見下ろす眼 〜ノワール〜

■シリーズシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:18 G 46 C

参加人数:10人

サポート参加人数:2人

冒険期間:07月19日〜07月31日

リプレイ公開日:2008年07月26日

●オープニング

 暗がりの古城広間で、デビル・アガリアレプトは苦悩する。
 去年の今頃、多勢を引き連れてパリに侵攻したのが懐かしく感じられた。
 一任されていたノルマン王国について、今では別のデビルが立案した様々な計画がなされている。任を解かれてはいないが、上部からの信用をかなり失ったのは確かであった。
 アガリアレプトの計画はヴェルナー領に限って行われている訳ではないが、ラルフ・ヴェルナーが邪魔なのは確かだ。
「あのラルフ殿を堕落させ、魂を捧げさせたのなら‥‥、それはかなりの功績となろう。かつて長い時間をかけてデュール・クラミルをデビノマニにしたように‥‥」
 最近のアガリアレプトはラルフとエフォールの心を折る事こそ、デビルの本懐と考えていた。凡百の魂を奪うより、ノルマン王国に与える衝撃は大きいはずである。
「それにはまず、自らが無力だと思い知らさねばならないのだが‥‥」
 ヴェルナー領を中心に攻撃を行ってきたアガリアレプトであったが、なかなかうまくはいっていなかった。
 テギュリア・ボールトンの事が書かれた写本は未だラルフの元にある。テギュリアもルーアンのヴェルナー城だ。
 アガリアレプトにとってテギュリアは出来れば生かしておきたい人物である。だが、デビルのある秘密を知っている以上、放置は出来なかった。
「イペスをここへ」
 アガリアレプトはインプに命じてイペスを広間に呼びだした。
 跪いたイペスに向かってアガリアレプトが冷ややかな視線を送る。
「ブランシュ騎士団黒分隊や冒険者の力、あまりに凄まじく、お前では手に負えないだろう。いっその事、このまま消え去るか? イペスよ」
「アガリアレプト様、どうか今一度の機会をお与え下さい」
「最後まで戦う覚悟があると考えてよいのだな? 先日、ブラーヴ騎士団が冒険者達と戦った際もかなりの消耗をしたと報告があった。あの実力者揃いのブラーヴ騎士団でさえ手こずる奴ら‥‥、侮れぬ」
「どうかわたしめにお力を」
「覚悟は受け取った。お前に預けたい仲間がいる。ただし、少々特別な奴だ。うまくやるがよい」
「ははっ!」
 アガリアレプトに感謝をし、イペスが広間から立ち去る。
「あれにどう対抗する? ラルフ、エフォール、そして冒険者よ」
 アガリアレプトは側で燃えていた蝋燭の火を優しい仕草で吹き消すのであった。


 ブランシュ騎士団黒分隊副長エフォール・ヴェルタルの領地はヴェルタル領という。ヴェルナー領の中にぼつりと存在するゴルオ町とその周辺の土地だけの領地である。
 以前に一度ブラーヴ騎士団に扇動された盗賊達に襲われたが、領民達のがんばりと冒険者達の力を借りた事によって撃退した。
 そのヴェルタル領で、ここ最近になって遙か上空に怪しい影が目撃されていた。
 不安になった領民達はパリにいるエフォール副長に連絡をとった。調査する約束をしたエフォール副長は手を借りる為に冒険者ギルドを訪れる。
「領民の不安を払拭する為にお願いしたい。わたしも向かう予定だ」
 この時のエフォール副長は、まだ何も知らなかった。これから降りかかる大きな厄災を。

●今回の参加者

 ea2350 シクル・ザーン(23歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 ea3047 フランシア・ド・フルール(33歳・♀・ビショップ・人間・ノルマン王国)
 ea4481 氷雨 絃也(33歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5808 李 風龍(30歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 ea5970 エリー・エル(44歳・♀・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb0828 ディグニス・ヘリオドール(36歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 eb1421 リアナ・レジーネス(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb3979 ナノック・リバーシブル(34歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb5818 乱 雪華(29歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

