GUN&ROAD T5南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 切磋巧実
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 04/25〜04/29
前回のリプレイを見る

●本文

●TVCM
 ――荒野の中、追う者と追われる者あり。
 少女達は何かを追って幌馬車駆って町から町へと旅烏。
 そんな少女達を追う者の、目的とは如何なるものか。
 辿り着いた先で起こる騒動に鳴り響くは銃声。
 正義の化身か悪の破壊神か。
 今日も硝煙の匂いを漂わせ、少女達を乗せた幌馬車は行く――――。

 幌馬車で旅を続ける少女は四人。
 ゴールディ・ゴールドウィン:賞金首を倒してお金を稼ぐ為に銃をコレクションする娘。
 リリィ・ザ・タートル:部族を虐殺された過去持ち、シルクハットの者追うインディアンの娘。
 エイミー・ライム:過去の過ちを背負い、贖罪の旅を続ける修道服の娘。
 リネット:記憶喪失だが、製造元不明のシングルアクションリボルバーを所持する娘。
 そんな少女達を追う者。
 ヴィシャス・バイパー、Mr.エンブレム、レイラ・シフォン。
 次第に浮かび上がる片鱗に浮かぶは正義か悪か。
 そして、リネットの記憶に浮かび上がるウェスタンハットにマントを靡かせる者とは?
 新たに現われた謎の賞金稼ぎとは一体!?
 新西部劇『GUN&ROAD』絶賛放送中!!
 今日も何処かで少女達の奏でる銃声が響き渡る――――。

「やっぱり親睦会は良いわね☆ やりたい傾向も分かったし、何となく閃いたわ♪」
 サミィ・ライナー監督はご機嫌だった。毎度の青年も和やかに微笑む。
「それは良かったですね。閃いたと言うと、何かシナリオが浮かんだのですか?」
「えぇ☆ ピキィーン! って効果音がして回避率もバッチリよ♪」
 ――何の話だ。
「さぁ! 内容コイからサクサク行くわよ♪」


●trigger5――規則変則反則利息?
 基本は、『町を訪れ、トラブルに巻き込まれ(トラブルを作ってしまい)、力押しで解決(?)して 次の町を目指して旅立つ』です。

・予定プロット:配役の相談による修正可能。

起承:「あぁ、なんて私達の運命は残酷なのでしょう?」
 この町では争い合う二つの勢力があった。
 大人達が絶えない争いをする中、二つのギャング団(名称未定)には、それぞれ一人娘(名称未定(仮)ジュリエッタ)と一人息子(名称未定(仮)トニー)がおり、互いに惹かれ合う間柄だ。それは夜のほんの一時の秘め事‥‥。しかし、それも親達にバレてしまう。
 一つの勢力は或る者(予定配置:ジャスティン)に依頼した。
『娘に近付くあの若僧を殺してくれないか?』
 一つの勢力は或る者(予定配置:ヴィシャス)に依頼した。
『私の息子をたぶらかした奴の小娘を殺して欲しい』
 それぞれがターゲットを殺す依頼の中、先に殺されては適わないと撃ち合う結果となるは当人。
 確かな腕を持つ者同士は互いに興味を抱く。
 ――何故おまえが殺し屋をしている!
 ――それはお互い様だ。そっちこそ狙いは何だ!
 銃口を向け合う中、語られる過去の断片とは?

転:「そんな‥‥それぞれ殺し屋を雇っていたなんて! ならばボディガードを!」
 互いに命を狙われていると知った若い二人は、町でそれぞれのボディガードを依頼しようと動き出す。そんな中、町を訪れるは幌馬車と少女達。
『彼女の命を奪おうとする奴から守ってくれ!』
『彼の命を奪おうとする者から守ってやって下さい!』
 二手に分かれるか? それとも第4の人物(予定配置:レイラ)が買って出るのか?

