GUN&ROADout南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 2.3万円
参加人数 7人
サポート 1人
期間 04/13〜04/17
前回のリプレイを見る

●本文

「ふぅ‥‥流石に8名+サブキャラだと厳しかったわ〜。ま、レイラは予想以上にすんなり溶け込めたわね♪」
 サミィ・ライナー監督はtrigger4を完成させ、安堵の息を漏らした。役者の希望見せ場や展開を全て盛り込むのは時間枠的に無理があり、何度もテープ編集を行ったらしい。
「そう言えば監督、役者達に確認とりましたが、食事会はOKみたいですよ」
 泡立てたミルクティをテーブルに置き、助手らしき青年が微笑んだ。ブロンドヘアの少女はカップを手に取り、コクンと喉に流してから口を開く。
「そお☆ 撮影が終わると直ぐに解散しているから、本人がどんなひと達か楽しみねぇ♪」
「楽しみは楽しみですが‥‥どこで食事会を行うつもりです? レストランに予約も必要ですし、それぞれ好みもあるでしょうから‥‥」
「なに有名映画監督みたいなこと想像しているのよ。ここで良いじゃない? ホームパーティに信頼できるひとを招待してこそ、アメリカらしさよ♪」
「‥‥まぁ、8名位は入れますが、料理はコックを雇うのですか?」
「そーねぇ‥‥楽は楽だけど、面白くないわね」
 ――いえ、面白いとかは問題じゃなくて‥‥。
「皆で作るってどお?」
「‥‥招待じゃなかったのですか?」

●招待状(注:全て英語と補完しましょう)
 GUN&ROADでお世話になっております。
 この度、サミィ・ライナーの別荘で親睦を兼ねた食事会を開催したく、招待状をお送り致しました。アクターの皆様も多忙と思いますが、ご参加お待ちしております。
 つきましては、以下の項目に目を通して頂きたいと思います。

○各配役へ
 TO−ゴールディ
『エルドラドの話は何処へ行ったのよ? 銃を手に入れる為にお金を稼ぐ方針でいくわけ?』

 TO−リリィ
『自分の水着位は決めておきなさいよ(苦笑)。リリィはMr.エンブレムと決着をつける方向性で良いのかしら?』

 TO−エイミー
『trigger4冒頭はカットするしかなかったわ。寡黙なキャラクターだけど、台詞案は多いに越した事はないわよ? 今後は一度対決しているヴィシャスとの間に気になる感情とかどお?』

 TO−リネット
『いつもギリギリに入ってるみたいだけど、忘れないでよ? 弄り過ぎたかしら? いやなら言って頂戴。そっち系に目覚めるかは任せるわね☆ 今後はどうするつもり』

 TO−レイラ
『時々サブも演じてくれて助かってるわ。リネット絡みで巧く入り込めたようね☆ 今後もそっちの方向性でいくかは任せるわ☆ っていうか、そういうキャラ?(笑)』

 TO−ヴィシャス
『trigger4の裏で動いたMr.エンブレムの名前を聞けたかは彼と相談して頂戴。基本的に互いに記されていなければストーリー的伏線は安易に出せないわ。今後は一度対決しているエイミーとの間に気になる感情とかどお?』

 TO−Mr.エンブレム
『悪役モード発動ね☆ trigger4では権力の大きさを演出させて貰ったわ。難しいと思うけど、巧く暗躍して欲しいわね♪ 最終ボスにもってく訳?』

 TO−ジャスティン
『時々サブも演じてくれて助かってるわ。いきなり登場して互いに気付かないという微妙な展開だけど、今後はどうするつもり?』

○今後の要望(必須ではありませんし、全て埋める必要もありません。勿論全て埋めてOK)
 お遊びに伏線を交えて展開と決まりましたが、どんなお遊びのストーリーが欲しいですか?
・ジャンル:(複数OK)コメディ・アクション・ハートフル・ホラー・セクシー・その他(明記)
・カテゴリ:賞金稼ぎ・復讐・町の掃除・依頼・幌馬車・列車・喧嘩・その他(明記)
・物語提案:どんな物語か簡潔に。
・主役予定:主役にあげたいキャラクター名(複数OK)。
・見所予定:この物語の見所は何かを簡潔に。

