無人島占拠 〜トレランツ運送社〜

■シリーズシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:9 G 99 C

参加人数:10人

サポート参加人数:6人

冒険期間:01月27日〜02月06日

リプレイ公開日:2008年02月04日

●オープニング

 パリから北西、セーヌ川を下ってゆくと『ルーアン』がある。セーヌ川が繋ぐパリと港町ルアーブルの間に位置する大きな町だ。
 セーヌ川を使っての輸送により、商業が発展し、同時に工業の発達も目覚ましい。
 ルーアンに拠点を置く『トレランツ運送社』もそれらを担う中堅どころの海運会社である。新鮮な食料や加工品、貴重な品などを運ぶのが生業だ。


「お母さん!」
 ハーフエルフの少女リノ・トゥーノスは叫んだ。
 血で赤く染まる腹部を押さえながら倒れてゆくエルフの母親。自分の手を引っ張って逃げる人間の父親ガルセリア。
 近くにあった大きな布を母親が掴んで手繰り寄せたところまでをリノは目撃していた。その後の事はどうなったのか知らない。
 とにかく暗闇の中を逃げた。父親のガルセリアと一緒に。
 一生懸命に走っているのになかなか前に進まない。次第に父親と繋がれていた手も離れてしまう。
 ここでリノは夢から覚める。額に汗をかきながら肩で息をした。
 今いるのはトレランツ運送社の一室のベットの上。さっきまで見ていた夢は闇の組織オリソートフから逃げた時の事だ。事実と微妙に違う部分もあるが、大まかにはあっている。少なくとも母が倒れる前後の事は本当だ。
 冒険者が持ってきた血文字の布はあの時のものである。どういう経緯で海運業者の『マリシリ』の倉庫にあったのかは知らないがまず間違いないだろう。
 リノは母親が殺された場所がどこなのか、布に血で書かれた文章の意味はなんなのかをまだ誰にも話してはいない。
 ベットの上で上半身を起こし、考え込むリノであった。


「妙な噂があるんだよ。オリソートフの協力者についてはラルフ様に一旦任せておいて、海の調査をしてもらおうかね」
 トレランツ本社社長室にはいつものように女社長カルメンと男性秘書ゲドゥルの姿があった。
「といいますと?」
 ゲドゥル秘書は珍しく何も知らなかった。
「寄り合いの上部との会議で知ったんだが、何度か冒険者に頼んで調べてもらった無人島。あそこが海賊に占拠されているらしいのさ。まだ話しは広まっていないがねぇ」
「あの無人島ですか。確か、最初は島を出られなくなった海賊がいましたね。二度目はグラシュー海運がセイレーンを使い、島近くで船を難波させて物資を奪い取る海賊行為をしていました」
「近づくとセイレーンが難破させてたから今まで無人島だったのさ、あの島は。ところがだ。現在そのセイレーンを二人とも我が社が捕らえている。そこであの島に海賊が目をつけたらしい」
「シャラーノとの事も大事ですが、海賊が横行すると本業がおろそかになりますしね。‥‥カルメン社長、どうなさったんです?」
 ゲドゥル秘書はカルメン社長が目を閉じて俯いたのが気にかかった。
「本当に海賊なのかねぇ‥‥。いや、海賊とは思うが、シャラーノのグラシュー海運が関係しているってありそうで仕方がないんだがね」
「‥‥つくづくシャラーノとは因縁があるのですね。トレランツ運送社は」
「という訳で冒険者に頼もうか。いきなり『無人島に向かって海賊を倒して来てくれ!』というのもいいんだが悪い予感がする。飛んでもない規模の海賊が隠れているような感じがね。ここはセイレーンも連れてってもらおうか。何かの役に立つかも知れないし。アクセルとフランシスカにも行ってもらおう」
「わかりました。あくまで調査を主体とした依頼にしておきます」
 ゲドゥル秘書はカルメン社長の異図を汲んでパリでの依頼手配をするのであった。

