愚者南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 ゆうきつかさ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 3.9万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 05/26〜05/30
前回のリプレイを見る

●本文

<ドラマの内容>
 タロットカードの力を封印(もしくは解放)するために世界を回るアメリカンドラマです。
 基本的には何でもありの世界観になっていますが、現時点ではメイド役か執事役しか選べません。

●メイド派として参加する場合
<募集職種>
 清純派のメイド役からドジッ娘メイド役まで幅広く募集しています。

<基本設定>
 主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
 彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
 ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
 ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
 お坊ちゃまはタロットカードの力に危険なものを感じたため、選ばれた者達だけが使用できるように封印を施して行こうと思っています。
 そのため、お嬢様と対立する事に‥‥。

<お坊ちゃまの設定>
名前:御剣・翔(みつるぎ・しょう)
容姿:東洋系の顔立ちをしており、喋らなければ美男子。
   普段は眼鏡を掛けており、髪の色は銀色。神経質そうな雰囲気。
性格:現実主義でナルシスト。成績優秀で運動神経抜群。エリートタイプ。
口調:僕、君、だね、だろ?
年齢:17歳

●執事派として参加する場合
<募集職種>
 正統派の執事役から邪道な執事役まで幅広く募集しています。

<基本設定>
 主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
 彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
 ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
 ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
 お嬢様はタロットカードの力を素晴らしいと思い、その力を解放して以降と思っています。
 そのため、お坊ちゃまとは敵対する事に‥‥。

<お嬢様の設定>
名前:パトリシア・ローズ
容姿:西洋系の顔立ちをしており、金髪、碧眼、縦巻きロール。
   見た目は育ちのいいお嬢様風。
性格:我侭で高飛車。好奇心旺盛で甘えん坊。
   寂しがり屋で意地っ張り。自己中な性格で口が悪い。
口調:わたくし、あなた、ですわ、でしょう?
年齢:17歳

●決めて欲しいもの
 自分の演じる執事がどんな設定なのかを教えてください。
 アンドロイド型や魔物型でも構いません。
 ただし、実在する歴史上の人物や有名キャラクターなどを使用しない事ようにお願いします。
 著作権の関係上、色々と問題が出てくる場合があります。
 執事達はタロットカードを使用する事で魔法を使う事が出来ます。
 最初に配布されるカードは一枚。
 キャラクターの性格によって、正位置か逆位置で使用する事が出来ます。
 どちらかいいか希望を書いた上で、自分が所有するカードを教えてください。

<テンプレート>
役名:演じる役名を記入。
性格:演じる役の性格を記入。
特徴:演じる役の特徴を記入。
見せ場:自分の見せ場を記入。
所有カード:所有しているタロットを記入(表か裏のみ)。
特殊能力:カードを使用した時に発動する能力を記入。
(注意:内容によっては修正される場合があります)。

●今回のシーン説明
・シーン1 メイドパート
 タロットカードの一枚がアメリカのスラム街にある事が分かります。
 カードの名前は『愚者』。
 スラムのキングとしてチンピラ達を支配しています。
 そのため何か作戦を考えなくてはなりません。

・シーン2 執事パート
 メイド達がカードを封印するため行動している事を知ります。
 愚者の力が解放された事によって、能力の覚醒率が高まっているため、お嬢様が阻止するために動きます。

・シーン3 対決シーン
 プレイングによって最後の結果が異なります。
 場合によっては愚者の力を手に入れる事が出来るかも知れません。

[愚者]
能力:相手の能力をコピーする力を持っています。
性格:自分勝手で自己中心、無鉄砲な風来坊。
口調:俺、お前、だろ、だ

●今回の参加者

 fa0043 皇・皇(21歳・♂・一角獣)
 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa1695 羅蓮華(23歳・♀・狐)
 fa1828 鐘下べる(20歳・♀・小鳥)
 fa2121 壬 タクト(24歳・♂・兎)
 fa2360 Eugene(20歳・♂・狐)
 fa2668 大宗院・慧莉(24歳・♀・狐)

●リプレイ本文

●メイドパート・キャスト
ベル役:鐘下べる(fa1828)
エリー役:大宗院・慧莉(fa2668)

