皇帝南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 ゆうきつかさ
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 08/21〜08/25
前回のリプレイを見る

●本文

<ドラマの内容>
 タロットカードの力を封印(もしくは解放)するために世界を回るアメリカンドラマです。
 基本的には何でもありの世界観になっていますが、現時点ではメイド役か執事役しか選べません。
●メイド派として参加する場合

<募集職種>
 清純派のメイド役からドジッ娘メイド役まで幅広く募集しています。

<基本設定>
 主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
 彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
 ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
 ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
 お坊ちゃまはタロットカードの力に危険なものを感じたため、選ばれた者達だけが使用できるように封印を施して行こうと思っています。
 そのため、お嬢様と対立する事に‥‥。

<お坊ちゃまの設定>
名前:御剣・翔(みつるぎ・しょう)
容姿:東洋系の顔立ちをしており、喋らなければ美男子。
   普段は眼鏡を掛けており、髪の色は銀色。神経質そうな雰囲気。
性格:現実主義でナルシスト。成績優秀で運動神経抜群。エリートタイプ。
口調:僕、君、だね、だろ?
年齢:17歳

●執事派として参加する場合
<募集職種>
 正統派の執事役から邪道な執事役まで幅広く募集しています。

<基本設定>
 主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
 彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
 ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
 ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
 お嬢様はタロットカードの力を素晴らしいと思い、その力を解放して行こうと思っています。
 そのため、お坊ちゃまとは敵対する事に‥‥。

<お嬢様の設定>
名前:パトリシア・ローズ
容姿:西洋系の顔立ちをしており、金髪、碧眼、縦巻きロール。
   見た目は育ちのいいお嬢様風。
性格:我侭で高飛車。好奇心旺盛で甘えん坊。
   寂しがり屋で意地っ張り。自己中な性格で口が悪い。
口調:わたくし、あなた、ですわ、でしょう?
年齢:17歳

●決めて欲しいもの
 自分の演じる執事がどんな設定なのかを教えてください。
 アンドロイド型や魔物型でも構いません。
 ただし、実在する歴史上の人物や有名キャラクターなどを使用しない事ようにお願いします。
 著作権の関係上、色々と問題が出てくる場合があります。
 執事達はタロットカードを使用する事で魔法を使う事が出来ます。
 最初に配布されるカードは一枚。
 キャラクターの性格によって、正位置か逆位置で使用する事が出来ます。
 どちらかいいか希望を書いた上で、自分が所有するカードを教えてください。

<テンプレート>
役名:演じる役名を記入。
性格:演じる役の性格を記入。
特徴:演じる役の特徴を記入。
見せ場:自分の見せ場を記入。
所有カード:所有しているタロットを記入(表か裏のみ)。
特殊能力:カードを使用した時に発動する能力を記入。
(注意:内容によっては修正される場合があります)。

●今回のシーン説明
・シーン1 メイドパート
 調査の結果、『皇帝』のカードがホワイトハウスにある事が判明します。
 カードの所有者は、アメリカ大統領ワイズマン。
 何処かで見た事があるような気もしますが、まったくの別人です。
 何とか説得してカードを手に入れようと考えますが‥‥。

・シーン2 執事パート
 御剣達と協力する事を約束したものの、何だかシックリこない執事達。
 色々と愚痴をこぼしながら『愚者』の行方を調べています。

・シーン3 皇帝パート
 役者達の行動によって展開が変わります。
 うまく行けば『皇帝』のカードが手に入るはずですが‥‥。

[愚者:ジョニー]
能力:相手の能力をコピーする力を持っています。
性格:自分勝手で自己中心、無鉄砲な風来坊。
口調:俺、お前、だ、だぜ

[魔術師:所有者:スミス(24歳)]
能力:地水火風の能力を自由に使う事が出来る。
性格:覚醒前なので不明。所有者の性格は真面目。
口調:(所有者)私、君、だろ、だ

