DOG’S 08南北アメリカ
種類 |
シリーズEX
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担当 |
ゆうきつかさ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
3.9万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
08/26〜08/30
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前回のリプレイを見る
●本文
<参加資格>
試合に参加する事が出来るのは男性レスラーのみ。
セコンドのみ女性も可。
<詳しい内容>
正統派プロレスではなく、ショープロレスです。
試合の勝敗は実力ではなく、その場のノリで決まります。
基本的にはベビーフェイス(正義)とヒール(悪)の戦いになるため、自分がどちらに所属するかを選んだ上で、シナリオに参加してください。
現時点で無所属は選べませんので、ご了承くださいませ。
試合は基本4試合。
状況によって増えたり、減ったりしています。
対戦相手を選んだ上で一試合だけ参加してください。
複数の試合に参加した場合は、こちらで適当に割り振られてしまうため、望むような試合は出来なくなります。
また、あまりにも危険であると判断された場合は、『PET SHOP』の社長であるワイズマン・ウォルター・エルマン(通称:WWE)から試合の中止を宣言されます。
<選択可能な試合一覧>
・チェーンデスマッチ
両選手の片手にチェーンを繋ぎ、試合を行う形式です。
チェーンは長めのものを使用しているため、武器として使用する事も出来ます。
・ケージデスマッチ
リングの四方を金網で囲み、逃げ場を無くして行う試合を行う形式です。
相手をKOすればケージから出れます。
・有刺鉄線デスマッチ
ロープの代わりに有刺鉄線を張ったリングで行う試合を行う形式です。
追加オプションで爆破や電流なども選べます。
・ガチンコマッチ
ストーリー重視の試合になります。
筋書きなどを決めた上で、魅せるプロレスを心掛けておきましょう。
<テンプレート>
所属:
リングネーム:
試合形式:
対戦相手:
登場シーン:
登場時の台詞:
コスチューム:
アピールポイント:
得意技:
苦手技:
決め台詞:
控え室での行動:
<説明>
所属:ベビーフェイス側(正義)かヒール側(悪)のどちらを選んでください。
リングネーム:未記入の場合はPC名になります。
試合形式:チェーンデスマッチ、ケージデスマッチ、有刺鉄線デスマッチ、ガチンコマッチのうち、どれかひとつを選んでください。
対戦相手:対戦相手の名前とPCIDを記入してください。
登場シーン:登場の仕方を教えてください。
登場時の台詞:キャラクターの口調でお願いします。
コスチューム:コスチュームの説明をお願いします。
アピールポイント:一番アピールしたいポイントは?
得意技:得意な技を教えてください。
苦手技:苦手な技を教えてください。
決め台詞:勝利した場合の決め台詞。
控え室での行動:控え室で何をやっているのか書いてください。
●リプレイ本文
●GIGA(fa3790)の控え室
「GIGAさぁ〜ん、そろそろお時間ですよぉ〜」
能天気な声を上げながら、会場スタッフが控え室の扉を開ける。
「うっ、うわああああああああああああああああ!」
それと同時に怪獣の着ぐるみが目に入り、会場スタッフが悲鳴を上げて尻餅をつく。
「な、な、な、なんだ、GIGAさんか。ほ、本当に怪獣かと思った‥‥。お、驚かさないでくださいよ〜」
青ざめた表情を浮かべながら、会場スタッフがホッとした様子で汗を拭う。
その間もGIGAは控え室の中をノッシノッシと歩き、会場スタッフを見つめて『ガオー』と鳴く。
「えーっと、聞いてますか?」
「ガオー」
‥‥微妙な答え。
気まずい空気。
