宇宙刑事ガザン3アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 塩田多弾砲
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 17.4万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 07/19〜07/28
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●本文

 山平は、若干後悔していた。
「邪怨空間」なる設定を作った事に。

「宇宙刑事ガザン」の撮影も、いよいよ佳境に。
 目玉の「邪怨空間内での決戦シーン」を撮るわけだが、肝心の空間そのものの描写が難しく、イメージボードをまとめるのに困窮する羽目になっていた。
 ストーリーの概要は、ほとんど決まっている。

「‥‥邪怨空間に引きずり込まれたガザン。そこで、邪怪獣キバクリーチャー、およびデスノイド、ヘルターと対決する。
 ヘルターやデスノイドと切り結び、キバクリーチャーと取っ組み合う。
 邪怨空間内では、邪怪獣のパワーは3倍となり、あらゆる物理法則は無視される。邪怨空間の混沌に翻弄されつつ、苦戦するガザン。
 巨大化する邪怪獣。さらに、アングーラ飛行戦車隊が襲撃する。しかし、ガザンはガリドラーグから宇宙鉄竜ドラーグを呼び、ドラーグの鼻先に飛び乗って操る。
 巨大邪怪獣を倒し、ヘルターとデスノイドと対峙するガザン。
『スパークセイバー!』
 ヘルターの剣を折り、デスノイドに必殺技を放つガザン。
『ガザン・エンドクラッシュ!』
 デスノイドを失ったヘルター、そのままテレポートで逃走。そして、邪怨空間も消失する」

「‥‥で、太一郎少年らのエピローグと。このパートの良し悪しは、邪怨空間の描写にかかっているな」
 スタッフに関し言う事は無い。アクションや演技に関しても実によくやってくれている。
 が、特撮班のイメージボードは困難を極めている。なにせ、監督や脚本のイメージ、特撮班の提供する邪怨空間のイメージが、それぞれ今までに見た事のないものであったのだ。

 採石場で、太陽が照りつけてるのに、薄暗い夜。無人の街を進むと、天空の月が異常に大きく奇怪な色彩で見下ろしている。
 どこかの家や建物の扉を開くと、そこには鉛色の荒涼とした平原が広がり、空には逆さまに立っている邪怪獣が。
 空中にいくつも漂う巨大な板。それをあちこちに飛び交い、ヘルターやデスノイドと切り結ぶガザン。暗黒の中へと落ちていくと、そこは無人の廃工場‥‥。

 これらはあくまでイメージなので、この通りに作るつもりは無い。ただ、これくらい混沌としてとらえどころの無いものと、イメージして欲しい‥‥という事だ。
 音楽や造形物はほとんどが完成している。ロケ地の候補も、大体が済んでいる。
 ならば、あとは撮影するだけなのだが。しかし、この邪怨空間をいかに作り出すか。問題はそこにかかるだろう。

 特撮担当者、そして役者たちに、どういうイメージを持つかを提示してもらい、そのイメージボードから作っていく。それが山平の考えている事であった。お互いにアイデアを出し合い、これまでに存在しない異次元空間を作り出す。邪怨空間に関しては、自分が思いつきもしない面白いアイデアを、今回のスタッフは持っているかも知れん‥‥否、持っているはず。
 さて、どう撮るべきか。どういう行動を起こすべきか。
 迷うし悩む。が、それはスタッフみんなも同じはず。それと今回、参加できなかった奴らが参加してくれれば良いんだが。
 時間的なところから、そして自分の管理能力から、色々と迷惑をかけてしまった。
 が、その分この作品を、『宇宙刑事ガザン』を、よりよいものとしていきたい。
 邪怨空間の特撮は、吊り、ライブアクション、合成、そしてCGと、あらゆる技術が駆使される事だろう。
 巨大邪怪獣とドラーグとの戦いは、着ぐるみのキバクリーチャーと操演、もしくはCGのドラーグとを合成して撮影すれば良いだろう。そもそも、組み付いての格闘戦ではなく、光線や火炎を発射しあう事での戦いを想定しているからな。このシーンは。
 おっと、実物大のドラーグの頭部セットも作るようにしないと。ガザンは、ドラーグの鼻先に乗って操る‥‥ってとこを見せたいからな。
 ドラーグは、目から放つドラーグレーザー、口からのドラーグファイヤー、尻尾打ちのテイルクラッシャー、爪で引き裂くクロウスマッシャー。これらを用い、アングーラ飛行戦車隊と巨大化した邪怪獣相手に戦うわけだ。

