幽霊船再び 〜トレランツ運送社〜

■シリーズシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:14 G 89 C

参加人数:10人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月12日〜06月24日

リプレイ公開日:2008年06月21日

●オープニング

 パリから北西、セーヌ川を下ってゆくと『ルーアン』がある。セーヌ川が繋ぐパリと港町ルアーブルの間に位置する大きな町だ。
 セーヌ川を使っての輸送により、商業が発展し、同時に工業の発達も目覚ましい。
 ルーアンに拠点を置く『トレランツ運送社』もそれらを担う中堅どころの海運会社である。新鮮な食料や加工品、貴重な品などを運ぶのが生業だ。



「幽霊船? むかーし我が社も対抗した事があるねぇ。冒険者に頼んでさ。冒険者とのつき合いが始まったばかりの頃だったね」
 ルーアンのトレランツ本社社長室。女社長カルメンは男性秘書ゲドゥルからの報告を受けていた。
「はい。同業者同士でノルマを決めて、現れた海賊船を退治しました。あれ以来、少なくともルーアンの同業者のなかで幽霊船の被害を受けた会社はなかったはずです。ですが、つい先日、前の規模を越えた被害が報告されました」
 ゲドゥル秘書は資料を読む。
「こっちはオリソートフとの戦いが続いているというのに‥‥。本業を邪魔をする幽霊船の出現かい」
「興味深い報告として、目撃された一隻はマリシリ帆船の特徴があったようです。ヴェルナー領を混乱に導いた罪として一気に取り潰された海運業者マリシリですが、一部所属帆船はルーアンから離れた海上にありました。ルーアンに戻ることも出来ず、どうするのかと船乗り連中の間では噂になっていましたが、まさか幽霊船になっている‥‥、いえ、まだ未確認情報でして断言は出来ませんが」
「北海の周辺が焦臭くなっていると、ラルフ様からも聞いているよ。‥‥ドーバー海峡も近いしね。何か大きな影を感じるよ」
「結社オリソートフでしょうか? それとも隣領のフレデリック領の差し金で?」
「違う空気を感じるね」
 カルメン社長はゲドゥル秘書を前に考え込む。
「別に我が社は傭兵を生業としている訳じゃない。ラルフ様の要請でそれらしい事をしてはいるがね。‥‥ここはラルフ様に売っておいた恩をすこ〜しだけ返してもらおうかね」
「といいますと?」
「今回の幽霊船退治の一切合切の費用をラルフ様に負担してもらおうじゃないか。かなり本格的にやらないと駄目そうだからね」
 カルメン社長はヴェルナー城に出向くことを決めた。ゲドゥル秘書には冒険者ギルドへの依頼の手配を任せる。
「もしマリシリの帆船が本当に幽霊船になっていたら‥‥船乗り達には気の毒に感じるよ。悪い事はしてきたかも知れないが、全員がそこまでの罪とは思えない。なんとか、苦しみから解放してやりたいね」
「そうですね。早くに安らかに眠らせてあげたいものです」
 カルメン社長とゲドゥル秘書は窓から沈みゆく夕日を眺めて呟いた。

●今回の参加者

 ea1743 エル・サーディミスト(29歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea2884 クレア・エルスハイマー(23歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1964 護堂 熊夫(50歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)
 eb2277 レイムス・ドレイク(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb2456 十野間 空(36歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb4840 十野間 修(21歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb7983 エメラルド・シルフィユ(27歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb9459 コルリス・フェネストラ(30歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec0669 国乃木 めい(62歳・♀・僧侶・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

麗 蒼月(ea1137)/ イフェリア・アイランズ(ea2890

●リプレイ本文

●冒険者
「幽霊船ですかー。実際はどんなのかな〜?」
 場所は帆船リュンヌ号。調理を終えた井伊貴政(ea8384)は仲間と一緒に食事のテーブルを囲んでいた。
 冒険者達は二隻の帆船に分かれてセーヌ川を下っている。二日目の夕方、セーヌ河口を通り過ぎる頃であった。
「いろいろとアイテムを船員の人達に貸しておいたよ☆」
 エル・サーディミスト(ea1743)は食事を終えてフェアリーを膝に乗せてくつろいでいた。
(「ボクたちのこと護ってね‥‥」)
 エルは胸元に忍ばせたお守り代わりの船乗りの針に手を当てる。
「マリシリの幽霊船とは本当だろうか。船乗り達が噂をしていたのを耳にしたよ」
 エメラルド・シルフィユ(eb7983)は魚のソテーをフォークで突き刺すと口に運んで頬張った。目を丸くしたエメラルドは『うまい』を連発する。井伊貴政は頭に手をあてて照れていた。
「可能性は高そうです。それと太陽に訊いたところによれば、遠くであるにしろ幽霊船は存在しています」
 十野間修(eb4840)はサンワードで知った事を仲間に伝える。ついでに聖なる釘が甲板で効果あるかどうかも日中に試した。残念ながら手応えは感じられず、発動したようには思えなかった。
「もうすぐ海です。偵察を怠らぬようにしませんと」
 コルリス・フェネストラ(eb9459)はグリフォン・ティシュトリヤをリュンヌ号に乗せていた。船長の許可も得てあり、海上に出るこれからが活躍の本番である。
 今夜から警戒を密にすべく、リュンヌ班は気を引き締めるのであった。