●アクター各位
・食事会時の服装:
・好きな食べ物:
・嫌いな食べ物:
・その他、聞きたい事、喋りたい事、やりたい事など(台詞歓迎☆)。

●役者が揃わなかった場合
 自分をアピールして売り込みましょう。または、何らかの理由で(道に迷ったとか、別荘に車で突っ込んだとか)巻き込まれ。

●サミィ・ライナー別荘
 断崖絶壁に建つホラー映画に登場しそうな外観ですが、豪邸ではありません。荒れ狂う大海原が眼下に覗え、インスピレーションを高めてくれるらしい。人里から離れた場所にあり、付近の森も不気味な感じです。迷わないよう気をつけて下さい。

●今回の参加者

 fa0558 クールマ・如月(20歳・♀・亀)
 fa1028 水島 無垢(19歳・♀・狼)
 fa1047 芹沢 紋(45歳・♂・獅子)
 fa1107 小比類巻レイジ(25歳・♂・蝙蝠)
 fa1701 華夜(18歳・♀・猫)
 fa1788 碧野 風華(16歳・♀・ハムスター)
 fa2462 ティーナ・アリスン(18歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

●恐れられる別荘へ
 一台のタクシーが緩やかな上り坂を走って行く。
 リアシートにゆったりと腰を下ろしているのは、オーソドックスな黒いタキシードで身を固めた壮年の男だ。窓から外の景色を眺めると、荒れ狂う海が見える。
「確か、海が見下ろせる場所でしたね」
 芹沢 紋(fa1047)は日本語で独り言を洩らし、ガラス窓に映り込んだ短い白髪と黒い顎鬚の風貌をあげると、首に巻いてあるネクタイを絞め直した。刹那、タクシーは急ブレーキを響かせ、男は体勢を崩す。前のめりになりながらもドライバーに英語で訊ねる。折角のエレガントな仕草も台無しだ。
「どうかしたのですか?」
 フロントガラスに視線を向けても前方に映るのは森だけ。何か轢いた訳でもないし、人影も無ければ行き交う車すら見当たらない。何故に止まる? 紋がもう一度口を開こうとした時だ。
「‥‥ここまでだよお客さん」
「‥‥何を言っているのですか? 未だ目的地は‥‥」
「ここから先には行かない。どこのタクシーでもだ。まあ、森で人を殺して埋める目的があるなら乗せてくクレイジーもいるだろうぜ」
 ――なんですか? このホラー映画を地でゆく展開は?
 サミィ・ライナー監督の別荘への道程は過酷だった。
 人里離れた断崖絶壁に建つ別荘。その先に待つのは暗く深い森だ。滅多に近隣の町まで出向かない為、様々な噂が流れ、人知れず恐怖の館と呼ばれていたのである。事実か定かでないが、行方不明者の死体が発見されたとか、幽霊を見たなんて噂もあるらしい。‥‥いや、待て。
「そんな所に私一人置いて行くというのですか!?」
「町まで乗せて戻ってもいいぜ? 追加料金は戴くけどな」
 男は顎鬚を撫でながら考えた。
「(私は兎も角、出演者は女性が多い。彼女達も置き去りに?)‥‥分かりました、歩きます」
「おい! 本気か? 何があっても知らないぞ? ‥‥しょうがねぇ! 特別に乗せてやる! こっから先は3倍の特別料金‥‥!」
 紋が鋭い眼差しで射抜く。Mr.エンブレムの裏顔だ。豹変した顔つきにドライバーは言葉を失う。演技力で培われた眼光に、冷や汗が滴り落ちる。
「降ります。早くドアを開けた方が良いですよ?」
 タクシーを降りると、何やら汚らしい言葉をドライバーは喚き散らして乱暴に通り過ぎた。
 改めて静寂が一帯を包み込み、広大な森が一際不気味に見える。男は軽く溜息を吐く。
「革靴でも問題ないでしょう‥‥ん?」
 その時だ。森の奥から馬の蹄と車輪の音が流れて来た。ゆっくりと行く手に映るは、漆黒の馬車だ。1830年代の趣きがあるだろうか。過度の装飾の成されていない黒馬車は紋の前で止まった。手綱を引く金髪の青年が口を開く。
「招待状はお持ちですか? 私は監督の元で働いているフランケンと呼ばれている者です。お迎えにあがりました。他の方も先ほどお連れしたばかりです」
 フランケンと呼ばれる割に風貌は端整だ。否、元々あのモンスターは美形だったとの話もある。ともあれ、信じるべきか? 紋は顎鬚を撫でながら暫し考え込んでいた――――。