●今回の参加者

 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea1743 エル・サーディミスト(29歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea2884 クレア・エルスハイマー(23歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb2277 レイムス・ドレイク(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb4840 十野間 修(21歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb7692 クァイ・エーフォメンス(30歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb7983 エメラルド・シルフィユ(27歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb9459 コルリス・フェネストラ(30歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec0317 カスミ・シュネーヴァルト(31歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

李 風龍(ea5808)/ マミ・キスリング(ea7468)/ レリーナ・ライト(ea8019)/ 十野間 空(eb2456)/ 玄間 北斗(eb2905)/ チサト・ミョウオウイン(eb3601

●リプレイ本文

●島へ
 一日目の朝、手伝ってくれた李風龍とマミが手を振る中、トレランツの帆船はパリを出航してルーアンを目指す。
 マーメイドの女性フランシスカ、人間の青年アクセル、セイレーンの姉妹エレンとエレナを乗せる必要があるからだ。
 ゼルス・ウィンディ(ea1661)はロック鳥のヴィンセントの背中に乗り、大空を飛び立つ。セーヌ川を沿って飛び、スモールシェルドラゴンのバルドスも同行させて目指すは一足先にルーアンであった。
 ルーアンに到着したゼルスはトレランツ本社でリノと面会する。
「これはトレランツとは関係なく、私個人と貴女との商談として聞いて下さい。リノさん、誰にも知られないよう、私に協力して欲しいことはありませんか?」
「えっと、ありません」
 リノはこれ以上ない程の簡潔に答える。眉一つ動かさずに。
「わたしにも悩みはあります。父と母の仇も討ちたいとも思っています。ですけどまずは自分の命を守らないと。状況を見極めない限り行動は控えたいと考えていますので、せっかくのお申し出ですがお断りさせて頂きます」
 リノは見かけとは違い、どこか達観している。ゼルスは言葉を変えてなるべく穏和に話すがリノの心の扉は開かなかった。
 もしも調べたいことがあるのならいつでもといってゼルスは会話を終わらせる。
 二日目の昼頃、帆船はルーアンに入港して同行者達を乗船させた。もう一隻の帆船も加えてすぐに出航する。
 夕方にはセーヌの河口を通過し、そこから先は海であった。ゼルスは先行するつもりだったが、初めて無人島に向かうので今回は直前まで帆船に乗ってゆく。ペットの二匹は帆船を追いかけているはずだ。
 十野間修(eb4840)が仲間と共に作製してくれた地図だけでは無理であった。

「海を見せられるようにするなんて、暢気な状況じゃなくなっちゃったんだ。エレンたちのいた島が、海賊に占拠されちゃったんだって」
 エル・サーディミスト(ea1743)は船室でエレンと一緒にいた。エメラルド・シルフィユ(eb7983)と十野間修はドアの近くでエルとエレンの様子を窺う。
 セイレーン姉妹は別室にされている。残念ながらエレナはまだ敵意を剥きだしなので猿ぐつわをはめたままだ。エレンはエルが付きっきりでいるというので室内では解放されていた。
「ごめん、大事な島だよね?」
「大切といったら、そうかも知れないが‥‥、いや、確かに振り返ってみれば大切な島だった。憎しみしか残っていないと思っていたがそれだけではなかったような‥‥」
 エルとエレンの会話は続く。エメラルドは黙って聞き続ける。
(「普通に話しをしているようだな‥‥。もう一人の方は‥‥」)
 エメラルドはエルとエレンの様子に安心しながら、リノの事を考える。ゼルスから聞いた限り、かなり頑ななようだ。エメラルドもリノと話したかったが今回は時間がなかった。
「島を取り戻す為にも特別な侵入方法があれば教えてくれないだろうか?」
 エルの話しが一段落すると十野間修が話しかける。エレンは悩んだ末、海中からの侵入方法を教えてくれる。しかしそれ以上は話そうとしなかった。
「あの、よろしいですか?」
 部屋を訪れたのはカスミ・シュネーヴァルト(ec0317)である。エレンと話そうとやって来たのだ。エルに招き入れられて紹介される。
「ボクだけじゃなくてさ。みんなエレンのこと心配しているんだよ。それはわかってね」
 エルはエレンに強く抱きつくのだった。

