DOG’S 06南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 ゆうきつかさ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/25〜06/29
前回のリプレイを見る

●本文

<参加資格>
 試合に参加する事が出来るのは男性レスラーのみ。

<詳しい内容>
 正統派プロレスではなく、ショープロレスです。
 試合の勝敗は実力ではなく、その場のノリで決まります。
 基本的にはベビーフェイス(正義)とヒール(悪)の戦いになるため、自分がどちらに所属するかを選んだ上で、シナリオに参加してください。
 現時点で無所属は選べませんので、ご了承くださいませ。
 試合は基本4試合。
 状況によって増えたり、減ったりしています。
 対戦相手を選んだ上で一試合だけ参加してください。
 複数の試合に参加した場合は、こちらで適当に割り振られてしまうため、望むような試合は出来なくなります。
 また、あまりにも危険であると判断された場合は、『PET SHOP』の社長であるワイズマン・ウォルター・エルマン(通称:WWE)から試合の中止を宣言されます。

<選択可能な試合一覧>
・チェーンデスマッチ
 両選手の片手にチェーンを繋ぎ、試合を行う形式です。
 チェーンは長めのものを使用しているため、武器として使用する事も出来ます。
・ケージデスマッチ
 リングの四方を金網で囲み、逃げ場を無くして行う試合を行う形式です。
 相手をKOすればケージから出れます。
・有刺鉄線デスマッチ
 ロープの代わりに有刺鉄線を張ったリングで行う試合を行う形式です。
 追加オプションで爆破や電流なども選べます。
・ガチンコマッチ
 ストーリー重視の試合になります。
 筋書きなどを決めた上で、魅せるプロレスを心掛けておきましょう。

<テンプレート>
所属:
リングネーム:
試合形式:
対戦相手:
登場シーン:
登場時の台詞:
コスチューム:
アピールポイント:
得意技:
苦手技:
決め台詞:
控え室での行動:

<説明>
所属:ベビーフェイス側(正義)かヒール側(悪)のどちらを選んでください。
リングネーム:未記入の場合はPC名になります。
試合形式:チェーンデスマッチ、ケージデスマッチ、有刺鉄線デスマッチ、ガチンコマッチのうち、どれかひとつを選んでください。
対戦相手:対戦相手の名前とPCIDを記入してください。
登場シーン:登場の仕方を教えてください。
登場時の台詞:キャラクターの口調でお願いします。
コスチューム:コスチュームの説明をお願いします。
アピールポイント:一番アピールしたいポイントは?
得意技:得意な技を教えてください。
苦手技:苦手な技を教えてください。
決め台詞:勝利した場合の決め台詞。
控え室での行動:控え室で何をやっているのか書いてください。

●今回の参加者

 fa0126 かいる(31歳・♂・虎)
 fa0374 (19歳・♂・熊)
 fa0757 グリード(24歳・♂・熊)
 fa2572 キング・バッファロー(40歳・♂・牛)
 fa2594 ドン・ドラコ(30歳・♂・竜)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)
 fa3177 ビッグ・ザ・グリズリー(24歳・♂・熊)
 fa3790 GIGA(21歳・♂・竜)

●リプレイ本文

●かいる(fa0126)の控え室
「やっぱり『DOGS』の弁当は美味いなぁ。レスラーの事をまったく考えていないところがポイントだが‥‥」
 無駄にカロリーの高い弁当を食べながら、かいるが高重量のダンベルを持ち上げる。
 『DOGS』の弁当はボリュームと質を重視しており、栄養のバランスなどが考えられていないため、レスラー向きの食事とは言えない。
 そのため、控え室に置かれた弁当を食べているレスラーは少なく、ほとんどの場合は各自で持参した物を食べている。
「まぁ、ワイズマン社長の事だから、何か考えがあるのかも知れないが‥‥。まさか税金対策ってわけじゃないよな?」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、かいるがダラリと汗を流す。
 容易にその光景が浮かぶため、絶対に違うとも言い切れない。
「止めだ、止めっ! どんどん黒い方に考えが行っちまう‥‥。やっぱり、あのオヤジはフツーじゃねぇ‥‥」
 青ざめた表情を浮かべながら、かいるがブンブンと首を横に振る。
 最近、ワイズマン社長がポリバケツに凝っているため、その事と何か関係があるのかも知れない。
「さとて‥‥、そろそろ試合だな」
 そして、かいるはメイドガイ甲斐としてリングに立つため、ハンガーに掛けられたメイド服を掴み取る。
 ワイズマン社長がおかしいのは今に始まった事ではないのだから、今は試合の事だけ考えればいいと思いつつ‥‥。