「ちょ‥‥ちょっと、これって‥‥ホントにこんな所に住んでるの〜!?」
 慄きの響きを含んだ少女の声が響き渡った。茶色の瞳に映るは、ホラー映画に登場しそうな外観の別荘だ。BGMに単調なピアノの旋律が流れそうな雰囲気がある。
「何なのなの〜!? こ、怖いの〜」
 沢山のフリルとリボンが施されており、白とピンクに彩られた可愛らしいドレスに身を包む碧野 風華(fa1788)が、ビクビクしながら傍に佇むスリットの入った深紅のドレスを握って小動物の如く怯えていた。リボンを巻いた短めの茶髪娘の頭上から落ち着いた声が聞える。
「‥‥来る前から分かっていた事ではないですか」
「監督らしいわよね♪」
 次に口を開いたのは、胸元が大きく開いたドレスに身を包んでいるティーナ・アリスン(fa2462)だ。長い灰髪を結った少女は何時もの雰囲気のレイナそのものである。そんな中、森からガサガサと音が鳴り、スーツに身を固めた長身の青年が姿を見せた。『こんな所で出会えるとは』なんて何時もの台詞が飛び出すものかと思いきや(否、プロはサービスでも無い限りやるまい)‥‥。
「やあ。やっと到着か」
「もぉ、ビックリするじゃないですか? ‥‥碧野さんが」
 のんびりとした口調で苦笑したのは緑のワンピースを着ている華夜(fa1701)だ。腰まで届く艶のある黒髪と清楚で上品さを醸し出す美少女は、最近のリネットと変わり無いように見えた。緑の葉を纏わり付かせた小比類巻レイジ(fa1107)が、長めの黒髪を掻きながら詫びる。
「いや、退屈しのぎに森を散歩していたんだ」
 どうやら先に到着して待つ間に散歩していたらしい。
「‥‥それってー、私達が先に入っても‥‥気付かないって事ですよねぇ」
 かなりポヤンとした響きで、クールマ・如月(fa0558)が微笑んだ。褐色の肌を包む緑に縦縞が入った私服の豊かな胸元は、スイカを連想させなくもない。リリィと変わらぬ風貌だが、雰囲気が多少違い、おっとりした感じがある。‥‥といえば彼も――――。
「あー、それもそうか。待っていて先に入られたら無意味だな」
 どうやらレイジはヴィシャスより天然系らしい。
 そんなノンビリとした雰囲気が暫らく続いた後、漆黒の馬車が帰路に着くと、タキシードの男が姿を見せた。タイミングを合わせたように別荘のドアが開き、小柄な少女がゆっくりと歩いて来る。長い柔らかそうなブロンドヘアに眼鏡――サミィ監督だ。
「来たのならベルくらい鳴らしなさいよ。ようこそ♪ 『長旅』お疲れ様☆」
 この少女は容易に別荘まで辿り着かない事を知っていたらしい。そう、アクター達の道程は険しかった。タクシーは断わられるし、バスも通らない。かと言って、引き受けてくれるのは危なそうな連中ばかり。町では「今から行っても遅いから一泊しろ」との警告付きだった。なるほど、スケジュールが埋まる訳だ。
「ワタシも監督とは一度ゆっくりお話したかったんですよね‥‥。にしても、何かこう‥‥雰囲気満点のお宅、ですよねえ‥‥。変な呪文が録音されてるレコーダーとかありません、よね? 監督をバラバラにはしたくありませんから‥‥」
 なんて物騒な事をノホホンとクールマが笑いながら言ってのけた。
「あら☆ 通なこと言ってくれるわね♪ ホラーが好きなの?」
