【王立ゴーレムニスト学園2】稼働見学

■シリーズシナリオ


担当:天音

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:4

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月03日〜01月10日

リプレイ公開日:2009年01月12日

●オープニング

「今回はどうするんですか?」
「実際にゴーレム機器を扱っているところを見せようと思うの」
「実際に‥‥」
 ユリディスの言葉に工房関係者は何かを考え込むように首を傾げる。
「実際に自分が作るゴーレム機器がどういう働きをしているのか見てから、どの系統に進むか決めてもらおうと思って」
 これはこれからゴーレムニストになる者だけでなく、現在ゴーレムニストとして修練を積んでいる者が己を見つめなおす機会にもなるだろう。
「ゴーレムシップへの搭乗、チャリオット、グライダーへの同乗、人型ゴーレム同士の実技練習。フロートシップへの搭乗。これらをするわ。もしかしたらその場で修理を求められる事もあるかもね?」
 ゴーレムシップ、チャリオット、グライダー、人型ゴーレム演習、フロートシップ。これらを一日1つずつ見学して回るので、どの順番で回りたいか、どこを重点的に見たいかを相談して欲しいという。
 また、各種ゴーレムの操縦・搭乗希望があれば、実際にやらせてもらえるという。ただしその手の技能(大型船舶だったり地上車だったり航空だったり、もちろんゴーレム操縦)は必須だというが。ちなみに人型ゴーレムの演習で使われるのはモナルコスだ。モナルコス同士の対戦となる。グライダーの場合は自身で操縦するか、偵察に出る鎧騎士の後ろに同乗しての偵察同行となる。
「ああ、一番お手軽なのは風信器だけど」
 ユリディスはくすっと笑ったが、いや、さすがに風信器だけじゃつまらないだろう。
「改めてゴーレム機器を見てみて、どの系統の魔法を学びたいか、心が決まったら教えてくれると嬉しいわ」
 ユリディスは風と地のゴーレム魔法使いだ。だが必ずしも複数のゴーレム魔法を習得しなければならないというわけではないし、逆に必ず一つに絞らなければならないというわけでもない。あくまでも自分の希望とスタンスにあわせてきめて欲しい。ゴーレム魔法を学ぶのは簡単ではない。習得までには努力と時間が必要なのだから。
「あと、少しくらいなら質問も受け付けるわ」
 見学に時間をとられて全部に答えられなかった場合は、次回以降に答えるという。
「後は前回どおり、助手と補習希望者も募集するわ」
 助手は文字通りユリディスの手伝いをすることになる。今回は授業の記録をとることと、実地での生徒の様子を観察して報告書を作ることが主な仕事だ。余裕があれば、自分の進んだ道を見返す意味も込めて、ゴーレム機器を眺めてみるといい。ちなみに助手はゴーレムニスト限定だ。
 あとは補習希望者。こちらはゴーレムニストの課程を修了した者、既にゴーレムニストとなっている者の二者が対象になる。講義内容は新規希望者と同じだ。
 助手も補習希望者も授業の欠席は可能だ。毎回必ず出席しなければならないというわけではない。だが今までとは違った内容の授業が行われているため、目新しい発見があるかもしれない。


 ちなみにゴーレムニストは他国への渡航が難しい職業である。
 ゴーレムニストは要職だ。ゴーレム工房に入るということは国内のゴーレムの機密を知る事にもなる。そんなゴーレムニストが他国へ渡ったらどうなるだろうか?
 ゴーレムニストはお金持ちだ――そういう認識から、強盗に襲われることもある。それだけなら国内でも十分ありえることだが、問題は他国のゴーレム工房に関わった場合。
 メイのゴーレム工房関係者だと分かれば間諜だと疑われるのは間違いない。また他国に情報を売ろうとしても、簡単に国を裏切るような者を信頼する者達はいない。その上もしメイに戻ってきたら――?
 もちろん、こちらのゴーレム工房にも入れるわけには行かなくなる。他国のゴーレム工房に関わった者は、情報を漏洩した裏切り者である可能性と、あちらからの間諜の恐れがあるからだ。
 事実はどうであれ、どちらからも疑われるのは間違いない。結果的に、どちらの工房にも入れなくなる可能性が高い。
 ゴーレムニストになるということは、その後の身の振り方もある程度縛られるという事。それを覚悟の上で志願して欲しい、と。

