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制作傾向

□一人称を書くことが増えました。三人称は時々。

□仕上がりは納期日
制作日数を多めに設定してはありますが、大概は締め切り近くまで書いたり校正しています。
希に速く上がることもありますが、『書きやすかった』『執筆時間が取りやすかった』『別の案件が詰まっていて馬車馬』のどれかであると思われます。

□寡作文章書き
依頼が一つ入ると他は自動的に閉じるように設定しています。
一度に受注して処理しきれない(作品の完成度が低下する)という事態を防ぐための措置です。少量なら同時受け可能な場合有。ご相談ください。

□ジャンルによる速度比較(目安)
単純に現代物を『1時間』で書き上げられるとすると、時代物(西洋・東洋ファンタジー)では『1時間30分』かかり、現代・時代問わずアクション系・ギャグ系は『3時間』というように必要な時間が増えていきます。

□文章から受ける印象の傾向
読みやすく、理解しやすい。
理論的で矛盾の無い展開。
隠喩・比喩を多用した情景・風景描写に必要最小限の台詞。
……以上がよく言われること。教科書に載ってる文章みたいだということだろうか(華がない?)

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解釈・展開の傾向

基本こんな感じで。

□指定より逸脱したものを執筆するつもりはないのですが、行動・思想設定が無い場合は、私が集めた情報(依頼者指定の設定・一般書物等から得られた情報)を元に解釈した性質で書かれる場合があります。

□ノベル内容で指定された文章は物語の基本にしていますが、演出によりその反映度は変化します(無視するという意味ではなく)

□「キャラクターを活躍させてなんぼ」だと思っているので、必要な場合はノベル内に指定が無くても、能力使用させる場合があります(とういうか、大抵使用します。笑)

※現在、意識しているのはこの程度。また気がついたら追加します。

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補足説明

□行頭一字下げは旧作品は入れてないです。
前は「頼んでくださった方が好きに読めるように」と下げなかったんでが現在は下げで統一。

□好きなもの(名前を上げたらきりがなかったので)
※私が書けるってことではなく! ← 言い訳くさい

予想のはるか上を行く驚きをくれ、しかし期待を裏切らない構成。
その対象物に使用するのは違っているのだけれど、納得してしまう言葉選び。
重みや暖かみ、五感に訴えかけるイメージを与える文章。
スピード感のあるカメラワーク。
新鮮で印象深いカット割りや演出。
他に類のない発想で造られた型や色。
自然界の形を科学的に分析し、転用した形。
病的に陰影のある退廃感。

※思いだしたら追加します。

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商品サンプル/ヘンカ

 私から笑顔を奪わないで。
 嫉妬に狂った顔は醜くて、これが鬼の形相なのだと鏡を見るたび気づかされてしまう自分や、ただの平凡な中学生である現実。それがこんなにも私を落ち着かなくさせている。
 最悪の中学校生活最後の年。
 菅野あゆみ、あなたがキライ。
 私がずっと欲しかったものを、三年生の終わりにかすめ取っていった人。
 あなたが同じクラスになってから、彼の表情が柔らかくなったことを誰かに聞いた?
 校則違反を見逃してくれたと嬉しそうにしゃべっていたけど、それが今までありえなかったことだって知ってるの?
 それは始め、私にしか気づかれないようなささやかな変化。そしていまはクラス全員が気づいている事実。