●メイドパート 『愚者』のカード
「‥‥調査の結果、『愚者』のカードがアメリカのスラム街にある事が判明した。『愚者』のカードは使い方次第で最強の力を発揮する。最も愚かで最悪のカード‥‥。現在、『愚者』のカードは人間形態をとっており、スラムでは『ジョニー』と名乗って、チンピラを纏め上げているようだ。知っての通りカードの傍にいる者達は、秘められた能力が目覚めてしまう可能性が高い。つまりチンピラ達が『愚者』の力を使うかも知れないという事だ。『愚者』のカードの能力は、相手の能力をコピーする力‥‥。最初のうちはコピーするたび、前に使っていた能力を忘れてしまうというペナルティつきだけど、本体相手ではそうも行かない。最悪の場合は相手を強くしてしまうだけだからね」
 険しい表情を浮かべながら、御剣・翔が溜息を漏らす。
 苦労してようやく見つけ出す事の出来たタロットカードが『愚者』だったため、封印するためにはそれなりの人数が必要になるのだが、集まったメイドの数はふたりだけ‥‥。
 しかも『愚者』のタロットカードが見つかった場所は、最悪な事にスラム街。
 スラム街には命知らずの荒くれ共がたむろしている事もあり、素直にタロットカードを封印する事が出来ないかも知れない。
「とりあえずスラム街でチンピラ退治をすればいいんだよね? せっかくだからエリーのプロレス技をみせてあげるよ。楽しみにしていてね♪」
 胸をワクワクさせながら、エリーがニコリと微笑んだ。
 彼女にとってスラム街のチンピラ達を相手する事など朝飯前のため、タロットカードを封印する事も難しくないと考えている。
「‥‥『愚者』の力を甘く見ない方がいい。ヤツの力は僕達の能力をコピーする事だからね。このままヤツを野放しにしておけば、世界が混乱してしまう程だから‥‥」
 巨大モニターに映った『愚者』関連の情報を確認しながら、翔が困った様子で溜息をつく。
 いまのところスラム街から『愚者』のタロットカードが移動している様子はないが、チンピラ達が能力に目覚めている可能性があるため油断は出来ない。
「任せておいてよっ! 例えチンピラ達が妙な能力に目覚めていたとしても、使いこなせるヤツなんてほとんどいないはずだから‥‥」
 満面の笑みを浮かべながら、エリーが自分の胸をポンと叩く。
「ス、スラム街ですか〜。あまり行きたくないですよ‥‥」
 身体をガタガタと震わせながら、ベルが瞳をウルウルさせる。
 ベルはスラム街で酷い目にあった事があるため、今回の件にあまり乗り気ではないようだ。
「大丈夫だって! 何かあったら、エリーが必ず守るから♪」
 自信に満ちた表情を浮かべながら、エリーがベルの肩をぽふりと叩く。
 例えチンピラ達が『愚者』の力を使う事が出来たとしても、エリーが本気を出せば何も怖くはない。
「それじゃ、エリーさんの後ろに隠れて行動するですよぉ〜」
 オドオドとした表情を浮かべ、ベルがエリーの後ろをついていく。
 スラム街に行くため、翔の愛用する車に乗り込んで‥‥。

●執事パート・キャスト
マコト役:皇・皇(fa0043)
アルベルト・ハザードライド役:Eugene(fa2360)
カゲツ役:水鏡・シメイ(fa0509)
グレイ役:壬 タクト(fa2121)
リャン役:羅蓮華(fa1695)