 しかし、巨大化戦はしょせん前座。
 決戦である、デスノイド「グールA」とヘルター、そしてガザンとの戦いがメインであり、もっとも力を入れなければな。
 このあたりの殺陣にも、一工夫欲しいところだ。
 切りつけるヘルター。それを払って、デスノイドへ攻撃。
 デスノイド、盾でそれを防ぎ、青竜刀で切りつける。
 後ろへ跳んでかわすも、ヘルターの剣より放つ光線や衝撃波など(後で決めよう)で、ダメージを。
 ガザンも、オメガレーザーで反撃。そして、ヘルターの剣とスパークセイバーとをかちあわせ、ヘルターの剣の刀身を折る。
 最後に、スパークセイバーの刃を光らせるガザン。ここは、合成などして光学処理するのがセオリーだろうが。蛍光灯を使っても良いが、強度的にはちょっと不安だな。
 とどめの「ガザン・エンドクラッシュ」を放つ時の画面処理も忘れずに、と。

 これらも、かなりの難題であると言えるな。が、ここまで来たんだ、やってみせるとも!
 ガザンの模型を見ながら、山平は気合を入れなおした。

●今回の参加者

 fa0369 天深・菜月(27歳・♀・蝙蝠)
 fa0463 伊達正和(25歳・♂・竜)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa0911 鷹見 仁(17歳・♂・鷹)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3141 宵夢真実(23歳・♂・蝙蝠)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa3709 明日羅 誠士郎(20歳・♀・猫)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)

●リプレイ本文

「ふむ、まだ若いのに監督とは大した物だ。では、一つよろしく頼むよ」
「ああ。いい作品にしてみせる。で、必殺技の演出案だけど‥‥」
 今回初参加の鷹見 仁(fa0911)は、自身のアイデアスケッチやメモを、山平と大林の前に広げた。
「『夕日』『宇宙に浮かぶ地球』『宇宙空間での大爆発』‥‥っと、三つばかし候補をあげてみたけど、どんなもんかな」
 ガザンの必殺技『ガザン・エンドクラッシュ』の背景に用いる素材として、彼はいくつかの候補をあげていた。
「どれも面白そうだな。素材映像を探してテストして、その中からいい感じのものを採用しようじゃないか。そうだ、雨宮くん、スパークセイバーはどうするんだったっけ?」
 今回も特殊撮影全般を受け持つ事になった、雨宮慶(fa3658)。彼はドラーグの演出や撮影について考えていた。
「あ、えーと。通常以外に、合成前イメージ補強用を一本。蛍光灯を使う予定です。それと、夜光塗料を塗ったのをもう一本。計三種の剣を用意しようかと。あと、ドラーグの撮影方法なんですが‥‥」
 彼もまた、自ら描いてきたイメージボードを取り出した。
「基本は模型、各所はCGで撮影したいと思います。先日、CGIデータでテストしたんですが、しなやかに動かすとちょっと違和感がありました。メカ生命体といっても、やはりちょっと固めの動きの方がメカっぽいと思いまして。ドラーグの頭部セットは、いま製作中です」
 いつもながらの仕事ぶりに、山平は満足を覚えうなずいた。まだ若いながらも、これだけの力量を持つのだ。きっと将来はもっとすごい作品を作る事だろう。
 もっともそれは、他の連中にも言えることだが。
「今回僕たちは、最後のシーンくらいしか出番がないね‥‥」
「それでも、出来ることを精一杯しましょう?」
 タブラ・ラサ(fa3802)と富垣 美恵利(fa1338)。それぞれ太一郎少年役とセラー役。今回はラストにしか出番がないのだが、それ以上に何か役に立てないかと、邪怨空間内の演出アイデア出しブレーンストーミングに参加していたのだ。
「富垣、『採石場に、レイヤーに載せるように町を被せる』ってお前さんのアイデア、なかなかのものだ。面白そうな効果が出そうだから、早速使ってみるとしよう。おっと、タブラ‥‥」
 あまりアイデアが出せず、しょんぼりしてる彼に、大林監督が声をかける。
「落ち込む事は無いぜ。そういうありがちなアイデアだって悪くない、むしろ、お前さんがそう言ってくれたおかげでアイデアがわいたよ。『歪んだ鏡に映す』と『色調補正』。この二つをあわせた画像処理にしたら、結構悪くなかろう。こっちも検討しとこう」

