法王南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 ゆうきつかさ
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/22〜09/26
前回のリプレイを見る

●本文

<ドラマの内容>
 タロットカードの力を封印(もしくは解放)するために世界を回るアメリカンドラマです。
 基本的には何でもありの世界観になっていますが、現時点ではメイド役か執事役しか選べません。

●メイド派として参加する場合
<募集職種>
 清純派のメイド役からドジッ娘メイド役まで幅広く募集しています。

<基本設定>
 主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
 彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
 ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
 ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
 お坊ちゃまはタロットカードの力に危険なものを感じたため、選ばれた者達だけが使用できるように封印を施して行こうと思っています。
 そのため、お嬢様と対立する事に‥‥。

<お坊ちゃまの設定>
名前:御剣・翔(みつるぎ・しょう)
容姿:東洋系の顔立ちをしており、喋らなければ美男子。
   普段は眼鏡を掛けており、髪の色は銀色。神経質そうな雰囲気。
性格:現実主義でナルシスト。成績優秀で運動神経抜群。エリートタイプ。
口調:僕、君、だね、だろ?
年齢:17歳

●執事派として参加する場合
<募集職種>
 正統派の執事役から邪道な執事役まで幅広く募集しています。

<基本設定>
 主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
 彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
 ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
 ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
 お嬢様はタロットカードの力を素晴らしいと思い、その力を解放して行こうと思っています。
 そのため、お坊ちゃまとは敵対する事に‥‥。

<お嬢様の設定>
名前:パトリシア・ローズ
容姿:西洋系の顔立ちをしており、金髪、碧眼、縦巻きロール。
   見た目は育ちのいいお嬢様風。
性格:我侭で高飛車。好奇心旺盛で甘えん坊。
   寂しがり屋で意地っ張り。自己中な性格で口が悪い。
口調:わたくし、あなた、ですわ、でしょう?
年齢:17歳

●決めて欲しいもの
 自分の演じる執事がどんな設定なのかを教えてください。
 アンドロイド型や魔物型でも構いません。
 ただし、実在する歴史上の人物や有名キャラクターなどを使用しない事ようにお願いします。
 著作権の関係上、色々と問題が出てくる場合があります。
 執事達はタロットカードを使用する事で魔法を使う事が出来ます。
 最初に配布されるカードは一枚。
 キャラクターの性格によって、正位置か逆位置で使用する事が出来ます。
 どちらかいいか希望を書いた上で、自分が所有するカードを教えてください。

<テンプレート>
役名:演じる役名を記入。
性格:演じる役の性格を記入。
特徴:演じる役の特徴を記入。
見せ場:自分の見せ場を記入。
所有カード:所有しているタロットを記入(表か裏のみ)。
特殊能力:カードを使用した時に発動する能力を記入。
(注意:内容によっては修正される場合があります)。

●今回のシーン説明
・シーン1 メイドパート
 メイド達が妙な教団の噂を聞き、お坊ちゃまに報告しているシーンから始まります。
 教団の教祖は『法王』と名乗っており、ホンモノの奇跡を使う事が出来るようです。
 そして、お屋敷に届いた招待状。
 差出人は『法王』。
 招待されたのは翔ひとり。
 そのため、翔は単独で調査に向かうのですが‥‥。

・シーン2 執事パート
 『法王』の屋敷に行ったまま帰ってこない翔を心配して、メイド達が仕方なくパトリシアに助けを求めてきます。
 そのため、パトリシアは瞳をキラリと輝かせ、色々と条件をつけてきようと思います。
 そして、届く招待状。
 差出人はもちろん『法王』。
 招待されたのは、パトリシアとその関係者達。
 翔を助けるためには、彼女の協力が必要ですが‥‥。

・シーン3 法王パート
 信者達に案内され、パトリシア達が本堂にむかいます。
 本堂の十字架には翔が縛られており、邪悪な笑みを浮かべた『法王』が立っています。
 翔を助けるためには、パトリシア達が持っているカードを処分しなければならないのですが‥‥。

・シーン4 対決
 行動次第では『法王』と対決する事になります。
 うまく行けば『愚者』や『魔術師』などとも対決するかも知れません。

[愚者:ジョニー]
能力:相手の能力をコピーする力を持っています。
性格:自分勝手で自己中心、無鉄砲な風来坊。
口調:俺、お前、だ、だぜ

[魔術師:所有者:スミス(24歳)]
能力:地水火風の能力を自由に使う事が出来る。
性格:覚醒前なので不明。所有者の性格は真面目。
口調:(所有者)私、君、だろ、だ