・シーン2 執事パート 封印阻止
「‥‥どうやら『愚者』のタロットカードがスラム街で目覚めたようですわね。このカードが封印される事がない限り、きちんと契約を交わした者でなくとも、『愚者』の力を手に入れる事の出来る確率が高まってきましたわ。現時点では『愚者』のカードと接触した者だけが能力に目覚めているようですが、いずれ全世界の者達が『愚者』の力を使いこなす事が出来るようになるでしょう」
 執事達の持ってきた報告書を読みながら、パトリシア・ロ−ズが恍惚とした表情を浮かべる。
 パトリシアの思惑通りタロットカードの力が解放されたため、執事達には彼女から有り難いお言葉(お給料アップ)が褒美として与えられた。
 その代わり世界が混乱する可能性が高まってきたため、執事達にとってはヒヤヒヤものだ。
「はぁ‥‥、笑い事じゃないんだぞ。そのせいで俺が奥様からこっぴどく叱られたんだからな。‥‥奥様は『愚者』のカードの封印を望んでいる。しかも、お父様が出張から帰ってくる前に何とかしろ、とお怒りだ‥‥」
 呆れた様子で溜息をつきながら、マコトがパトリシアをジロリと睨む。
 彼女の代わりに責任を取るため、奥様に会って何度も頭を下げてきたのだが、パトリシア本人がまったく悪びれた様子が無いため困っている。
「マコト‥‥。あなたは一体、誰に仕えているの? 私の記憶が確かなら、貴方のご主人様は、目の前にいるお嬢様のはずよねぇ? だったら、お母様なんて関係ないんじゃありませんか? あなたはわたくしの執事として堂々と胸を張っていればいいんじゃない?」
 不機嫌な表情を浮かべながら、パトリシアがブツブツと文句を言う。
 もともと自分の意見を否定される事を嫌うため、マコトがパトリシアの母親に告げ口した事に対しても怒っているようだ。
「俺が仕えているのはローズ家であって、お嬢様個人ではありません。それにこのような事をして奥様達に黙っていたら、後で困るのはお嬢様なんですよ? その時に泣きつかれても、俺は知りませんからね」
 自分のした事に対してパトリシアがまったく罪の意識を持っていないため、マコトが厳しい口調で彼女に迫る。
 本当は彼だって怒りたくは無いのだが、パトリシアの考えを改めさせるには仕方が無い。
「‥‥でしたら、問題ありませんわ。あんな干物のミイラ、後5年もすればポックリ逝きますもの‥‥。そうしたら、この屋敷の所有権はわたくしのもの。お父様にだって愛人と結婚する事が出来るんですから、特に問題はありませんわ。むしろ、わたくしに感謝するかも知れませんわよ、おーっほっほっほっほっほっ!」
 自信満ちた表情を浮かべ、パトリシアが再び高笑いを響かせた。
 どうやらマコトの言葉を説教として受け取らず、彼女に対する挑戦として受け取っているようだ。
「‥‥誰が干物のミイラですわ」
 殺意のオーラを漂わせ、パトリシアの母親が扇子を扇ぐ。
 部屋の何処かに盗聴器でも仕掛けてあったのか、パトリシアの言葉を一言残らず盗み聞きしていたらしい。

