ミサキ〜消えた男アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
立川司郎
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芸能 |
フリー
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
8.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/25〜03/29
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●本文
オカルトサイト『傀儡の森』管理人である、フルヤ。木崎昴と名乗り、ミサキに関わると目されるフルヤの元恋人は、三津屋臣(みつや・しん)という男であった。
三津屋と木崎‥‥立浪祐介はその話しをあすかとともに聞き、頭を抱えた。
「これが、三津屋臣だったって? それに、あのナナキって子に情報媒体付きの本を渡したのは、誰なのか‥‥ミサキのサイトと‥‥ああ、なんか訳わかんなくなってきた」
「立浪さん、とりあえず蟇目大祭と情報媒体の事は置いておきましょう。まずはミサキの事について調べた方がいいです。フルヤさんにあの人形を渡したのは、三津屋臣だと判明しています」
三津屋がこんな形で情報を出して来たのには、何か訳があるはず。
「一つ。三津屋の行方を調べましょう。二つ。他のアイテムについて、情報を集めましょう。残りは、そのあとの話です」
蟇目大祭については、あすかが独自に動いている。その為に来島とシシリーの釈放を頼んでいた。
今あすかが立浪に頼まなければならないのは、ミサキと三津屋の件だ。
「フルヤさんに、三津屋の事について聞いておいてください。三津屋と‥‥ミサキについても、もっと調べなければなりません」
立浪が預かった、ミサキの写真。傀儡の森オフで、手に入れて来てもらったものだ。
あすかはその写真をテーブルに並べた。
一枚目は、刀の写真だ。
「今日、氷室さんから連絡がありました。恐らく、陰刀(インタオ)ではないかと‥‥黒光りする地肌を見ても、少し見覚えがあるとか」
「‥‥あいたたた‥‥そうきたか」
頭を押さえて、立浪が呻いた。
二枚目は、既に手に入れている十銭白銅貨だった。
そして三枚目。銀の小さな指輪が写っている。そこには、何かが彫り込まれている。
「これを拡大した所、何か数字が書いてある事がわかりました」
ちらりと立浪が顔を上げる。そうか、それでこいつが‥‥。
あすかの背後に立っていたのは、シシリー。ぱっ、とあすかの手から写真を取り上げた。
「‥‥これは、俺は知らんな。まあ、こんなに古けりゃ知る訳がないか」
「シシリー‥‥見当がついているんじゃないか?」
立浪が聞くと、にやりとシシリーと笑った。
「俺の暗号が解けたなら、あんたも解けるはずだが?」
「‥‥今僕が解いたら、何の面白味も無いじゃないか。彼らに対するご褒美も無しだろ?」
「当たり前じゃねえか、むろんお前にもご褒美は無しだ」
ひらりと写真を放る、シシリー。あすかは、すうっとシシリーを振り返った。
「あなたは、三津屋が何故こんな事をしたのか‥‥知っているんじゃないですか?」
「さあ、あいつがどうしてたかなんて、興味もないな。‥‥ただ一ついえるのは、そいつは全部バラバラの事件だって事さ。時代も場所もバラバラ‥‥あすか、お前の仕事だ。ゴミ掃除をするんだろう?」
くすりとシシリーと笑った。
設定
指輪の刻印(表):2『10』,25515『7』
指輪の刻印(裏):3『 』,21212『 』
*刻印は、各個の中の数字だけ大きく書かれています。裏の文字は、そこだけ空白になっています。
ヒント:各個の中は無視して解いた方がいいでしょう。各個以外が解けたら、各個の中身が分かると思います。これは暗号です。組み合わせるものです。
お仕事:三津屋の行方と、この三ッのアイテムについて調べるのが先です。陰刀については、由来云々よりも行方がメイン(由来はあすか達は知ってますから)。どうしても暗号が解けないなら、立浪に泣きついてみてください。暗号の法則を知ったら、あとできっとがっかりします(笑)。
指輪の刻印は、十銭白銅貨が現している『言葉』にも繋がっているので‥‥こっちは、リアルに検索して調べてみると、ちょっと何か分かる(かも)。
<NPC等>
ploject:八卦:映画製作会社。暗部という、裏の組織を持ち、NW退治等の活動をする。
立浪祐介:八卦企画部の脚本家。兼・暗部隠密隊。ミサキについて追っている。
緋門あすか:神社の巫女さん。人間。何故か八卦に協力している謎の人。
●リプレイ本文
■ミサキ〜消えた男
[花束の主]