 表面上は無表情を崩さない彼だけど、ふともらす溜息がなによりそれを物語ってる。
 「あいつ…」なんて匿名で言ってみても、誰のことかはみんな知っている。
 彼のとまどうような表情が、あゆみに向けられている事に気づくたび、黒い炎の筋がこめかみを走るみたいに軽く痛んだ。
 コーヒーを飲み過ぎてしまったときのような痛み。芯の部分がむりやり覚醒される嫌な夜明けのよう。
 あゆみの女の子らしいちょっとしたしぐさを、彼は優しく見つめる。閉じ込めている思いのせいで、注がれる視線はいつもせつなそうにかげっているみたい。
 そんな中途半端にじれる日々の夕暮れ。
沈みかけのだいだい色が世界のすべてを染め変える時間に、校庭の端で聞いてしまった告白。
 家々の間にほとんど隠れてしまった夕日に背を向けているはずなのに、あゆみの顔がしだいにあかく染まっていくのが判った。
 お互いにのばしていた気持ちがつながって補い有った二人の絆。
そして私の思いはどこにも向かわず、ただ負け犬のような影を引きずるだけ。

 前は誰よりも不機嫌そうだった彼。
 いまは誰より幸せそうに笑う彼。
 桜の季節が近づくのに、それを笑って迎えるのね。
「…どうかしたのか」
 風で砂埃がまう校庭を、別の事を考えながらみている私に彼が言う。
 きっと残酷はこんな時に使う言葉。私の気持ちを少しも判らない彼がかけてくれた言葉に綺麗な白刃の輝きがだぶる。
 私のいらだちの原因も知らないで、本調子じゃないことだけは判るなんて。彼は本当に委員長の器。
 同意して受け流すのは簡単だけど、私はオンナだからあまのじゃくと相場が決まっている。
「…気のせいよ」
 ほら、熱もない。
 彼の手を取って自分の額に当てると、ひやりとした幸せの感覚がした。本能がその手を求めるようにすべての感覚が額に集中している。
 彼はしばらく思案するような顔をしていたが、そうかと一言告げるとゆっくりとその手を離していく。
 薄い幻のような感触が無くなったあとを、白い土埃混じりの風が撫でていった。
 私はあと何回、彼にこうして心配してもらえるのだろう。
 彼の背を見送りながらそっと額に触れてみたが、自分の体温が指先を暖めるだけで彼の感覚は少しも残っていなかった。
 こんな気持ちは冬の終わりと共に消える雪のように淡くて、春になって環境も顔ぶれも変わったら溶けて消えてしまうんだろうか。
 なにも無かったように平穏な日常が私を取り巻き。そして時々、今という過去を振り返って胸が痛くなったりするんだろうか。
 未来にある今は見えない幸せに思いをはせている私の周りを、白々とした感傷がまるで細かな塵のように舞っていた。

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商品サンプル/ホラーな日常

 二人きりの部屋の中。恋人同士ならもっとこう、なにか別の雰囲気があってもいいはずじゃないんだろうか。
 私はそう思いながら、視線を金切り声をはりあげる女の顔が大映しになっているテレビから、空間を共有しているもう一人の人間をに向ける。
 対角線上にいるその人物は、私に背中を向け。難解な画面を写し出すパソコンと、さっきから何時間も格闘している。
「たしかに、恋人未満かもしれないけど…」
 私がいるときくらい、パソコンなんてしなくったっていいのに。薄い背中に心の中で恨みごとをぶつけると、テレビに視線を戻す。
 造りものの溶けかかったゾンビが、叫び逃げまわる人間を襲いその体を解体していく。
 掴み、殴り、引き裂く、飛び散る血液。餌食になった人の断末間の叫び。ゾンビ達の獲物を探しのろのろと徘徊するぼろぼろの体。そんな映像があきもせず延々と繰り返されている。
 こんなもののどこが面白いんだろう。私はそんなことを考えながら、ため息をついて画面をOFFにした。
 でも、高志は、好きなんだよね。そう思うともう一つため息。
 見たくて見始めたビデオではない。部屋にあるのを適当に手にとって再生しただけのこと、ラストシーンまで見ていたいとは少しも思っていなかった。
 振り返りもしない高志の背中を見ながら、私は電話もなしに突然押しかけたのは、たしかにまずかったかもしれないと、数時間前のやりとりを思い出した。

