女帝南北アメリカ
種類 |
シリーズEX
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担当 |
ゆうきつかさ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
3.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/20〜07/24
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前回のリプレイを見る
●本文
<ドラマの内容>
タロットカードの力を封印(もしくは解放)するために世界を回るアメリカンドラマです。
基本的には何でもありの世界観になっていますが、現時点ではメイド役か執事役しか選べません。
●メイド派として参加する場合
<募集職種>
清純派のメイド役からドジッ娘メイド役まで幅広く募集しています。
<基本設定>
主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
お坊ちゃまはタロットカードの力に危険なものを感じたため、選ばれた者達だけが使用できるように封印を施して行こうと思っています。
そのため、お嬢様と対立する事に‥‥。
<お坊ちゃまの設定>
名前:御剣・翔(みつるぎ・しょう)
容姿:東洋系の顔立ちをしており、喋らなければ美男子。
普段は眼鏡を掛けており、髪の色は銀色。神経質そうな雰囲気。
性格:現実主義でナルシスト。成績優秀で運動神経抜群。エリートタイプ。
口調:僕、君、だね、だろ?
年齢:17歳
●執事派として参加する場合
<募集職種>
正統派の執事役から邪道な執事役まで幅広く募集しています。
<基本設定>
主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
お嬢様はタロットカードの力を素晴らしいと思い、その力を解放して行こうと思っています。
そのため、お坊ちゃまとは敵対する事に‥‥。
<お嬢様の設定>
名前:パトリシア・ローズ
容姿:西洋系の顔立ちをしており、金髪、碧眼、縦巻きロール。
見た目は育ちのいいお嬢様風。
性格:我侭で高飛車。好奇心旺盛で甘えん坊。
寂しがり屋で意地っ張り。自己中な性格で口が悪い。
口調:わたくし、あなた、ですわ、でしょう?
年齢:17歳
●決めて欲しいもの
自分の演じる執事がどんな設定なのかを教えてください。
アンドロイド型や魔物型でも構いません。
ただし、実在する歴史上の人物や有名キャラクターなどを使用しない事ようにお願いします。
著作権の関係上、色々と問題が出てくる場合があります。
執事達はタロットカードを使用する事で魔法を使う事が出来ます。
最初に配布されるカードは一枚。
キャラクターの性格によって、正位置か逆位置で使用する事が出来ます。
どちらかいいか希望を書いた上で、自分が所有するカードを教えてください。
<テンプレート>
役名:演じる役名を記入。
性格:演じる役の性格を記入。
特徴:演じる役の特徴を記入。
見せ場:自分の見せ場を記入。
所有カード:所有しているタロットを記入(表か裏のみ)。
特殊能力:カードを使用した時に発動する能力を記入。
(注意:内容によっては修正される場合があります)。
●今回のシーン説明
・シーン1 メイドパート
調査の結果、『女帝』のカードがセント・ヘレンズ山の山頂にある事が判明。
『愚者』達の力に対抗するため、彼女に力を借りようとするメイド達。
・シーン2 執事パート
『愚者』の存在を危険視し始める執事達。
お嬢様自身も『愚者』の力を危険と感じ、翔達に一時的だが協力しようと考える。
・シーン3 女帝パート
『女帝』の説得中に『愚者』と『魔術師』の邪魔が入り‥‥。
[愚者:ジョニー]
能力:相手の能力をコピーする力を持っています。
性格:自分勝手で自己中心、無鉄砲な風来坊。
口調:俺、お前、だ、だぜ
[魔術師:所有者:スミス(24歳)]
能力:地水火風の能力を自由に使う事が出来る。
性格:覚醒前なので不明。所有者の性格は真面目。
口調:(所有者)私、君、だろ、だ
[女帝:キャサリン]