結:守る為に引かれるトリガーと殺す為に引かれるトリガー
 それぞれが錯綜する中、互いに敵を知る。そして導き出される結果とは――――。


「今回は銃撃戦から始まり、過程が回想か何かで説明されるOPよ☆ 追う者にスポットを当てた文字通り変則型ね♪ 息子役は女性でも帽子被ってれば何とかなるんじゃない?」
「‥‥Mr.エンブレムが入っていませんが‥‥忘れてませんか?」
「原案は彼よ。巧く暗躍してくれるんじゃないかしら?」
 ――大分シナリオが変化しているように思うのは気のせいですか? 監督‥‥。

●募集区分
・主人公:性別不問(1or2人)
 今回の主人公です。追う者から選んで下さい。コチラで仮配置していますが変更は自由です。伏線とタイミング次第☆

・ゴールディ一行:女性(1人〜4人)
 今回はサブとなります。出番頻度的にいつもの逆となります事をご了承下さい。相談次第ですけどね☆
 
・主人公達(幌馬車)を追う者:性別不問(1人〜)
 何らかの理由で少女達を追い続ける者です。誰をどんな理由で追っているのか決めておいて下さい。
 構成としては毎回なぜか追い着くが、また旅立たれて追跡となる予定。

・今回のサブキャラクター:性別不問(登場頻度が少ない方、またはゴールディ一行として今回登場しない方)
 箱入り娘(仮)ジュリエッタ/ボンボン息子(仮)トニー/町の民/その他
 今回のNPCです。上記のように、置き換える事が可能です。尚、アクターが演じないNPCの場合は最低限の登場しかしない予定です。アクターが演じる場合、名前はお好きに☆

・サポート関連
 衣装作成/脚本協力/大道具・小道具など前準備関連。
 名前とどんな仕事をしたか載る予定です。


●演じる為に必要な書類項目
・配役:今回の主人公/幌馬車の少女達/幌馬車を追う者/今回のサブキャラクター
・役名:登場人物の名前です。本名で出演してもOK。
・服装:簡潔に。衣装はイメージに合うものを用意する予定です。
・設定:どんなタイプ(設定)のキャラクターを演じるか明記して下さい。
・容姿:髪型や髪色、瞳の色など、明記していなければ役者のそのままとします。
・武器:敵と戦う時に使用する武器です。
 尚、結構ノリで制作されている為、とんでもない銃以外は採用予定です。
 勿論、所持していなくても、格闘武器でも構いません。


●前回の役者が揃わなかった場合
 物語上、役名は変えられませんが、目的等前回語られない部分は修正可能です。

●今回の参加者

 fa0558 クールマ・如月(20歳・♀・亀)
 fa1028 水島 無垢(19歳・♀・狼)
 fa1047 芹沢 紋(45歳・♂・獅子)
 fa1107 小比類巻レイジ(25歳・♂・蝙蝠)
 fa1701 華夜(18歳・♀・猫)
 fa1788 碧野 風華(16歳・♀・ハムスター)
 fa2462 ティーナ・アリスン(18歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

●それは神の悪戯なのか?
 ――あぁ、また銃声が聞えていますわ‥‥。
★ジュリエッタ:碧野 風華(fa1788)
 月明かりが僅かに二つの人影を浮かび上がらせ、寝静まった町に靴音を響かせていた。
 スラリとしたシルエットは線が細い長身で、駆け回っていても衣服の揺れる部分は少ない。対するは頭一つ分低いシルエットだ。一挙動の度に結った長い髪が舞い、真横から窺える走る姿は、胸元に女の象徴を模っており、短いスカートと共に揺れている。
 どちらが追い追われているのか判別が困難だが、二人は一定の距離を保ちながら生い茂る森に向かっていた。刹那、細身のシルエットが素早く腰を捻り、二発の銃声を放つ。一瞬、闇に火花が迸り、黒いスーツと帽子が浮かび上がった。次に鳴った銃声は相手からのものだ。チュインッと風きり音が耳元で聞え、青年は数発牽制の銃弾を放ちながら奥へと駆けてゆく。
 ――当初、俺は乗り気ではなかった‥‥。
★ヴィシャス・バイパー:小比類巻レイジ(fa1107)
「殺しの依頼だと?」
 黒髪から覗く赤い瞳を研ぎ澄ませ、青年は怪訝な色を浮かばせた。対峙するのは神経質そうな風貌に不敵な笑みを浮かべる初老の男だ。
「おまえの腕を見込んで是非に頼みたい。簡単な事だよ、小娘を殺してくれれば良い」
 それは偶然だったのかもしれない。ヴィシャスは町に立ち寄った際、マフィア同士の小競り合いに巻き込まれたのだ。身を護る為に抜いた拳銃だったが、ギャグレーファミリーに手腕を買われたのである。
「簡単な事なら、自分達でやればいい。女を殺す趣味も無いし、俺は殺し屋じゃない」
 他を当たってくれと言わんばかりに、青年は黒いスーツのポケットに両手を突っ込んだままクルリと踵を返した。しかしギャグレーも簡単に承知する訳にはいかない。
「出来ないから頼んでいるのだ。マイロの小娘に遊ばれている息子を何とかしたい親心を分かってくれぬか!?」
 肩越しに赤い瞳を流した端整な風貌の青年に、ギャグレーは詳細を話した。事情は分かったが、それは当人同士で解決する事だ。成長には苦い経験も必要というもの。しかし、ファミリーとして公に出来ない狙撃という条件にヴィシャスの勘が働いた。どうやら互いに戦力は相当な規模らしい。
「なるほど、いがみ合いながらも火種は組織から出したくないか。だが、そんなに戦力が整っているとは、まるで軍隊並だな‥‥‥‥! 分かった、引き受けよう」
 僅かな間に青年はギャグレーの反応を窺い、不敵な笑みを浮かべて依頼を承諾した――――。