相変わらず、八卦本社は慌ただしく人が行き来している。
廊下から企画部の方へと歩きながら、トシハキク(fa0629)はどこか落ち着かない気持ちになってしまった。いつもは自分も、彼らに混じって‥‥。
「あ、悪いけどこれを爪痕の撮影現場に届けてくれない?」
見知らぬ男に書類を押しつけられて、ジスはきょとんとした顔で思わず受け取った。
関係者だと思われたのか、誰でも良いから押しつけようと思ったのか。
すると横合いから別の手が伸び、書類を取り上げた。
「これは僕の客」
「あ、立浪さん」
ほっとして、ジスが苦笑いを浮かべた。
応接室の扉を立浪が閉じると、外の喧噪から隔離された。
「今、リーゼロッテさんが三津屋さんのお墓に行っているんです。それで、いくつか彼女から聞いておくように言われた事がありまして‥‥」
と、ジスはポケットから手帳を出した。
「木崎昴とのつきあい、それから先日の傀儡の森NW事件の、ナナキさんが持っていた本‥‥あれは一般でも出回っていたものなのかと」
「三津屋臣と木崎昴は、けっこう仲が良かったな。いつも連んでたし‥‥三津屋の親は同じ八卦だったんだが、ずいぶん前に死んでな。色々と八卦自体について調べてたようだが、まあそういう奴は煙たがれるもんだ。奴らも若かったし、何か得られたとも思えないが‥‥。ナナキの本は、たしかずいぶん古い本だったな。そいつは多分八卦の関係者が持ってるもんだと思うが、よくわからんな‥‥誰が持ってるかもう把握出来ないしなぁ」
「そうですか‥‥」
三津屋臣の妹である香奈が死亡した、蟇目大祭。蟇目大祭の会場にはジスも先日行ってみたが、周囲は深い森に覆われていた。
立浪が言うには、当時自分も含めて暗部の人間が何人かいたが、誰も犯人らしき人物を見ていないという。周囲は視界が悪く、誰かが忍び寄っても分からないかもしれない。
また、あすかが『入るな』と言った奥の扉‥‥。
誰かが隠れていた可能性はあるのか無いのか、それともそれすら危険な場所なのか。
立浪から三津屋香奈の墓がある寺を聞いたリーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)は、陸 琢磨(fa0760)とともにそこを訪れていた。陸が居るのは、打ち合わせで会った彼が、
「情報収集しなければ、まだ把握出来ない」
と過去の報告書とにらめっこしていたから、「何をどうやって調べるつもりなの?」と聞いたのだ。するとまだ考えていないそぶりだったから、連れてきたのである。
「三津屋香奈っていうのは、臣の妹。十年前の蟇目大祭というイベントで死亡した、三人のうちの一人だね。臣はミサキというサイトを作り出した本人と目されていて、木崎昴を名乗っている。ちなみに木崎昴っていうのは、臣の友人であり、死亡した三人の一人」
て、所かな。ロッテは振り返りながら言った。
墓石を見ながら、ロッテは探している墓を探す。一番端まで来て、足を止めた。
「‥‥ここかな」
三津屋の墓石には、香奈の名前。そして、父と母らしき人物の名前があった。
これを見るかぎり、最初に亡くなったのは母‥‥どうやら幼い頃に亡くなったようだ。父、三津屋修二は十数年前に。
「誰か来たようだな」
陸は、墓前に手向けられた花を見て言った。まだそれほど日がたっていないようだ。
「立浪さん、八卦は夏にしか来ないって言ってたけど‥‥」
親族や八卦が夏に来る以外、この墓に来るのは臣しか居ないはずだ。
「三津屋臣‥‥八卦の方でしたかな」
寺に行くと、住職は本堂で二人の話に答えてくれた。住職は人間のようだ‥‥ロッテは慎重に、質問を投げかけた。
「十年前に妹さんが亡くなってから、彼はここに来ましたか?」
「ええ、毎年来ていますよ。八卦の方に会いたくないと言って、いつも突然ここにやって来ますね」
「それ‥‥八卦に言いましたか?」
「何度か八卦の人も来ているんですが、三津屋くんがいつ来るか分からないもんですから、なかなか捕まらないんですよ」
三津屋は毎年、墓参りに来ていた。
時々、誰かを伴って来る事があったという。つい半年前も、女性を連れて来たという。
「それ、どんな人でした?」
半年というと、フルヤではないはずだ。ロッテは、身を乗り出すようにして聞いた。
「そうですね‥‥二十代後半で‥‥名前は何と言ったかな。ああ、今は鎌倉に住んでいると言っていましたよ」
鎌倉‥‥。すう、とロッテは一礼すると、立ち上がった。
「帰ろう、陸さん」
真っ直ぐ前を睨んだまま、ロッテが歩き続ける。
「何かわかったのか」
陸が聞くと、ロッテがちらりと見返した。
「フルヤさん‥‥そして新しい彼女。三津屋さん、いろんな所を渡り歩いてる。彼女を作るのは隠れ蓑って訳なのね。何でそんな事をしなきゃならないの‥‥」