西中島 導仁(ea2741)/ クレア・エルスハイマー(ea2884

●リプレイ本文

●不安
 冒険者達は西中島とクレアが見送る中、馬車を中心にしてパリを出発した。目的地であるゴルオ町までは馬車で三日を要する。
 エフォール副長と黒分隊隊員三名は既にゴルオ町へ滞在中である。
 道中、冒険者達は目撃された怪しい影について考えを巡らす。
「でもぉ、影って何なんだろうねぇん。不吉の前兆じゃなければいいんだけどねぇん」
 愛馬バウバウに乗りながらエリー・エル(ea5970)は馬車と併走する。
「遙か上空だとすると、相手は巨体で空を飛ぶモンスターと考えるしかありませんね」
 馬車の御者をするシクル・ザーン(ea2350)がエリーに答えた。
「訊いて法則性を割だそう。目撃は多そうだ。何処から来て何処へ去るかや時間帯などを検証すれば見えてくる事実があるかも知れん」
 氷雨絃也(ea4481)は開け放たれた窓から会話に参加する。
「わたくしは副長殿に目撃者を集めて貰い、詳細を訊ねるつもりでおります。前の襲撃の際、見知った方が含まれていればよいのですが」
 馬車の席に座るフランシア・ド・フルール(ea3047)はフェアリー・ヨハネスの身だしなみを整えてあげながら語った。
「しかしデビルだとすれば、性懲りもなくまた副長の町を襲うつもりなのか‥‥いや、なりふり構わぬという方が適切なのかもしれん」
 李風龍(ea5808)は愛馬大風皇で馬車に近づく。馬車を挟んでエリーとは反対側である。
「遙か上空で飛んでいても確認出来るのなら、相当大きな物だな」
 馬車より先頭を愛馬で走るディグニス・ヘリオドール(eb0828)が仲間の会話を聞いて呟く。
 地上とは別に空を警戒する冒険者達も怪しい影について持論を交わしていた。
「デビルかも知れないので、見合った武器を黒分隊の方々にお渡しするつもりでいます」
 グリフォン・ヤーマオで飛ぶのは乱雪華(eb5818)である。
「夜に襲来されるかも知れませんので、注意を怠らないようにしませんと」
 リアナ・レジーネス(eb1421)はフライングブルームで空を漂う。スモールホルス・ソルも近くを飛んでいた。
「以前の戦いの時、ブラーヴ騎士団はグリフォンを使ってきた。それは考えに含めておかなければならないな。空を飛ぶ巨大な生物はいろいろとあるが‥‥」
 ナノック・リバーシブル(eb3979)はペガサス・アイギスの上で腕を組んだ。
「ドラゴンやロックバード、エレメントにもそのような奴はいる。当然、デビルの中にもいるだろう」
 名前だけならデュランダル・アウローラ(ea8820)もいくつか知っていた。騎乗しているヒポグリフ・ミストラルがまるで答えるように小さく鳴いた。
 馬車一行は三日目の夕方にはヴェルタル領のゴルオ町へ到着する。
 エフォール副長と挨拶を交わして、宿を用意してもらう。調査は明日からにし、冒険者達はもしもに備えて街の見張りと連携する。
 夜は更け、やがて何事もなく朝日が昇るのだった。