「参ったな、屋敷に近付き過ぎたか‥‥」
 太い幹に身を隠し、ヴィシャスは一丁の銃を口に咥え、握っている拳銃に弾を詰め直す。そんな最中でも敵からの銃声は止む事はなく、目の前で火花が散っていた。
「相手が女なのは分かった。しかも悪くない腕だ。どうしたものか‥‥」
『やっと見つけたわよ!』
 静寂に包まれた森に女の声が流れる。
★レイラ・シフォン:ティーナ・アリスン(fa2462)
「か弱い少女を殺そうとするなんて、最低の男ね!」
 ――私も人のことを言えたもんじゃないけどね‥‥。
「はぁ? 人を殺して欲しい?」
 レイラもヴィシャスと状況は変わらなかった。
 町を訪れるとマイロファミリーの連中に因縁をつけられ、懲らしめてやったのが切っ掛けだ。まあ、胸元が大きく開いたカウガール風の衣服と深いスリットの入ったミニスカートを履いていれば、災難にも直面してしまうものである。ただ、成り行きが違うのは、マイロファミリーのボスが、腕を認めて殺しの依頼をして来た事だった。しかも殺す相手は対立するマフィアであるギャグレーファミリーの一人息子。
「ふふん♪ そういう事ね、私をこのまま帰したら対抗組織に依頼されると思った。だから先に手を打った、でしょ?」
 対峙する小太りでオールバックの男は、葉巻をたゆらせてバツが悪そうな薄笑いを浮かべる。
「流石に頭の切れるレディは違う。まったく、頭の弱いアバズレ女と見間違うとは、情けない連中よ。だが、そのお陰でレディと巡り合えた。これも何かの縁というものだと思わぬか?」
「オジ様に興味ないわ☆」
 二コリと微笑んで小首を傾げて見せるレイラ。マイロは豪快に笑い声を響かせた。
「ストレートに振られたものだ。実はな、わしの娘であるジュリエッタがギャグレーの息子に騙されておってな。哀しい思いをする前に殺してやろうと考えたのだ。あんな無能な若僧に娘をかどわかされてなるものか!」
 穏やかなマイロの瞳に怒りが漂い、眼光が冷たい色を見せる。威圧感というものだろうか。流石は大きな勢力と権力を握るマフィアのボスだ。‥‥威圧されて怯むレイラではないが。
「いいわ、引き受けてあげる。可愛いお嬢様が凶弾に倒れるのは勿体無いわ♪ 但し、私の遣り方でさせてもらうわよ☆」

 偶然など無い。あるのは必然だけである――――。

「やっと見つけただと? あの女、俺を探していたのか? しかし、何だ? どこかで聞いた声のような気がする‥‥。だが、リネット達ではない‥‥っ!?」
 僅かな草木のざわめきの後、横から飛び出して来たのは人影だ。スローモーションの如く、宙を浮く少女の輪郭が月明かりにゆっくりと浮かび上がる。そして、彼女が向けているのは2丁の銃口。四つのトリガーが絞られる中、対峙した二人の表情が揺れた。
「貴方、死霊の町にいた‥‥!?」
 違うわ! その前にどこかで――――。
「お前は、あの時の女か?」
 それぞれの銃弾が雄叫びと共に、互いを掠めてゆく。レイラは素早く受身を取り、華麗に前転すると、片膝を着いたまま腰を捻り再び銃口を向けた。同じくヴィシャスも側転の後、腰を捻り2丁の拳銃で標的を捉える。二人が硬直する中、宙に浮いていた洒落た帽子が落下してゆく。
 女の赤い瞳が戦慄いた。
 閑散とした一室で確認した資料と一致する青年――――。
「思い出したわ。貴方、あの虐殺事件の街の保安官でしょ! こんな所で、一体何をやってるのよ!!」
「何だと? お前‥‥何故それを‥‥」
 ――敵か? それとも味方なのか?
「邪魔をするのなら――‥‥撃つ」
「邪魔? 貴方いつから殺し屋になったのよ! (人違いかしら?)‥‥保安官の貴方は偽りの姿だった訳?」
「あの時の怒りや憎しみ‥‥死んで行った者達の嘆きや哀しみ‥‥一時たりとも忘れた事等ありはしない‥‥!」
「ち、ちょっッ」
 ヴィシャスの銃口が火を噴いた。一瞬動揺に顔を崩し、レイラが地を蹴って宙を跳ぶ。言葉を交わせる距離での発砲に、少女の柔肌から鮮血が散った。銃声を響かせる中、青年の瞳が赤い血を捉えて見開く――――。