「「「「「お、奥様っ!!!!」」」」」

 母親の登場に驚く執事達。
 真琴も気まずい様子で視線を逸らす。
「あ〜ら、誰かと思えばお母様じゃありませんか♪ 大事なお父様を愛人の小娘に取られたからって、執事達に八つ当たりしている可愛そうな、お母様‥‥。わたくしはお母様に同情していますのよ。お父様が愛人と会っている事を知りながら、わざと騙されているフリをしているんですからね。‥‥まさしく妻の鏡ですわ」
 堂々とした態度で母親と接し、パトリシアが瞳を潤ませる。
 もともとパトリシアは母親の事が好きではないため、父親と愛人の仲を取り持つ事で、母親を追い出すつもりでいるらしい。
「キィッ! お父様が帰ってきたらタダじゃおきませんからねっ! お、覚えてらっしゃい」
 持っていたハンカチに噛み付きながら、パトリシアの母親が捨て台詞を残して部屋を出て行った。
「愚かですわね、お母様‥‥。お父様のお気持ちは既に離れてしまっているというのに‥‥。化粧を厚塗りしているだけじゃなく、心にまで壁を作ってしまわれたのかしら‥‥? おーっほっほっほっほっほっ!」
 勝ち誇った様子で高笑いを響かせながら、パトリシアが上機嫌で椅子に座る。
 彼女にとってはすべて計画通りなため、母親からどんな事を言われても怖くない
「あんな事を言って本当に大丈夫なんですか? ‥‥知りませんからね。後でどんな目に遭っても‥‥」
 勝ち誇った様子で高笑いを上げるパトリシアを見つめ、アルベルトが呆れた様子で溜息をつく。
 パトリシアの母親も娘に劣らずアクドイ性格をしているため、ゴロツキ達を雇ってスラム街に放ち、彼女を陥れるための計画を練っていてもおかしくない。
「‥‥構いませんわ。あんな干物より、わたくしの方が愛されていますもの‥‥。何かあったら、お父様の愛人さんと手を組めば、何も恐れる事などありませんし‥‥」
 含みのある笑みを浮かべながら、パトリシアが何やら悪巧みをし始める。
「知りませんよ、本当に‥‥。パトリシアお嬢様の尻拭いをするのは、いつでも僕達の役目なんですから‥‥。マコト君の言っている意味も理解してくださいね」
 困った様子でパトリシアを見つめ、アルベルトが紅茶を淹れて溜息をつく。
「まぁ、お嬢様の事ですから、何か考えがあっての事でしょう。私達を巻き込む事がなければ問題は無いと思いますよ」
 パトリシアに対して生暖かい視線を送り、カゲツがニコリと微笑んだ。
 カゲツはここに来て日が浅いため、パトリシアの性格をいまいち理解していない。
「残念ながら僕達を巻き込もうとしているから困っているのさ。パトリシアお嬢様に、その気がなくとも100パーセントの確率で僕達が責任を取る事になっているからね」
 満面の笑みを浮かべながら、グレイがさらりと答えを返す。
 今までパトリシアがしてきた事を考えると、巻き込まれないと思う方が難しい。
「そ、そうなんですか‥‥? お嬢様だってそこまで無謀な真似はしないと思いますけど‥‥」
 驚いた様子でグレイを見つめ、カゲツがしばらく言葉を失った。
 パトリシアとそれほど接した事がないためかも知れないが、そこまで無茶をするような性格とは思えない。
「無茶というか‥‥、無謀だね。僕達が止めても自分の考えを通そうとするから、気がついたら巻き添えを食らっているって感じかな? さすがに無視するわけにもいかないから、避ける事の出来ない現実だよ‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、グレイが出掛ける準備をし始める。
 何か嫌な予感がするため、すぐに動けるようにしておいた方が良さそうだ。
「どうやら、その予想は当たっているようだね。御剣家のお坊ちゃまがスラム街にむかったそうだよ。本来なら彼に協力すべきだけど、お嬢様の考えは違うんだよね‥‥?」
 報告書をテーブルの上に置き、リャンがパトリシアの返事を待つ。
 彼女の答えは分かっているが、念のため聞いておく必要がある。
「‥‥当然ですわ。何かあったら翔の馬鹿がやった事にすればいいんだから、あなた達はわたくしの言う通りにしていればいいのっ!」
 リャンの持ってきた報告書に目を通し、パトリシアがニヤリと笑う。
 このまま翔のプライドをズタズタに引き裂くつもりなのか、意地でも邪魔するつもりでいるらしい。
「‥‥聞くまでもなかったかな。翔お坊ちゃまの邪魔をしたら、ボクらが悪人になるだけだけど、断るわけにもいかないし‥‥」
 あくまで仕事であると割り切り、リャンが仕方なく準備をし始める。
「ほらっ! 何をボヤボヤしているのっ! 翔の馬鹿がスラム街にむかったのなら、わたくし達ものんびりしてはいられませんわっ! 翔の馬鹿が『愚者』のタロットカードを封印する前に、わたくし達も後を追いますわよっ!」
 そう言ってパトリシアが執事達の返事を聞かず、彼らを連れてスラム街へとむかうのだった‥‥。