「ゾンビ、大好きなんですよね‥‥一度、出たかったんですよ‥‥♪ やは☆ ホントは水着ゾンビも出たかったのですけどね‥‥」
「あら? ティーナと出れば良かったのに‥‥撮影に間に合わなかったけどね」
「いやぁん☆ その事はもう言わないで欲しいわ」
 無駄に色っぽい声を出し、灰髪の少女が身をくねらせて頬を染める。プロとして出演できないほど恥かしい事はない。悪戯っぽい笑みを浮かべて見せるサミィ。
「フフン♪ 反省なさい。あら? 珍しいわね」
「水島無垢 です。監督様 いつも お世話になっております。今回は お招きいただき ありがとうございます。役者でもない 私が このような大役を これまで 務められているのは 共演者の皆様と 監督様の 手腕のおかげです。拙い演技者では ありますが 宜しければ これからも 使ってやってくださいませ」
 水島 無垢(fa1028)がぎこちなく挨拶した後、ぺコリとお辞儀した。どこか間の空く話し方はエイミーに近いが、それよりサミィが驚いたのは衣装だ。胸元が大きく開いた深紅のドレスからは豊かな白い膨らみが大胆に覗き、銀髪に赤いコサージュ、両耳には小さなダイヤのイヤリングを付けており、薄く化粧も施されていた。普段の彼女からは有り得ない服装だ。そう、怯えた小動物‥‥もとい、風華が握っていた深紅のスカートとは彼女のものである。
「素敵なドレスじゃない♪ アナタのこんな姿を見れるとは思わなかったわ」
「ルームメイトに見立てて貰ったのですが‥‥」
 化粧の所為か、無垢の頬が桜色に染まる――――。
『え? 無垢ちゃん監督にお呼ばれしたの? ドレス? 任せて♪ うちが思いっきりドレスアップしてあげるわよ☆』
 そう言って、天羽 霧砂が満面の笑みとハイテンションでコーディネートしてくれた記憶が甦った――――。
「似合っていると思うわ☆ あなたのアピールすべきポイントを押えてあるじゃない♪ ‥‥えっと、エイミーでしょ、リネット、リリィ、レイラ、ヴィシャス、エンブレム‥‥あれ?」
 ピッピと指差してゆくサミィの眼差しが、似たような背丈の愛らしい少女のハナ先で止まる。僅かな沈黙の後、風華がブンブンと腕をパタつかせた。
「あれじゃないなのーっ!! ゴールディの時は目を吊り上げてツンツンキャラだけど、こーいうのがふ〜かちゃんのホントの姿なの〜☆」
 ゴールディ用の金髪ロングツインテールウィッグを外せば別人だ。否、面影はあるが、やはり子供っぽい言動と服装で、かなり印象が違うように見えたのだろう。
「ごめんごめん☆ そうよね、ちっちゃいのがゴールディよね♪ あら? 一人足りないわね‥‥」
 ‥‥自分の事は棚に上げる監督のようだ。
「都合が着かなかったようですよ監督。お招き有り難うございます」
 優雅な身のこなしで白いカサブランカの花束を渡す紋。思い出したように華夜も歩み寄る。
「お土産にと思って、ワインを持って来ました☆」
「まあ、二人共ありがとう♪ 流石はエンブレムね。リネットがマナーを知っていたのは意外だけど」
「あー、それ酷いです! 私はしっかりさんなんですから」
 ‥‥それも微妙だ。
「そう、‥‥彼、機嫌損ねてないと良いけど‥‥と、兎に角、入って頂戴☆」
 僅かに表情を曇らせた後、サミィは微笑みを浮かべてアクター達を招き入れた。