[女帝:キャサリン]
能力:何者かの支配下に置かれている者達を呪縛から解き放つ。
性格:何事にも無関心で冷淡。
口調:私、あなた、です、ですね

[皇帝:ワイズマン(45歳)]
能力:不明
性格:横暴で自己中。
口調:ワタシ、アナタ、デス、デスネ

●今回の参加者

 fa0043 皇・皇(21歳・♂・一角獣)
 fa0279 蓮華(23歳・♀・狐)
 fa0918 霞 燐(25歳・♀・竜)
 fa1695 羅蓮華(23歳・♀・狐)
 fa1828 鐘下べる(20歳・♀・小鳥)
 fa2668 大宗院・慧莉(24歳・♀・狐)
 fa3033 大宗院・真莉(30歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

●メイド・キャスト
プラナス役:霞 燐(fa0918)
ベル役:鐘下べる(fa1828)
エリー役:大宗院・慧莉(fa2668)
御剣・翔役:御剣・翔

●メイド・パート
「‥‥あれから、ずっと部屋に篭りっきりだね。一体、何をしているのかな?」
 心配した様子で表情を強張らせ、エリーがプラナスの部屋を見つめて溜息をつく。
 『皇帝』のタロットカードがホワイトハウスにある事が判明してから、プラナスは自室に篭って独自の情報網から大統領の情報(主にスキャンダル)を秘密裏に収集を行っている。
 もちろん、他のメイド達はその事を知らないため、とても心配しているようだ。
「‥‥彼女の事だ。何か理由があるのだろう。とにかく食事だけでも取らせておこう。どんな理由であれ食事を取らない事は、身体に良くないからね」
 苦笑いを浮かべながら、御剣・翔がノートパソコンのキーを叩く。
 プラナス宛に一通のメールを送るため‥‥。