「‥‥GIGAさんですよね?」
「ガオー」
一瞬の沈黙。
流れる汗。
「とりあえずGIGAさんって事で認識しておきますね」
バイトを始めて3日目。
会場スタッフは生まれて初めて世間の厳しさを知った。
「えーっと、そろそろ時間なんで、よろしくお願いしますね。だ、大丈夫ですよね?」
GIGAの顔をマジマジと見つめ、会場スタッフが気まずい様子で汗を流す。
しかし、GIGAは『ガオー』と鳴くだけで、怪獣に成り切っている。
「と、とりあえず、よろしくお願いしますね。ぼ、僕は伝えましたからね。‥‥約束ですよ!」
そう言って会場スタッフが控え室から脱兎の如く逃げ出した。
●キング・バッファロー(fa2572)の控え室
「‥‥準備はいい? そろそろ試合が始まるわよ」
ドアを軽くノックした後、瀬戸が控え室に入ってくる。
控え室ではキング・バッファローが柔軟体操をしており、瀬戸に気づくとタオルを取って汗を拭う。
「もうそんな時間か。まだ余裕があると思っていたんだが‥‥。そういや『DAIMYOU』で新しいドラマの予定はないのか? 内容によっちゃ、出演しようと思うんだが‥‥」
含みのある笑みを浮かべながら、キング・バッファローが柔軟体操を再開した。
「えーっと、色々と案はあるようだけど、短いドラマ枠で収まる物はないようね。みんな、長編。でも長編って人気がないのよね。拘束時間が長いから‥‥。特に拘らないって言うのなら、ホラー物があるんだけど‥‥」
険しい表情を浮かべながら、瀬戸が手帳のページをめくっていく。
一応、ハードボイルド系のドラマ案はいくつかあるのだが、短い枠で収まらないため長編ドラマとして企画が進んでいるらしい。
しかし、長編ドラマの場合は拘束時間が長いため、役者が集まる見込みがないと判断され、大半の企画は途中で駄目になっている。
「‥‥ホラー物か。ただし、ゾンビは駄目だぞ。肉が食えなくなっちまうからな」
冗談交じりに微笑みながら、キング・バッファローが口を開く。
『DAIMYOU』ではモンスター物や、ホラー物に力を入れているようだが、出来る事ならゾンビ系は遠慮したい。
「うぐっ‥‥、先に言われてしまったわね。ゾンビ物ならオススメの企画があったんだけど‥‥。その名も『超進化生命体・ゾンビーナ』! 『DAIMYOU』が誇るB級ドラマ作品よ! ワイズマン社長の気まぐれで通った作品だから、好き勝手に出来るんだけど‥‥」
引きつった笑みを浮かべながら、瀬戸がパタンと手帳を閉じる。
どうやら彼の知らないところで、妙なドラマのモンスター役が確定しかけていたらしい。
「どうせ脳みそを喰らってパワーアップするとか言う話だろ? この前、社長がサルの脳みそを食ったって話をしていたからな。‥‥嫌な予感はしていたんだよ。そんなモンに出演したら、他のモンまで食えなくなる。もう少しマシな企画を持ってきてくれないか」
呆れた様子で溜息をつきながら、キング・バッファローが答えを返す。
「と、とりあえず何か考えておくわ。シリアス系か、ハードボイルド系で‥‥」
そう言って瀬戸が頭を抱えて、控え室を出て行った。
●第1試合 『ケージデスマッチ GIGAVSキング・バッファロー』
「ガオー!」
怪獣マーチに乗ってノッシノッシと花道を歩き、GIGAが観客席にむかって吼えまくる。
それと同時に子供達の泣き声が辺りに響く。
「子供を泣かせるとは気に食わないな。‥‥神様に会う用意はしたか? なんなら手伝ってやってもいいんだぞ」
カントリーソングを響かせながら、キング・バッファローが赤いポンチョに白いテンガロンハッと姿で登場する。
キング・バッファローにとって子供達は守る存在なので、GIGAのやり方を許す事が出来ないようだ。
「ガオー!」
怪獣として当然とばかりに吼えながら、GIGAがキング・バッファローを威嚇する。
それと同時に天井からケージが降り始め、ゴングの音が辺りに響く。
「‥‥やはり身体で分からせてやる必要がありそうだな」