●今回の参加者

 ea4426 カレン・シュタット(28歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・フランク王国)
 eb4637 門見 雨霧(35歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb8378 布津 香哉(30歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb8388 白金 銀(48歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 ec5196 鷹栖 冴子(40歳・♀・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))

●サポート参加者

クレー・ブラト(ea6282

●リプレイ本文


 今回の授業は現場で盛りだくさん。まず一行が訪れたのは人型ゴーレム同士の練習場。門見雨霧(eb4637)、白金銀(eb8388)、鷹栖冴子(ec5196)が希望してモナルコスへの搭乗を果たす。技量を考えて銀と冴子、雨霧と講習中の鎧騎士が対戦する事となった。
 ぶんっ
 冴子のモナルコスが剣を振り下ろす。銀はそれを避け、槍を突き出した。先を潰した練習用の槍が、避け切れなかった冴子の機体にぶつかる。
『っと‥‥衝撃はやっぱりすごいねぇ』
 何とか倒れる事は免れた冴子が、銀に話しかけた。
『そうですね。それに剣や槍、斧の性質上、振り下ろす事や突く事は出来るようになっているようですが、こう、物を投げたり弓を引いたりするには‥‥少し腕が動かしにくいですね』
 銀は通常の人間用の武器をゴーレムサイズにしたときの事を考えていた。ゴーレムは元々投擲や射撃を考えて作られていない。投擲や射撃に必要な関節の動きが組み込まれていないのだ。故に、射撃用機体として作られたアルメリア以外で射撃を行なう際は、武器を扱いづらいという現象が発生する。
『自分の腕のように扱えるっていっても、やっぱり限度があるもんだねぇ』
 冴子は色々とゴーレムを動かしてみる。が、さすがに人間の腕のように関節が自由自在とはいかないようだった。
『やっぱり当たらない、か』
 苦笑を漏らすのは鎧騎士と対峙していた雨霧。武器に剣を選んでみたが、格闘技術に自信のない彼の攻撃はあまり当たらない。相手の攻撃を避ける事は出来るのだが。
『弓は、モナルコスじゃ扱いづらいし』
 戦場では人手が足りなくてゴーレムニストでも出撃する場合もありえる。だがそれには相応の稼働時間と技術が必要なのは言うまでもない。
「二兎を追うものは一兎を得ず‥‥だったかしら?」
 その様子を見てぽつり、ユリディスは隣に立つカレン・シュタット(ea4426)に声をかけた。
「ユリディス先生、質問!」
 訓練場の端で大声を上げたのは布津香哉(eb8378)だった。彼の側には精霊らしき少女の姿がある。
「カレンさん、記録お願い」
「わかりました」
 戦闘記録をカレンに任せて、整備点検中の彼の元へユリディスは歩み行く。
「うちに精霊様がやってきたんだけどさ。この子、フィディエルって水の精霊さまで、大切な人から贈られたんだけど。ゴーレムの近くに寄ったり乗ったりしても大丈夫なんだろうか」
 ルィチェーイと紹介された水の精霊は、ぺこりと頭を下げた。人語を解するということは、それなりに高位の精霊なのだろう。
「ゴーレムって精霊力集積機能あるでしょ。ちょっと心配になってね。何ともないならいいんだ。不調になったりするなら安全な所で待っててもらわないといけないしさ」
「基本的に大丈夫よ。シップ類だったら、通常の人間と同じく可動の為に少し魔力をもらう事もあるけど。人型にはフェアリークラスの大きさじゃないと一緒には乗れないしね」
 ただ、とユリディスは言葉を切る。
「精霊を乗せてみて、ゴーレムに変化が出ないか試してみよう‥‥という考えを持つ人が現れてもおかしくないわ。遠い国で、精霊の力を使って研究をしているらしいって噂を聞いたことがあるから」
「ルゥは大切な人から贈られたんだ。そんな研究になんて参加させない」
 彼女の言葉に香哉は慌てて側の精霊を引き寄せて。
「大丈夫よ、今の所は。あんなの噂レベルだし。まあ、変な事言ってくる人がいたら私に言いなさいな」
 それにしてもよほど大切になのねぇ、とユリディスはくす、と笑った。