●あのドラマの料理を作るわよ☆
「ミルクティをお持ちしました」
 青年がアクター達にカップを渡した。
「‥‥あー、これお酒の匂いしますねぇ♪」
「ブランデーですよ、クールマさん。甘さの中に残る独特の香りがエレガントです」
 一同が寛ぐはリビングだ。年代物の古時計が飾られており、大きなテーブルを囲む様にソファーが並べてあった。壁には血のこびり付いた斧やホッケーマスク、鉤爪のついたグローブなど様々なホラー映画のアイテムが飾られており、サミィの趣味が覗える。
「さて、料理を皆で作る前に軽くお話ししようか♪」
「‥‥料理 です、か?」
 素っ頓狂な声をあげたのは無垢だ。
「‥‥したことが ありません」
「えーっ、じ、自分たちで作るの? ふ〜かちゃん、コスプレ衣装は作れてもお料理は出来ないの〜」
 銀髪の娘がきっぱりと告げた後、風華が困惑気味の声をあげた。
「じゃあ簡単なものをお願いするわ。キャンプみたいに気楽に構えて☆ 他に料理できない人はいるかしら?」
「あ、お料理は手伝います。得意なのは和食ですけど、大体作れます」
「料理は皆で作るのですか。私も頑張ります。シャツとかが濡れたり汚れても大丈夫ですよ。洗えばいいのですから」
 華夜が手をあげて告げた後、紋が腕捲りをして微笑む。次にノホホンとクールマが口を開く。
「ワタシも喜んで参加します♪ ‥‥腕に保障ないけど」
「そうね、箸とかは使い慣れてないけど美味しい物なら和洋中何でもオッケーよ?」
「え? ティーナさん和食も作れるんですか?」
「‥‥違うわよ、リネット‥‥じゃなくて華夜ちゃん、食べる方の話☆ あ、当然甘いものは別腹だから♪」
「それで、何を作るんだ?」
 紛らわしい話の中、レイジが赤い瞳を向けた。サミィがニンマリと微笑む。一抹の不安が過ぎり、華夜が身を乗り出す。
「まさか、ホラー料理とか言わないですよね? 脳ミソとか! 腸とか! 内臓とか!」
「食べたいの? 幾ら何でもそれは無いわ。皆は『大草原』って古いドラマ知ってるかしら? それに出た料理を作ろうと思うの♪ コーンブレッドでしょ、ルバーブパイでしょ、ターキーと‥‥オイスタースープね」
「オイスター!?」
 今度はティーナが素っ頓狂な声を響かせた。
「なに? そんなに嬉しいの?」
 ブンブンと頭を横に振り思いきり否定する少女。
「‥‥えーっと、オイスターは‥‥その、ちょっと‥‥」
「んー、じゃあビーンスープにするわ。他に好き嫌いあるかしら?」
「ハムステーキとスクランブルエッグが好きですね。カロリーが高めなのが難点ですが‥‥。嫌いではありませんが、麺類はスープが飛んで服に染みを作りやすいので避けたいですね」
 微笑みを浮かべて見せる紋。流石に言う事もエレガントな拘りを感じる。
「‥‥何でもOKよ♪」
「俺も何でも食べる雑食性だ。嫌いなものは無しっ!」
「甘いものが好きなの〜♪ 甘くないものは嫌いなの〜」
「‥‥オムライスが 好き です。嫌いなものは ありません」
「和食なら大体好きです。薄味とか好みですね☆」
 ゆったりとクールマが答え、レイジが活き込む中、オマエは幼女かと突っ込みたくなる事を風華がのたまい、ボソリと無垢、次いで華夜が微笑んだ。
「‥‥アメリカに来て和食とか言うわけ? 誰か、レバー買って来て頂戴!」
「やぁーん! 違いますよー! 私が和食は作りますからー! 内臓だけは〜〜」
 こうして先行き不安な中、調理は開始された――――。