●日常
 ゴルオ町での冒険者達は大きく分けて三つの行動をとる。
 一つは上空を飛んでいた怪しい影の正体を突き止める。
 二つは怪しい影を敵と仮定してあらかじめ対策を行う。
 三つは監視、警戒を怠らず、有事にいつでも対応出来るようにする。
 町民全員が怪しい影を目撃したといってもよく、その中でも特に詳しい者達が領主でもあるエフォール副長によって町の施設に集められる。
 施設で町の人々から話しを聞いたのはフランシア、リアナ、氷雨絃也、エリーである。
「翼があったよ。ゆっくりと旋回していたけど、去る時はものすごい速さで飛び去ったんだ」
 町の少年は興奮気味に話す。
「旋回する時、足が見えたわ。六本あったと思うんだけど。それにお腹に響くようなものすごい鳴き声だったわ」
 町の娘は思いだしながら喋る。
「光の加減か、青か緑か、そんな色に見えた。動きは落ち着きがないように感じたな。飛び去った方向? その日によって違ったよ。目撃は昼間が多いが、羽ばたく音を真夜中に聞いた者もいる」
 見張りの兵士代表も語ってくれる。
 その他の目撃者からも話を聞いたが、ほとんどが三人の意見と相違はない。
 一部の意見として、あれは巨大な天使だとか、ただの雲に過ぎないなどの意見もあった。もしもがあるので疑わずにすべての意見に耳を傾ける。
 それから冒険者達は個別に目撃者達と話す。本人が些細な情報だと考えていても、実は重要な場合は間々あるからだ。
 フランシアは教会の助祭。リアナは町の娘。氷雨絃也は見張りの兵士。エリーは子供達と語り合う。
 得られた情報をフランシアとリアナが検証し、ドラゴンだと結論づける。だが二人とも自信があった訳ではない。妙な不安が心の底に残り続けるのだった。

 シクルは町を回って施設を確認した上でエフォール副長に相談をする。
 襲われた時、町の人々の安全をどう確保するかである。
 怪しい影がドラゴンとするならば、町の人々を一所に集めると全滅の可能性があった。しかし、守りやすさを優先すべきという考えもある。
 逃げ遅れた場合は各家屋に掘られた戦用の地下室に隠れてもらう。だが時間が許す限り、町の施設三個所ある地下室に避難をしてもらう事が決められた。
 フランシアは町の人々に協力を求め、デビル対策に色水などを用意してもらう。
 避難訓練を行う事になり、氷雨絃也が活躍した。町中の鐘が鳴らされる中で訓練が始まる。混乱が起こらないよう隊列に決まりを作り、女子供を守る配慮がされた。
 李風龍は飛行する敵への攻撃方法をエフォール副長に伝えたが、簡単には作製出来ないようだ。投石機については一機あるのでいつでも使えるようにと準備された。

 警戒については町の兵士、自警団と協力して行われる。
 怪しい影の一番最近の目撃は、ちょうど冒険者達がパリを出発した日である。
 もしデビルの仕業だとすれば不可解だと、ナノックとフランシアは食事の時に話し合った。頻繁に現れているにも関わらず、まったく町に手を出していない。まるでエフォール副長が町を訪れるのを待っているようである。他の冒険者もエフォールやラルフの立場を悪くする為のデビルの画策ではないかと疑っていた。
 ナノックは見張り台の兵士にデビルを探知出来る龍晶球を貸しだす。
 エリーは子供達を愛馬に乗せて町を散歩をしながら、デティクトアンデットで調査を行う。幸いにデビルは潜んでいなかった。ただし、半端なデビノマニだと反応しないので注意は必要である。
 李風龍、ディグニス、シクルも愛馬に跨って町中を巡回して回った。避難場所となる建物の位置を完全に把握し、いざという時に迷わないように心がけた。
 警戒を手伝ってくれる風精龍・飛風、スモールホルス・ソルも含め、なるべく町の人々を驚かせないよう領主館の広い屋上が空飛ぶペット達の拠点とされた。敵ではない事は周知済みである。
 大空からの警戒は昼夜を問わず続けられる。
 リアナはフォーノリッヂで調べた未来を確かめるようにフライングブルームで飛び回る。
 乱雪華はグリフォンに乗って町の上空を中心にして見張った。エフォール副長は乱雪華からの武器を受け取らなかったが、町にいる間は隊員へ貸しだされる。
 ヒポグリフで哨戒するデュランダルは敵の正体が気になっていた。ドラゴンだと結論されたが外れた場合も考慮しておくべきである。上空から地平線を眺めながら思慮を続けた。
 ナノックはペガサスで移動し、町周辺の地形をあらためて確認した。もしもドラゴンが襲ってきたとなるとブレスがやっかいである。町を背にして戦ってはいけないと考えていた。
 緊張の日々は続く。敵襲があったのは七日目の暮れなずむ頃であった。

