海に潜む何か 〜アーレアン〜

■シリーズシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:12 G 26 C

参加人数:9人

サポート参加人数:3人

冒険期間:06月10日〜06月19日

リプレイ公開日:2009年06月19日

●オープニング

 ドレスタット北東の離れた位置にある巨大な湖にはイグドラシル遺跡の島が浮かぶ。
 湖は海と非常に近い位置にあり、その周辺にセイレーンの集落があった。
 表向きには人の集落としてセイレーン達は暮らしており、その事実を知る者はほんのわずかである。
 そして今、セイレーンの集落は騒然としていた。
「解毒の薬が効かないよ!」
「祈祷師のバリーアのところへ運ぶよ! 魔法ならなんとかなるかも知れない!」
 海岸の岩場に傷だらけで倒れていたのはセイレーンの娘ノルノル。
 セイレーンの仲間達がノルノルを大きな板に寝かせると、急いで集落の祈祷師の住処へと運んだ。
「どうしたのじゃ、ノルノル。喋れるか?」
 年老いた祈祷師バリーアが腰を屈めて耳をノルノルの口へと近づける。唇を振るわせながらノルノルは何かを呟く。
 大きく頷いたバリーアはアンチドートを唱えた。ノルノルは気絶してしまうが、それは痛みがひいてゆくのに安心したからである。
 さらに体力の回復が行われてノルノルはそのまま寝かされた。
 日が暮れた頃、集落のセイレーンの娘二人の行方不明が判明する。事情を知っているのではないかと、目を覚ましたノルノルに質問が投げかけられた。
「あの――」
 ノルノルは顔をうつむかせ、二人の友人がマーメイドに捕まった事を仲間達に告げる。
「マーメイドを海で見かけて‥‥、からかおうと思って近づいたら、いきなり反撃を受けたの。爪の攻撃がものすごく強くてどうしようもなくて」
 ノルノルの話には疑問点がいくつもあった。
 マーメイドが爪で攻撃するなどセイレーン達は聞いたことがない。もっぱら魔法を唱えるか、三叉の矛で突くかがマーメイドの攻撃の仕方である。
「あまりあの島へは近づきたくはないのですが仕方がないですね」
 その場にいたセイレーンの長は立ち上がる。名はポリアポリアという三十歳前後の女性だ。
 ポリアポリアは集落の重鎮をひきつれてイグドラシル遺跡の島へと向かい、ヴァルキューレ・ブリュンヒルデと面会した。そしてマーメイドの正体がデビルのヴェパールではないかと聞かされる。
「わたくしの憶測に過ぎませんが、きっとヴェパールでしょう。デビルは海中にも潜んでこちらを監視しているようですね」
 ブリュンヒルデは静かな口調の中に思慮深さを漂わせる。
「セイレーンのみなさんはデビルと戦った経験がないはず。一度そちらの集落を訪れた事がある冒険者達に協力をしてもらうのはどうでしょう?」
「恩を売るつもりなら結構。二人の同胞はわたしたちで救出します。人が海中で何が出来るというのです」
「こちらにも戦う利があって行う事。冒険者にはフィディエルのクールネも同行させましょう。彼女ならウォーターダイブで冒険者達を支援できますし」
「‥‥あの者達か」
 ポリアポリアは思案の末、ブリュンヒルデの考えを受け入れる。
 セイレーンの一行が帰った後、ブリュンヒルデは青年冒険者アーレアンに宛てて木の皮の手紙を用意した。簡単ながら今話した内容がすべてしたためられる。
 三日後、フェアリー達から手紙を受け取ったアーレアンはドレスタットの冒険者ギルドで仲間の募集をかけるのであった。