臣が何故、何から隠れているのか分からない。確かなのは‥‥少し前に鎌倉に住んでいた事。もしかすると、今も鎌倉に居るかもしれない。
[フルヤ・古屋恭子]
2DKのフルヤの部屋は、御神村小夜(fa1291)達が来訪するとあっという間に手狭になった。
小夜、橘 遠見(fa2744)、八咫 玖朗(fa1374)‥‥さすがの人数に立浪も遠慮し、小夜は近くで焼き菓子を買ってフルヤに差し出した。
「ちょっと人が多いんですけど‥‥よろしいですか?」
「ええ、構いませんよ」
フルヤに快く了承してもらい、小夜はほっと息をついた。
さっそくキッチンを借り、小夜がフルヤとともにお茶を煎れる。
ロッテは人形の写真を撮っていたが、遠見や玖朗は始めて訪れるのでうろうろ歩き回る事もなく待っている。
「みなさん、昴を探しているんですか?」
「え? ‥‥あ、はい」
昴、という呼び名に玖朗が緊張した様子で答える。彼女はいまだ木崎昴、という名前の主が本当は三津屋臣であると認識していないのだ。
フルヤの所に来る前、小夜は臣が住んでいたというアパートを訪れていた。しかしそこでは手がかりになるものは何もなく、部屋も片づけられていた。転居先は不明‥‥。
「フルヤさん‥‥えっと、古屋恭子さん‥‥ですか」
フルヤというのは彼女のHNだ。本名は、古屋恭子という。
「呼び捨てでかまいませんよ、みんなフルヤと呼びますから」
フルヤはお茶をテーブルに置くと、笑って遠見にそう言った。奥から小夜も菓子を持って来て、座った。
フルヤがどういう経緯で、昴と出会ったのか。
彼が興味を示していたオカルト情報が何か、他に無かったか。ミサキに関する持ち物、他に何か見た事がないか。
聞きたい事が、山ほどある。
フルヤはちょっと困ったように、手をあげる。
「えっと‥‥一つずつお話します。皆さんが昴を探していて、ミサキの管理人が昴じゃないかと思っていらっしゃる事も分かりましたから」
遠見は、ちらりと小夜を見る。遠見はフルヤと初対面だから、ここは会った事がある小夜達に話を任せた方がいい。
「昴と会ったのは、居酒屋でした。彼、そこでバイトをしてたんです。‥‥思えば昴、いつもそういった‥‥短期の仕事ばかりして、あちこちフラフラ渡り歩いているようでした。そこで、オカルトの話で仲良くなって付き合うようになったんです」
「ミサキらしき話も‥‥ですか?」
小夜が聞くと、フルヤが少し考えた。
「そうですね、人形はそうなんだと思うんですけど‥‥指輪とか刀は見た事がありませんね。そういえば、黒い八卦鏡を持っていました。岬のサイトの情報では、鏡‥‥という情報がちらほら出ていますが、人形がミサキのものでしたら、八卦鏡も同一のものかもしれません」
静かに話しを聞いていた相沢 セナ(fa2478)が、口を開く。セナは話を聞きながら、ノートパソコンで情報をチェックしていた。
「そうだね、一つは黒い鏡だという情報が他のサイトで出ている。あとは古い本だとか、指輪がもう一つあるとか、数珠とか、掛け軸とか、いろんな情報が混じっていて判断が付かないけれど‥‥」
ロッテの情報からも、三津屋が何かから身を隠そうとしていたのは間違いなさそうだ。
セナは、今も臣は傀儡の森を見ているかもしれなと思っていた。何か目的があって人形を置いていったのであれば、なおさら今もその行方は気にしているであろう。
「僕はもう少し、黒い八卦鏡について調べてみるよ。暗号の事はさっぱりわからないけど‥‥玖朗さん、大丈夫かな?」
「まあ‥‥なんとか」
玖朗は頭を掻いた。
携帯電話を切ると、時雨・奏(fa1423)はコタツの上に置いた。
「みんな、明日こっちに来るそうやで」
「そうですか」
ちらりとあすかが時雨を見る。
ここ最近、時雨にしてもシシリーにしても男出入りが激しい。しかも住み着いている。
『彼らは、うちに下宿してるんです』
と近所の人には言っているが、どこまで信用しているものか‥‥。
住み着いているのはともかくとして、時雨があすかを訪ねたのは刀について聞きたかったからである。
時雨が氷室亜矢に調べてもらった刀、ミサキの刀は『陰刀』と呼ばれている。
「陰刀というのはですね、元々八卦が中国からこっちに持ち込んだオーパーツを打ち直したものだといわれています。蟇目大祭で神事に使っていたんですが‥‥例の殺人事件の際に無くなりましてね」
「美術品やあらへんの?」
「亜矢さんが見たのは、多分神事の時でしょう。‥‥とはいえ、オーパーツを簡単に譲り渡したりすると思えないのですが‥‥三津屋臣は、いったいどこに刀を隠しているんでしょうね」
「んー‥‥本人、もう持ってへんかもしれんしな。人形もコインも持ってへんし」
刀は刀屋さんにあるんとちゃうの、と時雨が呟いて、こたつに頭を乗せた。
[暗号]
「こんにちは、時雨さん」
あなたは、いつからここに居るんですか?