「いい子にしていてね」
 コルリス・フェネストラ(eb9459)は船底の貨物室でグリフォンのティシュトリヤを世話していた。アガリ船長の許可はとってある。
 帆船が二隻あるので冒険者達は二班に分かれて行動するのが決まっていた。コルリスは不審船対応する班であった。
「あらコルリスさんもお世話ですのね」
 クレア・エルスハイマー(ea2884)はペガサスのフォルセティに近づく。冒険者達のペットのほとんどは貨物室に預けられてある。
 どのペットも主人に言い聞かされて静かに出番を待っていた。

「さすがにまだ見えませんね」
 クァイ・エーフォメンス(eb7692)はマスト上の見張り台に登り、海の様子を眺めていた。暗くはなっていたが空はまだ赤い。
 帆船には小舟が用意されている。これを使って島を遠くから調べるつもりである。
 ダウジングペンジュラムを地図に垂らして調べた所、あまり芳しい反応はなかった。ここは直接調べるしかないようである。
 島に到着するまでは他の海賊などを注意しようと考えるクァイであった。

「はーい。おまちどーさまです〜」
 井伊貴政(ea8384)は食堂でマカナイをしていた。作ったばかりの料理をレイムス・ドレイク(eb2277)のテーブルへと運ぶ。
「無人島には、何が有るか、気が抜けないな」
「そーですね。おたがい不審船を狙いますけど、どーなっているのか気になりますね」
 マカナイも一段落したので井伊貴政はレイムスと同じテーブルについて簡単な食事をとり始める。
「不審船のことですが、一先ず、『付近に海賊が潜んでいるから引き返せ』と忠告する形で近づき、相手の反応を見るのはどーでしょーね?」
「海賊旗をあげていない船も注意すべきだな。それでいいと思う。イーグルドラゴンには周囲を警戒させよう」
 食事をしながらの会話は弾む。
「そーだ。魚料理をあのお二人に運ばないと〜」
 食事が終わると井伊貴政は急いで使い終わった食器を厨房へ運んだ。あの二人とはセイレーン姉妹のことである。井伊貴政もかなりセイレーン姉妹の事を気にしていた。
「何か情報があったら私にも知らせてください」
「りょーかいです〜」
 井伊貴政は器用に魚料理が盛りつけられたたくさんの皿を腕に載せると、食堂を飛びだしてゆくのだった。

●作戦開始
 四日目の朝、二隻の帆船は別行動をとる。
 潜入組を乗せた帆船は夜を待って島までかなりの位置まで近づく予定だ。海中を移動する冒険者はその限りではなく、早めに作戦を開始した。
 不審船対応組は島より離れた場所を移動しながら監視を行う。無人島といわれていただけあって通常の航路から外れた海域にあった。

 フランシスカが波間から顔を出して振り返る。そしてケルピーのフォルティウスに乗り、手綱を持つエメラルドを呼び寄せた。十野間修はエメラルドの肩に掴まり、水中での移動を補助してもらっている。
 島に近づくと、人間の二人は大きく息を吸い込んでから潜る。エレンに教えてもらった海中洞窟を抜ける為である。
 溺れる寸前で洞窟内の空気のある場所に辿り着くが、人間の二人は寒さで身体の震えが止まらない。焚き火をすれば発見されてしまう。フランシスカが集めてくれた枯れ草の中に十野間修とエメラルドは入り込んだ。服は日光が射し込む場所に干しておく。
 活動の夜までにはまだ時間があった。