●キング・バッファロー(fa2572)の控え室
「こ、これは‥‥凄いな‥‥」
 山のように積まれたファンレターを見つめ、キング・バッファローが驚いた様子で溜息を漏らす。
 キング・バッファローが地道に営業をしているためか、各地からファンレターが届いており、読むだけでもしばらく時間が掛かりそうである。
「‥‥後で読ませてもらうかな」
 ファンレターをダンボールの中に入れた後、キング・バッファローが黙々と柔軟体操をし始めた。
 テーブルの上には『DOGS』特製の弁当が置かれているが、持参した弁当があるため全く手をつけていない。
「‥‥失礼します。先程、追加のファンレターが届きました。みんな子供達からのものです。他にも病院や孤児院からも来ていますので、面倒なようでしたらこちらで返事を書くように手配しておきますが‥‥」
 クールな表情を浮かべながら部屋の中に入っていき、瀬戸・カトリーヌがテーブルの上にファンレターをドサッと置く。
「いや、余計な事はしなくていい。そんな事をしたら子供達の心が傷つくだけだ。おまえ達が思っているほど、子供達だって馬鹿じゃない。本物と偽物の違いくらい分かるからな」
 テーブルの上に置かれたファンレターを掴み取り、キング・バッファローがクスリと笑う。
 例え時間が掛かったとしても、自分で返事を書かねば意味がない。