 十何回目かのチャイムののち、インターホンに出た高志の第一声は「うるさい」だった。このままでは切られて、二度と答えてもくれないのを悟った私が、あわてて名乗るとかろうじてドアを開け家に入れてはくれた。
 しかし私が部屋に上がっても、訪ねてきた理由を聞くでも、さっきの応対のいいわけをするでもなく。まして突然の来訪を非難するでもなく、高志は今のような状態になっていた。
 きっと何時間も前からそうしていたのだろう、机の上には明らかに今日開けたばかりといった状態のコンビュータ関係の箱が放置されていた。
 相手をする気がなさそうのは状態を見て理解したが、せっかくの休日にこのまま帰るのもなんだか不毛な気がして、私は棚にあるビデオを見はじめた。
 もちろんそうしていれば、そのうち高志の用も終わるだろうし。一日中パソコンを動かしてはいないだろうと考えたからだった。
 しかし、私がビデオを何本か見終わり、似通った内容にさすがに飽きてきたころ。
 部屋にきた時は頭上で主張するように輝いていた太陽は傾き、オレンジ色の柔らかい光を放って窓から見えるビル群の間に半分くらい隠れている状態になっていたのだった。
 いくら予定外の訪問者で、相手をする気がないとしてもこのしうちはない。

「私より、楽しい?」
 少しの嫌みを込めて、返事の分かりきった質問を高志に投げかけた。
「うん。」
 予想通り後ろを振り向きもしないで、高志は答える。
 何かに集中している時の高志の反応。
 人一倍のめりこみやすい性格の高志は、いつも何かに熱中していて、人の話を聞いていないことが多い。
 でもそれはいつものことで、こんな応答に私も慣れているはずだった。
 だけど今日は、それがカンに障った。一応悪いと思ったからこそ邪魔もせずにおとなしくしていたのに。
 やり場の無い感情がわきあがる。
 いままで押さえていた嫌な感情が、底辺で醗酵し続け、ついに感情の表面に噴き出てきたような感覚。
 私が忘れていた感情を再確認させられるような不快な感じがして頭痛がした。
 今まで見ていた、好きでもないホラービデオのせいかもしれない。思考が陰惨な方に流れていく。
 こんなに好きだと言っているのに、それになんの答えもださない態度の高志と、それでも高志を嫌いになれない私。永遠の平行線のような不毛の関係。
 そんな状態に神経はもう耐えられないのだろうか。
 私は思考が混線し、ぐるぐる渦をまいていく感覚に襲われていた。頭痛はさらに強くなって吐き気までしてきた。
「見ないの?」
 私が部屋に来てから今まで、自分からは一言もしゃべらなかった高志が声を発した。
 その声で、揺らいでいた思考がもとに戻る。悪夢を見ていて突然起こされたように、首すじにじっとりとした汗をかいていた。その感覚が不安を呼び寄せるようで、私は乱暴に手でぬぐいとった。
 高志はパソコンに集中していたはずなのに、音がやむと気になるらしい。しかし私に向けられたのは声だけで、体はパソコンのモニターに向いたままだ。
「あ、ごめんね。」
 私は反射的に答えたが、態度が気持ちと正反対なのに気がついて、スイッチに伸ばした手を止めた。
 なにが「ごめん」なんだろう。ビデオを止めたことが?
 でも、見始めたのは私で、高志じゃないのに。なぜ謝ってしたがってしまうのだろうか。
 自問自答しながら、止めた手を伸ばしてスイッチを入れる。少し指先が震えた。
 画面にさっきの続きが映し出され、生産性のない行為の連続が展開していく。
 意味の無い悲鳴、叫び、血、切れ切れの早いカメラワーク。
 その無意味さが気分を写す鏡のようで、私は嫌な気分が戻ってくるのを感じた。
 前に雑誌で読んだ、愛しすぎて好きな人を殺してでも手に入れようとする気持ち。それが今なら分かる気がする。
 精神の留め金が外れた音を、私は聞いたような気がした。
 それは、やけに澄んだきれいな音だった。
「高志は私を信用してるんだね。」
「?」
 その言葉に、無関心をきめ背を向けたままだった高志が振り返る。
 何が言いたいのかと、度の強い眼鏡の奥の瞳が細められ、聞く。
「ううん、なんでもない。」
 笑顔で明るく否定して、私はテレビに視線を向けた。
 愛情に含まれている毒の部分に気付いてしまったから、高志には気付かれないほうがいい。もしもの時のために警戒されてはいけない。
 殺してでも手に入れたいと、万に一つでも思ってしまった時のためにも。
 そう考えると、いまの状況もなかなか楽しいかもしれない。
 私は薄く笑うと、嫌いなホラー映画を少し好きになれたような気がした。