 ――数ヶ月前‥‥。
「何だ! 銃声、なのか?」
 青年の耳に飛び込んだのは幾つもの火薬の破裂するような音だった。
 方角は自分が務める辺境の小さな町からだ。例え様のない胸騒ぎが彼を走らせた。
「まさか! そんな事が!」
 ――少し町を離れて構いませんか? 買いたいものがあるんです。
 町は平穏な日々が流れており、何時も保安官として真剣に務める青年に、上司と町の民は快く承諾してくれた。小さな町では気心も知れたもの。それに買い物の理由も多くの者が知っていた。
「!!」
 辿り着いた町は正に地獄だ。彼方此方で炎に包まれており、路上には見知った者達が血塗れで転がっていた。青年は戦慄に染まり、手からリボンの巻かれた小さな包みを落とす。
「‥‥な、なにがあったんだ‥‥」
 彼は生存者を探して彷徨った。誰一人として返事が無い。それは、或る家のドアを開けても同じだ。血の池に倒れる白くしなやかの腕に、膝を着いて戦慄き、躯を抱き締めて嗚咽をあげた。
「‥‥あの人は‥‥無事なのだろうか?」
 哀しみに暮れる前にやらねばならない事がある。目眩のするような視界が揺れる中、蜂の巣の如く銃創の刻まれたドアを開けた。
 血溜まりと夥しい死体の中、ペタンと座り込んだ血に染まった黒髪の少女が、生気の失われた瞳でゆっくりと振り向く。その手に握られているのは――――。

「俺の魂はあの時死んだ‥‥今、俺を突き動かすのは、全てを奪い去った者に対する復讐心――‥‥それだけだ」
 静寂の中、茂みに身を隠したレイラへ向けて言葉を投げると、帽子を拾い上げて踵を返した。
 ゆっくりと遠ざかる足音を背後に聞き、少女は安堵の溜息を洩らす。
「復讐‥‥か。そうやって生きているのは貴方だけじゃないのよ」