[女帝:キャサリン]
能力:何者かの支配下に置かれている者達を呪縛から解き放つ。
性格:何事にも無関心で冷淡。
口調:私、あなた、です、ですね

[皇帝:ワイズマン(45歳)]
能力:不明
性格:横暴で自己中。
口調:ワタシ、アナタ、デス、デスネ

[法王]
能力:不明
性格:常に笑みを浮かべている。
口調:私、あなた、ですね

●今回の参加者

 fa0043 皇・皇(21歳・♂・一角獣)
 fa0204 天音(24歳・♀・鷹)
 fa0918 霞 燐(25歳・♀・竜)
 fa1695 羅蓮華(23歳・♀・狐)
 fa1828 鐘下べる(20歳・♀・小鳥)
 fa2668 大宗院・慧莉(24歳・♀・狐)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)
 fa4638 高村 裕香(18歳・♀・パンダ)

●リプレイ本文

●メイド・キャスト
 プラナス役:霞 燐(fa0918)
 エリー役:大宗院・慧莉(fa2668)
 ベル役:鐘下べる(fa1828)
 メイリィ役:高村 裕香(fa4638)
 ブローディア役:天音(fa0204)

●メイド・パート
「‥‥調査の結果、教団で行われている奇跡は、ホンモノに間違いありません。おそらくタロットカードの力が働いているものかと思いますが‥‥」
 独自の調査を使って集めた情報を報告書に纏め、プラナスが疲れた様子で溜息をつく。
 教団については胡散臭い部分もあるのだが、そのすべてがタロットカードの力であるとすれば、『法王』が行っている奇跡にも納得する事が出来る。
「やはり、そうか。僕も怪しいと思っていたんだけどね。だとすれば、この教団が『愚者』達に狙われる可能性もあるって事か」
 プラナスの報告書を読みながら、翔が険しい表情を浮かべて溜息をつく。
 『愚者』の消息は未だに掴めておらず、大半の情報が敵の流したデマだった。
「でも、あからさまに罠っぽくない? ‥‥って言っても、証拠は何も無いんだけどね」
 横から報告書を覗き込み、エリーが冗談まじりに微笑んだ。
 少し前から教団に関する噂は流れていたのだが、あまりにも堂々としているため、かなり怪しんでいるようだ。
「だが、このまま放っておくわけにも行かないだろ。『法王』の奇跡によって教団は拡大しつつある。いまのうちに叩いておかないと、僕達だけじゃ対処する事が出来なくなってしまう」
 ここ数ヶ月で教団が急激に拡大しているため、翔が計画書を睨んで腕を組む。
 これ以上、教団が力を手に入れてしまえば、翔達だけで片付ける事の出来る事件では無くなってしまう。
「わわっ、大変な事が分かってしまったですよ〜」
 パソコンのモニターを見つめて悲鳴をあげ、ベルがその映像を巨大モニターに転送する。
 しかし、そこに映ったのは、可愛らしいメイド達の映ったセクシー画像。
 その映像を見て、翔が情けない声を上げる。
「こ、こ、こ、これは誤解だ! いや、別にやましい気持ちはなく、今後のために調査をしていただけで‥‥。し、信じてくれ!」
 青ざめた表情を浮かべながら、翔が必死になってモニターを隠す。
 どうやらベルが翔のお気に入りサイトを覗いてしまった事が原因で、ここまで大事になってしまったようだ。
「まぁ、男だから仕方が無いとは思うんだが‥‥、程ほどにな」
 翔の肩をぽふりと叩き、メイリィがクスリと笑う。
 そのため、翔はどんよりとした空気を漂わせ、ションボリとした様子で溜息をつく。
「届」
 教団から届いた招待状をテーブルの上に置き、ブローディアが翔の返事を待つ。
 一瞬、翔は招待状の差出人に気づいて険しい表情を浮かべたが、レターオープナーを使って手紙の内容を確認した。
「‥‥招待券は一枚だけか」
 含みのある笑みを浮かべながら、翔が招待状を握り締める。
 招待されたのは、翔ひとり。
 それ以外の来客は禁じると手紙には書かれていた。
「ちょっと見せてもらえますか〜。何だかちょっと怪しいですよ〜」
 招待状をマジマジと見つめ、ベルがダラリと汗を流す。
 色々な意味で胡散臭い感じがするため、罠である可能性が非常に高い。
「ちょっ、ちょっと待ってよ! これってあからさまに罠じゃない? そこまで危険を冒して行くのなら、みんなも連れていかなきゃ危ないよ!」
 心配した様子で翔を見つめ、エリーが彼の腕をガシィッと掴む。
 翔が説得に応じて諦めるとは思えないのだが、何もしないよりはマシである。
「だが、招待状が届いている以上、無視する事は出来ないだろ。僕だってこれが罠である事ぐらい分かっているさ」
 爽やかな笑みを浮かべながら、翔がエリーの肩に手を置いた。
「‥‥分かったよ。頑張ってね」
 これ以上、翔を説得しても無駄だと思ったため、エリーが彼の気持ちを理解した様子でニコリと微笑んだ。
「申し訳ありませんが、私には納得する事が出来ません。罠だと分かっていながら、教団に行くなんて‥‥。そんなの無謀過ぎます!」
 納得のいかない様子で翔を見つめ、プラナスがキッパリと反対した。
 もちろん、プラナスも翔の気持ちは分かっているが、それとこれとは別である。
「お坊ちゃまだって覚悟が出来ているんだ。‥‥信じよう」
 すべてを悟ったような表情を浮かべ、メイリィがボソリと呟いた。
「準備万端」
 クールな表情を浮かべながら、ブローディアが翔にペンを握らせ遺言状を書かせようとする。
 そのため、翔は困った様子で彼女を見つめて溜息をついた後、何も言わずにさらさらと遺言状にサインした。
「本当に一人で行くんですか? 何なら透明化してついていくですよー」
 何か嫌な予感がしたため、ベルが一緒についていく事を進言する。
 しかし、翔は静かに首を横に振り、メイド達を置いて単独で教団にむかうのだった。