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★新サンプル/卒業前のひとコマ

 空は薄氷のような色をしているけど風はそこまで冷たくもない。
 そんなどっち付かずの昼休み。僕は先輩と校舎の屋上にいた。

「え、家を出るんですか?」
「うん。きちんと専門の学校で勉強し直そうと思ってさ。探してみたら、行きたいところはみんな家から遠くてね」

 本当に楽しそうに話す先輩に僕の頭の中は軽く混乱した。
 確かに学園はこの春に閉校になることが決まっているが、先輩が遠くの学校に転校するなんて話は初めて聞いた気がする。

 常識的に考えて通っていた学校がなくなるんだから、将来を考えて適した学び舎に移るのは当り前のことだ。
 『でも』と思考がそれに異を唱える。

 将来の夢の話は先輩から良く聞いていたけど、まさかこの土地を離れるような事態になるだなんて思いもしなかった。
 口の中の卵焼きが途端に味を失う。

「それでね。いまは住むところを探してるんだよ」
「それは、大変ですね」

 住むところ。と言われて先輩がこの街から出ていくということがまた少し現実感を持った。

「いいところ見つかりました?」

 本当に言いたい事は他にあって、それが口からいまにも飛びだそうなのに、僕はなんでこんなことをしゃべってるんだろう。
 口と頭はセットじゃなくてそれぞれ別の意思で動いている機械のようだ。バラバラでちぐはぐ。

「それがなかなかね」

 軽く腕を組んで唇を尖らせる先輩のそこには、お約束のようにご飯粒がついていて、こんな時まで先輩は先輩なんだと僕はほっとするような切ないような不思議な気分になった。

「ついてますよ」

 僕はお約束のように指を伸ばしてそれを取り、当たり前のように口に運んだ。

「うん、ありがとう」

 緩く立てた生クリームのような笑顔が先輩の顔に広がるのを見て、もう二度とこんな距離でこの顔を見ることはできないのだろうかと、どこか絶望的な気分で僕はそれを眺めた。

『でもホント、ビックリしました』
『頑張ってください』
『それでいつ引っ越しする予定なんですか』
『お客さんで行きますね』

 ぐるぐると頭の中を言葉の鳥が回っている。
 どの言葉から口にすれば正解で、今の僕の気持ちを全部伝えられるんだろう。わからない。

「……あれ、もうこんな時間だ。早く食べないと午後の授業に遅れちゃうね」

 時計を見ながら何でもない事のように先輩がつぶやく。その言葉にはっとする。

 瞬間。

 ぐっと喉の奥から強い意志を持った言葉が出そうになって、僕は慌てて弁当箱の蓋を閉じた。

『行かないでください』

 頭のなかを巡るどんな言葉より重さと鋭さを持ったそれは、口から出してしまったらたぶん回避不能の一撃になるに違いない。

「どうかした?」

 動きが止まったままの僕に先輩の不思議そうな声が落ちてくる。

 顔を上げることができない。

 先輩の顔を、目を見てしまったら自分を押さえるなんてきっと無理になる。
 ぎゅっと極限まで細められて研がれた僕の感覚に、腕時計の秒針の音だけがカチコチと聴こえていた。

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