 一方のソレイユ号では甲板に冒険者達が集まる。
「穏やかな海で、問題はありませんでした」
 ペガサス・フォルセティで巡回してきたクレア・エルスハイマー(ea2884)が報告する。ソレイユ号はリュンヌ号に比べて少しだけ先行していた。
「本当にマリシリの帆船が幽霊船になっていたら悲しい事だ‥‥。それにしても北海周辺も危険なようだし。海が荒れる十五日の夜は明後日‥‥」
 レイムス・ドレイク(eb2277)は幽霊船のみが敵ではないと感じていた。
「ブルーマンと、ゴーストシップ。どちらも実体のあるアンデッドですが、通常の武器では傷つけられない敵。厄介ですわね」
 国乃木めい(ec0669)は想定出来る敵について仲間に話してある。デビルについては想像がつかなかった。
「その他にもいるとしてもまずはこちらの対処が急務ですね。デビルについては、特別な能力があった場合は厄介ですが」
 十野間空(eb2456)は想定できる敵について考えを巡らす。
「カルメン社長のことですので、連絡を送ってくれたはずです」
 護堂熊夫(eb1964)はテレスコープで海岸線を眺めていた。海岸線には大小の町や集落が点在している。
 船長がシフール便を送るようなので護堂熊夫は一文追加させてもらった。海岸線の人々への連絡をお願いしたいと。
 津波の被害が毎月15日前後に必ず起こっている。海辺に住む人達ならすでに知っている事と思うが、護堂熊夫は気が気ではなかった。
 護堂熊夫は後に知るが、主要な町への注意文書を送ってもらえるよう社長はラルフに掛け合ってくれていた。
「修さんから借りたレミエラ付きフェイスガード、とても助かります」
「それはよかった」
 十野間空は護堂熊夫に笑顔で返事をする。
「海に出たこれからが本番といってよいはずです。残り十日間ですが、帰りを考えれば捜索に使えるのは七日間程度です。がんばりましょう」
 十野間空のかけ声にソレイユ班の仲間達は呼応するのだった。

●津波
 四日目深夜。日付は十五日から十六日になろうとした時間帯。
 見張り以外は就寝する時間であったが、この時ばかりは全員が起きていた。
 雨が降りだして海面は激しい波で荒れ続ける。天候操作をしても、わずかに雨足が弱まった程度だ。
 津波を恐れて二隻は沖合にあった。帆を畳んで碇を下ろし、雨風晒されながらもいつもより多めの見張りを配置する。
 冒険者達も交代で見張りを行っていた。津波は間接的な被害だと見込んでいたからだ。ここまで定期的になると、自然災害ではあり得ない。何者かの手が介在しているのは明白である。
「デビルですか‥‥」
 揺れる甲板で雨に濡れながらレイムスは呟く。デビルと一言でいっても様々である。
「とてもいいにくいのですが――」
 海岸線の調査をしたクレアはソレイユ班の仲間に報告をする。酷いところではかなりの内陸まで津波が到達していた。
 津波の被害は襲う時より、引いてゆく時の方が激しい。すべてのものを海に引きずり込もうとするのが津波の恐ろしさだ。
 似た報告をリュンヌ班ではコルリスが行っていた。誰もが無口になる。
 ルーアンに戻ってから知る事だが人的被害は少なかった。予想がされていたのと通達があったおかげである。
「何か見えたような見えなかったような‥‥」
 テレスコープで遠くを監視していた護堂熊夫は、島のようなものを目撃する。ただ船乗り来ていても、その方角には島はないと答えられてしまう。再確認してみると何もなかった。
 荒れた天気の中、幽霊船の警戒を冒険者達は続けた。
 次第に夜空は晴れて、海は穏やかになる。太陽が昇る頃には快晴になっていた。

●幽霊船
 帆船二隻は互いが確認できる程度の距離を保ちながら、ドーバー海峡周辺と北海を航行する。
 何度も帆船とすれ違うが、どれも普通のものであった。
 コルリス、クレアが空から海面を眺めてもキラキラと輝くのみである。
 エルは船縁に身体を預けて海を眺める。
 井伊貴政はまかないをしながらも、必ず近くに武器を置いていた。
 エメラルドとレイムスは、それぞれの船長と相談を行う。
 十野間空と十野間修はテレパシーや合図を使って互いの情報をやり取りする。
 国乃木は船長室にあった本を読みあさった。海のモンスターについて書かれた本があったからだ。
 護堂熊夫はマスト上で周囲を見張る。
 緊張と怠惰が入り混じった時間が続くのだった。