「ほー、これがチャリオットかい」
「乗ったことあったっけか? ‥‥ねぇな。乗ってみるか。向うでもペーパーだったからあんまり乗りこなせるとは思わないけど」
 冴子と香哉がまじまじとチャリオットを見つめる。今別途開発中の物のベースとなっただけあって、似ている。
「動かしてみるけど、誰か同乗する?」
 雨霧の問いに手を上げたのは冴子と銀と香哉。とりあえず乗ってみない事には、というわけで。雨霧もそれほど操縦に自信があるわけではないが、まあ広い場所を選んで走行させるのだし、大丈夫だろうと。ユリディスは、危ない船には乗らない主義らしい。
「行ってらっしゃいませ」
 記録用の羊皮紙を持ったままカレンが小さく手を振る。
 チャリオットを起動――そして走行。最初がくんっとなったりもしたが、おおむね平和に走行は進んだ。戦場で役に立つレベルかどうかはまた、別として。


「各ゴーレム機器に関して、常時行う整備や帰還後の整備の手順や注意点を質問などを教えてもらえないかな。機器によって注意すべき箇所も変わって来るだろうしね」
 ゴーレムシップにて、お弁当代わりにクレー・ブラトの用意した「擬似おせち」を食べながら雨霧が問う。それは彼のように現場での整備が出来るゴーレムニストになりたい、技術屋を目指す他の者達も聞きたい質問だった。
「機体に傷がないか、装甲が歪んでいないか、時々動かして動作に異常がないかなどの他、シップ類は搭載貨物の準備がきちんと行われているかなどをチェックするわ」
「搭載貨物、ですか?」
 首を傾げるカレンに、ユリディスがフォークで豆を突き刺して頷く。
「航行中に必要な道具類や、乗組員の飲食物など航海に必要なもののことね」
「そういや、乗組員全員が鎧騎士ってわけじゃなさそうだね?」
 冴子があたりを見回すと、確かに鎧騎士らしからぬ姿もいくつかあった。例えるなら、船乗り。
「シップ類は緊急発進に備えて、乗組員の確保も重要よ。帆船航行中の操船に携わるのは船乗りで、全員が鎧騎士ではないの。港湾関係に詳しい人物が管理に当たっているわ」
 なるほど、と頷いた5人の中にある疑問が浮かぶ。
「人型ゴーレムやグライダーの動力は操縦している鎧騎士からとられるんだよな? それじゃあシップ類はどうなっているんだ? 通常の人間と同じく魔力を消費、とか先生言っていた様な」
 香哉の言葉にユリディスは頷いて。
「私達がこうしてただ乗っている間にも、動力に必要な魔力を供給している事になるの。鎧騎士に限らず、乗っていると当人が意識しない間に可動力を提供しているのだろう、というのが私達ゴーレムニストの見解」
「どこか一箇所に、可動力提供者を集めたりは?」
 カレンの言葉に首を振るユリディス。
「船内に十分な人数がいればよいから、特定スペースを人を押し込めることはしないわ。この場合の十分な人数の目安は確認されていないけど、シップ類を操船し、離陸・出航できるだけの人数がいれば問題が発生した事はないわ」
「なるほど。では知らないうちに私達も可動力を提供しているという事ですね」
 なんだか不思議な感じがします、と銀はゴーレムシップの天井を見つめた。


「船舶類の精霊力制御装置ってこんな大きさなんだな」
 雨霧と共にシップの整備を手伝わせてもらう事になった香哉は、人の半分程度の装置を見つめる。
「これは小さいほうよ。大きいものだと3m位あるわ」
「それはやっぱり船体の大きさと関係してくるの?」
「もちろん」
 雨霧の言葉に頷くユリディス。船体が大きくなれば、精霊力制御装置も大きいものが必要になる。
「先生、確認なんだけど」
 手を上げたのは香哉。
「精霊力制御装置の魔法ってもっと極めれば、大型の船舶の精霊力制御装置に付与できるようになるんだよね?」
 精霊力制御装置の魔法に絞って修行を積んでいる彼からの確認に、ユリディスは是と答えた。