●疾風
「え?」
 フライングブルームで空からの監視をしていたリアナは虚を突かれる。
 遠方に発見したばかりの巨大な青緑色の物体がみるみるうちに接近し、凄まじい勢いで通り過ぎてゆく。
 リアナは急いで追いかけるが、引き離される一方だ。スモールホルスより一回り大きく、それでいて速度も勝っているように感じられる。
「ドラゴンの姿はしているけど、あれは‥‥」
 かなりの知識を持つリアナでさえ判断しきれないモンスターであった。
 ナノック、乱雪華、デュランダルもモンスターの存在に気がつくものの、誰も追いつけない。
 地上では鐘が鳴らされた。
 ゴルオ町上空で旋回するモンスターは急降下し、翼を大きく広げると家屋を押しつぶして降り立った。
 凄まじい咆哮が鐘の音をかき消す。
 ディグニスが愛馬から飛び降りるとベゾムで飛び立つ。
「なんだ?」
 姿はドラゴンなのに指輪の蝶が羽ばたく。デビルの反応である。
 ディグニスは急いで領主館に待機していたフランシアに知らせる。しばらくしてリアナも戻ってくる。
 フランシアとリアナはもう一度意見を交わして結論を訂正した。今ゴルオ町を襲っている怪しい影の正体は『トーネードドラゴン』と呼ばれるデビルだと。
 ドラゴンの姿をしているがデビルと捉えるべきモンスターであった。
「こっちだ!」
 ナノックがペガサスで大空を駆けながら挑発する。まずはなんとかしてゴルオ町の外に連れださなくてはならなかった。
 兵士が投石機を使って石が放たれる。スモールホルスと風精龍がTドラゴンにまとわりつく。
 唸り声をあげたTドラゴンは下肢の一撃によって投石機を破壊する。
 地上の冒険者達は町の人々を避難させていた。
「大丈夫なのねぇん。ほら、立つのねぇん」
 ボウで誓いを立てたエリーは子供達の避難を優先する。
「子供や女性を中央に!」
 氷雨絃也は町の人々を誘導しながらTドラゴンの動向を気にした。
「こっちだ! あいつは任せろ」
 李風龍は逃げ遅れた者がいないか愛馬で町中を駆け回る。
「気をつけて。地下室がありますから」
 シクルは建物の出入り口近くで町の人々に声をかけた。
 空を駆ける冒険者達はTドラゴンを町中から移動させようと躍起になっていた。
「飛べといっている!」
 デュランダルがヒポグリフで地上スレスレを飛んで剣を叩きつけた。刹那、Tドラゴンの爪による攻撃がデュランダルを吹き飛ばす。
「まだ、その時では‥‥」
 乱雪華はTドラゴンの注意を引きつけるように飛びながら、鳴弦の弓をかき鳴らすタイミングを計る。
 ナノックも空中に誘いだそうと攻撃を仕掛けるものの、なかなか地上を離れようとはしない。
 Tドラゴンが稲妻のブレスを吐こうとした時、馬を駆って現れたのはエフォール副長であった。長い首をうねらせたTドラゴンの眼がエフォール副長を見下ろす。
 エフォール副長は町の外へと馬を走らせる。追いかけるようにTドラゴンが宙に舞い上がった。
 地上を走るエフォール副長をTドラゴンが狙う。愛馬で併走する李風龍とディグニスの武器がTドラゴンの爪とぶつかり合って火花が飛び散る。
 閉じられていた城塞門が開かれ、三騎は町の外へと飛びだした。
 空飛ぶ冒険者達は追いかけるように集まり、門の外では町の人々の避難を終えた冒険者達と黒分隊隊員三騎が待機していた。