●今回の参加者

 ea2762 シャクリローゼ・ライラ(28歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea7900 諫早 似鳥(38歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 ea7929 ルイーゼ・コゥ(37歳・♀・ウィザード・シフール・ノルマン王国)
 ea8341 壬護 蒼樹(32歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 eb0416 イェン・エスタナトレーヒ(19歳・♀・ジプシー・シフール・イスパニア王国)
 eb2257 パラーリア・ゲラー(29歳・♀・レンジャー・パラ・フランク王国)
 eb5249 磯城弥 魁厳(32歳・♂・忍者・河童・ジャパン)
 ec0843 雀尾 嵐淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec4801 リーマ・アベツ(34歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)

●サポート参加者

アニエス・グラン・クリュ(eb2949)/ 鳳 令明(eb3759)/ メグレズ・ファウンテン(eb5451

●リプレイ本文

●行きの船
 潮風を帆に受けて海原を進む帆船の名はエグゾセ号。
 海戦騎士団に属するエグゾセ号だが、今はエイリーク辺境伯の命令によって一人の青年に託されていた。
 火の精霊魔法を得意とする冒険者アーレアン・コカントである。
 精霊と龍、そして獣人の住まう地。湖に浮かぶイグドラシル遺跡の島と人の世界の架け橋になるべく冒険者達は奮闘を続ける。そして今回はセイレーン達の間で起きた事件を解決すべく、湖近くの海岸に向かっている途中だった。
「♪う〜みよ〜♪ お〜れ〜の〜♪」
 ルイーゼ・コゥ(ea7929)が甲板室の屋根に座って気持ちよく唄う。
 海に棲むデビルのヴェパールとの戦いが予想される為、依頼期間中のエグゾセ号の指揮をルイーゼは本来の船長から委譲されていた。
 ルイーゼが何らかの理由で指揮がとれなくなった時に備え、冒険者達の間では指揮の順番が取り決められてある。
(「あれなら暗くてもなんとかなりそうだわ」)
 イェン・エスタナトレーヒ(eb0416)はマスト上の見張り台に座りながらドレスタット出発前に行った実験を思いだす。
 陽が射し込める余地があるなら深夜でもレミエラの力を得たサンレーザーの使用可能である。海水で阻まれているとはいえ、海底でも大丈夫だろうとイェンは判断していた。
 ドレスタットで実験を済ませたのは最初に島へ立ち寄らないとアーレアンから聞いたからだ。本来なら洞窟奥の閉鎖された空間などで試す予定であった。
(「共通の敵‥‥。ノームさんの企てをどうにか出来ると、島が一つになっていく感じがするな」)
 考え事をしながら壬護蒼樹(ea8341)が船縁から海面を覗くと、ヒポカンプスの柳絮が気持ちよさそうに泳いでいた。戦闘には不向きだが海中での移動には役立ってくれるはずである。
「きっと海に潜る機会があるはず。その時はこの船での待機をお願いしますわ。セイレーンは少々気になりますし‥‥」
 主人のシャクリローゼ・ライラ(ea2762)にフィディエルのティナが頷く。ちなみに風の精霊ジニールのネフリティスはランプの中である。
「――という感じなんだ。敵もいろいろと考えているよね」
「ほえ〜、じわじわって悪魔さんの策略がすすんでるかんじだね〜」
 アーレアンとパラーリア・ゲラー(eb2257)は食堂で海の幸の昼食を頬張りながら今回の依頼の目的を話し合う。
(「海の中ならわしの出番じゃ。船は頼んだぞ、ヤツハシ。空からの監視をよろしくな、普賢」)
 磯城弥魁厳(eb5249)は愛犬のヤツハシと隼の普賢へと、指輪の力で得たテレパシーで順に念波を送った。それが済むと海へ飛び込んで状況を確認する。
「という訳で頼んだよ」
 船の一室。諫早似鳥(ea7900)はリーマ・アベツ(ec4801)と雀尾嵐淡(ec0843)の二人と相談していた。
「私がストーンですね」
 リーマが隣りに座る雀尾嵐淡に視線を送る。
「石化を解くには俺のニュートラルマジックで」
 雀尾嵐淡はリーマと諫早似鳥を順に見てから了解した。
 暮れなずむ頃、エグゾセ号はひとまずの目標である湖近くの海岸沖に到達する。そして小舟を海面に降ろし、海岸にいた三人をエグゾセ号へと運んだ。
 フィディエルのクールネ、セイレーンの娘ノルノル、セイレーンに祈祷師と呼ばれている年老いた女性バリーアの三人である。
 エグゾセ号がセイレーンの集落がある沖近くまで航行する。
 冒険者達は小舟に乗り換えてセイレーンの集落を訪れるのであった。