 スタジオの隅で台本を読みつつ、天深・菜月(fa0369)はナレーションを練習していた。服部記者としての出番はラスト、ナレーションも数えるほどしかないものの、最後をしめるためには気合を入れねばなるまい。
「スパークセイバー! ガザン・エンドクラッシュ!」
 気合をいれまくった状態で、伊達正和(fa0463)もまた台本片手に練習している。ガザン役としてアフレコするのみならず、主人公の神行寺剛役も兼ねている彼は、熱心に取り組んでいた。
 彼に負けてはいられない。気を引き締め、彼女はスタジオ中央で殺陣の練習をしているスタッフへ目をやった。
 ヘルター役の雨堂 零慈(fa0826)、キバクリーチャー役のモヒカン(fa2944)。
 そして、宵夢真実(fa3141)と明日羅 誠士郎(fa3709)。鷹見に呼ばれた明日羅もまた、今回が初参加。相談した結果、彼女はガザンのスーツアクターをする事になった。
「でもいいのかい? ヒーロー役があたしで?」
「ええ。勧善懲悪のストーリーは『善』が懲らしめるべき『悪』あってこそですから。ヒーローが如何に輝くかは、悪役次第なんですよ‥‥ヒーローが闇を照らす月なら、悪役は姿を見せずその月を照らす太陽。そんな『悪ター』を俺は目指したいんです」
「じゃ、あたしもその太陽に負けないヒーローを演じないとね。どういう立ち回りをすればいいかな?」
 リハ用の剣と盾を持ち、宵夢は明日羅と殺陣の練習を始めた。
「それが終わったら、自分との立ち回り練習を頼むよ。あと、その後でヘルターとの一騎打ちのリハ予定だから、あまり食事はとらんようにな」
「‥‥その次には、雨宮殿のところに行ってくれ。ドラーグの鼻先に乗っての戦いの打ち合わせがあるとの事だ。それと‥‥」
 モヒカンと雨堂が、今後の予定を口にする。ヒーローの道のりは、かなり遠そうだ。

「‥‥アクション!」

 ロードライノスで、邪怨空間に飛び込んだガザン。
 砕石場のような場所に降り立ち、その周辺を走り回る。降り立つガザン。
 荒涼としているが、薄くレイヤーがかかっているかのように人気の無い町並みが被っている。空は極彩色が踊り、尋常な様子ではない。空中には、様々な物が浮遊している。
 それは、ビルや建物やマシン。そういったものが、空中を漂流している。
 それらのいくつかが、突如襲い掛かってくる。
ガザン「!」
 うち一つ、巨大な隕石が迫り来る。ガザン、その大きさにおののくも、ジャンプしてその隕石にパンチ。
 爆発! その衝撃に吹き飛ぶ。
 ガザン、転がり落ちる。そこは人気の無い町並み。歩き回るガザン。廃工場跡にたどり着く。荒涼とした不気味さをかもし出している。
 天井を見上げる。そこには、巨大な顎門がカッと開いている。
 その口から出現し、突然襲い掛かるキバクリーチャー!
ナレーション「邪怨空間内では、通常の物理現象は通用せず、邪怪獣は三倍にパワーアップするのだ!」
 両腕をふるってガザンに掴みかかるキバクリーチャー。それに組み付き、後ろに放り投げるガザン!
 キバクリーチャー、その口から光弾を発射! ガザン、間一髪でかわしていく。しかしタックルされ、後ろに吹っ飛ばされる!
 工場の壁にも顎門があり、大きく開く。それに飲み込まれるガザン。
 暗黒の中をどこまでも落ち、ある空間に降り立つガザン。巨大な空間内で、空中に何枚も巨大な板が浮かんでいる。ガザンが立ってるのもその一つ。周囲は、極彩色。
 ガザンが周囲を見回していると、板に逆さに立っているデスノイドがジャンプ!
 ガザンもまたジャンプし、空中で激突! 同一の板の上に降り立つ両者。周囲の空間内にノイズが走り、二重写しのTVのような様相に。
 デスノイドと戦うガザン。剣を抜き切り結ぶ。
 周囲の空間のノイズが酷くなり、空間そのものが別の空間に入れ替わる。
 どこかの惑星上のような、荒涼とした平原。空は暗黒の宇宙空間。そこには、巨大な顎門がいくつもついている巨大な岩塊が。
 その口の一つから、キバクリーチャーが現われる! 二対一で戦うガザン!
 デスノイド、ガザンに切り付け、キバクリーチャー、ガザンに噛み付く! そのたびに、ガザンのコマンドスーツが火花を散らす!
ガザン「ぐわっ! くっ! (後方に転がって距離をとり)オメガ・アームドレーザー!」
 ガザンの左手から光線が。それをデスノイドは盾で弾くが、キバクリーチャーには直撃!
 キバクリーチャー、ジャンプし、空中の岩塊に。その顎のひとつに入り込む。
 岩塊が脈動、それは姿を変え、巨大なキバクリーチャーへとモーフィング。
 それを見てたたらをふむガザン。周囲に爆発が! 
 アングーラ飛行戦車隊が飛来し、ガザンに攻撃!
 ガザン、腕を掲げて叫ぶ。
ガザン「宇宙鉄竜ドラーグ!」