●執事・キャスト
 マコト役:皇・皇(fa0043)
 リャン役:羅蓮華(fa1695)
 村井 琢磨役:辰巳 空(fa3090)

●執事・パート
「あらあら、随分と珍しいお客様が来ているわね。普段ならわたくしの敷地にさえ入ろうとしなかった人達が‥‥。まぁ、それだけ大きな事件が起こっているという事だろうけど‥‥。一体、何の用かしら?」
 含みのある笑みを浮かべながら、パトリシアがえっへんと胸を張る。
 既に翔が行方不明になっているという噂は聞いているのだが、実際にメイド達の口から聞きたいらしく、彼女達の言葉をジッと待っているようだ。
「説明するまでも無いと思いますが、私達の御主人様‥‥、つまり翔お坊ちゃまが教団に行ったまま帰ってきません。そこでパトリシア‥‥様にも協力を求めたいと思っています。新興勢力だけに、個人のコネでは潜り込めそうにありませんので‥‥」
 険しい表情を浮かべながら、プラナスがペコリと頭を下げる。
 本当はパトリシアに頭を下げるだけでも嫌なのだが、翔を助け出すためには彼女の協力が必要だ。
「そ・れ・で・翔の馬鹿を助けた見返りはあるのかしら?」
 嫌味ったらしい笑みを浮かべ、パトリシアが必要以上に顔を近づける。
 プラナス達が頼み事をしてくる事など無かったため、嬉しくて仕方が無いようだ。
「裸で吊るされるぐらいの覚悟はできております。それで翔様をお助けできるのならば安いものですし‥‥」
 自らの感情を押し殺し、プラナスがパトリシアを睨んで答えを返す。
「‥‥裸? そんなものに興味はないわ。まぁ、奴隷になるって言うのなら話は別だけど‥‥。でも、そんな事をしたら翔の馬鹿が何をしてくるのか分からないわね。今回だけは特別サービスよ。今後はわたくしの事を『パトリシアお嬢様』と呼びなさい。愛を込めて、本心から‥‥」
 恍惚とした表情を浮かべ、パトリシアが恩着せがましくニヤリと笑う。
「やっぱり好きになれないですよ‥‥」
 あからさまに嫌そうな顔をしながら、ベルがプラナスの後ろに隠れる。
 本当はここに来る事も嫌だったため、余計に彼女が嫌いになった。
「だからエリーは嫌だったんだよ。パトリシアって性格が悪いしさ。どうせ翔が教団に行った事も知っていたんでしょ!? 性格悪すぎだよ、まったく‥‥」
 とうとう我慢の限界を越えてしまったため、エリーがジロリとパトリシアを睨む。
 危うく手が出そうになっていたのだが、プラナスの行動を無駄にしないためにも我慢した。
「あらあら、そんな事を言っていいのかしら? 確かに翔の馬鹿が行方不明になっていた事は知っていたわ。‥‥だけど、教団に行ったのは初耳よ。まぁ、そんな態度じゃ、協力してあげる気にもならないけど‥‥」
 不機嫌な表情を浮かべて席に戻り、パトリシアが淹れ立ての紅茶を飲む。
 彼女のまわりには執事達が立っているため、迂闊な行動をすれば返り討ちに遭ってしまう。
「さすがお嬢様。あっという間にメイド達を大人しくさせちゃったね。そういや招待状が届いていたよ。例の教団から‥‥」