能力:何者かの支配下に置かれている者達を呪縛から解き放つ。
性格:何事にも無関心で冷淡。
口調:私、あなた、です、ですね
●リプレイ本文
●メイドパート・キャスト
御剣・翔役:御剣・翔
プラナス役:霞 燐(fa0918)
エリー役:大宗院・慧莉(fa2668)
ブローディア役:天音(fa0204)
ベル役:鐘下べる(fa1828)
●メイドパート
「‥‥翔様。先の一件について関係各所への根回し、報道の差し替え等、一通り完了いたしました。一部ゴシップ誌が未だ騒いでおりますが、すぐに熱も引くかと思います。これで、我々やカードについて表沙汰になる事はないでしょう。一応、被害の最終報告書もあがりましたが‥‥、ご覧になられますか?」
クールな表情を浮かべて御剣・翔を睨みつけ、プラナスがラスベガスのカジノで起こった大火災の記事を纏めた書類をテーブルの上に置く。
翔達は屋敷の地下にある会議室に集まって今後の話し合いをしていたのだが、プラナスが情報操作をしてくれたおかげで『愚者』の存在が明らかになる事はなかったようだ。
「いや、遠慮しておくよ。僕もあの場所にいたからね。どの記事よりも正確な内容を知っているからさ。‥‥それよりも遺族に対する補償を優先させてくれないか? 僕達に亡くなった人達を蘇生する力がないからね。それは禁じられている力だし、確実に本人の魂が戻ってくるとは限らないから‥‥」
何処か遠くを見つめながら、翔が疲れた様子で溜息をつく。
事件のショックが大きかった事もあり、翔はずっと落ち込んだままである。
「それに連敗続きだもんねぇん。迂闊な事はしない方がいいよねぇ。でもぉ、最後に逆転勝利じゃないと映画も面白くないし、ちょうどいいんじゃない?」
のほほんとした表情を浮かべ、エリーが翔の事を励ました。
もちろん、エリーもツライのだが、一緒に落ち込んでも意味がない。
「僕だって失敗するだけなら構わないさ。でも‥‥、その事によって多くの人命が失われる事になるのなら、考えを改めなければいけないと思っている‥‥。僕達の使命はタロットカードの力を封印する事だけど、だからと言って多くの人命を犠牲にしてもいいわけじゃない。僕達は人々のためにタロットカードの力を封印しようとしているからね」
険しい表情を浮かべながら、翔がテーブルをドンと叩く。
タロットカードの力は万能ではあるのだが、強力過ぎる力は己の身体を蝕むだけでなく、思わぬ力の暴走を招いてしまう。
「薬」
あまりにも翔が落ち込んでいたため、ブローディアが魔界から持ってきた元気の出るドリンクを渡す。
何故かドリンクの注がれたグラスからは七色の泡が立っており、あからさまに危険な雰囲気が漂っている。
「わ、悪いけど、そういう気分じゃないんだ。き、気持ちだけ受け取っておくよ」
引きつった笑みを浮かべながら、翔が気まずい様子で視線を逸らす。
ドリンクからは異様な匂いが漂っており、少し吸っただけでも気分が悪くなってくる。
「飲」
まったく表情を変えぬまま、ブローディアが翔にグラスを突きつけた。
それと同時に真っ白な煙がもわんと上がり、鼻につくニオイが辺りに漂っていく。
「ゲホッ‥‥ゲホッ‥‥! これは酷いニオイだな。は、吐き気がする‥‥。でも、飲まなきゃいけないんだよね? 命懸けで‥‥」
ブローディアの鋭い視線に気づき、翔がグラスを見つめてゴクリと唾を飲み込んだ。
翔の本能もドリンクが危険である事を警告し続けているのだが、それ以上にブローディアの視線が気になってしょうがない。
「それじゃ‥‥、逝くよ‥‥」
覚悟を決めてドリンクを飲み干し、翔が青ざめた表情を浮かべて突っ伏した。
案の定、ドリンクの味は最悪で、この世のモノとは思えないほどマズイ味が口の中に広がっている。
「良」
翔の頭をヨシヨシと撫でた後、ブローディアが満足した様子でグラスを片付けていく。
一応、他のメイド達の分も用意してあったのだが、誰ひとりとしてグラスに口をつけた者はいない。
「い、生きている‥‥よね? だ、大丈夫!?」
ハッとした表情を浮かべ、エリーが翔の身体を揺らす。
翔は口からもわんと魂を吐き出しており、今にもあっちの世界に旅立ちそうだ。
「捕」
瞳をキュピィーンと輝かせ、ブローディアが翔の魂をムンズと掴む。