 十日目の朝が訪れようとした時、鐘が二隻の帆船で鳴らされる。
 船乗りと冒険者達は船内の狭いベットから飛び起きるとすぐさま甲板に向かった。
 空は暗く、雨粒が甲板を叩く。日の出の時刻なのに天候のせいで薄暗かった。
 魔法やアイテムなどで防御がはかられる。
 前衛は武器を手にし、後衛はいつでも魔法が唱えられるように準備を整える。
 ソレイユ号とリュンヌ号は近すぎず、遠からずの位置を確保する。やがて誰の目にも敵が映った。
「ゴーストシップ」
 ソレイユ号に乗る国乃木が呟く。今にも壊れそうな帆船が近づこうとしていた。
「何か乗っています。ズゥンビやスカルウォーリアもいますが、それ以外にも‥‥」
 テレスコープを使って護堂熊夫が特徴をあげると、国乃木はブルーマンではないかと答えた。ズゥンビによく似ていたが、船乗りの恰好をして空中を漂える。
 十野間空のテレパシーによって十野間修経由でリュンヌ班号にも情報が伝わる。
「一体、妙なのがいます! 海賊の船長のような恰好ですけど、ズゥンビみたいで、でも貝や海藻がまとわりついていて‥‥。重なってわかりませんでしたが、こちらと同じく幽霊船は二隻です!」
 護堂熊夫は敵の親玉らしき存在を見つけて仲間に知らせた。ブルーマンが幽霊船を離れてソレイユ号に向かって飛んでくるのも確認する。
「これより現在接近中の幽霊船をAとする! 後方をBとし、ソレイユ号はAとの交戦を開始する!」
 ソレイユ班のレイムスの考えはテレパシーでリュンヌ号にも伝えられた。
「任されましたわ!」
 自分や仲間に魔法を付与したクレアは、空を飛ぶのを取り止めると船首に移動した。残念ながら現状では遺品を回収する余裕はなさそうである。
 クレアは状況を把握し、最大級のファイヤーボムをゴーストシップAに叩き込んだ。
 暗い雨空の中、真っ赤に球状の輝きが現れる。かなりの被害は与えるが、ゴーストシップAもアンデッド共もまだ健在であった。
 一体、また一体と攻撃を逃れたブルーマンがソレイユ号にまとわりつく。不気味な声で口々にひしゃくを要求し始める。
「護衛を頼ましたよ。希望」
 十野間空はフロストウルフ・希望に自らの守りを任せる。シャドゥボムを唱え、漂うブルーマンが巻き込まれるように爆発させた。影を濃くする為に甲板にはかがり火が容易されていた。
 ブルーマン共は苛立って人々を襲い始める。
「大丈夫よ」
 国乃木は仲間に魔法付与を行うと、傷ついた船乗り達の治療を行う。船内に入られないように船乗り達も戦っていたが、ブルーマンは痛みを感じず、なおかつ通常の武器では倒せなかった。
「ここには入れさせません!」
 船内に侵入するブルーマンを見つけると、国乃木はコアギュレイトで足止めを行う。仲間が来るまでの時間稼ぎにはなる。ソレイユ号の情報の中心となる十野間空に緊急を伝えるとレイムスがやってきた。
「こんなところにまで」
 レイムスはオーラパワーを付与し、聖剣を振う。ブルーマンの身体は武器耐性があるものの、見合った武器ならば切り裂くのは容易であった。唯一、数が多いのが問題である。
 目前のブルーマン共を倒すと、レイムスは甲板に飛びだした。
(「なんとかなりそうだけど、幽霊船の方は‥‥」)
 護堂熊夫はアンデッドスレイヤーの槍を手に、ブルーマンと船首近くの甲板の上で戦っていた。十野間空が弱らせてくれたブルーマンの止めを刺してゆく。
 魔法詠唱するクレアの側にはペガサスが寄り添い、ホーリーフィールドで主人を守っている。
 護堂熊夫もクレアを守ろうとブルーマンを倒し続けた。スクロールの攻撃に大した効果はなく、アンデッドスレイヤーでの攻撃に集中する護堂熊夫であった。
 ゴーストシップAがソレイユ号に接近する前にクレアによって轟沈される。その為には魔力回復の実や護衛などの仲間の応援もあった。
 ソレイユ班が戦っていた時、リュンヌ班もまたゴーストシップBと対峙していた。