 町からある程度離れると、そこからは激しい戦闘となる。
 Tドラゴンの狙いは誰が見てもエフォール副長であった。
 乱雪華はここぞとばかりに鳴弦の弓のかき鳴らす。フランシアはホーリーフィールドを次々と出現させ、草原に安全地帯を用意した。
 エフォール副長は愛馬でホーリーフィールドに潜り込む。Tドラゴンの前肢の爪やウインドスラッシュを避けながら反撃の機会を狙った。
 エリーはイペスがいない事を不思議に思いながら、エフォール副長の側で聖剣を振るった。
 氷雨絃也も同じくイペスを探したが見つからない。この時イペスがTドラゴンに憑依して操っているなどとは、誰も気づいてはいなかった。
 氷雨絃也は黒分隊の三騎と共にエフォール副長の動きを真似てTドラゴンを撹乱した。
 李風龍とディグニスは引き続いてエフォール副長を護衛する。大地にTドラゴンの前肢が突き立てられ、土塊が辺りに飛び散る。
 地上からの攻撃はしづらく、戦闘は長引く。
 シクルのミミクリーで伸ばした腕には盾が握られていた。ブレスを盾によって防ごうと考えたのだが、さすがにTドラゴンの頭部までは届きそうにもない。メイスに持ち替えて攻撃に切り替える。
 リアナはレミエラの力を借りてライトニングサンダーボルトをTドラゴンに向けて扇状に放つが、手応えはなかった。
 フランシアは前線に立ってTドラゴンにかけられた補助魔法の解呪を試みた。いくつかの魔法が解き放たれる。
 デュランダルとナノックは空中からの攻撃を続ける。Tドラゴンが飛翔すると、あまりの飛行速度の為に空振りが増えてしまう。
 溜まったダメージの蓄積を薬で回復をはかりつつ、なおも戦闘は続く。暮れなずんでいた景色はいつの間にか夕日へと変わっていた。
 エフォール副長がTドラゴンが放つフラップトルネードに巻き込まれて落馬する。Tドラゴンは首を大きく後ろへしならせた。
 冒険者達はエフォール副長に駆け寄る。ホーリーフィールドの展開、魔法付与、盾による防御態勢、魔法攻撃によって相殺を狙うなど時間が許す限りの手を尽くす。
 稲妻のブレスがTドラゴンから放たれる。対策をしたとはいえ、かなりの手傷を全員が負った。
 ブレスを吐き終えたTドラゴンはしばらくエフォール副長を見つめ続ける。
 太陽が大地に沈もうとした時、Tドラゴンは翼を広げて大空に消えてゆく。
 他のデビルを警戒しながら、李風龍とエリーのリカバーによって全員の回復治療が行われる。
 町の人々の避難は一晩中続けられたが、何事もなく朝日が昇る。
 ゴルオ町は一部建物が破壊されたものの、町の人々に被害はなかった。エフォール副長と黒分隊三名の命も無事である。
 トーネードドラゴンの行動に今一要領を得ない冒険者達であったが、ゴルオ町の危機は過ぎ去った。

●そして
 擦り傷などの治療を終え、冒険者達は十日目の朝にパリへの帰路についた。
 帰り際、お礼としてエフォール副長からレミエラが贈られる。
 イペスの存在を感じながら、実際にはトーネードドラゴンしか現れなかった事に冒険者達は最後まで疑問を持つ。エフォール副長を狙っていたかの行動も不可解であった。
 あまりに速く飛ぶトーネードドラゴンの対策を考えながら、冒険者達は帰り道を進むのであった。