翔の魂は真っ黒に煤けており、ダラリと垂れ下がっている。
「わわっ、魂が抜けちゃっているですよぉ〜」
驚いた様子で悲鳴をあげ、ベルが翔の魂を指差した。
しかし、ブローディアは全く表情を変えず、タワシを使って翔の魂をゴシゴシと磨く。
「了」
しばらくして‥‥。
ブローディアが満足した様子で、翔の魂を元に戻す。
翔はゲホゲホと咳払いした後、ベルの持ってきた水を一気に飲み干し、ホッとした様子で溜息をついた。
「はあ‥‥はあ‥‥。し、死ぬかと思った‥‥。ご、強引だな、君は‥‥。本当に死んだら、どうするつもりだったんだい?」
苦笑いを浮かべながら、翔がダラリと汗を流す。
一瞬、あっちの世界が見えたため、もう少し遅れていれば逝っていた。
「‥‥南無‥‥」
翔を見つめて両手を合わせ、ブローディアがキッパリと答えを返す。
どうやら細かい事は気にしない性格らしい。
「でも、生きていたんだから、いいんじゃないのかなぁ? あのまま死んでいたら大騒ぎしていたところだけど、こうやって無事に帰ってきたわけだし‥‥」
再びどんよりとした空気を漂わせてきた翔を見つめ、エリーが気まずい様子でフォローを入れる。
先程と比べて翔が元気になったため、ここで落ち込ませるわけにはいかないようだ。
「ま、まあね‥‥。生きているだけでも幸せって思わなきゃ駄目かな?」
乾いた笑いを響かせながら、翔が頭を抱えて溜息をつく。
色々と不満なところはあるのだが、何を言ってもキッパリと返されそうだ。
「とりあえず今後の予定を決めませんか? 今の戦力では『愚者』に勝つ事は出来ません。それどころか他のタロットカードまで支配下に置かれてしまいます」
『愚者』に関するデータをモニターに移し、ブラナスがキーボーをパチパチと叩く。
いまのところ『魔術師』が動き出した形跡はないが、封印するまでは安心する事が出来ない。
「まずは『女帝』のタロットカードと契約を交わしておこうと思っている。完全に封印しない事を条件に取引をすれば、相手だって簡単に『NO』とは言わないだろう」
『女帝』のタロットカードがセント・ヘレンズ山の山頂にある事を調べ上げ、翔がテーブルを何度か叩いて周辺の地図を出現させる。
セント・ヘレンズ周辺で大きな事件が起こっている様子が無いため、『女帝』のタロットカードが『逆位置』で覚醒している可能性は低い。
「セント・ヘレンズ山の頂上に行くんですね? でしたら、登山用の道具を用意しなくちゃですよ〜☆」
登山用のピッケルやザイルを用意するため、ベルがパタパタと走って倉庫に急ぐ。
倉庫の中には何故かお坊ちゃま愛用のメイド大全が隠してあったため、それを小脇に抱えて大急ぎで戻ってきた。
「そ、それはっ!? だ、駄目じゃないか。これは登山に必要ないよ」
あからさまに動揺しながら、翔がメイド大全を奪い取る。
しかし、メイド達の視線は冷たく、翔の心をザクザクと突き刺すのであった。
●執事パート・キャスト
パトリシア・ローズ役:パトリシア・ローズ
アルベルト役:Eugene(fa2360)
マコト役:皇・皇(fa0043)
リャン役:羅蓮華(fa1695)
シマツリ役:志祭 迅(fa4079)
●執事パート
「‥‥御嬢様、私は先に申し上げた筈です。あのような者にタロットの力は相応しくないと、この力はそれを持つのに相応しい者が持つべきであり、その為にこそ私はその解放に力をお貸ししたのです」
厳しい表情を浮かべながら、アルベルトがパトリシア・ローズを叱りつける。
パトリシアにとって説教は苦痛でしかないため、ほとんどアルベルトの話を聞いていない。
「分かってますわ、そんな事っ! わたくしだって、あそこまで『愚者』が愚かだったとは思いもしませんでしたもの‥‥。それなのにそこまで怒る事はないでしょ! まるで、わたくしがすべて悪いみたいじゃない! わたくしだって庶民の事を考えて行動しただけですわ」
不機嫌な表情を浮かべながら、パトリシアがアルベルトを睨んで言い返す。
パトリシアも多少は悪いと思っているのか、アルベルトの顔をまったく見ようとしない。
「まあまあ‥‥。お嬢様だって反省しているんだから‥‥。それに俺達のカードじゃ、『マスター』には勝てないという事が分かっただけでもいいんじゃないか? 次は『負けない』手段を考えればいいだけなんだしさ」