 ゴーストシップBが急接近し、リュンヌ号は避けようとしたが衝突される。それでも被害を最小限に食い止める為に、船の一番頑丈な部分を盾とする。
 大きな船にも関わらず、ゴーストシップBはとても速かった。リュンヌ号では太刀打ち出来ない程に。
「突然海が持ち上がるなんて!」
 甲板にいたエルは、突然滝のような段差が出来上がったのを目の当たりにする。
「違います。下がったのはリュンヌ号の方です!」
 グリフォンに跨って空を飛ぶコルリスは叫んだ。海が持ち上がったように見えたのは錯覚であった。
 ゴーストシップBを指揮する海賊船長の化け物が使った魔法マジカルエブタイドだ。水壁のせいで、リュンヌ号は身動きできなくなる。
 空中からブルーマン共が飛来する。高い位置にあるゴーストシップBからスカルウォーリアーが飛び降りてきた。かなり遅れてズゥンビもリュンヌ号の甲板に落ちてくる。
 井伊貴政は太刀を振るいながら状況を把握した。敵の戦力自体は大したことはない。問題は帆船の逃げ場がまったくない事である。
「どう思う。この状況」
 戦いながらエメラルドが井伊貴政に背中を合わせて訊ねる。エメラルドの剣から大聖水が垂れ落ちた。
「まずいと思いますねー。負ける気はしませんけど、船を守る方法がありませんので」
 井伊貴政の答えにエメラルドが同意する。
「あれはアンデッド?」
 コルリスはグリフォンの背中で弓を構えて矢を放つ。狙うはゴーストシップBに乗る海賊船長の化け物だ。
 高笑いをすると船長の化け物は空中のコルリスを指さす。そして剣を抜くと海の上を歩いてリュンヌ号の甲板へと飛び乗った。
「我こそはフライングダッチマンのダッケホー船長。お嬢さん、一緒に踊りませんか?」
「!」
 目の前へと突然現れて挨拶をする船長の化け物に、エルは持っていたヘルメスの杖を振り回した。
「堂々としすぎぃ!」
 エルが叫ぶとダッケホー船長は高笑いをする。エルは七徳の桜花弁をばらまく。花弁が触れるとダッケホー船長は悲鳴をあげた。
「影爆!」
 十野間修が駆けつけてシャドゥボムを放つ。見事当たるが、ダッケホー船長は身軽な振る舞いで逃げてゆく。
「貴様! アンデッドなのか!」
 エメラルドはダッケホー船長を見つけて斬りかかる。
「なんと! ここにも美しいお嬢さんが。旅客船ではないのに、なんということだ」
 エメラルドと剣を交えるダッケホー船長であったが、勝ち目がないのがわかるとブルーマンを集めて襲いかからせる。
「アンデッドはこいつら。わたしはデビルですよ。お嬢さん」
 ブルーマンに対処するエメラルドに向かってダッケホー船長がお喋りを続けた。
「真剣にしてもらわないと。ふざけすぎですよー」
 ブルーマンをかなり減らした後、井伊貴政もダッケホー船長を狙う。井伊貴政の剣術もまたダッケホー船長をかなり上回っていた。
「こんなにお強い方が多いとは。これは作戦を間違えましたかね」
 ダッケホー船長はおどけながらも足の速さを利用して、井伊貴政とエメラルドから逃げまくった。
「あら?」
 ダッケホー船長がゴーストシップBがやられている事に気がつく。エルがマストを登り、見張り台の上からグラビティーキャノンを放っていた。
「ローリンググラビティーじゃ届かないしっ!」
 エルは魔力の限り使い続ける。プラズマフォックス・グレーシャもライトニングサンダーボルトで加勢してくれた。
 先に戦い終わったソレイユ号も駆けつけてくれる。国乃木のニュートラルマジックによってマジカルエブタイドは解除された。すぐに低下していた海面の高さは同じになる。
 ゴーストシップBの壊れ具合にため息をついたダッケホー船長は海に飛び込んだ。そのまま姿を消してしまう。
 ブルーマン、ズゥンビ、スカルウォーリアが退治され、ゴーストシップBも魔法攻撃によって沈められる。
 アンデッドになったしまった船乗りを思い国乃木は祈った。仲間も続いた。
「やっぱ、こっちの方が性に合ってるよ」
 エルは特に酷い怪我の者達をテスラの宝玉を使って治療を行う。リカバーが使える者も手分けして負傷者を治してゆく。
 昇天を祈る意味も込めて帰りの船上では酒の席が用意されるのであった。

●そして
 十日目の夕方、冒険者達はルーアンへ到着した。
 冒険者達は目的の幽霊船退治が完了した事をカルメン社長に報告する。フライングダッチマンのダッケホー船長の存在についてはラルフ領主に伝えるそうだ。
 薬代としての追加報奨金と、ラルフ領主から預かったレミエラが手渡された。
 十一日目の昼頃、冒険者達は帆船に乗り込み、パリへの帰路につくのだった。