●対決パート スラム街
「確か‥‥、この辺りのはずなんだけどなぁ‥‥」
 プリントアウトした地図を片手に辺りを見回し、翔がメイド達を連れてスラム街を歩いていく。
 スラム街にはチンピラ達がたむろしており、翔達の身なりを見てゾロゾロと集まってきた。
「や、やっぱり帰った方がいいんじゃないんですかねぇ〜? チンピラさん達の目が獲物を見つけたハイエナさんのようですよぉ〜」
 エリーの腕にしがみつき、ベルが身体をガタガタと震わせる。
 チンピラ達が徐々に逃げ道を塞いでいる事が分かるため、恐怖のあまり足が竦んで動けない。
「大丈夫だからね。どんな事があってもエリーが守ってあげるから‥‥」
 彼女に言い聞かせるようにしながら、エリーが優しく抱きしめる。
 それと同時にチンピラ達がまわりを囲み、乱暴に翔の胸倉を掴んでニヤリと笑う。
「‥‥てめぇら、ここが何処だか分かっているのかっ!? そんな格好でこの街を歩いていたら、カモが葱を背負って現れたと思われても仕方がねぇぞ。まぁ、そのつもりで来たんだったら、俺達だって手加減するつもりはねぇけどな。‥‥分かったら俺達の言う通りにしやがれっ!」
 警告まじりに呟きながら、チンピラのひとりが翔の喉元にナイフを押しつける。
 翔はチンピラ達の装備を確認した後、彼らに能力がない事を悟ってホッとした。
「酷い目‥‥か。まさかナイフ一本で僕達を倒せるとは思っていないよね?」
 チンピラ達の顔色を窺いながら、翔が挑発的な態度に出る。
「いい度胸をしているじゃねぇかっ! まずはテメェからだっ! 死ねえええええええええええええっ!」
 翔の言葉に刺激され、チンピラがナイフを横に引く。
 次の瞬間、翔が『魔術師』のタロットカードを正位置で発動させ、自分を掴んでいたチンピラを炎で包む。
「これ以上、抵抗するつもりなら、酷い目に遭うよ!」
 すぐさま『力』のタロットカードを正位置で解放し、エリーが近くにあった壁を粉砕した。
 しかし、チンピラ達は怯む事なく、エリーにむかって斬りかかる。
「やっ、やったなぁ〜っ! 行くよ、ベルッ!」
 危うく胸元が露出しそうになったため、エリーが顔を真っ赤にしながらチンピラ達を倒していく。
「はっ、はいですよぉ〜」
 いつまでもビクビクしているわけにもいかないため、ベルが気合を入れて『太陽』のタロットカードを正位置で解放する。
 それと同時に眩い光がチンピラ達を照らし、その隙にエリーがチンピラ達にトドメをさした。
「はい、終了♪ エリーが本気を出せば、ざっとこんなものだよっ♪ それにしても予想以上に弱かったなぁ‥‥」
 チンピラ達が動かなくなった事を確認し、エリーがえっへんと胸を張る。
「‥‥のんびりしている暇は無さそうだよ」
 異様な気配を感じたため、翔がタロットカードを取り出した。
「おっと‥‥。誰かと思えば翔お坊ちゃまじゃありませんか。ひょっとして俺を封印しに来たんですか? せっかく大人しくしていって言うのに‥‥」
 邪悪な笑みを浮かべながら、ジョニーがニヤリと笑う。
 ジョニーは『愚者』のタロットカードが人間になった姿で、雰囲気からして逆位置で目覚めてしまったようだ。
「大人しく封印されるのなら、私達だって酷い事はしませんよぉ〜?」
 『愚者』のタロットカードと戦うつもりが無いため、ベルがジョニーに対して説得を試みる。
「‥‥冗談だろ? せっかく自由になれたんだ。もう少し遊ばせてくれよっ!」
 含みのある笑みを浮かべ、ジョニーが指をパチンと鳴らす。
 次の瞬間、チンピラ達がムックリと起き上がり、『愚者』の力を解放させた。
「ま、まさか‥‥っ! 既に支配下に置かれていたの!?」
 ハッとした表情を浮かべながら、エリーがチンピラ達の攻撃をかわす。
 しかし、チンピラ達は『愚者』の力によって、エリーの能力をコピーしているため、先程と比べてケタ外れに強くなっている。
「‥‥仕方ねぇだろっ! こうでもしねぇと、コイツらじゃ能力を使いこなせねぇんだからな。分かったら俺の邪魔をするんじゃねえっ!」
 面倒臭そうに溜息をつきながら、ジョニーがエリーから奪った力を翔に放つ。
「ぐはっ‥‥。し、しまった」
 予想外の一撃を喰らって血反吐を吐き、翔が腹を押さえて前のめりに倒れ込む。