●ディナーの中で
 何とかディナーがダイニングテーブルに並んだのは夜の帳が降りた頃だ。
 やはり面倒な和食を作れる華夜の存在は大きく慣れた手付きが頼もしくあり、紋は硬い材料を切ったりと戦力になってくれた。後は素人まるだしだが、下手な事はしなかったので材料切りやレンジへの投入など、パタパタと駆けずり回ったものだ。問題は風華だったが、幸いチキンにメイプルシロップを掛けた位だったので、まあ、予定の味とは異なるが食べられないものではない。子供から目を離さないようにしよう――――。
「そうそう、ゴールディだけど、エルドラドの話は何処へ行ったのよ? 銃を手に入れる為にお金を稼ぐ方針でいくわけ?」
「エルドラドのことはすっかり忘れてたの〜。でもみんなけっこう乗り気っぽいから、もしよかったらネタとして使ってほしいの♪」
 頭の上に汗マークでも出現したような表情で苦笑する風華。エルドラドネタにはちょっと考えがあると、華夜が提案する。
「リネットは、自由度の高い役だと思います。記憶が無いですし、エルドラドと絡めるなら、そこから来た、でも面白いかも。あと、エルドラド自体が、どういう存在なのか、決めた方が良いと思います。文字通り黄金郷の失われた文明なのか。それとも、例えば最新鋭銃器工場とか偽札作成施設とか、そういう現実的なものを、あえてエルドラド‥‥えーと、黄金を生み出すという意味で使っているのかとか。前者の方が、夢があるような気もします。後者だと何だか血生臭いですね」
「面白いわね。エルドラドで黄金郷を視聴者に連想させて実は‥‥っていうのは意外性があって良いアイデアね♪ 因みに血生臭いのは好きよ☆」
 ナイフを向けてウインクしてみせるサミィ。すると茶髪にリボン娘がアイデアを話し出す。
「リネットの銃に隠された秘密‥‥銃床に入っていた謎のプリズムの欠片。それは記憶の手がかり、そしてエルドラドの手がかり。光に当てると謎の地図が映し出される‥‥全て組み合わせた時、地図の全貌が。プリズムの欠片を求めて双方の陣営で奪い合い、そこに政府も絡んでくる‥‥とかどうかな〜なの〜」
「うーん、全て組み合わせるのに銃を探す訳ね? でも、それで謎の銃がポンポン出るのは不自然よね。かと言って銃意外でプリズムの欠片も微妙だわ。使えないネタじゃないけどね」
「あ、あとあと、そろそろ敵サイドにスポット当ててあげてほしいの〜」
「復讐を誓う事となった経緯となったヴィシャスの過去話が明らかになる話も切実に希望する。それと、追う者等のサブキャラクターの描写量をもう少し増やして貰えると有り難いです。展開的に難しい所もあると思うのですが‥‥」
 レイジがナイフとフォークを止めず、器用に食べながら希望を話した。刹那、ブンッとナイフを向けて、金髪の小娘が一際大きな声を響かせる。
「そこよ! ‥‥でも展開的に難しいのよね。勿論、スポットは当てる予定よ。でも、過去に繋がる明確な部分が無い限り、繋げ方がねぇ。その辺はジャスティンも一緒ね。先ずリネットが彼を思い出してくれないと動かせないわ。そうね、一回で全て出さずにスポットを当てれば可能かしら? リリィはMr.エンブレムと決着をつける方向性で良いのかしら? そうそう、自分の水着位は決めておきなさいよ」
「いや〜、すっかり自分の水着を忘れちゃってて‥‥やはは‥‥♪ 後はエンブレムとの決着を最後につける、って訳なんですが‥‥それまでどーしよー、と。あはは‥‥♪」
 どうやら当初考えていた事をやり尽くしてしまった感があり、割と途方に暮れているらしい。
「え〜? 前髪切られてもうお終いな訳? んー、じゃあ、ベリーショートにされるってどお?」
「ああこれ、ある方に切られちゃいまして‥‥『お前そんなんじゃ前も良く見えねぇだろ』って。で、丁度良くこっちでも使わせて貰ったんです‥‥♪ 流石にこれ以上切るのはぁ‥‥」
 そお? 回を追う事に散髪するキャラも面白いんだけどなぁ? なんてヒトの事も知らず残念がる監督に、ワインをグイグイ呑んで苦笑するしかないクールマ。そんな中、紋が口を開く。
「Mr.エンブレムは最終的に悪役として最後は銃弾を受けて散るのが希望です。今は無理にラストの悪役でなくても構わない、ラスト一歩前の悪役でもいいかとも思っています。どの道終盤での悪役には変わりませんが、皆様が張っている伏線次第でしょうか?」
「うーん、皆の伏線ね。悪役って言えばリネットを殺す依頼を受けているジャスティンがいるけど‥‥。どうするのかしら? Mr.エンブレムには暗躍を期待しているわね☆ エイミーは今後一度対決しているヴィシャスとの間に気になる感情とかどお? 何か考えがあるかしら?」