 ――どうやら駒が足りないようですね。
★Mr.エンブレム:芹沢 紋(fa1047)
「まさか雇われた殺し屋同士が出会ってしまうとは‥‥」
 ヴィシャスとレイラは互いの親達がそれぞれ子供達を殺す為に雇った殺し屋である。レオロア・エンブレムとしては、殺し屋のどちらが先に死んでも全く問題はない。また雇わせれば良いだけの話だ。
「しかし、そのままどちらかの子供が殺されればチェックメイトですか‥‥。それはマズイゲームになりますね‥‥」
 かなりカサ高いシルクハットを被った紳士は窓ガラスから離れ、丸テーブルに置かれているチェス盤に並べられた駒を摘んで薄く微笑した。黒い瞳は冷たい色を漂わす。
 ――コンコンッ★
 レオロアがノックに視線を流した刹那、返事も聞かずに乱暴にドアは開け放たれた。
「おい、大丈夫なのか!? 毎夜銃声は聞えるが、小娘は死んでいないのはどういう事だ!?」
「無用心ですよ、ギャグレーさん。どこにマイロファミリーが潜んでいるかも分からないのに」
 神経質そうな風貌の紳士に対して、レオロアは努めて穏やかに対応した。グラスを用意するとワインを注ぎ、テーブルの椅子へと促がす。苛立たしさは治まっていないものの、ギャグレーファミリーのボスは腰を下ろした。
「‥‥部屋の中でも帽子を脱がないのかね?」
「トレードマークというものですよ。常にそうしていれば、マナー知らずとは思われないでしょう? 相手に印象を残すのはビジネスの基本ですから」
「Mr.エンブレム‥‥何故マイロの小娘が死なないのだ。キミが紹介した殺し屋の若僧が失敗したのかね? 何か、知っているのではないのか?」
 眼光が鋭く研ぎ澄まされ、シルクハットの男を射抜く。レオロアは穏やかな表情を崩さず応えた。
「ギャグレーファミリーが知らない情報を私が知る訳がないじゃありませんか。彼の腕は優秀ですよ。恐らく、マイロファミリーも殺し屋を雇ったのかと‥‥」
「殺し屋だと!? マイロのボディガードに阻まれたのではないのか!?」
「あの銃声が聞えませんか? あれは1対1の撃ち合いでしょう。息子さんの安全を強化したいなら、銃器の援助は追加させて頂きますよ」
「殺し屋を増やす事はできないのか?」
「ギャグレーさん、いがみ合いながらもファミリー同士が衝突すれば無事では済まない。だから信用できる殺し屋を斡旋したのです。よろしいのですか? ギャグレーファミリーが殺し屋を雇い、大切なアナタの息子と仲睦ましいマイロの愛娘を殺そうとしたなんてバレてしまっても」
 憶測だけでファミリー同士が衝突する事は先ず無い。しかし、確証が得られれば、復讐の炎は激しく燃え上がり、権力を握る町全体に被害は及ぶだろう。勝っても負けてもデメリットは大きい。それほどギャグレーファミリーとマイロファミリーは巨大で互角なのだ。
 ギャグレーは苦虫を噛んだような表情を浮かべて唸った。
「分かった。武器の手配を頼む」
 腰をあげ、肩越しに神経質そうな顔を向け告げると、初老の男はレオロアの部屋から出て行った。
「相手に印象を残すのはビジネスの基本ですから。尤も、それが正しい印象でも、間違った印象だとしてもね‥‥」
 誰もいないドアを見据える、顎鬚を生やした男の眼光は冷たかった‥‥。

●大切な恋人(ひと)を護る為に
 一見平穏そうな町にゴールディ一行の幌馬車は辿り着いていた。
 大きな町ではあるが、際立った特色も見当たらず、旅の道中で通り掛かった町と変わりない。食料が尽き掛けたから寄ったようなものだ。そんな中、ボロボロとマントにテンガロンハットの娘が一人、退屈そうに町を歩いていた。
★リリィ・ザ・タートル:クールマ・如月(fa0558)
「なによゴールディってば、『私も好きに町を見るからあんた達も好きにしなさい』って、そりゃ一人でいたい時もあるけどさぁ、一人じゃツマラナイ時だってあるじゃないのよぉ。リネットちゃんとエイミーとも、はぐれちゃったし‥‥自棄酒でも呑んじゃおうかなぁ‥‥」
 ブツブツと呟きながら歩くリリィに、町の者達が怪訝な表情を見せるが、気にする娘ではない。丁度酒場を見つけてフラフラと誘われるように向かった時だ。
「お、お待ちになって!」
 震える若い娘の声が背中に掛けられた。気だるそうにゆっくりと顔を向けると、青い瞳に映ったのは、豪奢なドレスを身に着けた場違いな少女だ。ゴールディの姿で見慣れているものの、彼女のドレスは仲間の物を遥かに凌駕している。一言で例えれば『お人形さん』だ。しかも、リリィを見つめる少女は艶やかで長い金髪を流しており、白い素肌は染み一つ見当たらない見目麗しきお嬢様を模っていた。褐色の娘が口を開かないのを見ると、小さな拳を握って宝石の如き青い瞳に睨みを効かせる。
「こ、腰の銃を見込んでお願いしたい事がありますの!」
「あー、悪いけどアタシお酒呑みに来たのよ。他を当たってくれる?」
「お酒なら幾らでも呑ませて差し上げますわ!」
 さっさと追い払おうとした刹那、お嬢様は酒場にズンズンと入って行った。
 店内は一瞬にして静寂に包まれる。誰もが唖然とした顔を金髪の少女に向けていた。『ジュリエッタ嬢だ』『マイロファミリーのお嬢様のか?』と名前を囁く声がリリィの耳に流れる。
(「マイロファミリー? どうやら本物のお嬢様らしいわねぇ」)
「個室を用意して下さらない? この方とお話しなければなりませんの!」
 少女は鼻を抓みながら用件を放つと、店主はへコヘコと頭を下げ、奥の方に案内した。そこは勿論用意された個室ではない。恐らく事務室か応接間だろう。ジュリエッタが常連で無い事も理解できた。それでこの待遇は相当の権力者なのかもしれない。
「早速ですけど、わたくしのお願いを聞いて頂けます?」