このままではパトリシアがヘソを曲げて家出をしてしまうため、マコトが苦笑いを浮かべてふたりの間に割って入る。
マコトも『愚者』に対して激しい怒りを感じているが、だからと言って何の考えも無しに攻撃を仕掛けようと思うほど愚かではない。
「その通りですわ! やっぱりマコトは考えている事が違いますわね。それでこそ、わたくしのペットですわ。ご褒美に高級な骨を差し上げますわ」
高笑いを上げながら、パトリシアがリボンつきの骨をマコトに渡す。
パトリシアとしては冗談のつもりだったようだが、マコトは呆れた様子でリボンつきの骨を受け取った。
「わんっ! ‥‥って、違うだろ。冗談も程々にしないと、誰も助けてくれないぞ!」
彼女のボケに乗って『ワン』と一声吠えた後、マコトが冷たい視線をパトリシアに送る。
「そ、そんな事を言ったら、わたくしが我侭な事を言えなくなるじゃありませんか! 何処かに行ったら‥‥、泣きますわよ?」
いまにも泣きそうな表情を浮かべ、パトリシアがマコトの腕をギュッと掴む。
普段は強気なパトリシアも執事達に見捨てられてしまうのは、どんな事をしてでも避けたいようだ。
「‥‥とにかく何か作戦を考えないとね」
目の前に置かれた『愚者』『魔術師』『恋人』のタロットカードを指で弄び、リャンが苦笑いを浮かべて口を開く。
タロットカードの力を使えば『愚者』や『魔術師』に力を与えてしまうため、可能な限り自分達の力だけで事件を解決したいと思っている。
「そうですわね。まずは『愚者』を何とかしないと駄目ですわ。アイツが存在している限り、ローズ家の評判は地に落ちていくばかりですからね」
『愚者』にされた仕打ちを思い出しながら、パトリシアが拳をぶるりっと震わせた。
今まで彼女に逆らった男は翔を除いて他にいなかったため、色々な意味で『愚者』に興味を持っている。
「オ嬢様‥‥、ヨダレ‥‥」
ロボット特有の機械音声のような口調で、シマツリがお嬢様にツッコミを入れた。
シマツリは必要以上の事はあまり口にしないのだが、パトリシアがあまりにも油断していたので思わず声を掛けたらしい。
「これは天使の雫よ‥‥って、何だかアブノーマルな香りがしますわね。まぁ、いいですわ。とにかく『愚者』を倒すために作戦を考えましょう」
気まずい様子でシマツリに言い返し、パトリシアが真っ白なハンカチを使って涎を拭う。
彼女の場合、『愚者』を倒すというよりは、支配下に置く事を夢見ている。
「そういやメイド達が『愚者』の力に対抗するため、セント・ヘレンズ山に行って『女帝』の力を借りようとしているらしい。それと御剣側から停戦の提案があった。『愚者』を倒す間だけ‥‥」
軽く黙祷するためカジノ跡地に行った時の事を思い出し、マコトが言葉を選んでパトリシアに報告した。
パトリシアは翔に対してライバル意識を燃やしているため、迂闊な事を言えば停戦どころでは無くなってしまう。
「へぇ‥‥、珍しい事もあるんですねぇ。あの馬鹿がわたくしに平伏すとは‥‥。ようやく、わたくしの偉大さに気がついたようですわね。おーっほっほっほっ!」
マコトの言葉を自分の都合よく解釈しながら、パトリシアが満足した様子で高笑いを響かせる。
「まぁ、お嬢様の言葉はさておき、一時的な停戦は必要だと思います。これ以上、お互いの足を引っ張り合う事で、『愚者』の力を増幅させる事になりそうですし‥‥」
納得した表情を浮かべ、アルベルトが地図を開く。
翔達がむかったセント・ヘレンズ山は最近、大きな事件も起こっていないため、『愚者』がまだ『女帝』の存在に気づいていない可能性が高い。
「‥‥決マリデスネ。スグニデモ、セント・ヘレンズ山ニ行キマショウ」
指をパチンと鳴らして車を庭に呼び、シマツリが頭を下げてドアを開ける。
パトリシアは優雅に庭を歩いていくと、シマツリの手を取り車に乗り込んだ。
「それじゃ、お嬢様より目立った愚者を懲らしめるためにも力を集めるとしますか」
そう言ってリャンが笑顔を浮かべて車のドアを閉めるのだった。
●女帝パート
「‥‥まさか本当に来るとはね。僕はてっきり来ないかと思ったよ」
皮肉まじりに呟きながら、翔がパトリシアを見つめてクスリと笑う。
翔達はセント・ヘレンズ山に到着した後、パトリシア達と合流し『女帝』を探す事になった。