 それから、しばらくして‥‥。

 プラナスが会議室にやって来た。
 きちんと食事を取った上で‥‥。
「これで、お屋敷の中に居るメイドさんがすべて揃ったようですよぉ〜」
 満面の笑みを浮かべながら、ベルが自分の席にチョコンと座る。
 会議室にいるのは、ベルを含んで3人だけ。
 他のメイドは夏休みを使って里帰りをしているようだ。
「まぁ、たまにしか休暇を出す事が出来ないからね。いまからメイド達を呼び戻したとしても、絶対に間に合わないだろうから、僕達だけで事件を解決してしまおうか」
 苦笑いを浮かべながら、翔が紅茶を口に含む。
 御剣邸では頻繁に休暇を出す事が出来ないので、仕事の暇な時期を狙って一週間だけ休暇を出しておいたのだが、その時期を狙うようにして『皇帝』のタロットカードがホワイトハウスにある事が分かったため、メイド達の大半が会議室には来ていない。
 その上、メイドによっては異世界に住んでいる者もいるため、一度休暇で居なくなってしまうと連絡すら取れなくなる。
「それで何処まで調査が進んでいるんだ? この資料を見る限りでは、ほとんど進展がないようだが‥‥」
 クールな表情を浮かべながら、プラナスが資料に目を通す。
 彼女の言う通り、あれから調査は進んでいない。
 御剣家の情報網を持ってしても、ホワイトハウスのデータを盗み出す事は難しく、何重ものプロテクトを解除する事の出来るスキルを持ったメイドが休暇で屋敷には居ないため、調査が遅れている原因にもなっている。
「はやや〜。今度の相手は大統領ですか〜。粗相の無いようにしなくちゃ駄目ですね〜」
 ハッとした表情を浮かべながら、ベルが驚いた様子で口を開く。
 どうやらベルは屋敷での仕事が忙しかったため、資料に目を通している暇が無かったらしい。
「まさか、ベル‥‥。この資料を読んでいなかったのか?」
 呆れた様子で溜息をつきながら、翔がジト目でベルを睨む。
 翔もベル達が忙しい事は理解しているのだが、一から説明し直さなければならないため、色々な意味で頭を抱えている。
「えーっと、忘れてましたぁ〜。ごめんなさいですよぉ〜」
 恥ずかしそうに頬を染め、ベルが『てへっ』と笑う。
 彼女も資料を読まなければいけない事は理解していたのだが、いつも何十人でやっている仕事をひとりでやらなければならなかったため、あまりの忙しさに忘れてしまっていたようだ。
「まぁ、今回の場合は資料の製作が遅れていたからね。ベルだけを責めるのは良くない事だと思うよ〜」
 エリーも資料を纏めるのに夢中で、他の事まで手が回っていなかったため、慌ててベルのフォローに入っている。
「まぁ、別に僕も怒っているわけじゃない。君達が忙しかったのも、充分に理解しているつもりだからね。どちらかと言えば、大統領の事をあまり口には出したくないだけさ」
 苦笑いを浮かべながら、翔が紅茶をお代わりした。
 大統領とは昔からの知り合いのようだが、何かトラブルがあったらしい。
「それじゃ、大統領とは会えないの?」
 キョトンとした表情を浮かべ、エリーが素朴な疑問を投げかけた。
「いや、御剣家の名前を出せば大統領に会う事は出来るさ。 まったく知らない仲じゃないんだし、あっちだって邪険には扱えないだろう」
 険しい表情を浮かべながら、翔が歯切れの悪い答えを返す。
「その様子では、大統領に会う事が出来たとしても、タロットカードを回収する事は出来ないようだな」
 翔の表情からすべてを読み取り、プラナスがボソリと呟いた。
 大統領に関してはプラナスも調査をしている最中だったため、翔の口からその事が説明されなくとも、ある程度の事は理解する事が出来る。
「ああ‥‥、君の言う通りさ。大統領は頭がカタイ。いや‥‥、正確に言えば自己中と言うべきかな。普段から自分の事しか考えていないからね。なんで彼が大統領になれたのか分からないくらいさ。その事が原因で御剣家ともトラブルを起こしたほどだからね。正直、僕の苦手な人物さ」
 気まずい様子でプラナスを見つめ、翔がコクンと頷いた。
「それじゃ、最悪の場合はパトリシアにお願いしないといけないって事だよね? それだけは遠慮したいんだけどなぁ‥‥。ほら、パトリシアって自己中だし、とっても我侭な性格でしょ? きっと、その事をネタにして、物凄く無茶な条件をつけてくると思うから‥‥。う〜、どうしようかなぁ。このまま何もしないわけにもいかないし‥‥」
 ションボリとした表情を浮かべ、エリーが困った様子で溜息をつく。
 彼女はパトリシアの事があまり好きではないため、出来る事なら彼女の力を借りたくない。
「‥‥その事なら問題ない。私が隠蔽工作を行った暴走事件の一件の隠蔽において、『関係機関』の中に政府の関係機関も含まれていた。その事を話題にすれば大統領と言えども、『皇帝』のタロットカードを渡さざるを得なくなるだろう。それじゃ、行くか。ここでジッとしていても、『皇帝』のタロットカードは手に入らないからな」
 何か『切り札』を持っているのか、プラナスが翔の肩をぽふりと叩く。
 こうして翔達は『皇帝』のタロットカードを手に入れるため、大統領のいるホワイトハウスにむかうのだった‥‥。

●執事・キャスト
マコト役:皇・皇(fa0043)
エルティーシャ役:大宗院・真莉(fa3033)
リュン役:蓮華(fa0279)
リャン役:羅蓮華(fa1695)
パトリシア・ローズ役:パトリシア・ローズ