 もったいぶった様子で招待状を取り出し、リャンがプラナス達の顔色を窺った。
 そのため、プラナスはハッとした表情を浮かべ、パトリシアを見つめて深々と頭を下げる。
「おーっほっほっほっ! その表情‥‥、たまりませんわ。仕方ありませんわね。協力してあげますわ。その代わり、今後はパトリシアお嬢様と呼びなさい」
 高笑いを響かせながら、パトリシアが招待状をプラナスに渡す。
 どうやら彼女達の態度に満足したらしく、一緒に翔を助ける事にしたようだ。
「相変わらず性格が悪いな、お嬢様は‥‥。まぁ、しおらしくなったお嬢様なんてみたくはないけど‥‥。さっき書庫で『マスターカード』について書かれた文献がないか探してみたんだけど、言い回しが曖昧で分かり辛いものばかりだったな。文献によっては誇張されて書かれているものも多いしね」
 テーブルの上に文献を置き、マコトが困った様子で溜息をつく。
 マコトは『法王』のタロットカードを受け取った時から、日常生活を送れるレベルの不幸にまで体質が改善された事を考えながら書庫で調べ物をしていたのだが、以前より資料の数が増えていたため思わぬ苦戦を強いられている。
「それはローズ家の宿命ね。物事の正確さより、派手な表現を選んだりするから‥‥。まぁ、それだけの資料があれば、何かひとつぐらい分かるはずよ」
 文献をペラペラとめくりながら、パトリシアがクスリと笑う。
 念のため別荘の書庫で埃を被っていた文献も取り寄せておいたのだが、それが逆効果になってしまったようだ。
「そう言えば大統領の方はハズレ。海外に行っているから、連絡が取れないってさ。何だか嘘っぽいよね。まぁ、頻繁に連絡を取り合っていたら、身の危険があるからだろうけど‥‥」
 残念そうに溜息をつきながら、リャンが疲れた様子で首を振る。
 彼女は屋敷の特別回線を使って大統領『皇帝』と連絡を取ろうとしたのだが、多忙を理由に断られてしまったらしい。
「あんな男‥‥、最初からアテにしていませんわ。例え会う事が出来たとしても無茶な要求をしてくるはずですから‥‥。それよりも『愚者』達の調査はどうなっているのかしら?」
 プラナス達の視線を気にしながら、パトリシアがコホンと咳をする。
 当初の予定ではローズ家の情報収集能力を見せつけようとしていたのだが、予想外の結果にパトリシア自身も動揺しているらしい。
「『法王』と行動を共にしている事は確かですが、マスターカード相手では私の力も半減してしまうようですね。現時点では罠である可能性もあります」
 険しい表情を浮かべながら、琢磨が溜息をついて答えを返す。
 琢磨が使用しているタロットカード『運命の輪』は、一瞬だけ先の未来を予知する事が出来るのだが、『愚者』の力が強すぎるため、完全に予知する事が出来ないようだ。
「とにかく教団に行くしか無さそうね。こうやって招待状もあるんだから‥‥」
 そう言ってパトリシアが琢磨達を連れて、『法王』のいる教団へとむかうのだった‥‥。