 新規作成した精霊砲の試射なら見学可能という事で、被害が出ない場所を選んでそれは行なわれた。戦闘以外では滅多に見る事は出来ないだろう。
「フロートシップの操縦法は、基本的にゴーレムシップと同じですか?」
「そうね。ゴーレムシップと違って水の上を走るわけじゃないから、勝手は違うけれど大きな船という事に変わりはないわ」
「ゴーレムや人員を下ろすには、やっぱり一度停泊する必要があるんですね」
 銀は確認するように呟く。そのタイムロスが惜しい為、停泊させずとも歩兵戦力を素早く下ろす事が出来るような機器を開発しているのだ。
「そういえば工房に持っていく暇がない場合、つまり戦場での応急処置はどうするのですか?」
「ゴーレム魔法は基本的に魔方陣の上で使うわ。なければ絶対失敗するわけではないようだけれど‥‥戦場では本当に応急処置になるわね。そのゴーレム機器の素材を使って技術職が応急処置を施すの。ウッドとストーンは壊れたら修理よりも基本的に破棄、っていうのが今の流れね。もったいないとは思うけれど、修繕しても治りきらないほどの破損というものもあるから――戦闘機器だけに」
 コストパフォーマンスが悪いわよね、とユリディスは苦笑した。


「眺めがいいもんだねぇ〜」
 香哉のグライダーに相乗りした冴子が思わず呟く。グライダーは戦時と違って平和に飛んでいた。雨霧のグライダーも同じく。
 だが戦時のようにスピードを上げて飛ぶのは銀のグライダー。後部に荷物を載せてその影響を見る。スピードを上げたり急激なターンをしたりするには、やはり積載物はしっかりと固定しておく必要があるようだった。人を乗せる場合も、スピードを上げている場合や急激にターンを決めている間はしっかりと掴まっていてもらわねば落下の恐れがあるだろう。その間は同乗者も攻撃などは行なえないと思われる。
「先生、グライダーの低空飛行時や低速飛行時の安定性の確保は、送風管からの風の精霊力で安定を保っているのでしょうか?」
 グライダーから降り立った銀がすぐにユリディスに走り寄り、尋ねる。それを見て勉強熱心ねとユリディスは笑み、カレンは何事かを羊皮紙に記録していく。恐らく授業態度とかそんなところだろう。
「まぁ、そんな感じね。正しくは送風管で風を操り、翼の揚力の力も利用してるけれど、低速時は送風管の風により浮くほうが比重が高いってところよ」
「なるほど‥‥となるとやはり、送風管は重要なんですね」
 銀は開発のことを考えているようだった。



 一通りの見学が終わって。漸く教室で息をつく生徒達。
「どんな道に進みたいか、少しは参考になったかしら?」
 ユリディスの言葉にはぁいと返事をする生徒達。さすがにハードスケジュールだったようで。
「う〜ん、ゴーレム開発とかも良いけど、やっぱり俺は現場、それも戦場での整備を希望かな〜」
 まだまだ足りないものが多いから精進が必要だけど、と雨霧は言う。
「私はやはり、風系と地系のゴーレム魔法を学び続けていこうと思います」
 これはカレン。
「迷ったのですが、まずはメンテナンス面のから「地」の系統を学びたいと思います。将来的にはグライダー関係の「風」系統も極めて行きたいですが、長く遠い道になりそうです。技術屋としての能力も生かしたいです」
 と銀が言えば。
「あたいも銀さんと同じく、ゴーレム生成も出来てかつ直せる技術屋を目指している。ただゴーレム造っておしまい、って訳にもいかないだろう?」
 冴子もやはり作るだけでは留まらぬようで。
「俺はやっぱり大型船舶の精霊力制御装置に魔法を付与できるようになりたいかな」
 香哉の目標はやっぱりその道で達人と呼ばれる域に達する事らしい。
「皆それぞれ目標が定まってきたみたいね?」
 頑張って頂戴ね、ユリディスは笑んで見せた。

 次回は最終試験を含む。
 さて、どうなる事か――。