●執事・パート
「まさか、あのまま共闘体制が続くとはね。ちょっと、驚きだな。ひょっとして、お嬢様。御剣家のお坊ちゃまに興味があるって訳じゃないよねぇ?」
 冗談まじりに呟きながら、マコトがパトリシアを見つめてクスリと笑う。
 今までの彼女なら間違っても翔に協力する事が無かったので、何か理由がある事は間違いないのだが、その変化に驚いているのも事実である。
「ば、馬鹿を言わないでちょうだい! わたくしがあんなモヤシッ子眼鏡に好意を持っているわけないでしょ! 風が吹いたら飛んじゃうほどヤワなのよ!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、パトリシアが顔を真っ赤にした。
 全く興味がないといったら嘘になるのだが、好意と呼べるほどのモノではない。
「まっ、俺には関係ない事だけどね。どっちにしても注意した方がいいんじゃないのかな? 俺達を利用しようとしている可能性だって、まだ捨てきれないんだから‥‥」
 心配した様子で溜息をつきながら、マコトがボソリと呟いた。
 御剣家のメイド達の中には不審な動きをする者もいるため、迂闊に心を開けば痛い目に遭ってしまう事は間違いない。
「そ、そんな事くらい、わたくしだって分かっていますわ。いい加減、子ども扱いしないでくれる!」
 気まずい様子で視線を逸らし、パトリシアが大きく頬を膨らませた。
「‥‥あら、妙ね? ここに見慣れない人がいるんだけど、一体何処の誰かしら? わたくしには御剣家のメイドが執事に化けているように見えるんだけど‥‥」
 エルティーシャをジロリと睨みつけ、パトリシアが瞳をキラリと輝かせる。
 それもそのはず。
 エルティーシャは御剣家に仕えているメイドであるエリーと同一人物であり、未来からやって来た存在なのだから‥‥。
「はじめまして。私はエルティーシャと申します。残念ですが御剣家には仕えてません。そこまで疑うのでしたら、御剣家に確認してみてはいかがでしょうか? 私とソックリなメイド本人に‥‥」
 パトリシアの言葉をキッパリと否定し、エルティーシャがニコリと微笑んだ。
 ローズ家の技術を使えばエリーと同一人物である事がバレてしまうため、危険を承知で御剣家に確認を取ってみる方法を取る事にしたらしい。
「おーっほっほっほっほっ! いい度胸をしていますわね。それならば、わたくしが化けの皮を剥がしてあげますわ。後で泣き言を言っても許しませんわよ、エリーさん」
 ビシィッとエルティーシャを指差しながら、パトリシアが衛星回線を使って御剣家と連絡を取る。
『わざわざ衛星回線を使って連絡とは、君も無駄遣いが好きだね? 隣同士なんだから直接ウチに来たらいいのに‥‥。それとも移動する手間を惜しむほど重要でもあったのかい?』
 鬱陶しそうにパトリシアを見つめ、翔が海よりも深い溜息をつく。
 どうやら出かける途中だったらしく、早く回線を切りたいらしい。
「あなたのところにエリーって名前のメイドがいるでしょ? その子が執事に化けて、わたくしの屋敷に潜入していましたの。あなたがそこまで手の込んだ事をするとは思ってもいませんでしたわ。まぁ、少しでも悪いと思う気持ちがあるのなら、すぐに土下座してほしいとは思っていますけど‥‥」
 勝ち誇った様子で胸を張り、パトリシアが腰に手を当てニヤリと笑う。
『何かと思えば、そんな事か。‥‥まったく。冗談は止してくれないかい? 僕がそんな事をするはずがないだろ? 嘘だと思うんだったら、自分の目で確かめてな。モニターにもシッカリと映っているはずだけど‥‥。それでも信用する事が出来ないのなら、実際に会って確かめてみるといい。それじゃ、また後でね』
 呆れた様子で溜息をつきながら、翔がキーボードを叩いて衛星回線を遮断した。