 夜になり、クァイは小舟で島に近づこうとする。
 十野間修の天候操作で空は曇っていた。
 周囲を全部見たわけではないが、とても小舟で上陸出来そうな場所はない。クァイは仕方なく入江に向かうがすぐに引き返した。
(「あんなになんて想像していなかったわ‥‥」)
 クァイが入江近くで視たのはたくさんの海賊船。一隻や二隻ではなく、ざっと数えても二十隻はあった。
 急いで戻り、仲間に知らせようとするクァイであった。

 真夜中に空から島に突入したのはクレアとゼルスである。
 ゼルスのブレスセンサーで人気のない場所を探しだして無事に島へ着陸する。ヴィンセントは巨大なので一所に隠れてもらい、さっそく行動を開始した。
 エメラルド、十野間修、フランシスカとも合流し、得た情報を交換する。三人によれば無人島とは名ばかりでたくさんの者達が住んでいるようだ。風体、言動、行動からいっても海賊に間違いなかった。
 少ない人数なら叩くことも考えられるが、ゆうに百人は越えそうだ。それ以上も考えられる。いくらなんでも五人で相手に出来る人数ではなかった。
「この数は尋常ではないですね」
 クレアはペガサスを撫でてあげながら遠くに見える灯りを見つめる。海賊達の野営地と思われた。
「これ程の数ですと、話しだけだと信じてもらえないかも知れません。証拠が欲しいですね」
 ゼルスは仲間の顔を順に眺める。
「どこか手薄な野営地を襲い、資料を手に入れましょう」
 十野間修は仲間に同意を求める。
「賛成だ。その前に出来る限り敵戦力の把握に努めよう」
 エメラルドは愛剣を確かめた。ケルピーも馬として連れてゆくつもりである。
「わたしは水中洞窟に繋がる穴付近で待機しているね。集合場所にしようよ。そうそう‥‥」
 フランシスカは四人に保存食を渡す。アクセルが余分に持たせてくれたそうである。
 五人は島に留まって調査する事を決めるのだった。

「あの島は現在海賊共の巣になっています。引き返してください!」
 真夜中、コルリスはランタンを灯しながらグリフォンのティシュトリヤに跨って不審船に近づく。海賊旗を掲げていなかったので、井伊貴政の案にそって警告をしたのである。
 矢が放たれたのでコルリスは不審船を海賊船と断定した。もらったたいまつに火を点けて敵船に放り込み、仲間の帆船へと急いで戻る。一人で帆船一隻を相手にするには止めたほうがいいとアガリ船長にいわれたのだ。
 帆船は進路を変えて敵船へ急行する。
「これは、戦う気、じゅーぶんですね」
 井伊貴政は樽に隠れながら太刀を抜いた。海賊船からの矢が次々と甲板に突き刺さる。
 甲板に降りたコルリスは弓矢で応戦した。備品の矢は山のようにあるので残りを気にせずに放ち続ける。船乗りの何人かも弓を手に加勢してくれた。
「これで動けなくなるはずです」
 カスミは射程に入るとウインドスラッシュを放つ。敵船の帆がロープと共に切り裂かれてマストに垂れ下がる。
「他にも敵船がいないか頼んだ」
 剣を抜きながらレイムスが命じるとイーグルドラゴンが夜空を飛んでゆく。そのすぐ後に帆船は大きく揺れた。海賊船に横付けしたのである。
 井伊貴政とレイムスが海賊船に渡ると味方帆船は離れた。コルリスとカスミによる遠隔攻撃の支援を受けて二人は剣を思う存分に振るう。
 セイレーン姉妹をアクセルに任せてエルも甲板に現れる。
「島を取り戻すんだから!」
 エルはグラビティーキャノンを放ち、井伊貴政とレイムスを狙う海賊達を転倒させてゆく。
 井伊貴政とレイムスは背中を合わせて海賊共を甲板にへばりつかせる。海に落ちた海賊は大きな音と共に水飛沫をあげる。
 ある程度勝負が決したところでコルリスは再びグリフォンに乗り、海賊船へと向かった。オーラショットを放ち、海賊船の横腹に穴を空けて侵入する。
 海賊船内には人は少なく、比較的簡単にコルリスは書類を手に入れる。脱出した頃、海賊船は終わりの時を迎えようとしていた。
 冒険者達は味方帆船に戻り、次の不審船に備えた。小舟のクァイが戻り、報告すると全員が顔を見合わせて驚く。
 それからクァイを加えてた不審船対応組の冒険者達は、二日の間に海賊船を二隻沈めるのだった。