クールな表情を浮かべながら、キング・バッファローがショルダー・タックルをかます。
「ガオー!」
キング・バッファローの一撃をガシィッと受け止め、GIGAが唸り声を上げてパンチを連打する。
それでもキング・バッファローは怯む事なく、ミノタウロス・アックスを放つ。
「この程度じゃ、ビクともしないか。ならば、これならどうかな?」
勢いをつけてGIGAをロープに振り、キング・バッファローが逆方向のロープに飛ぶ。
「ガオー!」
GIGAの咆哮。
飛び散る汗。
次の瞬間、キング・バッファローがカウンターを仕掛け、ミノタウロス・ハンマーで迎え撃つ。
「ガオー!」
宙を舞うGIGA。
その巨体がマットについたのと同時に、キング・バッファローがボディスラムを放ち、そのままフォールを決めようとした。
しかし、GIGAは咆哮をあげてキング・バッファローを投げ飛ばし、何事も無かったかのようにムックリと起き上がる。
「さすがにタフだな。‥‥気に入った。しかし、いつまでも立っていられると思うなよ」
満足した様子で笑みを浮かべ、キング・バッファローがGIGAを睨む。
着ぐるみを着ているせいでダメージが吸収されているのは確かだが、それ以上にGIGAがタフである事も事実である。
「ガオー!」
滅茶苦茶に拳を振り回し、GIGAがキング・バッファローにタックルをかます。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
キング・バッファローはその一撃を受け止め、雄叫びを上げてGIGAを持ち上げボディスラムを続けて放つ。
そして腕をリフトアップして完全にGIGAを頭上に持ち上げ、リングを一周した後ジャンピング・パワーボムを炸裂させた。
「‥‥悪いな。この勝負‥‥、勝たせてもらう」
仰向けに倒れたGIGAの右足を掴み、キング・バッファローがテキサス・クローバー・ホールドを仕掛けようとする。
しかし、GIGAが起き上がったため、ラストライドを放ってフォールを試みる。
「ガ、ガオー‥‥」
しばらくしてから頭をブンブンと横に振り、GIGAがガックリと肩を落としてリングをゆっくりと降りていく。
その姿を黙って見ながら、キング・バッファローがマイクを掴む。
「プロレスラーは鍛えているから危険な試合が出来るんだ。良い子は真似しちゃダメだぞ」
そう言ってキング・バッファローもリングを降りていった。
『勝者:キング・バッファロー(ヒール) 決め技:ラストライド』
●レオナード・レオン(fa2653)の控え室
「HAHAHAHAHA! そろそろ試合の時間デェース! 覚悟は出来てイマスカァー?」
満面の笑みを浮かべながら、ワイズマンが全身の筋肉を隆起させる。
新しいビキニパンツを手に入れたため、わざわざ自慢しに来たようだが、どれも同じようなデザインなので、よほどのマニアでも無い限り、その違いに気づく者はいない。
「‥‥覚悟も何も時間だろ? まさかコスチュームを届けに着たんじゃないだろうな?」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、レオンが呆れた様子で溜息をつく。
今回のコスチュームはアメコミのヒーローをモチーフにしたコスチュームを依頼していたのだが、その製作に途中からワイズマンが関わっているらしく、色々な意味で不安な気持ちになっている。
「HAHAHAHAHA! さすがレオンさん! それでこそ、ワタシが見込んだだけはありマァース。それじゃ、コスチュームを着てクダサーイ」
満面の笑みを浮かべながら、ワイズマンがコスチュームの入った袋を渡す。
その中に入っていたのは、アメリカ国旗をモチーフにした紐水着。
「お、おい‥‥。まさか、これを着ろって言うのか‥‥。俺はイロモノレスラーじゃないんだぞ」
青ざめた表情を浮かべながら、レオンがワイズマンをジロリと睨む。
‥‥やはり予感は的中した。
ワイズマンが製作に関わっているという時点で嫌な予感はしていたのだが、まさかここまで予想通りの展開になるとは思っていなかった。