●第1試合 『有刺鉄線電流デスマッチ メイドガイ甲斐VSキング・バッファロー』
「おらおらおらー!」
 専用のモップを使って花道を清掃していきながら、メイドガイ甲斐がドスドスと鈍足で駆け抜けていく。
 観客達は突然の轟音に驚き、目を丸くさせている。
「てやっ!」
 棒高跳びの要領でモップを突き立て、メイドガイ甲斐がロープを飛び越えようとしたのだが、体重があまりにも重過ぎたため、バランスを崩して派手に尻餅をつく。
「ふっ‥‥。それじゃ、先が思いやられるな」
 会場にカントリーソングが響く中、キング・バッファローが赤いポンチョと白いテンガロンハット姿でリングに上がる。
「‥‥神様に会う用意はしたか?」
 テンガロンハットを放り投げ、キング・バッファローがニヤリと笑う。
 観客達はキング・バッファローの登場に喜び、一斉に立ち上がって『キング』コールが連呼する。
「いらっしゃいませ、お客様。とても残念なのですが、ここでお引取り願います」
 獰猛な笑みを浮かべながら、メイドガイ甲斐が攻撃を仕掛けていく。
 それと同時にリングのまわりに有刺鉄線が引かれ、ゴングの音と共にスイッチを入れて電流を流す。
「嫌だと言ったら‥‥、どうする気だ?」
 両手を合わせて力比べをしながら、キング・バッファローが口を開く。
 メイドガイ甲斐のパンチは重くて破壊力があるのだが、その分スピードが遅くて大振りになっているため、彼には止まっているように見えている。
「その場合は身体で分かっていただくしかありませんね」
 申し訳無さそうな表情を浮かべた後、メイドガイ甲斐が雄叫びを上げてタックルをかます。
 しかし、メイドガイ甲斐の攻撃は当たらず、そのまま虚しく空を切った。
「‥‥遅いな。それじゃ、蚊だって殺せない」
 真っ直ぐメイドガイ甲斐の顔を見つめ、キング・バッファローが軽々と攻撃をかわしていく。
 メイドガイ甲斐の攻撃が手に取るように分かるため、キング・バッファローは何処か寂しげな表情を浮かべている。
「ならば、これでどうですか?」
 キング・バッファローの前に立ってニヤリと笑い、メイドガイ甲斐が思いっきりスカートの裾を持ち上げた。
「‥‥んな!? そ、そんなモノを穿いて恥ずかしくないのか?」
 驚いた様子で後ろに下がり、キング・バッファローが顔を真っ赤にする。
「お望みならもっと凄いモノを見せますが‥‥」
 天使のような笑みを浮かべ、メイドガイ甲斐がスカートの裾を掴む。
「えっ、遠慮しておこう。これ以上、物騒なモノを見せられても困るからな」
 慌てた様子で首を振り、キング・バッファローが汗を流す。
 忘れようとしても瞼の裏に焼きついているため、しばらく悪夢にうなされそうだ。
「‥‥そうですか。ならば暴漢相手に素手で挑む愚は避けさせていただきます。オトメの純情を穢されても困りますからね」
 コーナーポストに隠してあった箒を掴み、メイドガイ甲斐がニヤリと笑ってスカートを揺らす。
 観客達はスカートの中身がどうなっているのか気になっているようだが、キング・バッファローの態度が普通ではないので、何かとんでもないモノが隠れているのではないかと邪推する。
「凶器攻撃とは、卑怯だぞ!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、キング・バッファローが攻撃をかわす。
 しかし、先程とは異なりひどく動揺しているためか、メイドガイ甲斐の放った突きを喰らってコーナーポストまで追い詰められていく。
「古来より正義の名の元に下される鉄槌です。それとも、はしたなく蹴り上げ、この中が見たいとでも?」
 ハアハアと息を吐きながら、メイドガイ甲斐が袴の裾を掴んで挑発する。
 徐々にスタミナが切れてきたため、早く決着をつけねば倒れてしまう。
「ならば本気を出すまでだっ! ‥‥いくぞっ!」
 メイドガイ甲斐の腕を掴んでコーナーポストに放り投げ、キング・バッファローがスピアーを放ち、ストマック・ヘッドバットでトドメをさした。
「ぐはっ‥‥、もう少しだったのに‥‥」
 少しでも動けば全身に電流が流れるため、メイドガイ甲斐が悔しそうに愚痴をこぼす。
「いや、おまえは充分に強くなっている。これで満足する事なく、トレーニングに励めばきっと強くなるはずだっ!」
 爽やかな笑みを浮かべながら、キング・バッファローが優しく手を差し伸べる。
「ふっ‥‥、次は負けないからな」
 キング・バッファローの右手を掴み、メイドガイ甲斐が笑みを浮かべて肩を抱く。
 試合には負けてしまったが、何だか清々しい気分である。
「プロレスラーは鍛えているから危険な試合ができる。良い子は真似しちゃダメだぞ」
 そして、キング・バッファローはマイクを掴んで決め台詞を叫ぶのであった。
『勝者:キング・バッファロー(ヒール) 決め技:ストマック・ヘッドバット』

●ビッグ・ザ・グリズリー(fa3177)の控え室
「うっ、うめぇ! やっぱ本場の味は違うなぁ〜。オラ、こんなに美味いメイプルシロップを食べたのは、初めてだど!」
 メイプルシロップの味に舌鼓を打ちながら、ビッグ・ザ・グリズリーが空になった瓶を置く。
 ワイズマンに頼んで弁当の代わりにメイプルシロップを届けてもらうように頼んでいたため、ビッグ・ザ・グリズリーの控え室にはメイプルシロップの瓶詰めが山のように置かれている。
「それにしても、こんな美味いメイプルシロップを何処で作っているんだべか。故郷のおかあちゃんにも送ってやるべ」
 幸せそうに笑みを浮かべ、ビッグ・ザ・グリズリーが瓶に張られたラベルを見た。
 ラベルにはトレードマークである熊の顔が描かれており、その横にはメイプルシロップを作っている会社の名前も印刷されている。
「おっ! こりゃ、『DOGS』のスポンサーだべさ! つー事は、コレがイチオシの新商品って事だべか? オラも頑張ってCMに使ってもらうべかな〜」
 モンモンと妄想を膨らませながら、ビッグ・ザ・グリズリーがにへらと笑う。
 スポンサーとの交渉によって使用許可が出るのなら、トレードマークである熊の格好をしてリングに立つのも悪くない。