「過去、賞金稼ぎとして活動していた期間に、Mr.エンブレムの息のかかった者と接触していたことがある。‥‥ヴィシャスとの対決を通じ、彼に対してどこか近しい感覚を覚えるようになる。 あまり 具体案が 浮かびませんが このような方向性は いかがでしょうか?」
 ヴィシャスとの感情について予想外に無垢は否定しなかった。次いで落ち着いた声を黒髪の青年が響かせる。
「エイミーとの間に気になる感情も面白いと思うな。ヴィシャスとエイミーがお互いを意識し始める話‥‥と言うのはどうだろう? 雪山で遭難とか‥‥?」
 ちょっと照れたように苦笑するレイジの頬に一筋の汗が伝っていた。ベタな提案の為の汗か、それとも‥‥。
「いきなり雪山なの? まあ、やれない事はないけどねぇ‥‥。レイラはリネット絡みで巧く入り込めたようね☆ 今後もそっちの方向性でいくかは任せるわ☆ っていうか、そういうキャラ?」
「うーん、どうかしら? あ、いつもリネットちゃん弄っちゃって御免なさい。あんまり可愛いから‥‥つい、ね☆」
 にっこりと隣の華夜に微笑んで見せるティーナ。演技なのかリアルなのか、一抹の危うさを感じながら、黒髪の美少女が苦笑する。
「せくしー路線ですか‥‥ほどほどに頑張ってみます。お嫁に行けなくなるような場面だけは勘弁ですよー!」
「‥‥行くんだ? もったいなぁーい!」
「い、行きますよー!」
 流石にTV枠から外れてビデオ化進行でもしない限り、真昼間からそんな場面は無いだろう。
「大体分かったわ。他に要望とかあるかしら? 今後のエピソードとか」
「‥‥大富豪主催のレース大会なんてどうでしょう? あと‥‥意外なメンバーの色恋沙汰? エイミーとヴィシャスの絡みもハートフルで面白いかも‥‥」
 どうやらクールマは馬車レースとハートフルなストーリーが希望のようだ。同様に短い白髪の男がハートフルを提案する。
「撮影時間が拡大する前に主役だったリネットかエイミーを主役にしてあげたいですね。記憶喪失や職業からジャンルはラブハートフルが良さそうな気がします。例えば争い会うギャングの息子と娘が駆け落ちするのを助けるウエストサイドロミオとジュリエット的な話とか。例によって何故かエンブレムが顔を出します。トラブルある所になぜ必ずいるのか疑問に思わせる事が伏線ということで」
 確かにリネットとエイミーの回は撮影が短かった。因みに番組表を見て分かるように放映時間枠が増えた訳ではない。
「私も個人的に好きなのはハートフルでしょうか。後は、やっぱりこのお話はアクションということで! お色気は、出来る範囲で頑張ります」
 華夜の言葉にキラリと瞳を輝かすティーナが軽く咳払いをし、改まる。
「えー、それじゃリネットちゃんがお色気頑張る宣言した所で提案するわ☆ 長旅に疲れた一行が辿りついた街、そこには珍しい湯泉が存在するも盗賊団に占拠されていて。説得しようとした町長を勤める少女も捕らえられ悪の掃除と報酬と湯泉の為に大アクション♪ 主役はリネットとゴールディね。見所は水着もいいけどやっぱり湯泉が一番よね♪」
「お、温泉!? 好きなノリだけど‥‥温泉ねぇ」
 流石のサミィも温泉には考え込んだ。どうやら結果的にハートフルな物語希望が多いらしい。
「そうそう、リネットの台詞だけど、なぜ腕を叩く、なの? 心だと思ってシナリオには敢えて書いてなかったんだけど」
「よくぞ聞いてくれました監督さん。男は顔じゃなくて腕っ節。強ければよし!」
 華夜が勢い良く立ち上がり、緑のワンピースから覗く腕を捲り、拳を胸元でグッと固めて見せた。意外な所で現実的な美少女である。
 ――その時だ。
 前触れも無く別荘の窓ガラスが乾いた銃声と共に砕けた。破片が吹き飛び、一同がテーブルの下に伏せる中、次々と同一方角の窓ガラスが甲高い悲鳴を響かせ砕け散る。
「皆、動かないで! フランケン!?」
「行ったようです。排気音から察するにオートバイですね。素人ではないでしょう」
「な、なんなのなの〜」
「サプライズにしては派手過ぎるわね」
 ゴールディにはあるまじき怯えた様子を見せる風華。アメリカンジョーク気取りに苦笑するティーナ。レイジはガバメントを抜いていたが、窓に駆け寄り身構えただけで発砲はしなかった。
「これはどう言う事なんだ?」
「なんかねぇ、私のゾンビドラマが気に入らない人がいるみたいなのよ。来客を知っていたなんて‥‥盲点だったわ」
 溜息を吐いて身を起こすサミィ。どうやら一度という訳でもないらしく。許さないという警告まで届いた事もあったという。まさに地でホラー映画を体験しているようなものだ。
「ゾンビドラマって、あの水着の? それとも第3話の死霊の回?」
「さあ? ゾンビの冒涜を許さないってさ。‥‥ごめんなさいね。最近は静かだったから油断してたわ。今夜は泊まって頂戴☆ 個室とはいかないけどね」