 ――その頃、同じような状況にいたのがカウボーイ風のラフな出で立ちの美少女であった。
★リネット:華夜(fa1701)
 キョトンとした表情を浮かべる彼女の瞳に映るは、明らかに町民と身なりの異なる品の良いスーツを着込んだ青年だ。左右に視線を研ぎ澄ませ、リネットへと口を開く。
「彼女の命を奪おうとする奴から守ってくれ!」
「はぁ? ち、ちょっと待ってよ! 何の事だかさっぱり‥‥」
「‥‥なるほどな。私がシスターだからリネットを路地裏まで連れて行った訳か」
 困惑の微笑みを浮かべるリネットの背後から、修道服に身を包んだ娘が抑揚のない声を響かせた。
★エイミー・ライム:水島 無垢(fa1028)
 僅かに顔色を強張らせる青年に、リネットがフォローを入れる。
「あ、エイミーは私の仲間だから大丈夫よ」
「‥‥確かに聖職者の身なりはしているが‥‥気にしないでくれ」
 青年の名前はトニー・ギャグレー。この町で権力のあるギャグレーファミリーのボスが父親との事だ。しかし、この町にはマイロファミリーというもう一つの権力者がおり、双方いがみ合いが絶えないらしい。そんな中、トニーはマイロファミリーの一人娘と出会い――――。
「マフィアの抗争か。関係の無い多くの人間の血が流れたのだろう‥‥」
「恋人同士なんだ。いいなー」
 事情を聞いて瞳を伏せるエイミーに、羨ましそうに指を咥えるリネット。反応はそれぞれだが状況は理解したようだ。青年は修道服の娘に「はい」と応え、更に続けた。トニーの話にみるみる美少女の端整な風貌が怒りを湛えてゆく。
「殺し屋を雇うなんて‥‥なんて分からず屋の親なの! お金なんていらない! 絶対に彼女は死なせないわ!」
「‥‥良いのか? 勝手に引き受けて‥‥。しかも無料となるとゴールディに何を言われるか」
「むぅ〜〜だって可哀想じゃないの」
 エイミーの忠告も尤もだ。これ以上弱みをゴールディに握らせたいのか? リネット。
「お金なら! 僕に払える額なら幾らでも差し上げます! ジュリエッタを殺し屋から護ってくれるのですね?」

 ――湯気のたち昇る浴室から、ジュリエッタの鼻歌が流れていた。
 薄いカーテン越しにシルエットが浮かぶ中、壁に背を預けたレイラが訊ねる。
「今夜はご機嫌ね。何か良い事でもあったのかしら?」
『トニー様をお守りして下さる方を見つけましたの♪』
 ジュリエッタはクスリと笑って答えた。当然、レイラがトニーの命を狙う殺し屋とは知らない。否、それより何故彼が殺されようとしている事を知っているのか?
「なんですって!?」
『知っていますのよ。お父様がトニー様を殺そうとしている事‥‥。わたくしは無力な女ですわ。何も出来ず、父の言葉に異を唱える事すら‥‥ですから、彼の命を奪われないよう雇いましたの』
 レイラは確信した。何かが自分達の知らない所で動いている。
(「巧みな情報操作‥‥そんな事が出来るのは軍か政府関係者ね」)

 ――涙で滲む視界に何人もの男が映った。
 泳ぐ視界が妙齢の女を捉えたものの、戦慄く姿も男達の背中に覆い尽くされてゆく。視界は無理矢理屈強な手で戻され、下卑た笑い声と共に布地の引き裂かれる音が響き渡る。抵抗を見せたのか、視界が大きく揺れ動く中、ドアが開き、愕然とする壮年の男を視界に捉えた――――。

 レイラは脳裏に甦った過去を振り払い、赤い瞳を研ぎ澄ます。
「誰かに守らせるんじゃ、私を雇って相手を殺そうとする親と変わらないわよ。自分の手で‥‥大切な者は守らないと」
 ――本当の銃は凶器ではなく守る為の力。身を守る為に使いなさい。
 ――さあ、早く逃げなさい。生きるのよ、見張りは私が何とかするから‥‥。
「‥‥簡単に失ってしまうわよ」
「え? それって、どういう事ですの!?」
 カーテンから顔を覗かせたジュリエッタの視界に、レイラが映る事はなかった――――。