●焔(fa0374)の控え室
「う〜、眠ぃ‥‥。こんな事なら無理をしてでも眠っておけば良かったなぁ‥‥」
 魂の抜けた表情を浮かべ、焔がブツブツと愚痴をこぼす。
 昨日は興奮しすぎて眠れなかったため、その反動で激しい睡魔に襲われている。
「と、とりあえずコスチュームだけでも着替えておくか。このまま眠りについても、コスチュームさえ着ていれば‥‥ってオイ! なんだ、こりゃ!?」
 唖然とした表情を浮かべ、焔がダラリと汗を流す。
 試合用のコスチュームだと思って持ってきた物は、昼寝用に愛用している赤ジャージ。
「よほど眠かったんだな、俺は‥‥。でも、いまからコスチュームを取りに行っても間に合わないしなぁ‥‥。だからと言って『DOGS』のコスチュームを借りるわけにも行かないし‥‥。どうすりゃいいんだよ、本当にっ!」
 困った様子で頭を抱え、焔がまわりを気にせず大声を上げる。
 一応、最後の手段として主催者側からコスチュームを借りるという方法もあるのだが、アメリカンパンツしかないため出来る事なら避けたいようだ。
「‥‥仕方ない。これを穿くか」
 青ざめた表情を浮かべながら、焔が引きつった笑みを浮かべてジャージを穿く。
 幸いな事にダンボール箱だけは上質なものが手に入ったため、それだけでも焔にとっては救いである。

●第2試合 『ケージデスマッチ ビッグ・ザ・グリズリーVS焔』
「クマーーー!」
 顔の出るクマの着ぐるみ姿で大きな斧を担ぎ、ビッグ・ザ・グリズリーが堂々と花道を歩いていく。
 それと同時に会場の照明が消えていき、焔の笑い声だけが辺りに響く。
「‥‥貴様が俺の相手か。怪我をする前に帰るんだな」
 全身にスポットライトを浴びながら、焔が偉そうに腕を組んでコーナーポストの上に立つ。
 本人は格好良く登場したつもりだが、赤ジャージを着ているせいで観客席から笑いが漏れる。
「こ、こらっ! 笑うな、そこと、そこっ! アメリカンパンツを穿くよりはマシだろうがっ! こら、そこっ! 指を差して笑うんじゃねぇ!」
 予想通りの対応にショックを受け、焔が涙を浮かべて観客席にツッコミを入れた。
 観客達は焔を指差してゲラゲラと笑い、お約束とばかりにパンパンと手を叩く。
「‥‥たくっ! 後でひとりずつ膝カックンの刑だな、こりゃ。試合が終わるまで空気椅子で待ってろよ!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、焔が観客席を指差した。
 観客達の中には挑発的な者もいたが、その中のひとりが『助平椅子』と書かれたTシャツを着ていたため、怒っているのも馬鹿らしくなってくる。
「一体、どこを見ているだ? この試合におめえさ負けたら、おらに夕飯を奢るだぞっ!!」
 持っていた斧を放り投げ、ビッグ・ザ・グリズリーが着ぐるみを脱ぎ捨てた。
 今回のコスチュームはカナダの国旗をイメージしたデザインの赤いショートタイツに素足である。
「うわっ‥‥、また濃いヤツが対戦相手だな。こんな格好で大丈夫か、俺‥‥」
 引きつった笑みを浮かべながら、焔が気まずい様子で汗を流す。
 既に天井からケージが下ろされているため、いまさら逃げるわけにはいかないようだ。
「そっちが来ないのなら、オラの方から行くべ。クマーーー!!」
 ダンボールマスクをガシィッと掴んで後ろに回し、ビッグ・ザ・グリズリーが雄叫びを上げてジャンピング・ヘッドバットを繰り返す。
「うわっ! ま、前が見えねぇ! 卑怯だぞ、この野郎っ! 前が見えなきゃ反撃する事も出来ないだろうがっ! こら、聞けっ! ケンカを売っているのか!」
 ベコベコになったダンボールマスクを元に戻し、焔がブツブツと文句を言いながらビッグ・ザ・グリズリーを睨みつける。
「もちろん、けんかを売っているクマーーー!!」
 焔の体をガッチリと掴んで雄叫びを上げ、ビッグ・ザ・グリズリーがハイアングル・ストマック・ブロックを炸裂させた。
「だ、だ、だから俺の話を聞けって‥‥。なんでダンボールマスクが、サッカーボールみたいになっているんだよ。マ、マジでシャレにならねぇだろ!」
 朦朧とする意識の中でふらりと立ち上がり、焔がダンボールマスクの位置を直す。
 どんなに激しくダメージを受けたとしても、ダンボールマスクの位置だけはキチンとしたい。
「トドメクマァーーー!」
 ベアハッグを使って焔の体を締め上げながら体勢を変え、ビッグ・ザ・グリズリーが勢いをつけてジャンピング・パワーボム『グリズリー・ブラスター』を炸裂させた。
 焔は何が起こったのかも理解する事が出来ぬまま、ビッグ・ザ・グリズリーにフォールを決められる。
「おかあちゃん、オラやったど〜〜〜!!」
 隠し持っていた極太の油性マジックでダンボールマスクに落書きをした後、ビッグ・ザ・グリズリーが涙を流してバンザイした。
『勝者:キング・バッファロー(ベビーフェイス) 決め技:グリズリー・ブラスター』