●女優として
 ――コンコン★
 深夜、皆を各自寝室に案内して数刻後、サミィの部屋がノックされた。
 ゆっくりとドアを開け、可愛らしいピンクのネグリジェに身を包み、頭に斧を刺した少女が眠そうな青い瞳を向ける。流石に無垢も驚いたような表情を見せた。
「あー、これ? 付けて寝ると死んだように眠れるのよ。で、なにかしら?」
「‥‥私は 演技を こなせているのでしょうか?」
 銀髪の娘は短刀直入に切り出す。
「ご覧の通りに 私は 表情を表すことが 得意ではありません。覚えたセリフは 何とか詰まらずに 言うことができるのですが‥‥普段は 適切な言葉が浮かばず 一語一語 考えながら喋るので このように 途切れ途切れに なってしまいます。お芝居や 撮影に関する知識も 多くはありません。私は‥‥監督様のお役に 立てているのでしょうか?」
 まあ立ち話も何だと、サミィは部屋に入れた。灯りを点けると当然の様にホラーアイテム万歳だ。
「適切な言葉が浮かばないって? どうしてかしら?」
「‥‥どうして?」
「それって相手の事を考えて話しているって事じゃない? 好きよ、そういう人。不器用だけどね。確かに演技は巧いとは言えないわ。けど、これがエイミーなのよ。寡黙で無表情だからこそ、僅かな表情の変化が視聴者に驚きと意外性を見せてくれるの。私は満足しているわよ。でも、もっと本気で学べば、今以上に輝くと思うわ」
「本気? ‥‥私は 本気です!」
 刹那、低い位置からビッと少女の指が差し向けられた。
「ならADなんか辞めて女優になりなさいよ! 私が変えてあげても良いけど☆ あなた次第よ。私の友人に演技を教えている学校もあるわよ♪ 撮影後の近い内に探してみなさい☆」
「ADを辞める ですか‥‥私が 女優に?」
 それは賭けでもある。今の仕事を辞めてアクターに専念するのは容易ではないだろう。常にアクター募集に駆け回り、仕事は自分で掴み取るしかない。
 ――ルームメイトの霧砂さんに話したら何と言われるだろうか?
「AD兼女優なんて私は認めないわよ。まあ、そんな肩書きが欲しいなら自分でする事ね。雑誌のグラビア見せて貰ったわ。いいじゃない☆ 勿論、今のままでもドラマで助かるわよ? でも、再確認する位なら、女優を目指しなさい!」
 これがプロの覚悟なのか? 自分よりかなり背の小さい少女に一喝され、無垢は圧倒された。

●翌日――次は撮影で☆
「昨日は楽しかったわ☆ さて、私はシナリオを作るから、皆も遅刻しないで頂戴♪ それと、少しだけど、帰りのタクシー代にでも遣って頂戴☆」
 サミィは僅かばかり紙幣をアクター達に渡した。互いに別れの挨拶を交し、漆黒の馬車へと向かう。
「また、遊びに来なさい。いつでも歓迎するわ☆」
 互いに見えなくなるまで手を振り、黒馬車は森の中へ消えて行った。
「‥‥彼、撮影には来てくれるかしら?」
 GUN&ROAD 素晴らしいアクターに恵まれた西部劇ドラマ。
 新たな撮影の日は近い――――。

 NEXT0420OK?