●法王パート
「ほっほっほっほっ。皆さん、お揃いで来たようですね。それじゃ、さっそくお食事でも‥‥」
 邪悪の笑みを浮かべながら、『法王』がパトリシア達を出迎える。
 『法王』は常に笑顔を浮かべているのだが、歩くたびに腹の肉がぷるんと揺れ、まるでガマガエルのような風貌だ。
「‥‥悪いけどお断りするわ。どうせ薬でも入っているんでしょ? 翔の馬鹿なら騙せたかも知れないけど、わたくしには通用しませんわよ!」
 ビシィッと『法王』を指差しながら、パトリシアがニヤリと笑う。
 そのため、食事を運んでいた信者が悲鳴をあげ、慌てた様子で『法王』に土下座した。
「おやおや‥‥、これは失礼しましたね。きっと、この信者が企んだ事でしょう。私には何の事だか分かりません」
 いやらしい笑みを浮かべながら、『法王』が指をパチンと鳴らす。
 次の瞬間、他の信者達によって悲鳴を上げた信者が奥の部屋へと連れられていく。
「骨の髄まで嫌なヤツね。そんな小芝居をしたって無駄なのよ。あなた達の事はすべてお見通しですわ」
 不機嫌な表情を浮かべながら、パトリシアが『法王』を睨む。
 翔と違って交渉ごとが苦手なため、早く『法王』との話を終わらせたいようだ。
「ほっほっほっほっ、さすがパトリシアお嬢様。翔お坊ちゃまとは違うのですね」
 含みのある笑みを浮かべながら、『法王』がわざとらしく拍手をした。
 本当なら薬で眠らせるつもりでいたらしく、何処か残念そうな表情を浮かべている。
「やっぱり翔がここにいるんだね! 帰してよ、いますぐに!」
 胸倉を掴むほどの勢いで、エリーが『法王』に迫っていく。
 そのため、『法王』が指をパチンと鳴らし、信者達を使って十字架に掛けられていた布を取る。
「こ、これは‥‥!」
 ‥‥そこには確かに翔がいた。
 十字架に縛られた状態で‥‥。
「翔!」
 そう言ってエリーが駆け寄ろうとした瞬間、
「おっと‥‥、ここまでですよ。彼は教団のシンボルですからね。タダで渡すというわけには行きません」
 エリーの腕をガシィッと掴み、『法王』が必要以上に顔を近づけた。
「ふざけないでよ! 翔は物じゃないんだからね! そんな事を言うんだったら、こっちだって考えがあるんだから!」
 とうとう我慢の限界を越えてしまったため、エリーが『法王』の胸倉を掴んで怒鳴りつけた。
 それと同時に待機していた信者達が集まり、エリー達のまわりを一斉に囲む。
「ご安心ください。私にだって考えはありますから‥‥」
 満面の笑みを浮かべながら、『法王』が指を鳴らそうとした。
「‥‥待ちなさい。交渉に応じればいいんでしょ? 早く要求を言いなさい!」
 怒りに満ちた表情を浮かべて『法王』の腕を掴み、パトリシアがこめかみをピクピクさせる。
 翔を助けようという気持ちは全く無いのだが、『法王』の性格が気に食わないため、早く交渉を終わらせたいようだ。
「ほっほっほっほっ、さすがパトリシアお嬢様。‥‥話が早い。なぁに、大した事じゃありません。いま持っているタロットカードをすべて処分すればいいだけです」
 パトリシアのまわりをゆっくりと歩き、『法王』が怪しくニンマリと笑う。
 そのため、エリー達が迷わずタロットカードを捨てていく。
「おやおや、随分と素直ですね。何か作戦でもあるんですか?」
 エリー達の捨てたカードを踏みつけ、『法王』が瞳をキラリと輝かせた。
 パトリシア達も素直にタロットカードを捨てたため、『法王』が胡散臭そうにエリー達を見つめている。
「翔の命とタロットカード。どっちが大切かなんて分かりきっている事だよ」
 拳をギュッと握り締めながら、エリーがキッパリと言い放つ。
 それと同時にエルテーシャとしての記憶が蘇り、エリーがハッとした表情を浮かべて『法王』を睨む。
「それじゃ、翔お坊ちゃまを解放‥‥、といきたいところですがイケませんね〜。ズルをしては‥‥。しかもひとりじゃない。まぁ、予想はしていた事ですが‥‥」
 待っていましたとばかりに指をパチンと鳴らして信者達を嗾け、『法王』がタロットカードの力を解放する。
 次の瞬間、マコトの全身に激痛が走り、待機させていた『信徒』達が一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「ぐはっ‥‥、やはりマスターカードの力には勝てなかったのか」
 そう言ってマコトが大量の血を吐きながら、そのまま血溜まりの中に倒れこむのであった。