 パトリシアは何か言いそうにしていたが、モニターのむこうにエリーがいたため、狐につままれたような表情を浮かべている。
「これで信用してくれましたか? ‥‥パトリシアお嬢様」
 満面の笑みを浮かべながら、エルティーシャが口を開く。
 その言葉でパトリシアが我に返り、気まずい様子で鼻を鳴らす。
「やっぱり最近のお嬢様はおかしいよ。世の中には自分と同じ姿をした人が最低でも三人はいるって話だから、そんなに驚く事でもないのに‥‥。ひょっとして『女帝』がつけた右手の紋章が原因だったりして‥‥」
 パトリシアの右手をマジマジと見つめ、リュンがクスクスと笑う。
 リュンもリャンと瓜ふたつのため、よくパトリシアに間違われているため、エルティーシャの気持ちが何となく分かるようだ。
「‥‥何だかそう言われると、わたくしも否定する事が出来なくなりますわ。一体、この紋章にはどんな意味があるのかしらね?」
 右手の甲に浮かび上がった紋章を見つめ、パトリシアが困った様子で溜息をつく。
 この紋章は石鹸でも消す事が出来なかったため、専門家に頼んで調べてもらっていたのだが、骨に達するほど深い痕なので消す事が出来ないらしい。
「見た感じ『女帝』は所有者が存在しないようだし、彼女自身も束縛を嫌っていた。‥‥となると、そうだ! お嬢様、最近、何か妙なものを見ませんか? 何だか妙な夢を見たとかね」
 ローズ家の蔵書庫から持ち出した本を読みながら、マコトがパトリシアから話を聞く。
 蔵書庫にはタロットカードに関する本が山ほどあったのだが、全ての本に目を通す余裕がなかったため、関係のありそうなものから優先して読んでいる。
「夢ならいつも見ているけど‥‥、マコトを苛める夢とか、生意気な翔に靴を舐めさせたりする夢とか‥‥。いつも見ている夢と、なんら違いはありませんわ」
 しばらく考え込んだ後、パトリシアがキッパリと言い放つ。
 色々な意味で性格が歪んでいるため、目の前に当人がいても躊躇しない。
「一応、契約・呪い・術に絞り込んで調べてみたけど、どれにも当てはまらないみたいだね。それが何を意味しているのか分からないけど‥‥」
 自分の調べた本をテーブルの上に置き、リャンが険しい表情を浮かべて口を開く。
 彼女なりにマコトと違った方向性から紋章について調べてみたのだが、関係のありそうな書物が見つからなかったために落ち込んでいる。
「あなたの信じる道を進めば、きっと運命は変えられます。自分の運命を呪わずに頑張りましょう」
 含みのある笑みを浮かべ、エルティーシャが意味深な言葉を呟いた。
「どちらにしても気になる事ばかりだな。お嬢様が女帝につけられた紋章と、本来愚者には無いはずの支配能力か。唯一分かった事は『愚者』はゼロでもあり、全てでもあるって事だけだし、せめて『マスター』に対抗するための手段だけでも分かるといいんだけどな。かつて封印を施した以上、何らかの手段があったはずだし‥‥」
 『信徒』を使役して読み終わった本を蔵書庫に運ばせ、マコトが疲れた様子で溜息をつく。
 『愚者』のタロットカードが暴れているせいで、パトリシアが望んでいるような使い方が出来なくなっているため、その事も気掛かりになっている。
「とにかく『愚者』と『魔術師』の行方だけでも掴んでおかないとね」
 雇っていた情報屋が無くなったという連絡を受け、リャンが携帯電話の電源をオフにした。
 多額の前金を払って契約を交わした情報屋が次々と殺害されてしまったため、『愚者』達の居場所が未だに掴めていないようだ。
「最終的な決断をするのは、お嬢様だからね。悩み苦しんでお嬢様自身で答えを出して‥‥」
 そう言ってリュンがパトリシアの顔を見つめるのであった‥‥。