にこりと笑いながら、遠見が時雨に聞いた。柔らかい物言いが、逆に嫌みに聞こえる。
「わいはわいで、調べ物しとった、っちゅうに」
「では、建設的に話をしましょう」
遠見がこたつに暗号を書いた紙を置くと、玖朗がじっとそれを見つめた。
「まず‥‥三津屋さんがミサキを立ち上げたのに間違いは無いでしょう。しかし、何故何の為だったのか、分かっていません。七日で消したのは何故でしょう」
獣人を狩る為‥‥?
遠見が自問自答のように呟くと、あすかが首を捻った。
「それだと、もうとっくに犠牲者が出ていると思いますが」
「十銭白銅貨についても、まだ何も分かっていない」
セナは、あすかが保管していた白銅貨をじっと見つめた。
「絵柄だけで見るなら、皇室の花と‥‥あとは青海波」
どちらかというと、青海波の方が可能性が高いが。
セナはこれとは別に、黒い八卦鏡についても調べていた。フルヤが見たという八卦鏡がミサキのものかは分からないが、黒い鏡の噂はネット上にちらほらとあった。
「NWが関与していると思われる噂だ。後でまた調べておこう」
「ではセナさん、お願いします」
ぺこりとあすかが頭を下げた。
「でも肝心の暗号が解けなければ、話も進みませんね。8進法や16進法に直してみたりしたんですけども」
はあ、と遠見がため息をついた。
玖朗はペンを片手に、暗号に何か書き込んでいる。
「9の3は無い‥‥というのがヒントなんですよね。いちおう、こんな風に考えてみたんですけど」
玖朗が紙を皆に見せるように、差し出した。
そこに書かれていたのは、こんな図だった。
×123456789
1ABCDEFGHI
2JKLMNOPQR
3STUVWXYZ×
「これだと、シシリーの言っていた193937の311123は、SICILY‥‥シシリーと読めます」
「‥‥凄いよ八咫さん、素晴らしい」
ジスは、図を呆然と見つめた。いくら考えても分からなかった暗号が、こんな風に解かれる所を見る事が出来るとは。
時雨が、今度は縦にして書いてみる。
「縦に並べたら、F EMNANやけど‥‥そっちで合うてそうやな」
「合ってるといいんですけど」
照れたように、少し顔を赤くして玖朗が笑う。
「でも、もう一つの暗号が分からなくて。この場合、『T“10” KENAN“7”』となります」
「シシリーは、ここにはSとかHとかMとか付く事もある、と言っていましたよ」
あすかがそう言って、10の前にHを付けた。
H10、S10、T10。
「あ‥‥そうか、平成10年、昭和10年‥‥大正10年」
玖朗が目を丸くした。
大正10年。件案7号。
それは大正10年に起こった、とあるNW事件の‥‥八卦が担当した事件である。
「‥‥件案7号のファイルが無い?」
立浪は、あすかからの電話に、思わず声をあげた。
『はい。つい最近まで八卦の書庫に保管されていたはずなんですが‥‥。八卦内部からの妨害である、という可能性が高いでしょう。とりあえずミサキに関する資料、全て立浪さんから預からせていただきますが‥‥いいですか?』
「‥‥仕方ないねぇ。まあ、蟇目大祭で僕も忙しくなるし‥‥後は任せるよ。暗部はどうするの」
『来島さんに‥‥私は彼、シロだと思っていますから』
電話を切った後。じゃあ、僕もクロの可能性がある、と思っているって事なんだね。
ぽつりとつぶやき、苦笑した。