●辰巳 空(fa3090)の控え室
「試合前だからと言って手加減しないでくださいね。このままだとスパーリングになりませんから‥‥」
 ファイティングポーズを取りながら、空がレスラー達を挑発した。
 スパーリングをするため控え室に置かれている物はすべて片付けられており、空の相手をしているレスラー達には重たいスーツを着せられている。
「ほ、本当にいいんですか? 怪我をしても知りませんよ?」
 驚いた様子で空を見つめ、レスラー達がまわりを囲む。
「ええっ‥‥、既に覚悟は出来ています」
 含みのある笑みを浮かべながら、空が拳をギュッと握り締める。
 それと同時にレスラー達が雄叫びを上げ、一斉に攻撃を仕掛けていく。
「‥‥まだまだですね。それじゃ、私は倒せませんよ。遠慮せずに本気で掛かってきてください」
 呆れた様子で溜息をつきながら、空がレスラー達の攻撃をかわす。
 レスラー達に動きに無駄が多いため、ほとんどの攻撃が当たっていない。
「今度は凶器を使ってください。もっとハードなスパーリングをしないと、『DOGS』で生き残る事なんて出来ませんから‥‥」
 さらなる高みを目指すため、空がスパーリングを再開した。
 この試合‥‥、負けるわけにはいかないのだから‥‥。