「お、お坊ちゃまを助けるですよ〜」
 『太陽』の力を使って大量の幻影を作り、ベルが翔を助けにむかう。
「それ以上、お坊ちゃまを傷つけたら許さないからねっ!」
 怒りに満ちた表情を浮べながら、エリーがチンピラを持ち上げ、ジョニーめがけて放り投げる。
「おっと‥‥、危ねぇ。人に向かって物を投げちゃいけねぇって先生に教わらなかったか?」
 チンピラを避ける事なくパンチを放ち、ジョニーが血塗れになって拳にキスをした。
「最初に喧嘩を仕掛けてきたのは、そっちだろ!」
 血塗れの翔に駆け寄り、エリーがジロリとジョニーを睨む。
 自分達のご主人様が倒れた以上、ここに長居は無用である。
「おーっほっほっほっ! 随分と苦戦しているようですわね。まぁ、あなたの実力じゃ、『愚者』のタロットカードに勝ち目は無いと思ったけど‥‥。情けないわねぇ。『愚者』のタロットカードさん、わたくしに感謝してくださいね」
 自家用ヘリを使って壊れた廃ビルに降り立ち、パトリシアが高笑いを響かせた。
「‥‥感謝するぜ、お嬢様っ! この力はパトリシアお嬢様の名声を高めるためだけに使う事にするっ!」
 妙に爽やかな表情を浮かべながら、ジョニーが拳を高々と掲げる。
 本当はパトリシアに感謝すらしていないのだが、彼女を利用する事が出来ると思ったため平気な顔で嘘をつく。
「おーっほっほっほっ! その調子ですわっ!」
 満足した様子で頷きながら、パトリシアがニヤリと笑う。
「悪いけど‥‥、君達の好きにはさせないよ」
 口元から流れる血を拭い、翔が『魔術師』の力を解放した。
「きゃあっ!? よくもやりましたわねっ!」
 翔の放った疾風の一撃が右腕を掠り、パトリシアが拳を震わせる。
「それ以上、お嬢様の邪魔をするんじゃねえ!」
 パトリシアが傷ついた事で怒りを感じ、マコトが雄叫びと共に『法皇』の力を解放し、『背教者』の力を自らの肉体に取り込んだ。
「お坊ちゃまには指一本触れさせないよっ!」
 すぐさま『力』のカードを解放し、エリーがマコトの相手をする。
 ‥‥二人の実力は五分と五分。
 油断した方が負けである。
「どうやら俺の出番は無さそうだな」
 ふたりの戦いには興味がないのか、ジョニーが面倒臭そうに頬を掻く。
「あなたの事は好きになれませんが、お嬢様の命令です。さぁ、僕のバイクに乗ってください」
 『戦車(正位置)』の力によって強化されたバイクに乗り、アルベルトがジョニーを迎えに来る。
「お前に迷惑はかけやしねぇ。感謝するぜ、お嬢様っ!」
 パトリシアにむかって投げキッスを放ち、ジョニーがアルベルトのバイクに乗り込んだ。
「絶対に逃がしはしませんよ〜」
 再び『太陽』の力を解放して幻影を作り、ベルが両手を開いて行く手を阻む。
「‥‥幻影攻撃か。面白い技を使うんだね。でも、そんな技じゃ、ボク達を止める事など出来ないよっ!」
 『恋人』のタロットカードを逆位置で解放し、リャンがチンピラ達を自分の支配下に置いた。
「残念ですが『愚者』の力を封印させる訳にはいきません。楽しみが無くなってしまいますからね。‥‥降らせましょう‥‥血の雨を‥‥ブラッディ・レイン!」
 『星』のタロットカードを逆位置で放り投げ、カゲツが上空に出現した無数の短剣を翔にむかって一斉に放つ。
「ば、馬鹿なっ!? 何故こんな事を‥‥」
 納得のいかない表情を浮かべながら、翔が瓦礫の山に隠れてダラリと汗を流す。
「それがお嬢様の意思だからね。いいじゃないか。『愚者』のカードだって喜んでいる事だし‥‥。思ったよりもイイヤツだと思うけど?」
 『悪魔』のタロットカードを素早く構え、グレイが冗談まじりに微笑んだ。
「‥‥やめよう。『愚者』のタロットカードが逃げた以上、これ以上の戦いは無意味だから‥‥」
 残念そうに溜息をつきながら、翔がタロットカードを懐にしまう。
 もともと翔の目的はタロットカードを封印する事なので、よほどの事が無い限りパトリシア達と戦うつもりはないようだ。
「本当にカードがなければ、こんな事は起こらないのにね。さぁ、次も頑張ろう!」
 一瞬、寂しげな表情を浮かべた後、エリーが笑顔を浮かべて翔の肩をぽふりと叩く。
 『愚者』のタロットカードが解放されてしまったのは残念だが、それで全てが終わったわけではないのだから‥‥。