「おおっと、これはアイジンさんの水着デェース。ちょっと待っていてクダサイね。すぐにコスチュームを持って来るようにプリーズしマァース!」
青ざめた表情を浮かべながら、ワイズマンが指をパチンと鳴らす。
それと同時にスタッフらしき黒子が天井裏から現れ、レオンにホンモノのコスチュームを手渡した。
「‥‥何だか頭が痛くなってきたな。まぁ、コスチュームのデザイン自体は悪くないんだが‥‥」
そう言ってレオンが海よりも深い溜息をつくのであった。
●辰巳 空(fa3090)の控え室
(「‥‥まだだ。これじゃ、駄目だ‥‥」)。
自分自身に言い聞かせるようにしながら、空が目隠ししたまま投げ技を仕掛けていく。
その先には誰もいない。
‥‥シャドウプロレス。
空はそう呼んでいる。
(「もっと早く‥‥、風のように‥‥」)。
見えない敵を相手にした戦い。
相手がいないはずなのに、試合さながらの緊迫感。
‥‥空は架空の敵と戦っていた。
(「‥‥いまだ!」)。
見えない相手をガシィッと掴み、空が投げ技を炸裂させる。
それと同時に空の脳裏に相手が浮かび、彼の仕掛けた投げ技が完璧に決まる。
(「こ、これだ!」)。
満足した表情を浮かべ、空が目隠しを外す。
‥‥イメージする事は出来た。
後は試合で試すだけである。
●第2試合 『有刺鉄線デスマッチ レオナード・レオンVS「投げ技地獄からの使者」ブドー・カメン』
「I LOVE AMERICA!!」
会場全体にロックの入場曲が響く中、レオナード・レオンがアメリカンヒーロー風のコスチューム姿で花道を歩いていく。
すっかりヒーローに成り切っているためか、リングに上がる姿も軽やかだ。
「ふっ‥‥」
勇壮な和太鼓の音と共に姿を現し、ブドー・カメンが威風堂々とリングにむかって歩いていく。
そしてリングに上がってマイクを握り、レオンを見つめてニヤリと笑う。
「地獄の一丁目に‥‥ようこそ。まあ、こんな所ですからせいぜい、健闘をお祈りします」
ただならぬ雰囲気を漂わせ、ブドー・カメンが指をパチンと鳴らす。
それと同時にリングに張られたロープが外され、会場にいたスタッフがテキパキと有刺鉄線を張っていく。
「地獄の一丁目か。‥‥果たして地獄に落ちるのは、どっちかな?」
含みのある笑みを浮かべながら、レオンがコスチュームを脱ぎ捨てる。
赤地に流れ星の絵が白く描かれたショートタイツに赤いブーツ。
先程のコスチュームとは異なり、動きやすくなっている。
「もちろん、それは‥‥あなたです」
次の瞬間、ブドー・カメンがレオンの足を蹴り、蹴手繰りの体勢に持ち込んだ。
「こ、これは‥‥スモーの技か。なかなか面白い事をしてくれるな」
きちんと受け身を取って立ち上がり、レオンがクスリと笑って汗を拭う。
かなりダメージは受けているようだが、それを表情には出していない。
「この程度で満足しては困ります。本当の地獄は‥‥これからです」
不気味な笑みを浮かべながら、ブドー・カメンがリオンの首に腕を巻きつけ裏投げを放つ。
「クッ‥‥、確かに地獄の一丁目だな。だが、投げ技ばかりじゃ、俺には勝てないぜ!」
左ミドル・キックを中心に、ハイ、ミドル、ローの回し蹴りを連打し、レオンが見得を切って飛び膝蹴りでブドー・カメンの顎を狙う。
「‥‥お忘れですか? 私が投げ技地獄からの使者である事を‥‥」
素早く横に避けてレオンの腕を掴み、ブドー・カメンが隅落としを炸裂させる。
「次はアイキドーか。さすが投げ技の使者‥‥。ならば俺も本気を出す必要がありそうだな」
そう言ってレオンが首投げを使ってブドー・カメンを転倒させ、起き上がり際にダブルアーム・スープレックスを仕掛けて、そこからジャーマン・スープレックスに持ち込んだ。
ブドー・カメンはふらりと立ち上がってきたが、レオンが旋回垂直落下式のブレーン・バスターを仕掛けてきたため、そのまま抵抗する事も出来ぬままマットに沈む。
「勝利の女神にキッスだぜっ!!」