●GIGA(fa3790)の控え室
「む、難しい‥‥」
 着ぐるみ姿でルールブックを開きながら、GIGAが控え室の中をウロウロとする。
 プロレスのルールを覚えるために色々と勉強をしているのだが、専門用語が多過ぎるためGIGAには理解する事が出来ない。
「やっぱり本で覚えるよりも、実戦を経験した方が良さそうだな。イメージトレーニングだけでは限界がある‥‥」
 とうとう根を上げてしまったのか、GIGAがルールブックを投げ捨てる。
「‥‥随分と気が立っているようね。空調が効いていないのかしら?」
 エアコンのリモコンを手に取り、瀬戸が控え室の温度を調節した。
 GIGAは着ぐるみを着ているため、室内の温度も低めである。
「いや、ルールが難し過ぎて覚えられないだけだ。もう少し分かりやすいルールブックが欲しいんだが‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、GIGAが着ぐるみ姿でノッシノッシと歩いていく。
「それならコレがいいんじゃない。ウチの社長が新しく出した本よ」
 手の平をポンと叩いて笑みを浮かべ、瀬戸がスタッフの控え室からワイズマンの本を持ってきた。
 ワイズマンの本は大半の文章をゴーストライターが書いているため、本人が書いた文章はほとんどないのだが、文体を似せているため区別がつかない。
「何々‥‥、『ポリバケツにでもわかるプロレスのルール』か。でも、なんでポリバケツなんだ?」
 不思議そうに首を傾げ、GIGAがボソリと呟いた。
「社長が気に入っているんだから仕方が無いでしょ。一体、何処かいいんだか‥‥」
 ブツブツと愚痴をこぼしながら、瀬戸が疲れた様子で溜息をつく。
 減給のショックで頭のネジが吹っ飛んだのか、最近のワイズマンは何処か様子がおかしいらしい。
「確かに‥‥謎だなぁ‥‥」
 そのためGIGAは返す言葉が見つからず、瀬戸と一緒に溜息をつくのであった。

●第3試合 『ガチンコデスマッチ 辰巳 空VSGIGA』
「‥‥」
 炭酸ガスとスポットライトを浴びて登場し、空が宙吊りのままでリングに移動した。
 空のコスチュームは『アメリカナイズされた巨大ヒーロー』をイメージしたもので、青をベースに赤と白のラインが特徴になっており、精悍な顔つきで二本の鶏冠と黄色い目が印象的な着ぐるみ型のスーツである。
「ガオーーー!」
 続いて現れたのは、海獣の着ぐるみを着たGIGAであった。
 GIGAは某怪獣王のテーマに乗って花道を歩いていき、咆哮をあげながら椅子を蹴散らして観客席をノッシノッシと徘徊する。
 そのため空がハンドサインを使ってGIGAをリングに上がらせようとしているが、観客達を襲うのに夢中でリングのある方向は見ていない。
「‥‥」
 GIGAの説得に失敗したためお手上げのポーズを取り、空が不貞腐れた様子でリングに寝転んだ。
 しかし、GIGAの暴走は止まらず、観客席で咆哮をあげている。
「‥‥」
 既にゴングが鳴っているため、空が溜息をついて観客席に乗り込んだ。
「ガオーーー!!」
 両手をあげて咆哮を上げながら、GIGAが空にむかってタックルをかます。
 それと同時に空がGIGAの背後にまわり、リングにむかって蹴りを入れた。
「アンギャアアアア!!」
 観客席から転がり落ちてバウンドし、そのままリングにザクッと突き刺さる。
「‥‥」
 『ちょっとやり過ぎてしまったかな』と言わんばかりの雰囲気を漂わせ、空が格好良くバク転を決めてリングに降り立った。
 しかし、GIGAがマットに突き刺さったままなので、空が気合を入れて引っ張りズボッと抜く。
「ガオーーー!!」
 それと同時にGIGAが咆哮をあげてパンマーパンチを炸裂させた。
「!!!!」
 突然の出来事に驚き対応が遅れたものの、空がGIGAの攻撃をしっかりと受け止める。
 GIGAのパンチは破壊力があるため、両腕がジンジンとしているが、ここで悲鳴を上げている暇は無い。
「ガオーーー!!」
 いまにも炎を吐きそうな勢いでタックルをかまし、GIGAが空をコーナーポストまで弾き飛ばす。
 空は何とか受け身を取る事が出来たが、全身が痺れているため動けない。
「ガオーーー!!」
 ノッシノッシと歩いて空を引きずり起こし、GIGAが咆哮をあげて投げっ放しジャーマンを炸裂させる。
「ガオーーー!!」
 トドメとばかりに咆哮を上げ、GIGAがコーナーポストめがけてタックルした。
 しかし、空はGIGAの行動を先読みしていたため、そのまま腕を掴んで背負い投げを放つ。
「アンギャアーーー!!」
 立ち上がる事が出来ずに悲鳴をあげ、GIGAが両足をジタバタさせる。
 その隙に空が腕ひしぎ十字固めを仕掛け、何も言わずにフォールを決めた。
「‥‥ガオ」
 ガックリと肩を落としながら、GIGAがトボトボと帰っていく。
 その姿に満足したのか、空が決めのポーズを取った。
 最後まで一言も語らずに‥‥。
『勝者:辰巳 空(ベビーフェイス) 決め技:腕ひしぎ十字固め』