●対決パート
「ほっほっほっほっ! まずは一匹目ですね〜。私相手に『法王』の力を使うとは‥‥。愚か過ぎます! さぁ、カードを捨てなさい! こいつらの命が惜しければ‥‥」
 勝ち誇った様子でマコトの背中を踏みながら、『法王』が満足した様子で高笑いを響かせる。
 次の瞬間、上空で待機していたブローディアが一気に急降下してステンドグラスを突き破り、プラナスが硬質化したカードを放って翔の身体を縛っていたロープを切り裂いた。
「‥‥確かにカードは捨てましたよ」
 『法王』の顔を睨んだまま、プラナスが再び硬質化したカードを構える。
「おのれ、小癪な真似を‥‥。死ねええええ!」
 雄叫びを上げて指をパチンと鳴らし、『法王』が信者達に対して指示を出す。
 それと同時にマコトがカッと目を見開き、『法王』の足をムンズと掴む。
「はぁはぁ‥‥、油断したようだな。こっちだって何の考えもなしに、こんな無茶な真似はしねえよ。文献を調べていたら、『マスターカード』の封印方法が書いてあったんでな。とりあえず試してみたって訳さ」
 ダラダラと血を流しながら、マコトが荒々しい口調でニヤリと笑う。
 しかし、結界を張るのがやっとだったため、『法王』を封印するだけの力は残っていない。
「無茶をし過ぎだよ、まったく‥‥。でも、これで『法王』も身動きが取れなくなったね」
 信者達に当て身を食らわせながら、リャンがホッとした様子で溜息をつく。
 『法王』が結界の外から出られなくなった事で、こちらの方が有利な状況になったため、後は信者達を倒して『法王』を封印するだけである。
「どうやら『愚者』と『魔術師』はこの場に現れないようですね。おそらく『法王』のタロットカードが封印される事を知って用済みと判断したのでしょう」
 『運命の輪』の力を解放し、琢磨が『法王』の顔色を窺った。
 『法王』は信者達によって守られているが、明らかに動揺しているようだ。
「うぐぐぐぐっ‥‥。ば、馬鹿なっ! 『愚者』が裏切ったというのですか。そんなはずはありません! それじゃ、約束が違います!」
 青ざめた表情を浮かべながら、『法王』が結界の外に出ようとする。
 しかし、マコトの張った結界は強力で、『法王』の力だけでは抜け出せない。
「覚悟するですよ〜」
 光の粒子となって戻ってきたタロットカードを握り締め、ベルが『太陽』の力を解放して眩い光を放つ。
 そのため、信者達はまったく身動きが取れなくなり、『法王』のいる場所まで道が出来る。
「いまのうちに、早くっ!」
 信者達に当て身を放って気絶させ、リャンが仲間達を見つめて大声を上げた。
 それに合わせて琢磨が『運命の輪』の力を解放し、不意打ちを喰らわないように警戒する。
「封印の仕方を知っているのはマコトしかいません。早く、封印を! あなたなら出来ます!」
 意識を失いかけていたマコトを見つめ、エリーが真剣な表情を浮かべて叫ぶ。
「む、無茶を言うなよ。こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なのに‥‥。死んだら化けて出るからな」
 薄れ行く意識の中で封印の言葉を呟き、マコトが魂の抜けた表情を浮かべて気絶した。
「ば、馬鹿な! ぐおおおおおおお!」
 断末魔の叫びを上げながら、『法王』の身体がマコトに吸い込まれていく。
 それと同時に信者達の表情が和らぎ、驚いた様子で辺りをキョロキョロと見回している。
「どうやら『法王』の呪縛から解放されたようですね」
 そう言って琢磨がホッとした溜息をつくのであった。