ホッとした表情を浮かべながら、レオンが観客席にむかって拳を上げた。
何とか勝利する事が出来たのも、観客達の応援があったからである。
『勝者:レオナード・レオン(ベビーフェイス) 決め技:旋回垂直落下式のブレーン・バスター』
●ビッグ・ザ・グリズリー(fa3177)
「そ、そ、その話は本当だべか? 詳しい話を教えてくんどおおおおお!」
信じられない様子で目を丸くさせながら、ビッグ・ザ・グリズリーが瀬戸の胸倉を掴む。
その拍子に彼女の首がキュッと絞まり、瀬戸が激しく咳き込んだ。
「ちょっ、ちょっと、落ち着いて! 別に悪い話じゃないんだから‥‥。もう少し冷静になってくれないと、私だって説明する事が出来ないわ」
青ざめた表情を浮かべながら、瀬戸がビッグ・ザ・グリズリーをジロリと睨む。
瀬戸にとっては驚く事でもないので、ビッグ・ザ・グリズリーの反応に驚いている。
「お、オラとした事が‥‥。つい我を忘れてしまったべ‥‥。だ、大丈夫だか?」
ハッとした表情を浮かべて両手を離し、ビッグ・ザ・グリズリーが心配した様子で汗を流す。
別に瀬戸の首を絞めるつもりは無かったのだが、結果的にそうなってしまったため、申し訳無さそうな表情を浮かべている。
「あんまり大丈夫じゃないわ。ちょっぴり涅槃が見えたもの‥‥。危うく死ぬところだったのよ、本当に‥‥。とにかくスポンサーからの意向を伝えるわね。試合の勝ち負けに関係なく、あなたをイメージキャラクターとして使いたいそうよ。もちろん、あなたが嫌だって言えば、この話は無かった事になるけどね‥‥」
ゲホゲホと咳き込みながら、瀬戸が喉を押さえて答えを返す。
どうやら瀬戸の話では、スポンサーがビッグ・ザ・グリズリーの事をとても気に入ったようで、メイプルシロップのイメージキャラクターとして彼を起用したいらしい。
「い、嫌なわけなイベ! オラ、メイプルシロップは大好物だあ!」
大量のメイプルシロップの山に埋もれず姿が脳裏を過ぎり、ビック・ザ・グリズリーが幸せそうにヨダレを拭う。
どちらにしても又とない機会なので、彼としても断る理由は全く無い。
「わ、分かったわ。何だか邪な考えもあるようだけど‥‥。ある意味、純粋だと思うから‥‥。スポンサー側には、そう伝えておくわね。それじゃ、試合頑張って‥‥」
そう言って瀬戸が空になったメイプルシロップの瓶の山を避けるようにして、そそくさと控え室を出て行った。
●モハメド・アッバス(fa2651)の控え室
「えーっと、確か役者としての仕事が欲しいって言っていたわよね?」
険しい表情を浮かべながら、瀬戸がスケジュール帳を確認する。
現在、『DAIMYOU』では『トライアングルハート』『セクハラ』『フライデー』のドラマ撮影が毎月のように行われているが、内容的に偏っているためモハメド向きの仕事はほとんどない。
「なるべく自分の個性を活かせるドラマがいいな」
控え室に張られたポスターを見つめ、モハメドがゆっくりと口を開く。
どの作品も若い役者向けに作られているため、渋めの役者が活躍する事の出来るドラマがあっても良さそうだ。
「‥‥そうねぇ。最近、ウチの会社はモンスターが出てくるドラマに力を入れているから、『フライデー』のライバルとして登場するか、エジプトを舞台にしたドラマにするのかどちらになるわ。その代わり、参加する事が出来るかどうかは貴方次第よ」
スケジュール帳をペラペラとめくり、瀬戸がクールに答えを返す。
一応、役者の希望に応じてドラマをセッティングする事は可能だが、モハメドのスケジュールもあるため無難な答えである。
「ならばエジプトを舞台にしたドラマを頼む」
少しでも自分が活躍する事が出来るようにするため、モハメドが新作ドラマを希望した。
「それじゃ、エジプトを舞台にした探検物なんてどうかしら? ありきたりなネタだけど、役者の演じ方次第でいくらでも面白くする事が出来るから‥‥。それに、これならどっちの役でも出演する事が出来るでしょ?」