 島に潜入した者達は六日目の夜、集まって情報をつき合わせる。
 大まかであるが海賊の総数は二百名弱。それに見合った海賊船が入江にはあるはずである。武器、食料も潤沢にありそうだ。
 島にいる五人は行動は一つの野営地を狙い、闇に紛れて動く。
「そろそろ始めようか」
 ゼルスは海上に浮かぶスモールシェルドラゴンに乗って入江にいた。
 ロック鳥には上空から撹乱してもらう。
 ゼルスはトルネードやウインドスラッシュを放つ。
 残念ながら二十隻の海賊船を相手にする力はない。ゼルスの目的は撹乱であった。切りのいいところで退散するつもりである。
 その頃、クレアは島の中央部分にある野営地に向かってファイヤーボムを放った。仲間が侵入しやすいように陽動である。
「そろそろ魔力も切れるわ。後は仲間に任せて行きましょうか」
 クレアはペガサスに跨り、海賊達に囲まれる前に飛び立った。なるべく目立つように、引きつけるように速度を調整しながら。
 十野間修とエメラルドは人が少なくなった海賊共の野営地に忍び込んだ。
 残っていた海賊を十野間修がシャドウバインディングで動きを止め、エメラルドが斬り伏せる。なるべく発見されないようにしていたが完全には無理だ。
「これはどうだ?」
 エメラルドは小さめの海賊旗を発見した。書類だと濡れて読めなくなるので、濡れても比較的平気な物を二人は捜していたのだ。
 海賊旗には血で署名が書かれてあった。どうやら海賊の同盟を示したもののようだ。
「できればオリソートフに関連する物もあればいいのですが」
 十野間修も一緒になって捜すものの、その他によさそうな物はなかった。
 二人は海賊の野営地を脱出し、海底洞窟に繋がる穴へと戻る。フランシスカと合流して島を脱出した。
 海賊旗はなるべく濡れないように持ってきた獣皮でくるんでフランシスカに預ける。三人は海底洞窟にある海面に飛び込む。
 島から脱出すると、スモールシェルドラゴンに乗ったゼルスが待っていてくれた。十野間修とフランシスカは乗せてもらう。
 エメラルドはケルピーに乗ったまま、一緒に帆船へと戻るのだった。

●ルーアン、そしてパリ
 二隻の帆船は合流して帰路につく。
 九日目の朝にはルーアンへと戻り、カルメン社長とゲドゥル秘書に報告を行った。書類と海賊旗、そして調査結果を聞いて二人は驚きの表情を浮かべる。
 書類には結集した海賊集団でどこかの町を襲撃する予定が書かれてあった。もしかするとルーアンかも知れず、そうでないかも知れない。どこが襲われるとしても大事ではある。
 海賊旗にはよく知られた海賊の名前も書かれてあった。まず間違いなく本物であろう。
「ありがとうね。ゲドゥル、すぐに城に向かうよ!」
 カルメン社長は冒険者達に感謝すると、大急ぎで出かける用意を始めた。ゲドゥル秘書は追加の謝礼金を渡すとカルメン社長の後を追う。
 ルーアンのトレランツ本社には十野間空、玄間、チサトから共同で手紙が届いていた。その内容によれば、最近海賊の動きが大人しいことが書かれてあった。
 セイレーン姉妹とアクセル、フランシスカをルーアンで降ろし、冒険者達を再び乗せて帆船はパリに向かう。
 帰りの帆船の中、冒険者達は海賊共がどこを襲うつもりなのか、気になって仕方がなかった。