●グリード(fa0757)の控え室
「ふん、何時もの犬に戻ったか。やはり俺には、女どもとの戯れには向かないようだからな。願ってもない事だ」
 不機嫌な表情を浮かべながら、グリードが控え室の中に入っていく。
 控え室にはグリードのポスターが貼られており、目の部分には隠しカメラ用の穴が開いている。
「‥‥相変わらず芸がねえな。どうせポスターはフェイクだろ。本物はここだっ!」
 勝ち誇った様子で笑みを浮かべ、グリードが控え室にあったテレビを壊す。
 隠しカメラはメインスイッチの横に取り付けられており、スタッフ達が慌てた様子で控え室の扉を開ける。
「な、な、な、何て事をするんですかっ! 高かったんですよ、これっ!」
 青ざめた表情を浮かべながら、スタッフ達が隠しカメラを回収した。
「知るか、ボケェ! 勝手に俺様の部屋に入るんじゃねぇ! ここにはいっていいのは、イイ女だけだといったはずだっ!」
 スタッフ達に蹴りを入れ、グリードがペッと唾を吐く。
「イイ女だけですか。‥‥分かりました。努力します」
 お互いの顔を見合わせた後、スタッフ達がゴクリと唾を飲み込んだ。
「‥‥って、そういう意味じゃねえよ、ボケ! テメェらが女装したって、俺様の心はグッとこねぇ! ケンカを売っているのかコン畜生っ!」
 スタッフ達にヘッドロックをかましながら、グリードが雄叫びを上げてふたりを仕留める。
 その光景がカメラに収められているとも知らず‥‥。

●ドン・ドラコ(fa2594)の控え室
「‥‥何だか騒がしいわね。クマでも暴れているのかしら?」
 ボディビルダーの専門誌を熟読しながら、ドン・ドラコ(fa2594)が溜息を漏らす。
 ドラコの控え室にも隠しカメラが仕掛けられているのだが、グリードとは異なり隠しカメラにむかってセクシーなポーズを決めてアピールする。
「HAHAHAHAー! ちょっと失礼シマスYOー。一体、何の相談デスカー。まさか恋の悩みというワケじゃアリませんヨネ?」
 豪快な笑い声を響かせながら、ワイズマンが控え室の中に入っていく。
 ワイズマンはドラコから相談を持ちかけられたらしく、必要以上に身の危険を感じている。
「あら、ヤダ。そっちの相談じゃないわよ。‥‥実はね、同じヒールであるグリードさんと、リアルヒール決定戦をしたいと思うの。それでユーの許可が欲しいんだけど‥‥」
 甘えるようにしてワイズマンに擦り寄り、ドラコがふぅ〜っと息を吹きかけた。
「な、な、なるほど。それならワタシも問題なく許可する事が出来マァース! 『DOGS』も6回目ですから、たまにはこういうのがあってもイイと思いマスし‥‥。頑張ってクダサイね!」
 ホッとした様子で笑みを浮かべ、ワイズマンがドラコの肩を叩く。
 念のため貞操帯をつけてきたせいか、ワイズマンの動きがぎこちない。
「‥‥良かった。本当に断られたら、どうしようかと思ったのよ。最悪の場合はこの身を捧げなくっちゃいけないのかなって思っていたから‥‥」
 瞳をウルウルとさせながら、ドラコが冗談まじりに微笑んだ。
「相変わらずドコまで本当なのか分かりませんネ。まぁ、それがアナタの持ち味だとは思いますが‥‥。それじゃ、ソロソロお時間のようデスし、ワタシはこの辺で帰りマスね」
 そして、ワイズマンは気まずい様子で汗を拭き、逃げるようにして控え室を出て行った。