 黒雲を割り、ガリドラーグ出現! ガリドラーグの中央部分が分離、それが更にパーツ展開し、変形していく。
 機械の竜の首と尾、手足が伸び、変形完了! 叫ぶドラーグ!
 ジャンプし、ドラーグの鼻先に飛び乗ったガザン。
 アングーラ飛行戦車隊、ドラーグの周囲を飛び回り、光線を発射! 
 地上からも、キバクリーチャーがボディ各部の顎門より光弾発射! ドラーグの周辺で爆裂!
 更に吼えるドラーグ!
ガザン「ドラーグレーザー!」
 ドラーグの両目からレーザーが放たれ、アングーラ飛行戦車隊を薙ぎ払う!
 それをかわし、接近する飛行戦車。
ガザン「クロウスマッシャー!」
 前方からの飛行戦車。すれ違いざまに、両手の爪でそれらを引き裂くドラーグ!
 飛行戦車隊、破壊され落下! それとともに、キバクリーチャーと相対するドラーグ。
 突撃し体当たりを仕掛ける邪怪獣。
ガザン「テイルクラッシャー!」
 空中で身体を反転させ、その尾の一撃をキバクリーチャーの腹部に炸裂させるドラーグ!
 吹き飛び地面に倒れる邪怪獣
ガザン「ドラーグファイヤー!」
 ドラーグ、口から強烈な火炎を放射! 直撃を受けた邪怪獣、炎上し大爆発!

 ガザン、再び跳躍し地面に降り立つ。
 デスノイド、たたらを踏みガザンを見据える。
 ガザン、剣を抜く。
ガザン「スパークセイバー!」
 刀身が光り輝く。スパークセイバーで切りつけるガザン。盾で防御するデスノイドだが、一閃され盾は両断。
 大きく剣を振りかぶり、突撃するデスノイド。
 ガザン、そのバックに夕日を背負い、コマンドスーツの各部を点滅させる。
ガザン「ガザン・エンドクラッシュ!」
 大爆発の映像を背中に、スパークセイバーを振り下ろすガザン!
 デスノイド、両断され爆発!