「‥‥あのねぇ。せっかく、わたくしが協力してあげるって言っているのに、その態度は何かしら? まるで、わたくしにケンカを売っているようですわね。このまま帰ってしまおうかしら?」
含みのある笑みを浮かべながら、パトリシアがパタパタと扇子を仰ぐ。
立場的に自分の方が強いと分かっているため、強気な態度で翔にジリジリと迫っていく。
「うぐ‥‥、それは困る。僕だって、これ以上『愚者』に力を与えたくは無いからね。今回だけは君の我侭を聞こうじゃないか」
悔しそうな表情を浮かべ、翔が拳をぶるりと震わせる。
ここでパトリシアの機嫌を損ねてしまうと、本当に彼女が帰ってしまうため、湧き上がる怒りをグッと堪えて答えを返す。
「分かればいいんですのよ、分かればね。おーっほっほっほっ!」
満足した様子で笑みを浮かべ、パトリシアが高笑いを響かせる。
「それじゃ、情報交換をしようじゃないか。こちらの知らない情報を持っていそうだからな」
このままでは翔のパンチが飛ぶと思ったため、マコトがすかさず話題をすり替えた。
マコト達にとってもふたりがケンカする事が得策だとは思っていない。
「協力はいいんだけどぉ、カードはあげないからなぇん」
警戒した様子で翔の背中に隠れ、エリーがベェーッと舌を出す。
生理的にパトリシアを好きになる目事が出来ないため、一時的に停戦する事が決まった後も彼女と視線を合わせていない。
「別にそこまでする必要はありません。まだ貴女達を信用じゃありませんから‥‥」
クールな表情を浮かべながら、アルベルトがキッパリと答えを返す。
翔が騙まし討ちしてくる可能性も捨てきれないため、アルベルトはまだメイド達の事を完全には信用していない。
「‥‥‥‥」
無言でアルベルトを睨みつけ、プラナスが大火災の被害報告書を手渡した。
「‥‥分かってますよ。我々も、あの後に調査を行いましたから‥‥。貴女達とは別の形で、あの事故の責任は取ってます」
必要以上の事は口にせず、アルベルトが被害資料をプラナスに突き返す。
アルベルト達にとっても、あの事故は忘れられない出来事なので、パトリシアに指示される前に、出来るだけの事はしていたらしい。
「一体、何の騒ぎですか? ‥‥ケンカをするのなら、早くここから出て行ってください」
次の瞬間、真っ白な霧が現れたかと思うと人型に変化し、『女帝』のタロットカードがアルベルト達の前に現れた。
「あ、あなたが‥‥『女帝』‥‥」
唖然とした表情を浮かべながら、翔がぺたんと尻餅をつく。
『女帝』はクールな表情を浮かべて翔を見つめ、面倒臭そうに小さくコクンと頷いた。
「お願いします。わたし達に協力してくださいですよ〜」
潤んだ瞳で『女帝』に抱きつき、ベルが協力して欲しいと懇願する。
「‥‥お断りします。私には関係ない事ですから‥‥」
ベルの両手を振り払い、『女帝』が溜息をついて背をむけた。
「それならふたりを生贄にするから願いを聞いてくれるかな? 世界を救うためなら、どんな事だってしてくれるはずだよ♪」
満面の笑みを浮かべながら、リャンがマコトと翔を生贄にする。
ふたりとも何の話も聞いていなかったため、驚いた様子でリャンを睨む。
「そんなモノで私の心が動くとでも思っているんですか? ‥‥私は誰のものにもなりません」
何者かの気配に気づいたのか、『女帝』が霧状になって姿を消した。
「まっ、待ってくれ! それじゃ、どうすれば、俺達に力を貸してくれるんだ? それだけでも答えてくれ!」
納得のいかない様子で空を見つめ、マコトが『女帝』にむかって訴えかける。
しかし、『女帝』は何も答えず、パトリシアの右手の甲に紋章を刻む。
「きゃあ!? なんなの、これは! わたくしの美しい肌に傷がっ! 許しません事よっ! 隠れてないで出てらっしゃい! 八つ裂きにして差し上げますわ」
紋章を見つめて悲鳴をあげ、パトリシアが『女帝』に対して文句を言う。
右手の甲を隠して涙を浮かべ‥‥。
『チッ‥‥! 面倒な事になっちまったな。これじゃ、迂闊に手を出せねぇな! ヤツらがあの事に気づかなきゃいいんだが‥‥』
『‥‥君らしくもないね。そんなに女帝が怖いのかい? もっと仲間を増やせばいいじゃないか。‥‥女帝の力を押さえ込むだけの力をね』
‥‥戦いはまだ始まったばかりである。