●セイレーンの集落
 冒険者達はセイレーンの集落で慎重な行動を心がけた。就寝時には独自に見張りを立てる予定である。
 以前にワーリンクスのミニットからもらった忠告、それに集落のただならぬ雰囲気を感じ取っていた。案内された木製の家屋から勝手に出る事は許されていない。
 ちなみにセイレーンの住処は洞窟に手を加えたものだ。木製の家屋は集落にほんのわずかだった。
 冒険者達はセイレーンの娘二人をどうやって救出するか集落の長であるポリアポリアに実演してみせる。
 理由は二つ。
 ゲルマン語は通じるものの、言葉だけより動きがあった方がわかりやすい事。もう一つは助けだそうとする覚悟が本気なのをわかってもらう為である。
 諫早似鳥が囚われの娘役を演じ、リーマのストーンによって本当に石化された。石となった諫早似鳥を他の冒険者達が運び、仮想の甲板上で雀尾嵐淡のニュートラルマジックによって元に戻される。
 身体を張った説明と熱意にポリアポリアは作戦の実行を了承してくれた。

●捜索開始
 二日目、冒険者達が戻るとエグゾセ号は錨をあげて帆を張った。クールネはもちろんだが、ノルノルとバリーアも一緒である。
 ノルノルの案内でヴェパールと接触した海へと向かう。
 昼前には到着し、さっそく捜索が始まった。
 ノルノルを含めた潜水班にはクールネが一時間のウォーターダイブを付与してくれる。
 アーレアンも必要な仲間達に一時間のバーニングソードとフレイムエリベイションを付与してゆく。
 魔法を使った者はソルフの実などで魔力を補給した。これは後にアーレアンが辺境伯から預かる経費から補てんされる。
 待機班のシャクリローゼとパラーリアはバリーアと共にエグゾセ号に残った。
 アイテムの貸し借りが終わると潜水班の者達が次々に飛び込む。
「あーあーあー、ちょっとええか?」
 ルイーゼは懸命に潜水してノルノルと並んだ。
「あんたはんのお友達が捕まったんは、あんたはんの所為やあらへん。勿論ブリュンヒルデはん達も悪ぅない。みぃんな悪魔が悪いんよ」
「ルイーゼさん‥‥」
「せやから、下手に奴らに突っ込んだりしないで」
「う、うん‥‥。ありがと」
 お喋りだったはずのノルノルが、再会してから数える程しか口を開いていない事をルイーゼは心配していた。
(「これでヴェパールと戦いやすいはず」)
 壬護蒼樹は仲間達に魔法をかけてもらった後にレジストマジックを自分に付与しておいた。予めかけておいた魔法が消えないのは実験済みである。
 泳ぐのがあまり得意でない者はヒポカンプスの柳絮に掴まった。クールネと魁厳も手を貸してくれる。
 海底まで到達すれば後は何とかなった。浮かび上がる時には腰につけた砂袋を捨てればよい。
「ここから百メートルの範囲に不死者はいないようだ」
 雀尾嵐淡がデティクトアンデッドで得た結果を仲間達に伝える。
「報告して来まする」
 魔法で時間が計られ、三十分が経過すると魁厳がエグゾセ号の仲間達へ報告しに浮かぶ。
 河童の魁厳にとって極簡単な事である。海面まであがると指輪で付与したテレパシーでパラーリアかシャクリローゼに念波を送った。
「クールネさん、いざとなった時はあれをお願いなのだわ」
「ええ、必ず」
 イェンがクールネに願ったのはヴェパールにウォーターウォークの魔法をかけることだ。うまくいけばヴェパールは海にはいられず、海面まで吹き飛ばされるだろう。
 問題なのはヴェパールとの距離だ。接触しなければ魔法はかけられず、一瞬であろうから高速詠唱は必須であった。