●皇帝パート
「‥‥随分と遅かったじゃないか。約束より30分も遅刻して‥‥」
 不機嫌な表情を浮かべながら、翔がパトリシアを見つめて愚痴をこぼす。

『ワシントンD.C. ホワイトハウス』

 この建物の中に『皇帝』のタロットカードの所有者であるワイズマンが待っている。
「‥‥30分程度で文句を言うなんて小さい男ね。これだからお坊ちゃまは困りますわ」
 面倒臭そうな表情を浮かべながら、パトリシアがわざと大きな溜息をつく。
 本当なら30分前に着く予定だったのだが、翔よりも早く着くのが癪だったため、一度屋敷に帰ってからホワイトハウスに来たらしい。
「ねぇ、パトリシアってぇ、何か憑いてるとかってないのぉ?」
 疑いの眼差しをパトリシアにむけ、エリーが翔に耳打ちした。
 どうやら彼女の右手に紋章が浮かんでいたため、色々な意味で警戒しているらしい。
「聞こえてますわよ、エリー『さん』。あなたには色々と聞きたい事がありますの」
 殺気に満ちた表情を浮かべながら、パトリシアがエリーにジリジリと迫っていく。
 先程の事もあるためか、彼女に対して敵意すら持っている。
「まあまあ、ここでモメていても仕方が無いだろ。ほら、あのSPが大統領のところまで案内してくれるってさ」
 ふたりの間に割って入り、マコトがSPを指差した。
 大統領のSPは無線を使って何処かと連絡を取りながら、マコト達を大統領のいる部屋まで案内した。
「HAHAHAHAHA! 遠路遥々ご苦労様デェース! ワタクシがアメリカ大統領ワイズマン・ウォルター・エルマンデェース!」
 豪快な笑い声を響かせながら、ワイズマンが翔を見つめてガッチリと握手をかわす。
 既に御剣家とトラブルが遭った事など忘れているのか、翔をファンのひとりであると思い込んでいる。
「‥‥妙だな。単なる嫌味のつもりで書いただけなのに‥‥」
 青ざめた表情を浮かべながら、翔がワイズマンをジロリと睨む。
「HAHAHAHAHA! ワタクシを大統領の影武者だと思っているのデスカ? それならば大きな間違いデェース! 嘘だと思うのならDNA検査をしても構いませんYO」
 満面の笑みを浮かべながら、ワイズマンが翔の肩をぽふりと叩く。
「だったら『皇帝』のタロットカードをこちらに渡してくれるかな? それは君が持っていても仕方が無いものだから‥‥」
 『恋人』のタロットカードを逆位置で発動させ、リャンがワイズマンを魅了して交渉を有利に進めようとした。
「ワタシを魅了しようとしているのなら、無駄な事デェース!」
 全身の筋肉を隆起させながら、ワイズマンが真っ白な歯を輝かせる。
「あなたの力は世界のために使われるものです。その力で世界の運命を変えてみませんか。未来を変えましょう」
 リャンの魅了がまったく通用しなかったため、エルティーシャが正攻法で説得を試みた。
「HAHAHAHAHA。そうかも知れませんネ。ですがワタシにはやるべき事があるのデェース。次期大統領が決まるまでは、『皇帝』のタロットカードを渡す事は出来まセェーン」
 残念そうに首を振り、ワイズマンが答えを返す。
 他にも何か理由があるのか、彼の言葉には含みがある。
「ま、まさか!?」
 ハッとした表情を浮かべながら、リュンが『恋人』のタロットカードを正位置で発動させ、ワイズマンの心を読もうとした。
「何か分かりましたか〜?」
 リュンの顔をマジマジと見つめ、ベルが不思議そうに首を傾げる。
 しかし、リュンは答えない。
 自分の考えが見事に的中していたから‥‥。
「‥‥なるほどな。既にワイズマンが亡くなっているというわけか。そのため、お前が影武者として、ここにいるわけだな? その事実を隠すためだけに‥‥」
 納得した様子でワイズマンを見つめ、プラナスが最近起こった事件を思い出す。
 謎の爆発事故から奇跡の生還をした大統領と書かれた見出しが脳裏を過ぎる。
 もちろん、ワイズマンは何も答えない。
 ただ、笑みを浮かべるだけで‥‥。