●交錯する銃口
「僕のボディーガードをするのなら、彼女にしてやって下さい!」
 或る晩、警戒網を潜り抜け、トニーは屋敷の外へ出ると、いかにも雇われガンマンと見えたリリィに告げた。勿論ジュリエッタに雇われたなんて告げていない。褐色の少女は寂しげに微笑み、青年の髪をクシャクシャと撫でる。
「いーや、それは出来ないわよ☆ まあアタシに任せときなさいって♪ アンタさぁ‥‥似てんのよね。何か、放っとけないトコがさ」
「似てる? 僕が誰かに似ているのですか?」
「こいつ〜〜、アタシが奪っちおうかな♪ ‥‥!!」
 ニンマリと笑みを浮かべ、ジリジリとにじり寄った刹那、何かを察知すると、リリィの瞳が鋭く研ぎ澄まされた。呆気に取られるトニーを余所に、暗闇に瞳を凝らして銃を抜く。
「身を低くしてて! そこっ!」
 一発の銃声を合図に更に余った手に鉄の塊を握り、いつものように派手に撃ち捲ろうとした刹那、鈍く空しい音が響いた。一瞬にして褐色の顔を崩す中、反撃の銃声が闇に火花を散らす。
「わ、わっ、あちゃー弾込めるの忘れてたわ。なら、マイトで‥‥えー? 嘘でしょ」
 火を点けようと腰から爆発物を取り出すが、その導火線は激しく短い。これでは投げる前に爆発、下手すればダメージを負う事になりそうだ。
「弾が入った銃は1丁か‥‥。残りは、『アンタ』のナイフだけ‥‥レインもそう思うだろ?」
 思い入れが強すぎた為、逆に実力が出せなくなってしまっていたのだ。リリィは腰から一本のナイフと取り出し見つめると、一気に飛び出した。双方で銃弾が飛び交ってゆく。
「ダメなんだよっ!! 好き合ってる二人がさぁ、引き裂かれるなんてのは!! やらせない、アタシの前でそんなこと‥‥絶対やらせないんだから!! くぅッ!」
 褐色の肌に鮮血が散った。連続で放たれた銃弾に拳銃を弾かれ、足を撃たれてガクリと崩れる。奥歯を噛み締めて膝を着くリリィの目前に、しなやかな白い足が映った――――。

「‥‥何だと? リネット、起きろ! ジュリエッタが動いたぞ!」
 彼女のボディガードをトニーに頼まれたエイミーが、眠りこける黒髪の少女を揺り起こす。これでは見張り失格だ。寝惚け眼を擦り、ぬーっと顔を覗かせた。瞳に映るは、深夜に屋敷を出て走っているジュリエッタだ。
「ふえ? えー!? まさか、恋人同士の密会ってやつ〜☆」
 ポッと頬を染めて、やんやん♪ と両手を頬に腰を振って照れるリネット。対する修道服のシスターは愛用のライフルを握り急かす。
「‥‥無事に会えればの話だ。これでは殺し屋に狙ってくれと言っているのと変わりない」
「えぇっ!? それって大変じゃないですか!」
 慌てて駆け出し、エイミーを追うリネット。刹那、月明かりにキラリと何かが反射した。一気に地を蹴りジュリエッタに向けてシスターがダイブする。次の瞬間、銃声がお嬢様と修道服の少女を擦り抜けた。一瞬の火花を頼りにリネットがトリガーを絞る。しかし、黒い影は巧みに駆け抜け、思わぬ所から銃声を響かせた。応戦するが、苦戦を強いられるばかりだ。

「‥‥大丈夫か?」
「‥‥は、はい。あなた様は?」
「心配しなくていい‥‥誰にも、傷一つつけさせはしない。‥‥トニーに会うつもりだったのか?」
「え、えぇ、そうですわ。わたくしが彼を守らないといけませんもの!」
 エイミーは一時応戦をリネットに任せ、ジュリエッタを安心させようと努めた。馴れ初めを聞き、彼のどこに惹かれたか等を話して貰った。銀髪の娘は戸惑いながら薄く微笑み、金髪の少女に穏やかな瞳を向ける。
「そう、か‥‥私には、そういう感情は、良く分からないが‥‥少し羨ましいな」