●エグゾセ号
「貴方は人間? セイレーンには食人説がありますけど無事で?」
 エグゾセ号の甲板ではシャクリローゼがバリーアに問いかける。
「あの集落の様子は話せんのじゃ。もちろんセイレーンの生活の様子ものお。それが長と交わした約束じゃからな」
 シャクリローゼがセイレーンの集落についていくら訊ねてもバリーアは何も答えなかった。
 セイレーンの集落がある海岸はちょうど人の領域とイグドラシル遺跡の住人が管理する領域との中間にあるらしい。セイレーンの先祖が望んで移り住んだようだ。
「ほえ〜。なんだか大変なんだね。ドラゴンさんや、精霊さんや獣人さんの世界も」
 パラーリアは甲板に敷かれた空飛ぶ絨毯の上にちょこんと座ってシャクリローゼとバリーアの話を聞いていた。
「でも、どうやってセイレーンの集落にどうやって辿り着いたの?」
「それぐらいは教えて欲しいですわ。とても不思議ですもの」
 パラーリアとシャクリローゼの二人にじっと見つめられたバリーアはやがて根負けする。
「‥‥ま、それぐらいならの。一言でいえば漂流したのじゃよ。偶然にあの集落近くに流れ着いたというわけよ。こんななりをしておるが白教義のクレリックなのじゃ」
 バリーアは眠いと言葉を続けて船室に入ってしまう。
 シャクリローゼとパラーリアはバリーアが寝る船室と甲板を交代で見張る事にした。