 それと同時に、再び空間が変わる。今度は、どこかの闘技場のような場所。
 空間内に、時折ノイズが走っている。
ヘルター「所詮デスノイドでは、この程度か‥‥」
 空間より、ヘルターが出現。
ガザン「お前は‥‥?」
ヘルター「貴様を、地獄に送る者‥‥『黒焦』‥‥!」
 静かに歩み寄っていた彼、手をかざし、静かに変身ポーズを。
 赤く光るヘルター、白い煙と共に黒いコマンドスーツ姿に。その手には剣が。剣は日本刀よろしく、刀身に僅かに反りがある。
ヘルター「ジャオン幹部、ヘルター・プレデター‥‥参る!」
 その鋭い斬撃に、ガザンは防戦するのみ。すばやく突進し、ガザンのコマンドスーツに切りつける。火花をあげるガザンのスーツ。戦いの最中、周囲の空間に走るノイズが徐々に酷く。
ガザン「くっ‥‥負けるかっ!」
 ガザンも剣を振るうも、流れるような動作でそれらを軽くかわし、自身の剣で弾くヘルター。が、かわしきれず、肩口を切られる。
ヘルター「ちっ‥‥レッドブレード!」
 自身の剣の刀身を、赤く輝かせる。それを持ち、身構えるヘルター。
 ガザンもまた、スパークセイバーを構える。
 お互いに、間合いを詰めつつ、にらみ合う両者。
 刹那、両者同時に走り出す。
ヘルター「ヘルター・デッドエンド!」
ガザン「ガザン・エンドクラッシュ!」
 すれ違いざま、互いに必殺技が放たれ、刀身がぶつかり合う。そして、お互いに離れ‥‥ガザン、先にヒザをつく。その胸部、切り裂かれてスーツ内部メカがむき出しに。
ガザン「くっ‥‥やるな、ヘルター!」
 ヘルター、振り返る。が、彼の剣も刀身が折れ、肩装甲もひどく切り裂かれている。
ヘルター「‥‥宇宙刑事ガザン、その名は憶えておこう‥‥次に会った時が、貴様の最後だ」
 やがて、ノイズとともに邪怨空間は消え、それとともにヘルターも消える。周囲は、元の空魔山の周辺に。
 ガザン、立ち上がる。太陽の光が、勝利をたたえるかのようにコマンドスーツに降り注ぐ。

 喫茶店にて。
服部「ああーもうっ、どうしてあたしってこう抜けてるのよっ! また編集長に怒られちゃったわーっ」
 頭をかかえる服部。彼女の隣には、太一郎少年と、彼の両親が。
太一郎「でも、助かったんだからいいじゃない。お父さんとお母さん、それに捕まった人たちも無事でよかったよ」
服部「でも、いったいあいつら何者よ。あれからもう一度現場に行ってみたけど、あの扉も、スイッチも無かったし、洞窟らしいものもなし。絶対、地球を狙う宇宙人に違いないわね! 間違いないわ!」
 そこに、剛とセラーが。
剛「よっ、太一郎君」
太一郎「剛さん! 無事だったの?」
服部「は〜、助かったみたいね、良かったわ〜」
セラー「ええ、剛はしぶといのだけが取得ですからね」
剛「おいおい、そりゃないぜセラー」
 笑いの輪が生まれる。
太一郎の父「本当に、このたびはありがとうございました」
太一郎の母「ええ、太一郎がお世話になったみたいで。なんとお礼を言ったらいいか」
剛「なあに、気にしないで下さい。それより、みんなが無事で良かったですよ」
服部「いいえ、気にするわ! ねえ剛さん、あのヘンな奴ら、あなたも見たわよね? 私決めたわ! あいつらを追いかけて、必ずスクープを手にして、編集長をギャフンって言わせてみせる! 剛さんもセラーさんも、協力してくれるわよね? ね?」
剛「あ、ああ、まあ‥‥考えておこう」
セラー「あ、あはは‥‥が、がんばってくださいね」
 剛、みんなの様子を見て微笑みつつ、何かを思うような厳しい表情に。
ナレーション「宇宙犯罪結社『ジャオン』の野望を打ち砕いたガザンだが、戦いは始まったばかりだ。ジャオンの脅威から、地球と全銀河の平和を守るため。戦え剛、剛着せよ、宇宙刑事ガザン!」


「‥‥できたか!」
『「宇宙刑事 ガザン」第一話』。それがとうとう、完成した。
 かなりの難産の末に生まれた作品。それがいま、形となって納品された。
 が、まず間違いは無いだろう。きっと、うまくいく。ヒットを飛ばす作品になるだろう。根拠は無いが、確信めいた何かが、強い自信が山平にはあった。
「‥‥最高のキャストとスタッフに、乾杯」
 打ち上げにはまだちょっと早い。だが、彼は心の中で、まず最初に乾杯した。
 参加者全てに対しての、感謝の心とともに。