 その頃、リネットは殺し屋と攻防を続けていた。
 相変わらず苦戦しており、遂に漆黒の影が放つ銃弾は少女の右腕と足を掠めて鮮血を散らす。
「くっ‥‥! 流石ね、いつもの射撃術じゃ勝てないってこと?」
 拳銃を右手から左手に持ち換え様とした刹那、漆黒の影はリネットの背後から肉迫した。殺気に黒髪を揺らし、腰を捻る少女。間一髪間に合わず、彼女の目の前に銃口が突き付けられる。
「えっ? 貴方が殺し屋? どうして!?」
 少女は瞳を見開いた。瞳に映るは幾多の危機を救った細身の青年だ。
「リネット? なぜキミが‥‥!?」
「リネット! ジュリエッタを頼む!!」
 刹那、長身のライフルを振り翳し、エイミーが宙を舞って跳び込んでゆく。空かさずシスターを捉えてトリガーを絞るも、銃身に備われた切先が薙ぎ振るわれ、咄嗟に2丁の拳銃をクロスさせて洗礼を防ぐ。互いの距離は接近戦の様相を描き出した。
「二度目だったか‥‥貴様とやりあうのは。どんな事情があるのか知らないが‥‥もう一度言う、懺悔は聞かない」
「それはお互い様だ‥‥邪魔をするのなら――‥‥撃つ」
 宣言通り、力比べからそのままトリガーを絞った。ヴィシャスの放った銃弾は咄嗟に身を低くして躱し、ライフルの切先を突き出すと同時に銃声を響かせる。それはまるで危険なダンスのようだ。至近距離で舞い放たれる銃弾を互いに躱し、位置を目まぐるしく変えてゆく。
 ――トニー様と一緒にいると、どんな時でも楽しいの♪ 心が安心感に包まれるのですわ☆
「‥‥? なぜ今、あの娘の話を思い出す‥‥?」
 ヴィシャスと攻防を繰り広げる中、何故かジュリエッタに聞いたトニーとの話が思い浮かばれ、エイミーは奇妙な感覚に包まれた――――。

「悪いわね、ボディガードに守られちゃ困るのよ♪」
 一方、度重なるイージーミスにより、リリィは窮地に陥っていた。武器を失った娘に残されるは形見のナイフだ。腰に手を忍ばせるものの、対峙するレイラは2丁の銃口を向けていた。脳裏に、在りし日の自分とレインが過ぎる。
(「ふふっ‥‥。アタシもアンタも、同じ亀の『啓示(ビジョン)』を受けた身だもんね‥‥。『力無き者を守るための甲羅』、アタシもここが年貢の納め時かしら‥‥」)
 リリィが覚悟を決めた時だ。
『トニー様ぁ!!』
「!? ジュリエッタ!!」
 駆けて来るドレスの少女を捉え、青年が物陰から姿を見せた。刹那、レイラの銃口がトニーを狙い、銃声が響き渡る。そのままジュリエッタは崩れるようにトニーへ飛び込み、強く抱き締め合った。
「ああ、トニー様‥‥わたくし達はこんなに愛し合っておりますのに、父達はこんなにいがみ合って‥‥トニー様となら、天国でも地獄でも、わたしくは構いませんわ」
「駄目よ! そんなの」
 響き渡ったのはリネットの声だ。
「死んじゃったら、終わりだよ‥‥。どんな偉い人も、凄い人も、死んでしまったら、そこで終わりなの!」
 銃口からは硝煙をくゆらせており、先ほどの銃声は彼女がレイラに放ったものだと物語っていた。勿論威嚇だ。銃声に気付けば必ず注意が向く。その隙にリリィが跳び込み、ポニーテールの少女は苦笑しながら涙目で白旗宣言をあげる始末だ‥‥。
「すぐに町が変わることはないでしょうけど‥‥わたくしも皆さんのように、がんばってみますわ」
「僕も説得する為に努力する。ジュリエッタとならどんな苦難でも乗り越えられるから」
 二人は見詰め合うと周囲に構わず唇を重ねた――――。

「殺しの依頼は取り消しだと?」
「そうだ‥‥これまでの働きに金は出す。‥‥何も聞かず忘れてくれ」
 痛み分けでエイミーとの一戦を退いたヴィシャスに、ギャグレーは瞳を逸らして伝えた。どうやら、何かの圧力が架せられたのだろう。
「分かった‥‥」
 青年は踵を返し、立ち去ってゆく。ふと、何かの気配に気付き、肩越しに振り向いた。赤い瞳が捉えたのは二階の壁から映るシルクハットの唾だ。ヴィシャスは何事も無かったように再び歩き出す。
 遠ざかる足音を聞き、ドアが閉じる音を確認するとレオロアは顎鬚に手を当てた。
「政府の介入だと? いったい誰が? 厄介になりそうですね‥‥」

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