●ヴェパール
 冒険者達は一回の潜水で勝負をかけるつもりでいた。しかしヴェパールもセイレーンの娘二人も発見する事は叶わなかった。
 二度目の潜水でも発見出来ず、二日目の捜索は終了する。
 動きがあったのは三日目の昼過ぎに行われた四度目の潜水時である。
 雀尾嵐淡がデティクトアンデッドで不死者を探知する。即座に必要な魔法をかけ直し、冒険者達は反応との距離を縮めてゆく。
 そして上半身が女性の姿で下半身が魚の尾のような存在を発見した。
 ノルノルによればあれが二人の娘をさらったセイレーンの敵に間違いないという。
 ブリュンヒルデの推測が当たっていればマーメイドではなく、デビルのヴェパールである。
 その他に不死者の反応があったのは小型のシャチ二頭。諫早似鳥がはめていた指輪『石の中の蝶』の反応からしてデビルなのは間違いない。おそらくヴェパールの配下であろうと想像される。
 デビルを排除した上で娘二人を助けのが作戦だ。二人は海底の岩場の隙間に作られた檻に閉じこめられていた。
 ノルノルが二つの指輪の力でテレパシーと透明化の能力を得る。それからデビルとの戦いが始まった。
(「いくぜ!」)
 初撃はアーレアンのファイヤーボムだ。ヴェパールとデビルであろう小型のシャチ二頭が範囲に収まるように放たれる。水中でありながら火球が弾ける不思議な風景が繰り広げられた。
(「あたしよ、ノルノルよ。助けるのに石にするけど我慢してね」)
 透明化したノルノルが囚われの二人の娘に近づいて念波で救出作戦を伝える。
「ここからなら見えますので大丈夫です」
 ノルノルからの合図を確認したリーマは遠距離からセイレーンの娘二人にストーンをかけた。
 その間に潜水班の仲間達はデビルとの接近戦に突入する。
「おっと、こっちには行かせんのじゃ」
 海中を自由自在に泳ぐ魁厳は、檻へ近づこうとするヴェパールの動きを牽制した。
「水の中ではいい思い出がないけれど」
 壬護蒼樹は檻近くの海底に立ち、巨体を活かして壁となる。大錫杖「昇竜」+1で突きを多用し、魁厳と連携してヴェパールを近づけさせはしなかった。
「アーレ! そっちのシャチは頼んだよ!」
 諫早似鳥はアキレウスの槍+1を握りしめ、疾走の術で得た機敏な動きで海底を駆ける。
 アーレアンはレミエラで範囲を縮小したファイヤーボムで小型シャチ・デビルBを牽制した。
「そっちは駄目やで!」
 ルイーゼはレミエラで扇状化したライトニングサンダーボルトを放つ。輝く稲妻が海中を走ってシャチ・デビルAの勢いを削いだ。
「今なのだわ!」
 敵の攻撃を交わしながらタイミングを計っていたイェンはサンレーザーの輝きをシャチ・デビルAの頭部に落とす。
「当たれ!」
 諫早似鳥が槍を投擲し、シャチ・デビルAを海底へ縫い止めるのに成功する。変身が解けるとグレムリンだと判明した。
 グレムリン一体を仕留め終わるとイェン、ルイーゼ、諫早似鳥の三人はアーレアンに加勢する。
 その頃、魁厳と壬護蒼樹はヴェパールの動きを阻止していた。
「大丈夫だからな。少し待ってくれ」
 雀尾嵐淡は檻に向かって声をかけた。石化しているセイレーンの娘二人に届くはずもないが気持ちの問題である。
 壬護蒼樹がヴェパールの爪攻撃を受けた時、雀尾嵐淡が即座にアンチドートをかけて毒を中和してくれた。
「クールネさん! 早く!」
 リーマは放ったグラビティーキャノンに手応えを感じる。刹那、ヴェパールはバランスを崩してまるで転倒するように海底へと落下した。
「これなら」
 クールネはヴェパールに触れてウォーターウォークを付与する。もの凄い勢いでヴェパールは海面へと浮上してゆく。
 魁厳とクールネは追いかけた。
「どう見てもデビルですわ!」
 エグゾセ号の甲板から海面のヴェパールを目視したシャクリローゼは、サンレーザーを落とす。シャクリローゼもモンスターに詳しかったのだ。
「船乗りさん達もあそこに撃ってね!」
 パラーリアはデビルスレイヤーの弓矢でヴェパールを射る。
 かけられたウォーターダイブは六分持つはずだが、それより前にヴェパールが潜水してしまう。どうやらヴェパールはニュートラルマジックを使えたようだ。
 シャチに化けていたグレムリン二体は倒された。ヴェパールは逃亡したが成功といってよい。肝心なのはセイレーンの娘二人の命だからだ。
 石化されたセイレーンの娘二人は海面まで運ばれると、パラーリアが着水させた空飛ぶ絨毯に乗せられた。エグゾセ号の甲板に寝かされたところで雀尾嵐淡のニュートラルマジックで元通りになる。
 セイレーンの娘三人は抱き合って泣き続けるのだった。

●そして
 エグゾセ号はセイレーンの集落の沖へと戻る。
「この集落のセイレーンは受けた恩は忘れません。それが人であっても。何かあればお手伝いしましょう」
 セイレーンの集落の長ポリアポリアが冒険者達に感謝する。
 時間に余裕があった冒険者達はクールネを送り届けるついでにイグドラシル遺跡の島へと立ち寄った。そしてブリュンヒルデに報告をする。その際にレミエラが贈られた。
 冒険者達は無事にドレスタットへ帰還し、別れ際にギルドで雑談を交わす。
 アーレアンは田舎に住む姉に贈り物をして懐がさみしい状況に陥っていた。緊張していたせいでとんでもない高価な品を買ってしまったらしい。次の機会に必ず借金を返すと諫早似鳥と約束する。
 イェンは一日分の保存食が足りなかったので仲間に譲ってもらった分をお金で補てんした。
「二人が助かってよかったけどさ。セイレーンの集落は謎が多かったね。洞窟の奥には結局入れてもらえなかったし」
 アーレアンはそう呟いて冒険者ギルドを後にするのであった。