●第4試合 『チェーンデスマッチ グリードVSドン・ドラコ』
「‥‥たくっ! 今日は厄日だな」
 エキストラの美女を両脇に従え、グリードが堂々とした態度で花道を歩く。
 今回の試合はヒール対ヒールの特別マッチ。
 そのため否が応でも気合が入る。
「あらぁん、相変わらずヤル気満々ってカンジねぇ。こんな状況じゃ、あたしも覚悟を決めなくちゃ駄目かしら? その気があるって事だものねぇ〜♪」
 満面の笑みを浮かべながら、ドラコがドジョウ掬いの格好で雅楽に合わせて花道を歩いていく。
「勘違いするんじゃねぇ! お前を殺る気があっても、押し倒してモノにする気はねえからな!」
 面倒臭そうな表情を浮かべながら、グリードが溜息をついて毛皮を脱ぐ。
 両脇に立っていた美女達はグリードから毛皮を受け取ると、投げキッスを放ってリングを降りていく。
「まぁ、ヤル気があるだなんて、恥ずかしいわ。やっぱり、あたしとユーは赤い糸で結ばれているのねぇ‥‥。これって運命よねぇ」
 ウットリとした表情を浮かべながら、ドラコが衣装を脱ぎ捨て赤いショートタイツ姿になった。
 ドラコの右腕からは真っ赤なチェーンが伸びており、ワイズマンなりに気を使っている事が何となくだが想像できる。
「ワイズマンの野郎‥‥。まさか俺を人身御供にして、自分は助かろうって腹か。‥‥たくっ、汚ねぇ真似をしやがって‥‥」
 怒りで拳を震わせながら、グリードが観客席をジロリと睨む。
 ワイズマンは観客席で腕を組み、爽やかな笑みを浮かべている。
「もぉん! 一体、どこを見ているのよぉん。あなたの相手は、このあたしっ! 浮気なんて許さないんだからっ!」
 悔しそうな表情を浮かべながら、ドラコがハンカチを噛んで瞳をウルませた。
「だからそっちの趣味はねえって言っているだろうがっ! そんな事より始めねえか? このままじゃ、観客達が帰っちまう‥‥」
 観客達にまで誤解されるのだけは避けたいため、グリードがスタッフ達に対して合図を送る。
 それと同時にゴングの音が鳴り響き、グリードが攻撃を仕掛けていった。
「あっ!」
 わざと大声を出してグリードの背後を指差し、ドラコがすかさずチェーンを巻きつける。
 グリードは一瞬油断して後ろを見てしまったため、ドラコの策略にハマッて身動きが取れなくなった。
「ぐおっ! 何しやがる、この野郎っ!」
 あまりの苦しさに顔を真っ赤にしながら、グリードがゲホゲホと咳き込んだ。
「あらん、これがヒールのやり方よぉん。あたしのサムライ・ソウルに勝てるかしら?」
 含みのある笑みを浮かべながら、ドラコがグリードの耳元で囁いた。
「ふ、ふざけるなっ! そこまでして俺を本気にさせたいのか!?」
 ドラコの腹に肘鉄を食らわせて技から逃れ、グリードが隠し持っていたチェーンを使って首を絞める。
 次の瞬間、ドラコがコスチュームの中からライターを取り出し、毒霧を吐く要領でグリードめがけて火を噴いた。
「ぐはっ! て、てめぇ! もう容赦はしねえからなっ! このままあの世に行きやがれ!」
 その一撃がグリードの逆鱗に触れたのか、ドラコの両腕にチェーンを巻きつけ、ダブルアームロックを仕掛けて、トドメとばかりにフェイスクラッシャーを炸裂させる。
「‥‥悪く思うなよ。こうでもしなきゃ、俺の方が負けていたからな。やっぱりお前の実力はホンモノだ」
 ドラコの実力を認めた上で、グリードがリングを降りていく。
 その一言がドラコの心を奪ったとも知らず‥‥。
『勝者:グリード(ヒール) 決め技:フェイスクラッシャー』

注:次回の『DOG’S』は7月20日を予定しています。