モハメドの顔色を窺いながら、瀬戸がクスリと笑う。
他にも色々と案はあるようだが、すぐに出来そうなドラマはこれしかない。
「悪くないな。‥‥考えておこう。それじゃ、行って来る。話の続きはその後だ」
そう言ってモハメドが控え室から出て行った。
●第3試合 『チェーンデスマッチ ビッグ・ザ・グリズリーVSファラオマン13世』
「クマーーーーーーーーーーー!」
御馴染みの挨拶と共に登場し、ビッグ・ザ・グリズリー(fa3177)が顔の出る熊のキグルミを着て大きな斧を肩に担ぐ。
『クマァーーーーーーーーーーーー!!』
それに合わせて観客達がメイプルシロップの瓶を高々と掲げ、ビッグ・ザ・グリズリーの登場を歓迎する。
どうやら観客達はビッグ・ザ・グリズリーがメイプルシロップのイメージキャラクターとして選ばれた事を会場スタッフから聞いていたらしく、嬉しさのあまり売店で売っているメイプルシロップを買い占めてきたようだ。
「お、オラ、みんなのために頑張るど!」
感動した様子で涙をボロボロと流しながら、ビッグ・ザ・グリズリーが高々と拳を上げる。
次の瞬間、会場を照らしていた証明が一気に消え、クラシックなヒップ・ホップアレンジが辺りに響く。
「アメ〜ンホテップ〜〜〜」
恨めしそうな声を上げながら、ファラオマン13世が両腕を広げて真紅のマントをはためかせる。
そして滑るようにして花道を進み、不気味な笑みを浮かべてリングに降り立った。
「な、なんだ!? き、奇妙なヤツだな! オラ、怖かねえど! この試合におめえさ負けたら、おらに夕飯を奢るだぞっ!! 約束だからな!」
ファラオマン13世を指差しながら、ビッグ・ザ・グリズリーが文句を言う。
既に控え室で大量のメイプルシロップを平らげているのだが、それでも腹はグゥグゥと鳴っている。
「ならば、こちらが勝利したら、その心臓を抉り出してやろう。‥‥二度と動く事が無いようにな」
含みのある笑みを浮かべながら、ファラオマン13世が真紅のマントを脱ぎ捨てた。
それと同時にファラオマン13世の利き腕と、ビッグ・ザ・グリズリーの利き腕にチェーンが嵌められゴングの音が辺りに響く。
「そ、そんな事をしたら、オラ死んじまうど! おらが負けた場合も、夕食を奢るだけだからな!」
青ざめた表情を浮かべながら、ビッグ・ザ・グリズリーがファラオマン13世の両手を掴む。
「ぐあああああああああああああああ!」
次の瞬間、ファラオマン13世がわざと大声を出して必要以上に痛がった。
「お、オラ、そこまで強くはやってねえど!」
納得のいかない様子で両手を放し、ビッグ・ザ・グリズリーがダラリと汗を流す。
ファラオマン13世が予想外の反応をしてくるため、だんだん攻撃を仕掛ける事が出来なくなっている。
「‥‥もう終わりか。ならば今度はこちらの番だ」
力比べをするふりをして両手を掲げ、ビッグ・ザ・グリズリーが両手を掴もうとした瞬間を狙って素早く後ろに回り込む。
「な、なんだ!? ぐおっ!」
そのまま首にチェーンを巻きつけられ、ビッグ・ザ・グリズリーが悲鳴を上げる。
ビッグ・ザ・グリズリーも必死になって抵抗しているが、そこからスリーパー・ホールドの体勢に持ち込まれたため逃げられない。
「お、おら、こんなところで負け‥‥ない‥‥ど‥‥」
薄れ行く意識の中で何とか相手の腕を掴み、ビッグ・ザ・グリズリーが雄叫びを上げてファラオマン13世を放り投げる。
それと同時にビッグ・ザ・グリズリーがチェーンを引っ張り、ファラオマン13世を派手に転倒させた。
「許さんぞ〜」
ムックリと起き上がり、ファラオマン13世がタックルをかます。
そして倒れたビッグ・ザ・グリズリーの背中に飛び乗り、唸り声を上げてキャメル・クラッチを炸裂させる。
「‥‥まだだ。この勝利‥‥、古のファラオ様に捧げよう!」
そう言ってファラオマン13世がトップロープに飛び乗り、アラビアン・プレスを放ってフォールを決めた。
『勝者:ファラオマン13世(ヒール) 決め技:アラビアン・プレス』