙あり☆ なぁに? そっちのケもあるの?」
「‥‥ち、違います!」
 頬を染めながら困惑の色を浮かべ、リネットは銃を拾いに駆け出した。これで当分はレイラに頭が上がらなくなりそうだ。

●決着と知られざる刻の狭間
 ――攻防は一人の男によって変容を遂げようとしていた。
 仮面の男が突如苦しみ出したのだ。苦悶の呻き声は次第に絶叫へと変わり、その長身は獅子の姿を浮かび上がらせてゆく。半獣化とSFXにより表現された霊に身体を乗っ取られる演出だ。刹那、自警団を襲っていた死霊の軍勢は散らばり、インディアン達をも襲う暴徒と化した。
「いったい何が起きたっていうのよ!?」
「リリィ、ここは引き受けたから! 決着をつけてきなさいよ! 彼の思いを継ぐのは貴女であるべきなんだから!」
「ゴールディ? ‥‥うん、分かったわ!」
 彼方此方で悲鳴や断末魔、銃声が響き渡る中、リリィがバリケードを飛び越えて一点へ瞳を研ぎ澄ます。疾走する少女の視界が揺れ動き、変わり果てた恋人の姿へ接近してゆく。
「レインッ!!」
 鋭い獣の眼光が紅く輝いた。獅子の化物は瞳にリリィを映すと、地を蹴ると共に一気に間合いに飛び込んだ。両手でライフルを縦に構え、レインの攻撃を防ぐ。脳裏に過ぎる彼の本当の姿――――。

 ――刻は決戦前夜に遡る。
 リリィは深夜、一人で集落を訪れた。見張りを巧みに掻い潜り、レインと再会を果たしていたのだ。
「‥‥リリィか‥‥やはり来ると思っていた。朝は済まなかったな」
「レイン‥‥やっぱり、アンタは昔のままのレインなんだね? ‥‥! レイン!?」
 仮面を外して振り向いた男がガクリと膝を着き、リリィは傍に駆け寄った。レインは胸を押さえ、苦悶の表情を浮かべたが、心配する少女に微笑んで見せる。
「‥‥大丈夫だ。‥‥私も街の人との和解を望んでいる。しかし、部族の怒りは治まっていないのだ。大切な者を失った仲間の心情も痛いほど分かる。それに、私自身の感情の底にも憎しみが眠っているのも事実‥‥」
「‥‥どうにもならないのかい?」
「打開策はある。‥‥早朝に男が訪ねて提案を持ち掛けられたよ」
 レインの言った男とはヴィシャスの事だ。
 ――共通の敵の前では、人は一致団結する物‥‥。
 リーダーの貴方が悪役となる事で死霊を暴走させ、自警団と先住民が共闘してこれを撃破。それを切っ掛けとして共存への道を切り開く事は出来無いか?――――。
「で? アンタ一人で悪者になってくれるわけ?」
「私は儀式に麻薬を多用し、体を蝕まれている‥‥。長くは耐えられない命なんだよ。私一人の命で纏まるなら、それで悔いはない」
 あの時も身を廷して庇ってくれた。今度は仲間の為に犠牲になろうとしている。涙が溢れ、ポロポロと床に零れてゆく。
「そうやってアンタは‥‥優しすぎるのよッ‥‥!」
 泣き崩れるリリィを抱き寄せるレイン。少女も男の首に腕を回し、応えた――――。

 ――閃光を煌かせて放たれた刃に、バックステップで跳んだリリィの白い前髪が切り飛ばされる。
 白髪が舞い散る中、少女は覚悟を決めたか咄嗟故か、がら空きになった腹部に銃口を向けた。レインの紅い瞳が僅かに縮む。刹那、響き渡ったのは一発の銃声だ。宙に浮いた状態でトリガーを絞った為、体勢を崩したまま尻を着く。硝煙を漂わす銃身が小刻みに震えていた。
「あ‥‥レ、イン‥‥」
 リリィの涙を拭い、安堵にも似た笑みを浮かべてレインは静かに崩れた。

●エピローグ
 ――どちらにも、それぞれ想いがあって。
 どちらが正しいとか悪いとか、言えなくて。
 同じ人だからこそ、分かり合いたいのに。すれ違うことが多くて――――。
 町が見える丘に、レインの墓標は立てられた。この荒野の中でも寂しくないようにと、リネットが沢山の花を捧げて安らかなる眠りを祈る‥‥。
「(レイン、待っていて。決着がついたら帰って来るから‥‥)」
 褐色の少女を残し、リネットは丘を離れた。背中を向けたままのゴールディに声を掛けようとしたが、細い肩が小刻みに震えている。
「‥‥こういうの苦手なんだって‥‥」
 震える涙声の少女に、リネットは優しげな眼差しを向けた。

『‥‥以上の経緯から、原住民達への過去の保障も必要と考えられ‥‥』
 カタカタとタイプライターの音を響かせた指がピタリと止まる。
「‥‥偶然とはいえ、関わっちゃった以上調べない訳にはいかないか‥‥ふぅ、休暇は先送りになりそうね」
 灰髪の少女が送る視線は遠ざかる幌馬車。再びデスクに戻りキーを叩く音が一室に響き渡る中、ゴールディ達を追うように一頭の馬が駆けて行くのをレイラは知らない。揺れ動くは赤い瞳と自虐の笑み。
(「復讐は何も生まない…ただ虚しいのみ‥‥か」)

 レインの眠る丘の眼下を、幌馬車はゆく。
 墓標の花は荒野の中で、一際、色鮮やかに彩りを放っていた――――。

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